傭兵幻想体験記   作:pokotan

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そうだ紅魔館に行こう 第6話

今はお昼時、紅魔館の正門付近で僕と美鈴は戦っていた。

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

突進の勢いを利用し、美鈴に飛び蹴りを繰り出す。

だが美鈴はこれを冷静に受け流し、裏拳を放つ。

それを予測していた僕は、右手でガードし着地した後、左腕に力を纏い力強くボディブロー。これも冷静に受け止められたが構わず右手でボディブロー2発目を放つ。

少し美鈴が体制を崩す。その隙を逃さず、すかさず膝蹴りをくらわし、左のストレートを叩き込み吹き飛ばす。

為すすべもなく吹き飛んだ美鈴だったが、これといって大きなダメージを与えた感じでは無かった。恐らく『気を操る程度の能力』のおかげだろう。

美鈴は立ち上がり、次は弾幕を放ち出した。

弾幕を避けながら美鈴に近づく。

すると、美鈴がスペルカードを宣言した。

 

〈華符 破山砲〉

 

美鈴が繰り出した拳から光線が放たれる。

急に放たれた為に避ける態勢に入れない。

山を砕くほどの威力を持つと言われているこの技を喰らえば、恐らく大ダメージ間違いなしだろう。

そこで義手に新しく搭載された、あの機能を使う。

 

『魔力鎧展開!』

 

淡く光る魔法の鎧に身体が覆われる。

美鈴の放った光線に飲み込まれていく。

しかし鎧の力により光線のダメージはほとんど無かった。

 

「んなっ!?効いてない!」

 

美鈴の顔が驚愕の色に染まる。

次はこちらの番だ。

 

〈流刃 コリエンテコルタール〉

 

慌ただしい金属音を奏でながら大量のナイフが周辺を埋め尽くす。

そのナイフは次第に流水のような形へと変えていった。

ちなみにこのスペルカードは新しく創ったものだ。イメージ元は、パチュリーさんの〈プリンセスウンディネ〉を参考にしている。

いやぁ、パチュリーさんの実験が役に立ったな―――いや、役に立ってねぇよ!普通に死にかけたわっ!

全てのナイフが一斉に美鈴を襲った。

美鈴はそのやばさに気づいたようで、2枚目のスペルカードを宣言した。

 

〈華符 芳華絢爛〉

 

色鮮やかな弾幕がナイフを打ち消していく。

だがあくまでもこのスペルカードは囮だ。

両者のスペルカードによる弾幕で視界が埋め尽くされることこそが、僕の本当の狙いだ。―――よしいくぞ!

 

〈閃刀 神速之風刃〉

 

緑に輝く風刃を手に、目にも止まらぬ速さで美鈴の後ろに回り込む。

さぁこれで決着だ!

刀を美鈴に対して切り込む。ちなみに峰打ちだ、死んでしまうと駄目だからな。

美鈴の脳天目掛けて風刃を振り下ろす。ふっ、決まったな。―――あれ?

確かに僕は美鈴の脳天に風刃を振りおろした。振りおろした筈なのだが、そこに美鈴の姿はなかった。――なんでだ?はっ、もしや……

 

「しまったぁぁァァァ残像かぁぁぁァァァ!」

 

「その通りです!惜しかったですね!」

 

いつの間にか横に回り込んでいた美鈴が、僕の顔面に飛び蹴りをくらわせる。

は、計ったなぁァァ美鈴!―――そのまま凄い勢いで吹き飛ばされ、正門の外壁にぶち当たる。

いやぁ、現役プロレスラーのような力強い蹴りだったよ。

でも一言だけ言わせてくれ美鈴、顔面に蹴りは無いだろ。せめて鎧に守られてる所に蹴って欲しかった。―――僕はこうみえても普通の人間なんだぞ?

 

 

 

 

 

結局、美鈴に負けた。

でも普通に考えてくれみんな、普通の人間とナイフに眉間を刺されても平気な妖怪、どっちが勝つかなんて戦う前からはっきりしてるよな?

