傭兵幻想体験記   作:pokotan

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閑話 其の一
アリス宅にて


アリスの家に着いた。

道中に妖怪に襲われたけど、フランちゃんが弾幕ごっこ(一方的な暴力)によって、何事もなくあっさりと撃退(殺害)した。

何と言うか、こんなことじゃあんまり動じなくなってきたあたり、ちょっと自分でもどうかと思った。―――あの妖怪、スゲェ喚きながら逃げてたもんな……。逃げ切れなかったけど。

コンコン、とドアをノックする。……反応がない。もしや留守か?

もう一度ノックする。……反応無し。

…………ドンドンドンドンドンドンドンドン、ガチャリ。

 

「もう!うるさいわね!って……片倉じゃない。」

 

いやぁ、粘り強くノックして正解だったなぁ。この人、忙しい時はよく居留守使うからな。全くけしからん。

 

「どうも、アリスさん!突然ですが、家に上がらせて下さい!」

 

「嫌よ。私は忙しいの。だから帰りなさい」

 

ぐおぉぉぉ、人がせっかくお願い(土下座)してるのに、即答でNOと言いよった。

だが僕はめげない。

まだ僕のバトルフェイズは終了してないぜ!

 

「はい!フランちゃん、この人に挨拶しましょうね〜」

 

「こ、こんにちは。フランドール・スカーレットです」

 

恥ずかしながらも自己紹介をするフランちゃん。

 

「スカーレット……。なるほど、あの館の主の妹かしら?まぁいいわ。私はアリス・マーガトロイドよ、宜しくね」

 

これでフランちゃんにも、新しい友達が出来た……多分。

そんなことよりも、早く家に上がりたいんですけど。

 

「自己紹介はもういいから、早く帰りなさい」

 

「そこをなんとかお願いしますよ〜」

 

「駄目」

 

クソぉぉぉ!だがまだだ…まだ終わらんよ!

 

「ちょっといいかなフランちゃん。あのね…ゴニョゴニョ」

 

「うん!分かったー!」

 

「よし!さぁフランちゃん頼んだ!」

 

この作戦ならば、あの憎きアリスを一発で倒せる(精神的に)はずだ。

 

「ねえねぇアリス!」

 

「なに?早く帰ってくれないと私困るんだけど……」

 

「お願い!家に上がらせて!」

 

まるで、何処ぞの錬金術師のようにパンッ、と音を立てながら両手を合わせてお願いするフランちゃん。

 

「駄目よ。私は忙しいの」

 

しかし、あっさりと断られる。

 

「どうしても……?」

 

泣きそうな目でアリスに訴えかけるフランちゃん。これには、さすがのアリスも断るのが辛そうだ。

 

「だ、駄目なものは駄目なの!」

 

「ウーー」

 

「そ、そんな上目遣いで見ても、だ…駄目よ!」

 

「ウーーーー」

 

「だ、だから……」

 

「ウーーーーーーーー!」

 

「はぁ……、分かったわ……。上がっていいわよ」

 

「わーーーい!」

 

フランちゃん必殺の上目遣いが効いたようだ。この技を受け流すのはかなりの至難の技だろう。アリスにとっては。いやまぁ、僕もなんですけどねアハハ……。

 

「あなた、外道よね」

 

はいはい、聞こえなーい聞こえなーい。

アリスの言葉は無視しつつ、僕とフランちゃんはアリスの家にお邪魔した。

 

 

 

 

アリスの家にお邪魔した後、僕は紅茶を飲みながらアリスと話していた。フランちゃんは、そこら辺にある人形をまじまじと見ている。

一通り最近の出来事を話終え、ゆっくりとクッキーを頬張りながら紅茶を味わっていると、急にアリスが僕がこの世界に来る前の話を聞きたいと言ってきた。

 

「あなた、この世界に来る前、いったいどんな事をしてたのかしら?」

 

「傭兵で各地の戦場で戦ってました」

 

「傭兵?」

 

「傭兵と言うのは、戦ってお金を稼ぐような仕事のことです」

 

「ふーん、それでどうして傭兵にあなたは、なったのかしら?」

 

「僕が昔、両親を亡くした時に、僕を拾ってくれた人がいたんですよね。その人、僕が20歳になった時に失踪したんです。一通の手紙を残して」

 

