傭兵幻想体験記   作:pokotan

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幻想入り 第5話

〜人里への道〜

朝にも関わらず、僕はものすごい速度で人里に続く道を駆け抜けていた。

アリスさんに手渡された地図を見ながら。

しかし、この靴は凄いね。ボルトもびっくりの速さで走れるよ。おっとこの道は右だ。

本当は歩いてゆっくり行きたかった。

だけど、道中黒い服を着た妖怪らしき女の子が

襲ってきたので、こうして走っている。

だって、

「あなたは食べていい人間?」

とか見知らぬ女の子に言われて襲われたら、そりゃ逃げますって。戦う気力なんて、これっぽっちも起きなかったです。

そんなことを考えていたら、人里に到着した。

 

 

〜人里〜

人里に着いた。雰囲気としては、江戸時代の町並みと言ったほうがいいだろう。

道行く人々は僕のことを物珍しそうに見ている。

それもそのはず、人々が来ている服は着物、僕が着ているのは戦闘服。

目立つのも当たり前だ。別にどうでもいいが。

とりあえず、この人里をまわってみるとしよう。

 

「おっ!そこの兄ちゃん、よってかない?」

 

人里をまわっていると、気前の良さそうな親父に声をかけられた。どうやら、お茶屋のようだ。せっかくだから寄ってみることにした。

 

「それじゃあ、お団子一つとお茶をください。」

 

「あいよ!毎度あり!」

 

しかし、これからどうしようか。一通り回ったけど特に何もすることがない。あっ、このお団子美味しい。

その時、一人の女性が店の中に入ってきた。

 

「おっ!いらっしゃい幽香さん。」

 

その女性は、周りの人々が着ている着物ではなく、花柄のワンピースを着ていた。

 

「お茶を頂戴。」

 

「あいよ!毎度あり!」

 

そろそろどこかへ行こうかと思っていた時、その女性が話しかけてきた。

 

「こんにちは。」

 

「どうも、こんにちは。」

 

「あなた、外から来た人間よね。」

 

「えぇ。やっぱりわかりますか?」

 

「当たり前よ。あなた目立ってるもの。」

 

やっぱり目立っていたようだ。おかげで、外来人ということもバレた。

しかし、この人は何と言うか、周りとはなんか違う雰囲気を持っている。まるで、人ではないような……

いや、それはないか。ここは人里だ。多分気のせいだろう。

 

「とりあえず、自己紹介しましょうか。私は風見幽香、宜しくね。」

 

「僕は、片倉と言います。こちらこそ宜しく。」

 

どうやら、彼女の名前は、風見幽香と言うようだ。

ふと、彼女が僕の左腕の義手を見つめていた。

 

「その腕はどうしたのかしら?」

 

「これは、ここに来て間もない頃に、妖怪にやられまして……」

 

「あなた、よく生きてこれたわね。」

 

「まぁ、アリスさんの家に泊まらせて貰ってましたから。」

 

「あの魔法使いにね……なるほど、あなた面白いわクスクス」

 

どうやら、アリスさんのことは知っているようだ。

というかこの話のどこが面白いんだろう?

この人は何を考えているのかさっぱり分からない。

 

「あなた、この後は暇かしら?」

 

「えぇ、この後どうしようか悩んでいたところです。」

 

「それなら、私の家でお茶しないかしら?」

 

なんと、家に招待してくれるらしい。どうせ暇だし、いただこうかな。

 

「それでは、いただきます。」

 

「それじゃあ、私の家に行こうかしらね。」

 

ところで、この人の家って何処にあるんだろう?

そんなことを考えながら、彼女の家に向かった。

 

 

〜風見幽香の家〜

今、僕は幽香さんの家で紅茶を飲んでいる。

家の窓からは、広大な向日葵が広がっている。

その他にも、外の庭には、沢山の綺麗な花が植えてあった。

 

「綺麗な花たちですね。好きなんですか?」

 

「えぇ。毎日私が世話しているのよ。」

 

どうやら、この規模を一人で世話しているようだ。

どうやってるのだろうか。さっぱり見当がつかない。

 

「さて突然だけど片倉、私と戦いなさい。」

 

えっ、なんですって?戦えって言ったかな?聞き間違いかな?

