傭兵幻想体験記   作:pokotan

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そうだ紅魔館に行こう 第5話

飛ぶと言われて、皆さんはどんな事を想像いしますか?

「鳥のように空を飛ぶ」や「その場でジャンプする」などといった事を考えますよね。

私だってそうです。しかし、この二つの想像の「中間に位置する意味を持った飛ぶ」というのを行えばどうなるのか、皆さんは想像できますか?

難しいですか?なら教えてあげましょう。

こうなります。

 

「いやぁァァァ!止まってぇぇぇぇぇ!」

 

僕は美鈴の背中に背負われながら、飛んでいた。

ただ飛ぶだけなら慣れているから、こんなに叫ぶことは無い。じゃあ何故叫ぶかって?

飛び方に問題があるんだよなぁ〜これが。

美鈴は一歩一歩、力強く地面を蹴って飛んでいた。

その瞬間、とてつもないGが僕の身体にかかる。

このとてつもないGが、僕を叫ばせている原因だ。

恐らく常人なら気絶間違いなしだろう。僕だって、ギリギリ意識を保てているが、そろそろ限界に近い。

美鈴の方はというと、

 

「いやぁ、幻想郷ってなかなか広いんですねぇ。今度、散歩でもしようかなぁ」

 

この余裕っぷりである。ちくしょう、美鈴なんかに任せるんじゃなかった……

こんな事になるくらいなら、人形の方が……いや、やっぱりあれも嫌だ。

ていうか何が散歩だよ、こんな妖怪だらけの中を優雅に散歩出来るわけないだろ。

あっ駄目だ……意識が…遠のく……

 

「あれ?片倉さん、大丈夫ですか?」

 

うるさいよ……美鈴…、後で……覚え…と……チーン

幻想郷に来て何回目かも分からない気絶をまたしても体験した。

 

 

 

 

 

いやぁ、ようやくにとりの作業場に着いた。

かれこれ30分くらい気絶してたけど、なんとか到着致しました!

 

「うわぁ、こんなところがあるんですね〜」

 

この呑気な奴は後で咲夜さんにでもやられてしまえ!

なんてことを心の中でそう叫びながら、作業場の扉をノックする。

しかし、反応はない。もしかして留守か?

すると美鈴が叫んだ。

 

「片倉さん、後ろに何かが居ます!」

 

あ〜なんかこの光景見たことあるなぁ。なんでだろう、不思議だなぁ。たしかこの後にとりが出てくるよなぁ。

 

「あやや、見つかりましたか……」

 

そうそう、こんな感じであややって言って……ん?あやや?

 

「えっ誰!?」

 

現れたのはにとりではなく、背中に黒い翼を持ち烏帽子を被った人だった。

鼻は天狗のような感じではないが、烏帽子を被るその姿はまさに天狗のようだった。

 

「もしや天狗の妖怪ですか?見た目天狗っぽいし……」

 

「いえ、天狗は天狗でも、私は鴉天狗という種族です」

 

ほぅ、鴉天狗とは…聞いたことないな。まぁでも天狗っちゃ天狗だからよしとしますか、いや何をだよ。

 

「それで、その鴉天狗とやらがなんのようですか」

 

戦闘態勢に入りながら美鈴が警戒しながら聞く。こらこら美鈴、初対面にそんな怖くしたらダメですよ。あっ僕もおんなじ事してたな、にとりに。ごめんよにとり、特に罪悪感とか無いけど。

 

「いや〜それがですね?ここに住んでる河童を訪ねようとしていたら、偶然あなた達が現れてびっくりして隠れたんですよ。あっ、ちなみにその河童とは友達ですよ。それで、よく見ると外来人の人間と最近出現した館の門番の方だったので、つい記者魂でカメラで撮ろうとしていたんですよ。そしたら見つかっちゃってこんな事になったわけです。どうです、お分かりいただけましたか?それと、取材してもいいですか?凄い気になるので」

 

うん、マシンガンみたいに喋る人だなぁこの人。しかも、最後の方とか取材許可取ろうとしてるし。

もう途中から美鈴なんか欠伸して寝ようかしてたよ。こんなとこでも君は寝ようとするんだね。むしろ僕、そっちに驚いちゃったよ。かくいう僕も大半は聞いてなかったけど。

まぁ簡単に言うと、にとりを訪ねようとしたら、僕たちが来てびっくりしたから隠れた、つまりそういう事か。

すると突然、にとりの家の扉が開かれ、にとりが出てきた。留守じゃないんかい。

 

「何だか外が騒がしいなと思ったら……片倉と文が来てたのか。それと……誰?」

 

「私は紅魔館の門番の美鈴と言います」

 

眠そうな顔から急にシリアスな顔に戻り自己紹介する美鈴。

その切り替えの早さに僕びっくり。普段からそんなシリアスにしておけば、門番としてももっと格好いいのになぁ……

でも美鈴がずっとシリアスだったらそれもそれで嫌だな、なんとなく。

 

「あー…あの異変を起こした館か、よろしくねー」

 

「それよりも外来人の方!取材しても宜しいでしょうか!あっ申し遅れました、私は新聞記者の射命丸文と申します。以後お見知りおきを。」

 

