傭兵幻想体験記   作:pokotan

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貧乏巫女と魔法使い

「おーい、着いたぞぉー!起きろー!」

 

「う…うーん……」

 

魔理沙に頬をペチペチと叩かれて起きる。

ここは何処だ?……あぁそうか。博麗神社か。―――ちょっ、もう起きたから、叩くのやめて!意外と痛い!

 

「ここが博麗神社か〜。想像してたよりもでかいなぁ」

 

「そうか?私はいつも見てるからよく分からないぜ。とりあえず霊夢呼んでくるから、待ってろ」

 

そう言うと、魔理沙は神社の裏へ行った。

しかし、小さめな神社かと思ったんだけど、意外と大きかったなぁ。―――とりあえず、お賽銭入れとこう。

チャリン、百円をお賽銭箱にいれ、鈴を鳴らそうとする。……参拝の作法、忘れてるな僕……。

すると後ろから、「ちょっとあなた!」と大きな声をあげて、誰かがこちらから近付いて来た。

 

「あなた……今、お賽銭を入れたわよね……」

 

声を掛けてきたのは、赤と白をメインとする服を着た、巫女さんだった。なるほど、この人が魔理沙の言ってた、霊夢と言う人か。

 

「え、えぇ。入れましたけど、どうしたんですか」

 

「あなた…………」

 

「あなた?」

 

「とても、い……」

 

「い……?」

 

「いい人!!」

 

「はい!?」

 

「この神社にお賽銭入れる人なんて、あなたとてもいい人よね!最近は、お賽銭が無くて私困ってたのよ。お賽銭はいくら入れたの!?」

 

グイグイと詰め寄られて、さっき入れたお賽銭の金額を聞いてくる巫女もとい霊夢さん。

 

「ひゃ、百円ですけど……」

 

「百円!?」

 

「え、少なかったですか?」

 

「そんなに入れてくれたの!?なんて心優しい人なのかしら!今日はどうしたのかしら!?お願い事があるの?だったら何でも叶えてあげるわよ!」

 

いや別に、お願い事とか無かったんだけどなぁ……。

 

「お〜お〜、貧乏巫女さんが、何か騒いでまっせ(笑)」

 

神社の裏から、大声で笑いながら魔理沙が戻ってきた。

 

「あぁ?貧乏巫女で悪かったわね。あんた後でぶん殴るわよ」

 

「ひぇ〜怖い怖い。博麗の巫女は本当おっかないぜ」

 

魔理沙がきた途端、巫女さんの態度が一変した。

てか、さっきまで優しかったのに、魔理沙の時はやけに怖いな。

 

「この人は、魔理沙、あんたが連れてきたの?」

 

「そうだぜ」

 

「そう。あなた、名前は?」

 

「僕は片倉です。あなたは……霊夢さんですよね?」

 

「えぇ、博麗霊夢よ。あと呼び捨てでいいわよ。お賽銭入れた、大事な人だから」

 

お賽銭入れたから呼び捨てOKというのも、どうかと思うがまぁいいだろう。

 

「片倉、霊夢に聞きたいことあるんだろ?聞いとけよ」

 

「そうだね。霊夢に聞きたいことがあるんですが」

 

「あ〜、外の世界に戻るのは、今は無理よ」

 

え……?先に聞きたいことの答え言われたんですが……。もしかして心の中読んでる?

 

「どうしてだ?お前だったら、片倉を外の世界に戻すなんて簡単だろ?」

 

「私が原因じゃないのよ」

 

「じゃあ、何が原因なんだ?」

 

「紫が原因なのよ」

 

「あいつが?」

 

ほう、これまた知らない人の名前が挙がりましたな。

でも、紫って何処かで聞いたことがあるよーな……気のせいか……。

 

「幻想郷の者が、外の世界に行く時は必ず、紫の許可がいるのよね。でもその紫が最近姿を現さないの。式神に聞いたら、紫のやつ急に用事が出来たとか何とかで、姿を現さないって言ってたわ」

 

「そうかですか……。まぁ別にすぐ戻りたい訳でもないんで大丈夫です」

 

「しかし、あの紫が姿を見せないのは珍しいな。なんか大変な用事でもあったのか?」

 

「さあね、私には分かんないわよ。あの胡散臭い妖怪の考える事なんか」

 

紫とか言う人、とても胡散臭い妖怪なんだ……。

 

「ところでひとつ聞いていいかしら?」

 

「なんですか?」

 

「あなた、どうやってこの世界に来たのかしら?」

 

「気がついたら、この世界に迷い込んでました」

 

「チッ、また紫の仕業ね。まったく……」

 

どうやら、この世界に迷い込んだ原因は、その紫と言う人が原因のようだ。

しかし、どうして僕をこの世界に入れたのだろうか。

 

「何で僕をこの世界に入れたんでしょうか?」

 

「知らないわ。本人に直接聞いて見なさいよ。まぁ、その当の本人は、行方知らずだけども」

 

うーん……、一体紫と言う人は何者なのだろうか。すごい気になるなぁ。

こうなれば、自力で探してみるか。

 

「そろそろ腹も減ったし、アリスの家に戻ろうぜ〜片倉」

 

姿を現さない……つまり神出鬼没な人か?胡散臭い……嘘つきとかか?外の世界に出るには許可がいる……偉い人か?

だあァァァ、一体何者なんだ!さっぱりわからん。せめて写真とかあれば探せれるのに!―――でもこの世界に写真とかあるのか?

