傭兵幻想体験記   作:pokotan

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偽りの月と永遠の夜 第7話

「ちょっ、片倉さん大丈夫ですか!?」

 

「あ、あぁうん、一応大丈夫っぽい」

 

いやぁ、鎧展開して正解だった。無傷だ。

しかし……あの攻撃は想定外だな。弾幕ってあんな飛ばし方も出来るのか。

どうやらまだまだ僕には知らない弾幕ごっこの世界が幻想郷にあるようだ。

ちらりと撃ち抜かれた部分を見てみる。

あちゃあ……いい感じに砕かれてる。こりゃ大変だ。

とにかく起き上がろうかな。よいしょっと。

 

「あれ?意外と効いてない……。あなた人間なの?」

 

「まぁとりあえずは人間ですが」

 

「ふーんそう……」

 

いやいや、聞いておいてそんなどうでもいいみたいな態度するかね?

そんな態度ばっかりとってると、いつか人から嫌われちゃうぞ?いいのかそれで。

 

「私、人間そんなに好きじゃないのよね」

 

あっ、そうなんですか。

なんか……その、ごめんなさい。

って何故僕は今謝ったんだ?

 

「まぁいいか。人間なら心置きなくあなた達を撃てるから」

 

「いや、私は半分幽霊なんですけど。人間じゃなくて半人半霊なんですけど」

 

待て待て待て、さりげなーく自分だけ逃げようとするんじゃない。

怒るぞ?怒っちゃうぞ?

 

「別に人間じゃなかったとしても、邪魔する人なら誰でも撃つんだけどね」

 

結局撃つ気満々じゃないか。

 

「……お喋りの時間もお終いよ」

 

うおっ!?また某アニメの主人公みたいに、銃の形をした指をこっちに向けてきた!?

やばいやばい、何とかしないと……。

 

「次こそは決める!」

 

くそぉ!こうなれば……

 

「おっとっと、危ないですよ」

 

ここで突如目の前に現れた妖夢が、鈴仙の放った弾を見事に刀で叩き斬った。

「おおおお!」っと思わず拍手してしまう。

凄いな。やっぱり剣術を極める人は。

 

「流石の腕前だな〜」

 

「いやいや、私はまだまだ半人前です」

 

半人前でそんなに凄いなら、達人はどうなるのだろうか。

 

「まったく……厄介な人達ですね」

「そうでもない気がするけど……」

 

現に僕はまだ何もしてないし。

強いて言うならば、鎧を展開した事ぐらいか。

 

「あまり使いたくは無かったけど……」

 

「??」

 

「能力を使うしかないわね」

 

へっ?能力持ってるの?嘘ぉ。

流石は幻想郷。こんな学生みたいな妖怪兎さんでさえも能力を持てるんだ。

って感心してる場合ではない。彼女の能力を早く確かめて対策を練らないと。

下手に対策を練れば最悪……死ぬ。なんかそんな気がした。

 

「……」

 

あれ?何も起きない。何故だ?

唯一何かが起きたとしたら、彼女の瞳の色が赤色に変わった事ぐらいか。

どうしたのかな?カラコンでもしてるのかい?

しかし彼女の瞳……なんだか吸い込まれそうな赤色してるなぁ。

このまま見てるとなんか駄目な気がしてきた。

そう思った刹那、目の前の世界が歪みだした。

 

「うわっ!?なんじゃこりゃ!?」

 

「こ、これは……!」

 

「これが私の能力【物の波長を操る能力】よ」

 

物の波長を操るだって?

意味が理解できない。つまり……どういう事?

 

「物には必ず何かしらの波があるわ。空気や光はもちろん人間の精神にもね。そんな波を私は自在に操れるの」

 

うーむ……。まぁ要するに、色んな物の状態を操る事が出来るってことかな?

さっきの視界の歪みはつまり、光の波長を歪ませた事が原因で間違いないかな?

……うん、よし。もう考えるのはよそう。余計にこんがらがってきた。

 

「さあ、いくわよ!」

 

やばい、来る!!どうにかしないとやられるぞ……!

ん?でもちょっと待てよ……。

あの能力、もしかしたら防げるかもしれない。

よし、試してガッテンだ!

 

「よいしょぉぉぉお!」

 

足に魔力を伝わせ、地面に大きく踏み込む。

刹那、土で出来た無数の柱が地面から勢いよく隆起した。

その数はとても多く、さらに僕と鈴仙の間に見事な遮蔽物となった。

これで視界は遮った。どうだ?