「僕は片倉です、宜しく射命丸さん。」

 

「それじゃぁ早速取材を!」

 

僕の両手を取り目を輝かせながら取材をしようとする射命丸さん。どんだけ取材したいんだよ、さすが新聞記者。

でも、その前ににとりの用事から済ませたいんだが……

 

「あーその前に、私の用から済ませてもいいかな文?」

 

おぉ流石にとり、ちゃんと僕の気持ちを分かってる。

 

「えー!嫌ですよ。取材は1分1秒を争うんです!」

 

「それじゃあ、私の用事が済んだら好きなだけ片倉の取材していいから」

 

「本当ですか!」

 

おい待てそこの河童。なにあっさりと僕を売ろうとしてるんだ。別に取材は良いけど、好きなだけとは言ってないぞ。

そしてそこの新聞記者も、なに嬉しそうに了承してるんだ。

 

「今日は片倉に渡したいものがあるんだよ」

 

「渡したいもの?何それ、凄い気になる」

 

「新しい義手だよ、はいこれ付けてみな」

 

そう言って渡されたのは、今付けているものと何ら変わりない義手だった。スペアか?

しかし、1つだけ変わっているところがある。義手にボタンが何故か1つ付いているのだが…何だこれ?

 

「その義手は、今の義手よりも多くの魔力とか霊力を蓄えることが出来るよ」

 

「へぇ〜そりゃ便利だ。ところでこのボタンは一体なんですか?」

 

「フッフッフッ、とりあえず押してみな」

 

うわぁ、すげぇ嫌な予感するなぁ。このボタンを押したら大爆発するとかないよな、あったら結構洒落にならないぞ、というか死ぬぞ。

ビビりながらボタンを押す。ポチっとな。

すると、どうだろう。身体全体が光る鎧のようなものに覆われたではないか。その鎧は、鉄のような物質ではなく、パチュリーさんの使っていた魔法結界にどことなく似ているもので出来ていた。そしてとても軽い、というか重さが増した感覚が無い。

 

「おぉ!」

 

「あやや!」

 

2人も驚いている様子だ。にとりは満足したような顔でウンウンと頷いている。

やっぱり河童の技術は凄いなぁ、河童の技術は世界一ィィィ、とか言ってみたい。いや、恥ずかしいから止めとこう。

 

「この鎧は一体……」

 

「その鎧はね、魔力で構成されたものだよ。原理とかは詳しく知らないけどアリスと一緒に作ったから、性能は凄いよ!」

 

えっアリス!?アリスったら未だに僕の事を気にかけてくれてるのか……はっ!もしやアリス、僕の事が…いや、それは無いな、絶対にありえない。天地が逆さになってもありえない。

アリスはまぁよしとして、この鎧の防御力ってどんな感じなんだろうか。

 

「この鎧の防御力ってどれくらいある?」

 

「そうだねぇ……魔力の量と質にもよるけど、人が粉微塵になるくらいの爆発に晒されたとしても、平然と立って居られるくらいの防御力はあるね」

 

えっ、何それ怖い、チートじゃん。

でもこれがあれば、あの幽香さんに勝てるのでは―――いや、無理だわ。あの人のことだ、多分無理やり鎧をぶっ壊してくるに違いない。

 

「でも気をつけてね。鎧が破壊されたら、また精製するのに3時間はかかるから」

 

たった3時間で、チート機能搭載の鎧が直るなら凄い早いような気もするが、まぁ良いだろう。流石だよ河童の技術力!

 

「それじゃ、私の用事は終わりだね。後は文に任せるよ」

 

そう言い残すと作業場に戻っていくにとり。

そして目を輝かせながら、メモ帳とペンを取り出す射命丸さん。

 

「じゃあ早速取材を始めますか!」

 

ああ……こりゃかなり時間かかるタイプだわ。目で見て分かるよ。

仕方ない、だったらこっちもとことん付き合ってやろうじゃないか!

 

 

 

 

 

「以上で取材を終わります。ご協力ありがとうございました」

 

「は……はい…どうもです……」

 

――甘かった。まさかこれほどまでとは。

あれからかれこれ5時間は話していた気がする。おかげで死にそうだ。

どうせ1時間程度とたかをくくっていたが、5時間も質問攻めにあうとは考えていなかった。クソぉあの新聞記者め……覚えてろよ。

ちなみに美鈴はというと、あまりにも長すぎたせいか、途中で寝てしまった。うん、帰ったら絶対ナイフで眉間刺すわ。

 

「それじゃあ、この取材内容はありがたく新聞の話題として使わせていただきます。それでは!」

 

そう言い残すと射命丸さんは空高く飛んで去っていった。

空を見上げると、射命丸さんは小さな点くらいまで飛んで行っていた。――速くない?

 

「う、うーん。あっ終わりましたか?」

 

コノヤロー……なにスッキリした顔で起きてるんだ。――何だか咲夜さんの気持ちが分かってきたぞ……

美鈴にナイフを刺すのは後にして僕たちも帰ることにした。

分かっていると思うが帰りもあれだ。――そうあれだ。

 

「ギャァァァァァァァァ!」

 

とにかく、鎧よりも空を飛ぶ機能を追加させるべきだ。

そう思った1日だった。


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