傭兵幻想体験記   作:pokotan

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人里のフラワーマスター

片倉が元の世界で失踪して程なくして、行方不明者の捜索としてジャックは駆り出された。

 

「おい、見つかったか!」

 

「駄目だ。何処にもいない。」

 

「そうか……。んっ?」

 

とある部屋で何かが落ちているのをジャックは見つけた。

それは戦友である、片倉のドックタグだった。しかしそのドックタグは、手榴弾の爆発によりボロボロになっていた。

 

「…………。まさかな」

 

「何か見つけたのか」

 

「あぁ。あいつのドックタグだ。見た感じだと、おそらく……爆発かなんかで死んだと思う。だけど死体がない」

 

「そうか……。本部、こちら捜索隊、行方不明となっていた隊員、暗号名《片倉》のドックタグを発見。ドックタグの状態からして、恐らく死亡していると思われる。だが死体がない」

 

〈了解。もうすぐ日が落ちる。とりあえず帰還しろ〉

 

「聞いたな。本部に戻るぞ」

 

「あぁ……分かった」

 

片倉……いや、(じん)、お前はいったい何処に消えたんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえねえお兄ちゃん、人里ってどんなとこ?」

 

いつも人里に向かう道を歩いていると、急にフランちゃんから質問された。

 

「おっ?なんだ、フランは人里に行ったこと無いのか?人里はな、賑やかで楽しいぞ~」

 

質問に答えたのは一緒についてきた魔理沙だった。―――なんで君までついてきてるんだ……。

 

「えっ!?そうなの!?」

 

「そうだぞ〜!でも気をつけろよ、人里には怪物がいるかな」

 

「怪物居るの!?」

 

おいそこの奴、何いけしゃあしゃあと嘘を教えてやがる。

 

「あぁ。名前はフラワーマスターと言うんだぜ!」

 

「フラワーマスター?怪物の割には怖くない名前だね」

 

しかし、この二人本当に仲良いな。つい昨日までは知らない奴同士だったのに。―――そういえば、元の世界にいた戦友のジャックは元気かなぁ。今頃、僕を探してたりして……。

 

「おっ人里が見えたぞ」

考え事をしていたら人里に着いた。

 

「とりあえず昼飯食べに行こーぜ」

 

「そうだね。とりあえずご飯食べようか」

 

「わーい!」

 

魔理沙の提案に賛成し、とりあえずいつも行くあの店に行く事にした。―――今日は何を食べようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもの店は相変わらず繁盛しているようで、人が沢山いた。

 

「おっいらっしゃい!」

 

相変わらずここの店主は元気がいい。もしかしたらこの人気っぷりは、この店主の活気あふれる声のおかげかもしれないな。

 

「さて、どれを頼む?」

 

「私はハンバーグ食べる!」

 

洋風のものなんかここにあるのか?いやいやまさかな……。ペラリ、ページをめくる。……あった。まじかよ。

 

「んじゃ私は、パスタを食べようかな」

 

イタリアンまであるのかここ……。ペラリ、イタリアンあったよ。

パラパラ〜、一応全部のページを見てみる。……中華にアメリカンフードもあるのか。いったいこの店は何だよ……。店の外見は昔の食堂みたいな外見なのに?訳わからん……。

 

「片倉は何頼む?あっ、ちなみにお前持ちだからな」

 

はいはい、初めからそんな気はしてたよ。

しかし何頼もうかなぁ。ピザとかいいなぁ……。でもラーメンもいい。うーん……。

 

「まだか〜?早くしてくれよ〜」

 

おっこれいいな、これ頼もう。

 

「月見うどんでお願いします」

 

「お前うどんかよ〜」

 

それはないだろ、みたいな目で見られる。

うるせぇ、うどんなんか最近食べてなかったから食べたくなったんだよ!うどんなめるなよ!香川は凄いんだぞ!

 

「すいませーん!ハンバーグとミートパスタと月見うどん下さーい!」

 

「あいよ!毎度あり!」

 

もしかしてだけど、全部この店主の親父が作るのか?そうだったとしたらかなり時間かかるぞ……。大丈夫か?

