傭兵幻想体験記   作:pokotan

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偽りの月と永遠の夜 第8話

前回のあらすじ。

永遠亭の玄関先で僕と握手!うさぎさんもやって来るよ!

……と言うのは嘘でして、ただいま僕は迫り来る弾幕の荒波をどう攻略するかで悩んでいます。

グレイズ?無理。絶対に当たるもん。

弾く?嫌だ。絶対にぜえぇぇったいに当たるもん。

じゃあ打ち消そう。銃の弾丸で打ち消そう。銃は偉大なり。……絶対に(ry

おっとそろそろ来るぞ。来て欲しくないものだけど。

目の前に弾幕が来たと同時に体をぐっと踏ん張り身構える。刹那、世界が一気に変わった。

いや変わったんじゃない、変えられたんだ。

弾幕に覆われた視界と言う名の僕だけの世界は、彼女、鈴仙の能力により、弾幕が跡形もなくなって消えた世界へと変えられた。

つまり、さっきまであった弾幕らが瞬時に消えたわけだ。

 

「ん?き、消えた!?」

 

1つ思うところがある。

弾幕消しちゃう意味無いっすよね?

 

「と、思うでしょ?」

 

「ほえ?」

 

瞬間、鼻先数センチ程の超至近距離に先ほど消えたはずの弾幕が現れた。―――はぁ?

 

「うわったっちょっ!?」

 

ちょっと!ちょっと待って!予兆無しにいきなり出てきたんですが!?

突然の出来事過ぎて頭がパニックです。

もう頭の中がポルナレフだよ。

い、今起こったことをありのまま話すぜ!

 

「片倉さん集中してください!」

 

「あ、はい」

 

とりあえず今の僕に出来ることはその場から後ろへと飛び下がる事だけだった。

というかそれくらいしか出来ません、勘弁してください。

グレイズ?何度も言わせないでよ、無理だって。

あっ、でもこのまま下がりまくれば何とか攻撃に転じるチャンスがあるのでは?

そう思った矢先、またしても弾幕が消えた。

 

「また消えた……」

 

と、呟いたその時、先ほどと同様弾幕がいきなり現れた。

……ウザイ。単にウザ過ぎるこのスペカ。

ウサギのウザさ恐るべし。うわっ、なんかこの文章読みづらい。

なんだよ、ウサギのウザさって。ウサギのウサさと間違えそうだな。

てかゲシュタルト崩壊してきた。もう考えるのは止めよう……。

 

〈人符 現世斬〉

 

凛々しい声と共に掲げられる一枚のカード。

これは僕の声ではない。そう、妖夢だ。

どうやら妖夢も僕と同じくこのスペカにウサさ……ウザさを感じていたらしい。

とてつもない速さで弾幕の波を打ち消しながら押し返している。

いやぁ、凄いですなぁ。

と、感心していたら、両者のスペカは時間切れでブレイクとなった。

 

「ふう……少し疲れましたね」

 

「凄いな、あの弾幕の量に負けないなんて」

 

「まあ私が本気を出せばこんなの楽勝ですよ」

 

チャキン!と刀を鞘に収める妖夢。凄く……カッコいいです。

一方、鈴仙は

 

「……」

 

凄くお顔が歪んでいました。怖っ!?

何と言うか……苛立ちと悔しさとかを一気に表現したみたいな表情をしてる。

なんだかムキー!とか言って今にも怒りだしそうだな。

 

「……もう!あなた達しぶとすぎよ!」

 

ムキー!じゃなくて普通にもう!と言いました。残念片倉選手、不正解。

しぶとすぎって言われてもなぁ……。

そちらが諦めてくれれば、僕らは僕らで手を引くんですがね。

 

「……決めたわ」

 

おぉ何か分からないが、何かを決めたようだ。

 

「本気でいくわよ……覚悟しなさい」

 

……本気?嘘でしょ……。

まだ本気じゃなかったのかよ。

覚悟しなさい?そりゃあもちろん……

 

「お断りします」

 

「いや、覚悟しなさいよ。断らないでよ、なんだか私が恥ずかしい人みたいじゃない」

 

「だって……ねぇ妖夢?」

 

「私に振らないでくださいよ片倉さん」

 

「申し訳ない……」

 

