傭兵幻想体験記   作:pokotan

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今回で紅魔異変の方は解決しますが、まだまだ紅魔館関連の話は続きます。
原作通り霊夢や魔理沙を出そうかと悩んだのですが、出さない方針にしました。
あと、パチュリーの出番もありません。


そうだ紅魔館に行こう 第2話

~紅魔館~

紅魔館の中は赤がメインの装飾ばかりだった。正直な話、目に悪いでしょこれ。目がチカチカしてきた……。

さてさて、どう進もうかな……ってうん?

入ってすぐの中央階段にメイドらしき誰かが立っていた。

見つかってはまずいと思い、近くの壁に張り付き隠れつつ様子を見る。

しかし、そ〜っと覗いてみたが先ほどの人はいなかった。

それならば堂々と覗いたらどうだろうか―――見つかるだろ。馬鹿か僕は。

 

「何か御用でしょうか?」

 

「ふぇっ!?」

 

急に目の前に居なかったはずの人が現れた。

見た目はメイドの格好をしていた。恐らくさっきの人だろう。

びっくりしたわ〜。心臓に悪いわ。

 

「一つ聞きたいんですけど、この空の異変の犯人はあなた達ですか?」

 

「はい、そのとおりです。」

 

やはりこの紅魔館が異変の原因だったか。

 

「なんでこんなことを起こしたんだ?」

 

「我が主人がこの幻想郷を支配下に置くためです。」

 

「それは大層なことを考えたもんで。でも、その事とこの空は何か関係があるのか?」

 

「我が主人は吸血鬼です。故に太陽を遮るために、空を紅い霧で覆ったのです。」

 

なるほどそう言う事か。

つまり吸血鬼の主人が幻想郷を征服するためには太陽が邪魔だった。だからこの紅い霧で太陽を遮った、というわけだ。

なんと迷惑な話だ。

 

「お分かり頂けたようですね。我々は別に幻想郷を支配したからといって、あなた達人間を取って食うわけではありません。ですからこのままお引き取り願います。」

 

「それはできないな。吸血鬼よりも恐ろしい人から解決して来いと言われたんでね。」

 

「そうですか。では仕方ありませんね。あなたをここで排除致します。」

 

そう言うとメイドはナイフを構えた。

やれやれ、ここの人達は血気盛んだな。

僕もショットガンを構える。

両者の緊張が高まっていた時、中央階段から声が聞こえた。

 

「待ちなさい咲夜。」

 

声の主は小さな女の子だった。だが背中に羽らしきものがある。

 

「お嬢様どうしたのですか。」

 

お嬢様?あの人が紅魔館の主人ということなのか?幼女……幼い子供じゃん。

まぁ確かに背中に羽があるから吸血鬼っぽいけど、まさかこんな少女だったとは。

 

「ほぅ……お前が片倉か…」

 

なぜ名前を知っているのだろうか、名乗った記憶はないのだが。

 

「別にそんな警戒しなくともよい。私の能力は運命を操る程度の能力。お前の名前くらい名乗らなくとも分かるさ。」

 

運命を操る程度の能力?

何を言っているのか僕にはさっぱり分からない。

 

「紹介が遅れたな、私の名はレミリア・スカーレット。そしてそのメイドは十六夜咲夜だ。」

 

「僕の名前は片倉、外の世界から来ました。」

 

「いちいち言わなくとも私の能力で分かるぞ。」

 

「いえ、一応礼儀ですから。」

 

「フッハハハ、面白い奴だ。気に入ったぞ。」

 

レミリアは大きな声で笑っていた。

それを見ていたメイドである咲夜は何故か両手で鼻を抑えて小言で何かを呟いていた。

 

(カリスマっぽく見せるお嬢様、なんと可愛らしいのかしら)

 

あー今のは聞こえなかったことにしとこう。

 

「よし片倉よ、私と戦うぞ。」

 

んっ?なんで急に戦うくだりになったの?僕には分からないよ。

 

「この私を倒して、異変を解決させるのだろう?」

 

あっそうだすっかり忘れてた。結局戦うしかないのかトホホ…

レミリアは階段を降りてきた。その姿は圧倒的なカリスマ性を出しており、僕は思わず後ずさりしてしまう。

刹那、レミリアが階段からずっこけた。

すると、さっきまで鼻を抑えていた咲夜が何故か気絶した。気絶する瞬間、お嬢様がナントカ、と言っていたが気にしないでおこう。

 

「フッフフフ……さあ戦いの用意はいいな片倉。」

 

レミリアはさっきの出来事を無かったかのように見事に振舞っていた。ここまでくると凄いよなあの人。

 