「手紙?内容とか覚えてるかしら?」

 

「えぇ、今でもはっきり覚えてますよ。ていうか、この手紙が僕が傭兵になった大きな原因なんですけどね」

 

「そうなの……。それで内容は?」

 

「内容は、『あなたはもう立派に成長したわ。だから私はあなたの知らない所へ旅に出ます。もしもまた、私に会いたいのなら、探しなさい。この世界中を。PSそこのテーブルの上にパスポートと結構なお金があるわよ。上手に使ってねキラッ☆あなたのお母さんより』と書いてありました。それで、傭兵として世界中を巡っていた訳です」

 

「なるほどね。なかなか茶目っ気のある人じゃない。その人の名前は?」

 

「名前は確か……えっと……、あれ?」

 

「どうしたの?忘れたのかしら?実の親よりも長いこと暮らしてたのに、思い出せないの?」

 

「……はい。何故か、名前が思い出せなくて……。というか、この世界に来てから、その人の顔さえも思い出せないんですよ」

 

この世界に来る前は、当たり前のように思い出せたのだが……。どうして忘れてしまったのだろうか。

 

「そう……。ならいいわ」

 

「すいません……」

 

なんとなく場の雰囲気が居た堪れない空気になってしまった。どうにかせねば。

どうにか話題を振らねば、と模索していた時、急に1人の来訪者が現れた。

 

「オイーース、アリス元気かー?って、ん?」

 

やって来たのは、いかにも魔女らしい格好をした、白黒帽子をかぶった金髪の女の子。―――アリスの友達か?

ふとアリスを見てみると、とても嫌そうな顔で、その来訪者を見ていた。

 

「なんで来るのよ魔理沙」

 

どうやら、この魔女っぼい人は魔理沙と言うようだ。

その魔理沙と言う人は、嫌がられているのを全く気にも止めず、ゲラゲラと笑っていた。

 

「いいじゃないか別に、どうせ暇だろ?ところでそこにいる義手の奴と、小さい羽の生えた女の子はどちら様だ?」

 

「僕は片倉と言います。あなたは……?」

 

「私は霧雨魔理沙だぜ。よろしくな片倉!」

 

「私はフランドール・スカーレット!」

 

「おぅ!宜しくなフラン!」

 

何と言うか、この人の印象は活発的な人だと感じる。そして何よりも、人と馴染むのが早い。とてもいい性格をしている人ようだ。なのに何故アリスはこの人を嫌がるのだろうか?

 

「ところで魔理沙、この前盗んだ本を返しなさいよ」

 

ん?本を盗んだ?どゆこと?

 

「……あの、魔理沙さん?本を盗んだって本当ですか?」

 

聞き間違いかもしれないし、一応聞いてみた。

 

「あー、私の事は魔理沙でいいぜ。あと本は盗んでないぜ!」

 

だよなー。こんな性格良さそうな人が、人の本を盗むなんてありえないよな〜。

 

「あれは盗んだんじゃなくて、死ぬまで借りただけなんだぜ☆」

 

……前言撤回。この人、見た目に反して意外と手癖が悪いわ。

てか、死ぬまで借りるも盗むもどちらも同じだろ。意味合い的に。―――まぁどうでもいいや。僕が被害にあってる訳じゃないし。

しかし、盗まれた当の本人は相当お怒りのようで、見たこともないくらいに顔を真っ赤っかにして怒っていた。……うわぁ、超怖い。

だが、盗んだ本人は、あっけらかんな態度でアリスを無視していた。

そんな魔理沙を見て、アリスは怒るのが馬鹿馬鹿しくなったのか、はたまた諦めたのか分からないが、とりあえず怒りを抑え引っ込めた。

 

「ところでよー、片倉って外の世界の人間だよな?」

 

魔理沙が急に僕が外の世界の人間だと見破ってきた。

 

「そうですが、どうして分かったんですか?」

 

「だって、そんな義手はめた奴なんか、この幻想郷で見たことねえからな」

 

なるほど義手か。

最近、自分が義手着けてることよく忘れちゃうな〜。

 

「1つ聞いていいか?」

 

「何ですか?外の世界についての質問ですか?」

 

「いや、外の世界はあんまり興味はないぜ」

 