何だろうね毎度毎度のこの感じのやり取りは。

なんと言うか、とても戦ってるとは思えない。

 

「ゴホン、それでは改めて……」

 

「あー、やっぱり本気でやるんですか?」

 

「当たり前よ。一応あなた達と私は敵なんだから」

 

とうとう一応と言う曖昧な表現に……。

そこまで言うのならもはや戦わずにいきたいところだ。

 

「それじゃあ、たっぷりと味わうといいわ……この『狂気』の力を!」

 

狂気?はて、それはいったい……

 

「まずは、あなたからよ」

 

「!?」

 

指を刺された妖夢。刹那、頭を押さえ悶え始めた。

 

「な、なんですか……この感じは……!」

 

「妖夢!?どうした!?」

 

「流石の半人半霊のあなたでも、これは相当きついんじゃないかしら?」

 

「ぐ……う……」

 

おいおい、一体全体妖夢はどうしたんだ。

さっきからすっごく辛そうに……まさか、これが狂気の力?

 

「妖夢に何をしたんだ!」

 

「狂気の力を使ったのよ」

 

ふと鈴仙の顔を見ると、目がこれまでに無いくらいに真っ赤に染まっていた。

すると急に妖夢が僕を突き倒した。

 

「いけません!あの瞳を見たら……」

 

そうだった。あの瞳を見ると能力にかかってしまうんだった。

 

「さあて、次はあなたね」

 

あぁやばい、非常にやばい。

妖夢があの能力によって離脱したとなると、必然的に1対1だ。

しかも厄介なことに、接近戦はあの瞳のせいでとてもじゃないが出来ない。遠距離に至っては、高速の弾幕と大量の弾幕の2つがあって、到底一人じゃ捌ききれない。

ぐおぉぉぉお!ど、どうすれば……。

まさに八方塞がり四面楚歌。逃げ場なしの大ピンチ。

落ち着け、落ち着くんだ僕。今までの人生の中で、いくらだって似たような状況があったじゃないか。

大丈夫、いけるさ。出来る、出来る、僕なら出来る。

瞬間、鈴仙が大量の弾丸の形をした弾幕を飛ばしてきた。

その数は先程のスペルカードより少し少なめ。だが、それでも一人じゃ捌けそうもない。

……前言撤回。

どうやっても無理です。本当にありがとうございました。

 

「チクショーーーー!!」

 

そんなこんなであーだこーだと弾幕を捌こうとしたが、悲しきかな我が人生、全くどうにも出来なかった。

時には肩に当たりその衝撃の強さに顔を歪め、時には足に当たり痛さに悶えそうになり、挙句には顔を掠め……いずれ僕死ぬんじゃないの?

そう確信した僕は、とっさにスペルカードを宣言した。

 

〈光符 メテオールスパーク〉

 

巨大な光線が目の前の弾幕達を塵のように打ち消していく。

しかし、このスペルカードを選択したのが大きな間違いだった。

 

「……あっ、しまった」

 

このスペルカード、使えば必ず辺りは土煙に覆われてしまう。

いつもならカッコイイし、雰囲気もそれなりに出るから構わないのだが、今回ばかりはそれが要らなかった。

つまり、僕は鈴仙を見失ったのだ。ヤバイ……。

 

「迂闊ね。後ろががら空きよ」

 

「!?」

 

振り向くが時既に遅し。

目を真っ赤にした鈴仙に僕は思わず目を合わせてしまった。

 

「終わりね」

 

突如、目の前の世界が紅く染まり、歪み出す。

自分が自分じゃなくなってくる。何だこれ……。気が狂いそうだ。

そうか、これが狂気の力か。って関心してる場合じゃ……な、い。

頭が割るような痛みが走り出す。それに伴う自我の喪失。

改めて知った。幻想郷、まじハンパねぇっす。こんな能力があるなんて……。

 

「トドメね」

 

その頃には既に僕は正気を失いかけていた。

声は聞こえど返事は返せず。と言うか、僕は誰?此処はどこ?

鋭い弾幕が僕を撃ち抜く。痛い、痛い、痛い。

もう、駄目だ。ここで終わりか。

そして、世界が暗闇に閉ざされた。

 

 

 

 

う、うーむ……。

 

(おい、起きろ)

 

うーむ、むにゃむにゃ……。無理ですってレミリアさん、人間業じゃ……むにゃむにゃ。

 

(どんな夢だよ。ほら早く起きやがれ)

 

はっ!?こ、ここは……?