そんな言い訳をブツブツと呟きながら、美鈴と一緒に壊してしまった正門の外壁を修理していた。

 

「しかし、片倉さんもすっかり強くなりましたよね」

 

「えっ、そうかな?」

 

「そうですよ。3週間前は格闘においては私に全くついて来れなかったのに今となっては、かなりついて来れるじゃないですか。」

 

にとりから新しい義手を貰ってからの3週間、美鈴の格闘指導を交えた弾幕ごっこを毎日行っていた。

もちろん弾幕ごっこの他にも、レミリアさんのお使いで図書館に行って本を返したり、パチュリーさんの実験台になったり、実験台になったり、実験台になったり。―――もしかしたら僕死ぬかもな。

まぁそんなこんなで、僕が驚くほど強くなれたのも、美鈴の上手な指導があったからこそだ。

格闘技初心者の僕でも、たった3週間でこんなに強くなれましたァ!

まさに、美鈴ブートキャンプだな!外の世界でも人気がでるぞ。―――いや、人気でないだろ。こんな危険なブートキャンプ。

 

 

 

 

 

「ふう〜やっと終わったな」

 

1時間かけ、ようやく外壁の修理が完了した。まぁ主に僕がしたんだけどな。

 

「ふわぁ〜、あっ終わりました?」

 

この門番……手伝いちっともしやがらなかったな。―――後で咲夜さんにチクっとこう。

 

「それじゃ、壁も直ったから自分の部屋に戻るとするよ」

 

弾幕ごっこと壁の修繕で結構汗かいたなぁ、とりあえず着替えるとするか。

自室に向かっていると、廊下の向こうから咲夜さんがやって来た。

……こう考えると、咲夜さんがまともに現れたのはこれが初めてな気がする。

 

「こんにちは、咲夜さん」

 

「こんにちは片倉様」

 

相変わらず礼儀正しい人だよね。流石メイド長だ。―――レミリアさん関連になるとちょっとあれだけど。

 

「そうそう咲夜さん、美鈴がまた門番サボってましたよ」

 

去り際に美鈴のことをチクっておいた。

僕はこうみえても結構根に持つタイプなんだよ。……ドンマイ美鈴。

 

「そうですか、後できつく言っておきます。」

 

そう言うと、咲夜さんは去っていった。

恐らく後で美鈴の叫び声が聞こえる事だろう。

美鈴の恨みは晴れ、僕は上機嫌で部屋に戻って行った。

 

 

 

 

暇だ。

着替えを済ませ、僕は至福のひと時を過ごしていた。

暇というのは、本当の贅沢だと僕は思う。

しかしこんなにだらだらと過ごしていて良いのだろうか。―――ちょっと部屋から出てみるか。

部屋から出てみたものの、どこに行こうか悩む。

美鈴の所は……止めておこう。恐らく美鈴から何か言われそうだ。

そうなると、大図書館くらいしか行くとこないな。でもあそこはちょっと……。

結局悩んだ末に、宛もなく紅魔館を散策する事にした。

 

 

 

 

 

いま僕は、とてつもなく焦っている。

暗闇、暗闇、暗闇。何処を見渡しても暗闇が広がっている。

どうしてこうなった……考えろ考えるんだ。

暇だったから紅魔館を散策してた。……ここまでは問題ないな。

それで、見たこともない扉があったから開けてみた。……これもまぁ問題ないだろ。

扉の先は地下へと繋がっている感じだったから、入ってみる事に―――あーこれだわ。いま地下で迷ってるわ。

なんてこった……よりにもよって、こんな人気のなさそうな地下で迷うとは。

僕は頭を抱える。……あぁ自分の間抜けさに驚いたよ。

とりあえず先に進むしかないか。もしかしたら誰かいるかもしれないし。

手当たり次第に歩いていると、大きな扉が見えた。もしかしたら誰か居るのかもしれない。

そんな淡い期待を胸に扉を開ける。

そこには、見た事も無い少女がぬいぐるみを抱いて座っていた。―――可愛い。

おいおいそこじゃないだろ僕。第一声がそんなんだったら、周りからロリコンと言われても仕方が無いぞ。

 

「あなた、誰?」

 

ほら見てみろ、めっちゃ警戒されてるじゃないか。

よく見ると少女の背中には、宝石のような羽が生えていた。……もしかして吸血鬼?まさかな。

よし、ここは格好いい所をこの少女に見せて、仲良くなろうではないか!―――別にロリコンじゃないからな。

しかしどうすれば……ああ、そうだ!抱え込み3回宙返り2ひねりを決めれば最高に格好いいはずだ!