「それじゃあ気は乗らないけどいきますか。」

 

刀を形成しレミリアとの距離を詰める。

吸血鬼がどれほど強いか知らないがやるだけやってみるとしよう。

レミリアは大きな槍のようなものを創り待ち構えていた。

槍と刀では相性が悪すぎる。一旦後ろに下がりショットガンで攻撃しようとしたその時、レミリアがありえない速さで距離を詰めてきた。

頭を的確に狙う突きをなんとか凌ぐ。

吸血鬼の力を甘く見すぎていた。まさかここまで身体能力が高いとは。

一撃目の突きを凌いだが、まだまだレミリアの攻撃は終わらない。その攻撃をギリギリで凌ぎ続ける。

このままではジリ貧だ、いずれこちらが力尽きるだろう。

僕は後ろに下がりスペルカードを宣言した。

 

〈飛刃 スキップ・ザ・リッパー〉

 

大量のナイフをレミリアに向けて飛ばす。

だがそのナイフ全てをレミリアは槍で弾き返した。

 

「どうした、その程度か?」

 

圧倒的すぎる力の差があった。そもそもスペルカードを完全に捌かれた時点で諦めるべきだ。だがそんなことはしない。

なぜなら、この戦いを僕は何故か楽しんでいるからだ。

まるでもう一人の自分が心の中にいるかのように、僕は、この状況を楽しんでいる。いつもなら決してそんなことはない筈なのだが、何故か楽しんでいる。

ショットガンを連射しながら、新しいスペルカードを創る。

今なら自分の限界を超えられそうな気がする。そんな気がした。

そして形成された新たなスペルカードを即座に宣言した。

 

〈閃刀 神速之風刃〉

 

緑色に輝く刀を創り出す。しかしいつも創っている刀とは力の大きさが違う。

本当は今の自分の力ではこの刀を創ることは出来ないはずだ。だが、自分の限界を超え創った。

なぜ出来たのかは分からないが、出来たものは仕方がない。今は考えるのはよそう。

 

「ほぅ…自らの限界を超えるとは。面白い、さぁ来い。」

 

僕はレミリアに近づく事はせず風刃を横に振った。

刀とは本来近づいて相手を切るものだ。近づかず刀を振ったところで相手を切ることは出来ない。

だが、レミリアの腕は刀で切られた。実際には切られていない。しかし切られた跡は、どう見ても刀で切られたような跡になっていた。

レミリアは何が起こったかわかっていない。

次はレミリアの足が切られた。

続けざまに脇腹のあたりも切られる。

 

「なるほど分かったぞ、その刀の原理が。」

 

この風刃は魔力や霊力を使い、遠くからでも斬撃を可能とする刀だ。しかしその斬撃は目で見ることはほぼ不可能。

だが、この風刃の本当の力はそれだけではない。本当の力は、『使用者の機動力を格段にあげる』だ。

斬撃を受け、なくなった腕をレミリアは治す。

その隙を見逃さず、レミリアの後ろに回り風刃を振り下ろす。

 

「なん…だと…!?」

 

あまりの速さに追いつけないレミリアは、ギリギリで避けるのが精一杯だった。

だが次第にレミリアはこの速さに追いついてきた。

 

「フッ…この私に本気を出させる程の力があったとはな。やはり貴様は私が見込んだとおりだ。」

 

〈神槍 スピア・ザ・グングニル〉

 

レミリアがスペルカードを宣言した。

空に手をかざしグングニルを創る。形は先ほどの槍と変わりないが、大きさは先ほどの槍より5倍近くの大きさになっている。

 

「さぁ、受けてみろ片倉ァァァ!」

 

レミリアはグングニルを投げた。

僕も残った霊力を風刃に注ぎ、グングニルに向かって突撃する。

拮抗する風刃とグングニル。

二つの大きな力が衝突したことで周りの壁や床にはひびが入る。

次第に風刃が押されていく。僕は最後の力を振り絞り、力を込める。

風刃が打ち消される。

力を全て使い切った僕はその場に倒れ込む。

最後に僕が見たのは、迫り来るグングニルだった。

 

 

 

 

 

目を覚ますと赤い天井が広がっていた。

確かグングニルが迫ってきて…それから……どうなったんだろう。

コン、コン、とドアをノックする音。

 

「どうぞ。」

 

「失礼します。」

 

入ってきたのはメイドの咲夜だった。

 

「具合はよろしいですか?」

 

「えぇ。ところで僕が意識を失った後はどうなったんですか?」

 

「驚きましたよ。お嬢様があなたを助けるためにご自身を盾にしてグングニルを受けたのですよ。」

 

僕が意識を失った後にそんなことがあったとは。

ていうかレミリアは大丈夫なのだろうか。吸血鬼といえども流石に危険なのではないのだろうか。

 

「それじゃあレミリアさんはどうなったんですか?」

 

「実はグングニルは手加減してあったようで、すぐに元気になられました。」

 

え……あのグングニル手加減してあったんだ……。

もしも本気だったら僕は死んでただろう。

 

「そういえば、お嬢様が片倉様を呼んでおられました。」

 

いったいどうしたのだろうか。不思議に思いながら、ベッドから降りてレミリアが居る大広間に向かった。

そういえば、傷とか全部治ってるんですけど、なんでだろう?