見渡せばそこは無限の暗闇。どこだ?

いや、待てよ。よく考えれば見覚えがある。ここは確か……僕の心の中だ。

てことは、またあいつか。

 

(その通り、俺だよ)

 

ニヤニヤした僕の姿が映し出される。何という腹立つ顔でしょう。殴りたい。……僕の顔だけどね。

てかさ、今度こそ本当に死んだの?それともこれは走馬灯?

 

(いや違うぞ。あの時みたいにちょっくら話したい事があったから、時間を止めてこうした)

 

へぇそれはそれは……え?時間止めれるのか!?凄いな!

 

(その話はとりあえず置いといてだな……、率直に言うが、お前バカだろ)

 

うん、馬鹿だよ。てか今に始まったことじゃ無いから。

 

(否定ぐらいしろよ)

 

僕は馬鹿じゃないぞ!

 

(おせーよ!)

 

ったく小煩い奴だ。で、なんで僕は馬鹿なのさ。

 

(なんで俺と交代しなかった。交代さえしておきゃ、今頃倒せてたのに)

 

あ〜……うん、そうだね。

 

(やけに軽いな!?)

 

だって本音言うと、クロの存在自体忘れてたから。

それに何より、交代した後の反動がきついし。筋肉痛、マジ勘弁。

 

(……なんか悲しくなってきた)

 

泣きたい時は泣いても良いんだよ?ほら、泣けよ。

 

(いや、泣かないぞ!?)

 

知ってる。てか泣かれても困る。

 

(うわ〜なんだこの人、自分の生みの親だとは思いたくないんですけど)

 

しかしさぁ、なんで代わったらあの鈴仙を倒せるって自信満々に言えるんだ?

確かに身体能力やら弾幕やらはクロが強いのは分かるけどさ、何よりもあの眼が厄介すぎてまともには戦えないんだよ?狂気の力だぞ?やばいんだぞ?

誰だと思ってんだ……鈴仙さんda―――

 

(だーかーらー俺の出番ってわけなんだよ。分かるか?)

 

うん、ゴメン。全く分からない。なんで?

 

(こ、こいつ……忘れてるようだが、俺はお前の心の中にあった黒い部分つまり闇の力から生まれた存在だ。あのうさ耳野郎の狂気の力も闇の力に似ている。これで分かるだろ、俺が何を言いたいか)

 

あぁ成程!

ポンッと手を打ち答える。

クロって中二病の具現化的存在なんだな!

 

(……)

 

えっ!?なぜ睨む!?

だって闇の力とか言ってる時点で中二病全開じゃない?

こう言ってはあれだけどさ、闇の力とか言ってる僕自身鳥肌が今ヤバイからね?

 

(1回お前、どついたろか!)

 

冗談、冗談だから!

あ、謝るからその風刃を仕舞って!

 

(ったく……で、俺が言いたいのは分かったか?)

 

うーん、話がまだ少しややこしいな……。

もっと単純に言ってくれないと分かんない。

 

(まぁあれだ、単純に言うとあの能力を無効化出来るって感じだな!)

 

ドヤァって感じに言うのは止めようか。すごいムカつく。

自分の分身にムカつくってのもなんだか複雑だなぁ……。

しかし、クロと交代すればあの能力を防げるってのは凄い事だ。

実質、鈴仙の力を殆ど抑えたと言っても過言じゃないだろう。

 

(おっと、残り時間がやべえな。で、交代すんのしないの?まぁどうせ交代するだうけどな。じゃないと勝てないし)

 

残り時間とかあったのか。

もちろん答えはイエスだ。頼んだぞクロ。

 

(任せとけ、瞬殺してやるからよ)

 

いやいや、殺すのは避けてくれよ?

この世界の妖怪とかは生命力高いけど、一応死ぬのは死ぬから。不死身は……例外だけど。

それとあんまり力を使いすぎないでくれよ。―――僕自身の残り時間が短くなるからさ。

 

(了解。心がけとくわ)

 

意識が次第に切り替わっていく。

それと共に、周りに広がる真っ暗な世界が次第に明るくなっていく。

そして、僕は僕ではなくなり、クロとなった。


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