少女から距離を急いで取る。ふぅ、落ち着け自分。深呼吸をする。

ダダダッと走り助走をつけ、勢いをつける。よし、この勢いならいける!

このまま、抱え込み3回宙返り2ひね―――グキッ。

ぎゃァァァァァ!足首があぁァァ痛ぁぁぁい!見事に失敗した。

だいたい、プロがしそうな技をするからこうなるんだ。僕は深く反省した。

ちらりと少女に目を向ける。

肩が震えている、あぁ怖がってるよなこれ。

 

「アハハハハハハ、面白い人だねお兄ちゃん!」

 

少女は大きな声で笑い出した。どうやらツボにはまったらしい。

僕は両手で思わず顔を隠す。―――よくよく考えたら恥ずかしくなったのだ。

 

「お兄ちゃん、名前なに?」

 

「僕は片倉だよ。ここの使用人かな。君の名前は?」

 

「私は、フランドール・スカーレット!」

 

フランドール……スカーレット?んっ、スカーレット?―――もしかして、あのスカーレット?

 

「もしかしてだけど、レミリアさんとなんか関係ある?」

 

「レミリアさん?あぁ私のお姉さまよ!」

 

やはり、予想が当たったようだ。しかしまさか、レミリアさんの妹とは……

でもなんでこんな所に居るんだろう?

てかそんなことよりも、ここから出る方法を探さねば。

 

「ねぇフランちゃん、ここから出る方法知らない?」

 

「知ってるよ!」

 

おぉ知っているとは。これでようやく自室でゴロゴロ出来るぞ。

 

「それじゃあ早速教えてくれないかな?」

 

「えー遊ぼうよ〜お兄ちゃん〜」

 

フランちゃんがキラキラした目で下から見つめてくる。

おおぅ、その上目遣いは反則じゃないかな〜フランちゃん。

 

「で、でも、忙しいし……」

 

「う〜〜〜」

 

「そ、そんな目で見られても……」

 

「う〜〜〜〜〜〜〜」

 

―――よし遊ぼう。べ、別にロリコンじゃ無いんだからね!

 

「よし!遊ぼうか!」

 

「わーい!やったー!」

 

「何して遊ぼうか」

 

「弾幕ごっこ!」

 

―――へっ?弾幕ごっこ?

いやいや、こんな少女が弾幕ごっこしよう!なんかいう筈ないだろ〜。

もう1度聞いてみよう。もしかしたら、聞き間違いかもしれない。

気を取り直し、もう1度フランちゃんに聞いてみる。

 

「何して遊びたい?」

 

「弾幕ごっこ!」

 

……冗談だろ。

僕は頭を抱え込んだ。

どうしてこの館には血に飢えた住人しかいないんだよっ!

考えろ、考えるんだ僕。この場合は、何か違う遊びを提案してだな―――

 

「おままごととかしない?」

 

「弾幕ごっこしたい!」

 

「鬼ごっことか」

 

「弾幕ごっこ!」

 

「かくれんぼ!」

 

「弾幕ごっこ!」

 

ぐおぉぉぉぉ……。駄目だ、この子には弾幕ごっこ以外の遊びは存在していないようだ。

まだだ、まだ策はあるはずだ。

―――小考……長考

―――無理……無駄

駄目だーーー!諦めるしか方法が思いつかねぇ!

ちらりとフランちゃんを見てみる。

……あぁ、キラキラと目を輝かせながら、弾幕ごっこの準備を始めようとしている。

 

「私と遊ぶの……嫌?」

 

とうとうフランちゃんが耐えきれず、今にも泣き出しそうになる。

いかん、少女を泣かせるなんて、僕の仁義に反してしまう!―――別にロリコ(ry

ええぇぇぇぇい!こうなれば、弾幕ごっこだ!

 

「よし!弾幕ごっこしようか!」

 

「わーーーーーい!」

 

さっきの涙目が嘘のよう。フランちゃんはご機嫌にはしゃぎだす。

まぁ、でもあのくらいの少女なのだから、そんなに危ない弾幕ごっこになる筈ないよな。

しかし僕は忘れていた。彼女の名前はフランドール・「スカーレット」と言う事を。


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