 

「へいお待ち!」

 

ダンダンダン!とさっき頼んだ物がものの10分でテーブルに並んだ。作るのはやっ!あの人、プロの料理人か?

味も勿論のこと美味しい。……あの親父、只者じゃないな絶対。

 

「おいしー!」

 

フランちゃんも大喜び。やっぱりここの店の料理は最高だな。

 

「ところで魔理沙、ここに怪物居るとか言ってたけど、本当にいるの〜?私見てみたい!」

 

「勿論居るぜ!その怪物は花が大好きだから、花に囲まれた家に住んでるんだぜ!」

 

「えー本当?」

 

「本当だって。信じてくれよ〜」

 

花が大好きか……。僕の中では、花と言ったら幽香さんかなぁ。

ところで幽香さん元気にしてるかなぁ……。いや、別に会いたくはないけど。会ったら間違いなく殺される気がする。―――そういや、幽香さんに初めて会ったのはこの店だったな。

ガラガラと店の扉が開く。

 

「へい、いらっしゃい!」

 

そうそう、まさにこんな感じだった。いやぁ、何だか幽香さんが来そうだなぁ。まぁそれは有り得ないと思うけどさ。

ズズズと美味しくうどんをすする。

 

「おっ幽香さん!久しぶりだねぇ!」

 

「あら?そうかしら?」

 

ブフッ!すすっていたうどんを豪快に吐き出す。

 

「お兄ちゃん!?」

 

「どうした片倉!?」

 

「い、いや……、ただ、むせただけだ……大丈夫……」

 

いやいやいや、嘘だろ。なんでよりによって、あの人が来ちゃうんだよ!

でも待てよ、まだあっちは僕に気づいてない。席が隣にならない限りは大丈夫なはずだ。

 

「席は空いてるかしら?」

 

「ギリギリ一つだけ空いてます」

 

ギリギリ一つだけ?でも隣の席空いてるけど……。

周りを見てみる。…………空いてる席って、この隣の席のことかあぁぁぁぁぁ!

 

「お兄ちゃん顔が真っ青だよ!?」

 

「どうした片倉!?」

 

「いや、大丈夫……。この顔は生まれつきだよ……」

 

ガタン、とうとう隣の席に幽香さんが座った。

大丈夫だ、まだ気づかれてない。

 

「久しぶりね、片倉」

 

うわあぁぁぁ!バレてましたァァァ!

 

「お、お久しぶりです、幽香さん」

 

カタカタと震えながら幽香さんに挨拶を返す。

 

「今日はどうやら一人で来た訳じゃなさそうね。白黒の魔法使いに、可愛い吸血鬼と一緒とはね。なかなか面白い組み合わせじゃないクスクス」

 

クスクスと笑う幽香さんに、ただひたすら愛想笑いをするしかない。というか、それしか出来ない。怖すぎて。

 

「おい、どうした片倉。さっきから様子が変だぞって、うわっ!風見幽香!」

 

「あら?誰かと思えば、白黒魔法使いさんじゃない」

 

あれ?魔理沙って幽香さんと知り合いなの?

 

「おいっ!フラン、あれがこの人里に居る怪物、フラワーマスターだぜ!」

 

「えー、なんか想像と違う」

 

幽香さんが怪物ねぇ……、なんか納得できる。確かにあの人は怪物だよ。

 

「心外ね。人を怪物呼ばわりするなんて」

 

笑ってそんなことを言う幽香さん。あれ?怒らない。

 

「後で血祭りにしてあげるわ。感謝しなさい」

 

あ……やっぱり怒ってた。

 

「えっ!?血祭り!?何だか楽しそう」

 

「いやいや、フランちゃん。全然楽しくないから。怖いから」

 

白黒から赤一色に染まるところなんて誰も見たくないから!?