あっ、興味無いんですか。じゃあ他に何が聞きたいのだろうか。

 

「お前、外の世界に戻ろうとは思わないのか?」

 

「えっ……、戻れるんですか?」

 

「うん」

 

「まじで?」

 

「まじだぜ」

 

ええぇぇぇ……それは知らなかった。てか聞いたこともなかった。まさかこの世界から出られるとは。

出られるなら今すぐでも出ていきたいものだ。正直、この世界は危険度が高すぎる。今でも服の下は包帯だらけな訳だし……。

でもなんか大事な事を忘れてる気がするんだよなぁ……。気のせいかなぁ……。

 

「えっ、お兄ちゃん……、この世界から出ていくの……?」

 

あー、気のせいじゃ無かったわぁ……。ここに居ましたわ、大事な事が。

フランちゃんが涙目でこちらを見つめている。

 

「出ていくの……?」

 

とうとう、泣きだした。……これはきつい、精神的な意味で。

 

「出ていかないから!ね?だから、泣くのは止めようね?」

 

あぁ……我ながら情けない。小さい子にあっさりと負けるなんて。

 

「あなた、ロリコンよね」

 

グハッ!アリスの鋭い言葉が僕の心を貫く。

返す言葉が見つからないよ……。

まぁでも、外の世界には戻らないとしてもだ、一応どうやって外の世界に戻れるのかくらいは聞いておこう。

 

「外の世界に戻りはしませんが、一応どうやったら戻れるかだけ教えて貰えませんか?」

 

「外の世界に戻るときは、霊夢に頼めばいいぜ」

 

「霊夢?」

 

「博麗神社に居る巫女の事よ」

 

どうやらアリスもその霊夢と言う人を知っているらしい。

というか、この世界にも神社あったんだ。知らなかった。

 

「そういえば私、霊夢の所に行く予定だった事、すっかり忘れてたぜ」

 

「霊夢の所に行く予定だったのに、どうして私の家に来たのよ、あんたは」

 

「いやぁ、なんとなくだぜ」

 

「次来たら吹き飛ばすわよあなた」

 

「ひー、怖い怖い。それじゃ、このくらいでお暇することにするぜ」

 

扉の近くに立て掛けてあった箒を手に取り、外に出ようとする魔理沙。―――もしかして、箒で飛ぶのか?

そうだ、折角だから僕も博麗神社に行こうかな。一度、その霊夢と言う人に会いたいし。

 

「ちょっと待って魔理沙!」

 

「ん?どうした片倉?」

 

「僕もついてっていいかな?」

 

「いいぜ。でもここから神社まで結構距離あるぜ?」

 

「えっ……遠いの?」

 

「そうかー、片倉は普通の人間だから飛べないもんな。仕方ない、私の箒に乗って行くか」

 

「ありがとう魔理沙」

 

「ちなみに、結構速く飛ぶから気をつけろよ?」

 

「あぁ大丈夫大丈夫。多分」

 

「はいはい、玄関で話されると迷惑だから早く行ってよね、全く……」

 

まるで邪魔者扱いのように追い出そうとするアリス。

見た感じちょっと不機嫌なのだが……。早く神社に行ったほうがいいなこれ。

 

「それじゃ、またなアリス」

 

「お邪魔しました〜」

 

「バイバイ!アリス!」

 

「はいはい、またね」

 

何だかんだ言って、ちゃんとお見送りするアリス。本当、あの人ツンデレだよな……、あっ睨まれたゴメンナサイ。

 

「それじゃ行くぜ。落ちるなよ」

 

「うん、フランちゃんは大丈夫?」

 

「大丈夫!私は飛ぶから!」

 

いや、日光が大丈夫かということなのだが……。でもまぁ幸い、天気が曇って太陽の光がないから大丈夫だろう。

 

「んじゃ行くぜ」

 

はっきり言うとそこからの記憶は無い。

発進の合図と共に、僕と魔理沙を乗せた箒は急加速した。その速さは鍛えられた人間の体でさえも、意識をブラックアウトさせる程だ。―――いや、速いと言われたけどさ、その速さは普通ありえないでしょ……。

意識を失う際、今度にとりに空を飛べれるようになる機械を作ってもらおう、と思ったのは言うまでもない。


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