 

〜大広間〜

「来たか、片倉よ。」

 

大広間にやって来ると、レミリアは大きな椅子に座っていた。

 

「咲夜さんから聞きました。なんでも助けて頂いたとか。」

 

「そうだ。まぁ客人を殺すようなことがあってはならんからな。」

 

あっ、僕は一応客人扱いなんだ。知らなかった。

 

「しかし片倉よ、助けて貰った恩義を返そうとは思わんか?」

 

「えぇ、命を助けて貰ったんでそれ相応の恩を返したいとは思います。」

 

「それならば、今から私が言う事を聞いてくれるな?」

 

何だろう、凄い嫌な予感がする。僕の第六感が危険だぞと警鐘を鳴らしてるんだが……。

 

「この紅魔館で使用人として仕えてはくれないだろうか。」

 

……え?嘘でしょ。僕一応あなたたちを倒そうとした人ですよ?現に門番の美鈴とか倒しちゃったし。

 

「どうして使用人を?」

 

「私はとある運命を見たのだ。その運命によると、この紅魔館がいずれ直面する問題をお前が解決するという運命だ。だからお前を使用人にしようと思ったのだ。」

 

いずれ直面する問題?もう嫌な予感しかない。でも断れないよなぁ、命を助けて貰ったし。

 

「なに、別に不自由な思いはさせぬ。衣食住はこちらに任せておけ。使用人と言えどお前はただここに住めば良いだけだ。」

 

それ、使用人とは言わないような……。まぁ悪い条件でも無さそうだし受け容れるか。

 

「分かりました、ここの使用人として仕えさせて頂きます。」

 

「ふむ、感謝するぞ片倉よ。」

 

「ただし一つだけお願いがあります。」

 

「何だ?」

 

「せめてお世話になった幽香さんとかに挨拶してきてもいいですか?」

 

やっぱり優香さんとかアリスには挨拶しとかないと失礼かなと思った。

でも許してくれるかなぁ。

 

「そうか、なら明日から使用人として仕わせることにする。これなら挨拶も出来るだろう?」

 

軽いな、しかも一日の猶予くれたよ。

 

「ありがとうございます。それでは早速行ってきます。」

 

「うむ、行ってこい。明日には必ず帰ってくるのだぞ。」

 

僕は大広間を出て正門に向かう。

正門には門番の美鈴がいた。傷治るの早いな。

 

「どうも片倉さん。先日は失礼しました!」

 

僕を見た美鈴はこちらに駆け寄り、何故か謝ってきた。

 

「いえいえ美鈴さん、そんな謝らないで下さいよ。」

 

「いいえ、せっかくの客人に対し攻撃するなど……私、門番失格です。」

 

そう言って凹む美鈴。図で表すならまさにorzこの状態だ。

 

「いやいや美鈴さんは、門番としての仕事をしたまでじゃ無いですか。ほら、元気出して下さい。」

 

「うぅ……ありがとうございます。それと私のことは呼び捨てで構いませんよ。」

 

「そうですか、なら僕のことも呼び捨てで、」

 

「それは出来ません!」

 

うおぅ、急に元気になったなぁ。この人結構喜怒哀楽激しいな。

 

「分かりました。とりあえず僕はこれからお世話になった人へ挨拶しに行くので、失礼しますね。多分また明日には戻って来ますけど。」

 

「あぁ!使用人になられたのですよね!これから宜しくお願いします。それでは気をつけて下さいね〜。」

 

美鈴は手を振りながら見送ってくれた。てか、情報伝わるの早すぎでしょ。もう使用人になったの知ってるのかよ。

正門を後にし、僕はまず一番お世話になっただろうアリスの家に向かうことにした。

 




新しいスペルカードですが、実はイメージ元はワールドトリガーのあの武器をイメージして書いておりました。(見てる人なら分かるかも)
実はこの回の文の中で伏線を張っております。いつか回収する日が来ると思いますがまだまだ先です。多分。
次回は挨拶回りする話になりそうです。

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