 

「片倉。この後、私の家でお茶しましょうか。勿論行くわよね?」

 

唐突の幽香さんの提案。

あぁ……、お茶と言う名の手合わせ(デスマッチ)が待ってるパターンだこれ。しかも断ったら、即殺られる奴だ。

 

「はい!喜んで!」

 

情けない?あぁ、自分も情けないって思ってるさ。でも仕方ないだろ?だって怖いもん。

 

「あなた達もどう?」

 

「はあ?行くわけ無いだろ」

 

「お菓子も沢山あるわよ」

 

「よっしゃ!フラン行こうぜ!」

 

あぁ……、あっちにも情けない奴が居たわ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ご飯を食べた後、僕たちは幽香さんの家で紅茶を飲んでいた。

相変わらず、この家の周りには沢山の花が咲いてるなぁ。―――フラワーマスターと言うのも納得だ。

ふと急に、幽香さんが立ち上がった。

 

「さてと。さあ片倉、いつも通りやるわよ」

 

「ほえ?やるって何を?」

 

「早くしないと本気でやるわよ」

 

「分かった!分かりました!いきますから。だから本気は勘弁してください!」

 

あぁ……、やっぱりやるのね。正直したくなかったんだけど。

 

「んっ?二人してどうしたんだ?」

 

「ちょっと表に出てくるだけさ」

 

「何するのー?」

 

「えーと……、下手したら血祭りかも……」

 

「えっ!?本当!?」

 

いや、あくまでも下手したら何ですけどね。てかそんなにはしゃがないでフランちゃん。普通ははしゃぐ事じゃないから。

 

「ほら早く表に出なさい」

 

「はい……」

 

果たして僕は生きて紅魔館に帰れるのだろうか。少し心配になってきた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先手は譲るわ」

 

「それはどうも」

 

「言っておくけど、全力で来なさい。一応あなたの実力を確かめる為にやってるんだから」

 

そうですか。こちらとしては、正直いらないお世話ですけどね。

 

「それじゃ行きます!」

 

左腕の義手に力を纏わせる。―――久しぶりだな、この感覚。

 

「またあのパンチかしら?あの時とは違うんでしょうね」

 

「えぇ勿論」

 

でも果たしていけるかなぁ……。昨日考えた技だし。まぁやってみるか。

 

「ホローポイント―――ハイドラショック」

 

ズドン!と幽香さんの胴体に拳を叩き込む。

だが見た感じは、いつものパンチとなんら変わりない。だが、ここからがこの「ハイドラショック」の凄いところだ。

余裕そうな顔をしていた幽香さんが、急に少し辛そうな顔をする。

 

「ぐっ……なかなかやるわね」

 

「どうも」

 

「まさか、体内に力を注がせて、ダメージを与えるなんてね」

 

この「ハイドラショック」は、幽香さんの言った通り相手の体内に力を注ぎ衝撃を与えるという技だ。単純に言えば、2回もパンチを喰らったのと同じというわけだ。

しかも厄介なことに、どんなに外側がが硬くて防御力が高かったとしても、それ相応のダメージを与える事が出来る。まさに、防御力が怪物級の幽香さんに対抗できる技ということだ。

しかしさっきまでの苦痛な顔は既になく、幽香さんは微笑んでいた。

 

「だけど」

 

「だけど?」

 

「まだまだね」

 

ガシッと頭を鷲掴みされる。

嘘だろ?かなりダメージ入ってる筈なんだが……。回復力高すぎない?

その瞬間、視界が大きくぶれる。

頭を鷲掴みにされたあと、思いっきり上空に投げられたのだ。

やばい、このまま行くと地面に衝突して死ぬって。ちょっ、なんとかしないと。

 

「魔力鎧展開!」

 

地面に衝突するすんでのところで魔力鎧を展開する。だがあまりの衝撃に息がつまる。―――もはや殺しにかかっているとしか言い様がないだろ……。

 

「あら?なかなかいいわねその鎧」

 

「ゲホッ、ど、どうも」

 

「ほら、寝てないでさっさと起きなさい。じゃないと死ぬわよ?」

 

起き上がった瞬間、緑色の弾幕が飛んできた。「うおっ!」と情けない声をあげながらその弾幕を弾く。

だが弾幕はそれだけではないようで、次々に容赦無く飛んでくる。

でも以前は避ける事すら出来なかったその弾幕も、今となっては結構避けられるようになっていた。

とは言うものの、ちょくちょく避けれなかったりする弾幕もあるのだが、そこは鎧の防御で何とか凌ぐ。

そして、ようやく弾幕の第一波を攻略する事ができた。これには幽香さんも少し驚いていた。

 