突然、戦えと言われても、意味がわからない。

 

「言い方が悪かったわね。別にあなたを怪我させたいとかじゃなくて、あなたの力を確かめたいのよ。」

 

「全力でお断りさせていただきます。」

 

高速で土下座をしながらお断りした。プライド?そんなもん捨ててるわ、とっくの昔に。

 

「あら、見た目の割に結構度胸が無いのね。」

 

グサッ、心に何か刺さった。

 

「どうせ、女性にも勝てない実力しかないのよね、きっと。」

 

グサッグサッ、二本目の追加入りました。

まだだ、こんなことじゃ僕はめげないぞ!

 

「あーあ、期待はずれよ、あなた。」

 

グサッグサッグサッ、心が折れました。

ここまで言われると、戦うしかない。

 

「分かりました、そこまで言うのなら受けてたちます。ただし手加減はしません。僕を本気にさせた事を後悔させてあげますよ。」

 

「うふふ、いいわよ。本気でかかってきなさい。」

 

僕らは外に出た。

義手を使っての実戦はこれが初めてだな。全力で倒してみせる。

 

「先行はそっちに譲るわ。」

 

ご丁寧に先行を譲ってくれるようだ。

 

「それはどうも。それじゃいきますよ!」

 

僕は靴に魔力を纏わせ大きく蹴り出した。

靴の力により、目にも止まらぬ速さで駆け出すことが出来た。河童の技術万々歳。

彼女の顔面を右腕で殴ろうと振りかぶる。まずは挨拶替わりに右腕だ。義手のパンチはこのあとだ。

速すぎて捉えられないのか、彼女はガードをするどころか、動こうとする素振りも見せない。

なんだ、結構弱いじゃん。

しかし、僕の繰り出した右腕の拳は、彼女の顔面に当たることは無かった。

そこに彼女の姿が無いからだ。消えた?いや、違う。

 

「んなっ!?飛んだ!?」

 

彼女は、真上に飛んだのだ。高さにして5m程度。

空を飛ぶことが出来るということは、人ではないのか。

 

「人間にしては速い動きだわ。能力かしら?」

 

「この靴の力です。」

 

靴に魔力を纏わせ次は真上に飛ぶ。

本当にこの靴便利だな。河童の(ry

 

「でも、まだまだね。」

 

飛ぶ瞬間、僕は彼女の傘に殴られ地面に叩きつけられた。

背中を叩きつけられたせいで、息が苦しい。

しかし、傘だけでこの威力とは……

僕は、呼吸を整えながらよろよろと立ち上がる。

 

「ほら、早くかかってきなさい。」

 

依然として彼女は涼しい顔をしながら、挑発してくる。

僕はもう一度、彼女に向かって駆け出す。

次は左だ。義手に魔力を纏わせ、拳を突き出す。

大きな岩さえも砕くパンチを、彼女は堂々と体で受け止めた。

死んでもおかしくない威力だった。

だが、彼女は死ななかった。ましてや、傷を負うこともなかった。

僕は確信する。こいつは人間じゃない、妖怪だ。しかも、妖怪の中でも強い部類の妖怪だと。

 

「今の拳は効いたわ。さすがね。」

 

嘘をつけ、僕は心の中で悪態をつく。

最高の威力を誇る、義手での拳が効かないとなると、勝ち目はほとんどないといってもいいだろう。

こうなれば策は一つ、弾幕で牽制しつつ逃げるのが得策。

M93Rを構える。牽制が目的ならば狙いは正確じゃなくていい。とにかく逃げることが大事だ。

トリガーを引く。M93Rから、弾幕が大量に発射された。

 

「弾幕も扱えるのね。面白いわ。」

 