 

「おぉぉぉぉぉい!片倉ァァァ!」

 

「うおっ!?びっくりしたァ!人の耳元で急に叫ぶなよ」

 

「さっきからずっと話しかけてるのに、無視するからだろ」

 

「ごめんごめん、考え事してたんだ」

 

「そうか。それじゃアリスの家に戻ろうぜ」

 

「分かった」

 

「じゃぁな霊夢、また来るぜ〜」

 

「次来るときは、お賽銭持ってから来なさいよ」

 

霊夢ってやたらとお賽銭に固執するなぁ。お金が大好きなのか?それは巫女として、どうかと思うが……。

 

「そうそう魔理沙、帰りはゆっくり飛んでくれよ。また気絶するから」

 

「あ〜……嫌だぜ☆」

 

本日2回目のこの感覚。箒が一気に加速する感覚だ。

 

「イィィィィヤァァァァ!とまってぇぇぇえ!」

 

この女……、許さん……。いずれ絶対に仕返ししてやる……チーン。

思ったんだけど、魔力鎧を展開したら意外と耐えられるんじゃないかと思ったんだけど。……まぁ手遅れだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうせまだそこに居るんでしょ紫」

 

「あらら、バレちゃったわ〜」

 

ぐにゃりと空中が歪み隙間が生まれる。そしてその隙間から一人の女性が現れた。

 

「本当にこれでよかったの?」

 

「えぇそうよ。流石の演技力ね、霊夢」

 

「何であの普通の人間にこだわるのよ」

 

「うふふ、あの子は普通の人間じゃないわよ」

 

「じゃあ何者なのよあの人間」

 

「それは教えてあげなーい」

 

「はぁ!?あんたふざけてんの?」

 

「え〜、そんなに気になるの〜?」

 

「あったり前じゃない。そんな言い方されると、誰でも気になるわよ」

 

「そうね〜、きたる時が来たら教えてあげるわよ☆」

 

「あーそうですか。でも一つだけ聞かせて頂戴」

 

「ん〜?何かしら?私のスリーサイズは教えないわよ〜」

 

「違うわよ。あんた、あの人間の記憶操ったわね」

 

先程まで、優雅に笑ってた紫は、その霊夢の一言によって真剣な顔になった。

 

「あら?どうして分かったのかしら?」

 

「勘よ」

 

「相変わらず、あなたの勘は怖いわねぇ」

 

「記憶を操るなんて、あんた一体何を隠してんの?」

 

「仕方ないわね〜、一つだけ教えてあげるわよ。あの子はね実は…………」

 

「んな!?あんた!?」

 

「うふふ、驚いた?これは皆には秘密よ。じゃあね霊夢、またね〜」

 

隙間が閉じ、紫は跡形もなく消えた。

残された霊夢は、空を見上げて紫に問いかけた。

 

「紫……、あんた一体、何を考えてるの……」

 

その言葉は、風と共に虚空へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほーい、到着したぜ!」

 

「し、死ぬかと思った……」

 

箒から降りると、すぐさまその場に倒れ込んだ。もう二度とあんな箒には乗らん……。

 

「あら、あんた達戻ってきたの?」

 

「おぅ!腹へったから戻ってきたぜ!」

 

「何で私の家に戻ってくるのよ!自分の家に帰りなさいよ!」

 

魔理沙とアリスの喧嘩している側で、かなり不機嫌そうな少女が一人、僕を見ていた。―――フランちゃんだ。

あ〜……そういえば、博麗神社にフランちゃんの姿がなかったなぁ。もしかして、置いてかれちゃったから怒ってる?

 

「どうしたのフランちゃん?」

 

プイッ、無視された。まさかの拒絶!?

 

「あんた達がその子をおいてけぼりにしたから、ずっと不機嫌のままよ。何とかしなさいよ」

 

え〜〜、おいてけぼりにしたのは僕のせいじゃなくて、そこにいる魔理沙のせいなんだけどなぁ……。

まぁとりあえず謝っとこう。

 

「ごめんよフランちゃん」

 

プイッ、またしても拒絶される。

 

「そうだ!明日人里に行って美味しいもの食べよ?」

 

「本当?」

 

おっ、ようやく食いついた。

 

「うん!本当だよ。だから、機嫌なおして?ね?」

 

「分かった―!約束だよ!」

 

おぉう、さっきまで無視してたのに、急に態度が変わったなぁ。

でも何か嫌な予感がするんだよなぁ。明日人里に行ったら大変な事になるような気がするんだが……。まぁいいや。

 

「あなた、本当ロリコンよね」

 

「返す言葉もございません」

 

自覚はないんだけどなぁ……。やっぱり傍から見るとロリコンなのかな僕って。

 

「ねぇねぇお兄ちゃん?」

 

「ん?どうしたの」

 

「お腹すいた〜」

 

空を見てみるともう夕方だった。確かに僕もお腹空いたな。

 

「だったらここで晩御飯食べようぜ!」

 

魔理沙が提案をする。いやいや、あんたここの住人じゃないでしょ。

 

「あなた達……私の家を何だと思ってるのよ……」

 

「いいじゃんかよ〜。皆も腹空かせてるんだぜ?」

 

「分かったわよ。そこのテーブルで待ってなさい。すぐ作らから」

 

「やったー!」

 

大はしゃぎのフランちゃん。そっか、こうやって他人とご飯を食べることなんて初めてだもんね。

その日はアリスの家で美味しくご飯を頂いた。だけど余りに僕と魔理沙が騒ぎすぎて、アリスに家から蹴り飛ばされたことは伏せておく。


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