「意外ね……かなり成長してるわ」

 

「ありがとうございます」

 

「でも、まだ見せてない力があるわよね」

 

うぐっ……バレてましたか。まだ風刃の出番は先にしようと思ってたのに、見抜かれていたとは……。

 

「―――早く見せなさい」

 

幽香さんの凄みのある声に押されすごすごと風刃を出そうとする僕。―――凄みですごすご、なんつって。

 

「変なこと考えてないで早くしなさい」

 

はいはい、分かりましたよ。出せばいいんでしょ。

 

〈閃刀 神速之風刃〉

 

左手に緑色に輝く魔力で出来た刀を形成する。

 

「お〜なんか片倉がやってるぜフラン」

 

「ほんとだ〜」

 

気がついたらあの二人も表に来た。―――呑気だなあの二人組。

 

「それがあなたの新しい力ね……」

 

幽香さんは風刃を見ながら何かを考えている。あれ?もしかして期待はずれだった?

まあいいや。とりあえず攻撃だ。

風刃の機動力上昇の能力付与を利用し、圧倒的速度で幽香さんに斬りかかる。

ガキン!だがその斬撃は幽香さんには届かず、花柄の可愛らしい傘に受け止められる。―――あれ?傘ってこんなに耐久度高かったかな?

 

「動きもなかなか悪くないわ。だけどまだ遅いわね」

 

この速度で遅いとか、幽香さんの動体視力はどうかしてるんじゃないかと思う。いやだって、自分でもこの速さについていくのに必死なのに。

 

「ほらほら、早く次の手を打たないと死ぬわよ」

 

あなたの頭の中は僕を殺すことで頭がいっぱいなんですか?

まあ、死にたくないから必死で次の手を打つわけなんですがね……。

距離を取り、次は斬撃を飛ばす。流石にこれは避けるのは無理だろ。だって速すぎて見えないし。

と思っていた時期が僕にもありました。全ての斬撃を余裕の表情で避けていく幽香さん。―――もうここまできたら笑うしかないよ……。

 

「あら?今のが攻撃です何て言うんじゃないわよね?」

 

もう何ていうかこの人、悪魔だよ。人の姿をした悪魔だよ。……いや、妖怪か。いやいや、そんなことは今はどうでもいい。

あっそうだ、いいこと考えた。多分無理だろうけどやってみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――いや〜片倉って意外と強いんだな」

 

欠伸をしながら、魔理沙がのんびりとぼやく。

 

「そうだよ!お兄ちゃんは見かけによらず強いんだよ!」

 

そのぼやきに対し、フランはまるで自分の事のように魔理沙に自慢する。

 

「でも、あの風見幽香にはかすり傷は負わせられないだろうな。あいつまだ全力の二割くらいしか出してないし」

 

手元にあるお菓子を食べながら、魔理沙は言う。

ふとフランは魔理沙に質問する。

 

「魔理沙とお兄ちゃん、どっちが強い?」

 

「そりゃあ勿論私だぜ!魔法使いは凄いんだぜ!」

 

その時、魔理沙はふとある事に気づく。

 

「あいつ本当に普通の人間か?」

 

「なんで?」

 

「いや、何だか気のせいかもだが、あいつの力の扱い方って魔法使いにそっくりだなって思ってな」

 

「気のせいだよ。お兄ちゃんは外から来た普通の人だって言ってるし」

 

「そうだよな〜、気のせいだよな。外の世界に魔法使いなんているわけないよな〜」

 

そう言いながら、魔理沙はケーキを頬張った。フランとお菓子を巡る喧嘩をしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あの二人組は何をやってるのだろうか。お菓子くらいちゃんと分け合えよ……。

 

「よそ見してる場合かしら?」

 

ブンッ!と空気を切り裂きながら、傘が脳天めがけて振り下ろされる。

勿論その攻撃は風刃で凌ぐ。やっぱりあれは傘じゃないよな絶対。

 