彼女も対抗して弾幕を放った。僕が放った弾幕の倍の量を。

逃げることが最優先だ。しかし、逃げられない。

いや、逃げられないんじゃない。逃げる余裕がないのだ。

彼女から放たれる弾幕のほとんどが、僕を狙っている。

その弾幕を打ち落とすのに僕は精一杯だ。

彼女の弾幕の一つが僕の体に当たった。その弾幕の威力は、体を吹き飛ばすほど強烈だった。

あまりの苦痛にもがいた。だが、今すぐにでも起き上がらなくてはならない。

そう思い、起き上がったとき、勝負は決した。

僕の目の前で彼女が傘の先端を突き出していた。

 

「私の勝ちね。」

 

ニヤリ、と満足したように笑っていた。

 

「あなた、一体何者なんです?人間じゃないのは確かだ。」

 

「そうよ。私は妖怪。周りからは、花の妖怪と言われてるわ。」

 

やっぱりか、こんな妖怪に勝てる訳が無い。

彼女は、傘を引っ込めるとこう言った。

 

「あなたは、強くなれる素質があるわ。」

 

強くなれる素質がある、彼女はそういった。

 

「だから、私があなたを鍛えてあげるわ。」

 

「何故です?僕のような普通の人間を鍛えるんですか?」

 

「簡単よ。強くなったあなたと戦いたいからよ。」

 

やばいよこの人、見た目とは裏腹に危ない人だよ。もうただの戦闘狂だよ。

断ろう。全力で断ろう。

 

「あなたは私に勝負で負けてるのよ?拒否権はないわ。」

 

うぐっ……痛いところを突かれた。何も反論できない。

 

「分かりました。従います。」

 

「素直でよろしい。それじゃあ早速だけど、あなたの義手について聞きたいことがあるわ。」

 

義手について聞きたいことがあるようだ。

 

「あなた、その義手はどういう力があるのかしら?」

 

「この義手は魔力や霊力をまとわせることができます。」

 

「本当かしら?」

 

「ええ。これを作ったにとりさんが言ってましたけど。」

 

「そうなの。でも、その義手はただ単に魔力や霊力を纏わせるだけじゃないのよ。」

 

どういうことなのだろう。

この義手は魔力とかを纏わせるだけじゃないのか。

 

「その義手はね、魔力や霊力を自在に操ることをできるものよ。」

 

「でも、にとりさんは魔力や霊力を纏わせるだけだと言いましたが……」

 

「それはあくまで、普通の人間でも出来ることよ。でも、あなたには普通の人間よりも魔力や霊力を扱う才能があるわ。」

 

驚いた。僕には、魔力や霊力を扱う才能があるようだ。

でも、一体どうしてそんなことが分かるのだろうか?

 

「どうしてそんなことが分かるんですか?」

 

「長いこと生きてると、そういうことが分かるようになるのよ。」

 

長いこと生きてると、と言ったがどの位彼女は生きてるのだろうか。

妖怪は長生きするのだろう。だとしたら幽香さんは、ばB……

あっ今、睨まれた。スゲエ怖い。

 

「でも、あなたはまだその才能を開花させてはいないわ。」

 

「では、どうすれば?」

 

「簡単よ。魔力や霊力の扱いに慣れればいいのよ。」

 

魔力や霊力を扱うのに慣れればいいようだが、そんなことしたことないからよく分からない。

 

「とりあえず、その義手の魔力を操って、武器を作ってみなさい。」

 

とにかく言われた通りにやってみるとしよう。

義手に魔力を纏わせる。そのまま、頭の中にイメージした武器を作る。

ちなみに、イメージした武器は刀だ。日本人が使うならこの武器でしょ!

しかし、長いことイメージしているが、いっこうに出来る気配がない。

 

「できないわね。」

 

「そうですね。でももう少しでできるかも……」

 

ついに魔力で武器を作ることが出来た。

できたのは、日本人の魂である刀

ではなく、小さいナイフだった。

あれぇ?おかしいなぁ、こんなナイフじゃなくて、刀をイメージしたのに。

 

「まだまだね。とりあえず、イメージ通りになるまで練習しなさい。もし、晩ご飯までに出来なかったら、ないと思いなさい。」

 

ええぇぇ、この人鬼畜すぎるでしょ!?

でも逆らえないのが現状。うん、諦めよう。

それから、ずっと練習していたが結局、晩ご飯は抜きでした。


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