 

「……チッ」

 

どうやら僕の試みは成功したらしい。やったぜ。

恐らくあの能力は彼女の視界を通じて発動しているらしく、視界を遮れば能力の影響を受けないようだ。

 

「姑息な手段ね」

 

土の柱に鈴仙が迷わず弾幕を撃ち込む。

すると、柱の材質が材質だけにその弾幕を撃ち込まれた柱は無残にも崩れて、元の地面に還った。

あちゃあ……。確かに姑息過ぎたな。時間稼ぎにしかならない。

だが、ここで終わらないのが片倉マジック。

既に次の策は考えてあるのだよ。

 

「ブラウフェーダ!」

 

4つの青い羽が背中に現れる。

その羽を全て鈴仙に向かって飛ばす。

しかしただ飛ばすのではなく、柱に隠れさせながら飛ばした。

これなら見つからない。……はず。

そうして左右に配置し終えた羽達を、柱崩しに夢中になっている鈴仙に向けて飛ばす。

これで当たれば、一気にダメージを与えれるはずだ。

だが残念ながら世の中、いや、幻想郷は甘くなかった。ハーゲンダッツアイスのようには甘くなかった。

4つの羽はなんと見事に撃ち落とされた。

嘘だろ、なんだよその常人離れの高等テクニック。

高速移動する物体を瞬時に撃ち落とすとか、しかも不意打ちを受けたのにも関わらず?化物だよあの子。

 

「残念だったわね。私にそんな小手先の攻撃が効くとでも?」

 

くっ……。コイツ、プロだ!知らんが。

さてさて、早くも八方塞がりになっちゃったぞ。どうしたものか……。

この場合は逃げるが勝ち戦法でいきたいんだけど、それはそれでダメだし。

そもそも異変解決しにきたのに逃げるのはおかしいか。

ここは1つ……

 

「妖夢……」

 

「なんでしょう?まあ言わなくても大体の察しはついてますが」

 

「あ、そうなの?それなら話が早いな。ちょっと前線で戦ってくれない?」

 

「無理ですね。あの能力が厄介すぎます」

 

ですよねー!そうなりますよねー!

 

「ですが、片倉さんがきちんと私の援護をして頂けるのなら話は別ですね」

 

「と、いうと?」

 

「なんとかして彼女の視線を逸らしてさえくれれば戦えます」

 

視線を逸らすか……。

出来るか分からないがやるしか無い。よし、やろう。

 

「分かった。じゃあ頑張って援護するよ」

 

「頼みましたよ。では、参ります!」

 

「次は二人がかり?いいわ、かかってきなさい!」

 

距離を詰める為に鈴仙に向かって突き進む妖夢は、鈴仙から放たれる弾幕を刀2本でスイスイと弾いていく。

やっぱり妖夢は凄いなぁ……。っといかんいかん、ちゃんと援護しないと。

でも具体的に何をどうすればいいんだろうか?

んー……とりあえず僕も弾幕くらい撃っておくべきか?

でもそれだと邪魔になるんじゃ……。それならいっそ視線を遮るのに専念して……うーむ……。

 

「片倉さん、早く援護を!」

 

「あ、はい」

 

結論。妖夢だから弾幕飛ばすくらい平気だよね。

てなわけで早速記念すべき1枚目いきまーす。

 

〈雨符 メテオールレーゲン〉

 

「そこの君たちは、ハイパーメガバズーカランチャーもといメテオールレーゲンの射線から離脱せよ!」

 

「「……はい?」」

 

キュイイイン。次第に手元の光が強くなっていく。

ほらほら、早く逃げないと知らないよ?

これから何が始まるのかを未だ分かっていない様子の2人。

仕方ない、警告はしたぞ。……南無三!!

空へ向けて一筋の閃光が撃ち上がる。

ある程度の高度まで達したその閃光は空中でパッと無数の光に分岐し、そのまま妖夢と鈴仙の頭上目掛けて降り注いだ。

簡単に言うと、小さなメテオールスパークが雨のように降り注ぐのだ。

 

「「ちょっ!?」」

 

まさか光線の雨が降るとは思いもよらなかった2人は、一目散にその場から離れる。

だが残念な事にこの技の範囲は広かった。

てなわけで、強制的に2人は降り注ぐ光線を各々で処理しなければならなくなったようだ。

必死の形相で弾くなりグレイズするなりしている。

ようやく地獄の雨が止んだとみるや、敵味方関係無しに、両者が僕に抗議を始めた。

ちょっと待て、弾幕ごっこは何処にいったんだ。

 

「ちょっと片倉さん、なんで注意してくれなかったんですか!」

 

「あちゃー……すんません」

 

いやこれでも警告はしたんですよ?

そんなに睨まないでください。怖くてたまらないんで……。

 

「あなた、無茶苦茶よこれ!?人間業とは思えないわよ!?」

 

「あちゃー、サーセン」

 

「心がこもってないんだけど!」

 

いや、如何せんあなたは敵ですしお寿司……。

敵にそれ相応の攻撃をするのは当たり前のことかと。

と言うかそんなに睨まないでください。怖くて(ry

 

「分かった。そっちがそうするなら、私だって!」

 

「「!?」」

 

〈波符 赤眼催眠マインドシェイカー〉

 

唐突のスペルカード宣言。

いったいどんな弾幕が飛び出してくるのやら。

というかさ、僕悪くないはずなのにさり気なく悪者扱いされてません?酷くないですか?

鈴仙を基点に全方位に向けて弾丸型の弾幕が飛ばされる。

速度はそれ程速くないものの、弾幕密度がかなり高い。というか高すぎる。

しかし、だ。速度はさっきの幽遊白書弾丸(勝手に命名)に比べれば何ともない速さだし、何とかなるだろう。

が、すぐにその考えは甘かったと思い知らされる事になるとは……。

 

「来ますよ。……準備を」

 

「了解」

 

段々と近づいてくる弾幕の波。

果たして2人はこのスペルカードをどう攻略するのか。

次回へ続く!


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