「そろそろ終わりにしましょうか」

 

止めを刺すときによく聞きそうな台詞を言う幽香さん。

傘の先端を僕に向け、一度だけ見たことのあるあの光線を放つ。

見たことはあるけど、実際に撃たれたのは初めてだ。おそらく凌ぐの無理だろう。なら僕も何かしらの手を打つしかないだろう。

迫り来る光線に向かい僕はスペルカードを宣言する。

 

〈他符 破山砲〉

 

力を溜めた拳から、山をも破壊する威力をもつ光線を放つ。名前から分かると思うが、このスペルカードは美鈴直伝のスペルカードだ。習得したことすっかり忘れてたよ。

凄まじい衝撃と爆音と共にマスタースパークを破山砲が打ち消していく。

完全にマスタースパークを打ち消し、自信満々の顔で幽香さんの方を見る。そりゃあ自信満々にもなるさ。あの光線を打ち消したんだからさ。

しかし、幽香さんの姿はなかった。……あれ?どこに行った?

その時バキボキ、と言うような音と共にはるか上空に飛ばされた。―――鎧が粉々になってるんですが……。

きりもみ回転しながら上空に飛ばされているため、まったく体勢が整うことができず、ただ呆然と落ちるのを待つしかなかった。

ふと地上を見てみると、幽香さんが満面の笑みを浮かべながら、僕が飛んでいるのを見ていた。

恐らく姿をくらました時に僕の背後か何かに回り込んで、思いっきり上空に僕を蹴り上げたのだろう。鎧を粉々にするほどの勢いで。―――さすが幽香さん。もはや人間業いや、怪物業とは思えない。

そこで重要な事を僕は思い出す。

 

“この距離で落下したら確実に死ぬよな”

 

うぉぉあぁぁいっ!!まじかよ!?死ぬって!

どうする?もう地上は間近だぞ!でもきりもみ回転してるから何もできない!

そして僕はそのまま、物凄い勢いで地面に落下した……と思っていたら、空中で何者かにキャッチされた。

 

「無事か片倉?」

 

助けてくれたのは、白黒の魔法使いこと魔理沙だった。

いやぁ、助かった!生きてるって素晴らしいよな!

無事安全に地上へと降り立つ。―――魔理沙にお礼しないとな。

それよりも幽香さんの事が先だ。幽香さんの方を向き身構えるが……あれ?

 

「あの〜幽香さん?」

 

「ん?どうしたのかしら?」

 

「なんで、優雅に紅茶飲んでるんですか……?」

 

「あら?見てわからないのかしら?もう飽きたのよ」

 

「そうですか……」

 

そうですか、僕が落下死しそうだった事なんて興味無いんですね。

まあ、特に怪我もしなかったし気にしないどこう。そうしよう。

 

「そろそろ帰ろうかな……紅魔館に……」

 

なんかここにいると悲しくなってくる。なんでだろうね、不思議だね。

 

「そうだな。帰るか」

 

お菓子をたらふく食べて満足した表情で箒を手に取る魔理沙とフランちゃん。……いいよね君達は。僕は全然お菓子食べれなかったんだよ?

 

「また来る時はもっと強くなってから来なさいよ」

 

そしてこの人もこの人で、どうしてこんなに戦いしか脳が無いんでしょうね?

 

「そんじゃ私は家に帰るぜ。またなフラン、片倉」

 

「バイバーイ!」

 

あっという間に箒にまたがり空高く飛んでいく魔理沙。―――箒といい傘といい、どうしてこの世界の住民は、道具を正しく使わないんだろうな。まああの二人だけかもしれないが。

 

「お兄ちゃん、みんなにお土産買って帰ろうよ」

 

「そうだね」

 

紅魔館に帰る前に人里で僕達二人はお土産を買って帰った。

ちなみにフランちゃんのお土産はみんなに大好評だったのだが、僕のお土産はまったく駄目だった。―――やっぱりうどんを選んだのが間違いだったか。

その日は僕だけうどんづくしの料理だった。


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