傭兵幻想体験記   作:pokotan

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そうだ紅魔館に行こう 第3話

〜アリスの家〜

僕はアリスの家でまったりと紅茶を飲んでいた。

 

「あの館に住むことになったのねあなた。」

 

「えぇそうですよ。いやぁ短い間でしたがお世話になりました。」

 

「たまにはこっちにも来なさいよ。」

 

「そうですね、暇があれば遊びにでも来ます。」

 

そう言いながら僕は紅茶のおかわりをする。注いでくれるのはもちろん人形だ。アリス?そんなわけないだろう。

 

「それで?次は何処に行く予定なの?」

 

「うーん正直、お世話になったのアリスさんと幽香さんくらいしか居ないですし……。」

 

「そう…気をつけなさいよ。」

 

何故か不機嫌になるアリス。もしかして幽香さんと過去に何かあったのだろうか。

アリスに八つ当たりされるのも嫌なので、僕は紅茶を飲み終えると玄関へ向かった。

 

「あら、もう行くのかしら?」

 

「えぇ、人里にも寄りたいですし。」

 

「気をつけて行きなさいよ。」

 

見送られながら僕は人里へと歩いていった。

 

 

 

 

 

急に前方から何かがやってきた。

黒い服を着ている女の子…この前僕を食べようと襲ってきた妖怪だろう。

しかしその子はフラフラとおぼつかない足取りで歩いており、しまいにはその場に倒れ込んでしまった。

 

「おーい、大丈夫かい?」

 

近づくと、その妖怪はこう言った。

 

「お腹……空いた……。」

 

どうやらお腹が空いたらしい。

なにか食べ物はないものかとバックパックを漁る。すると先ほどのアリスの家で食べたクッキーが入っていた。恐らくアリスが人形を使ってさり気なく入れておいたのだろう。

僕はそのクッキーを妖怪にあげる。するとその妖怪は美味しそうにムシャムシャとクッキーを頬張っていた。

 

「美味しかった!ありがとー。」

 

「それは良かった。ところで君の名前は?」

 

「私はルーミア!お兄さんは?」

 

「僕は片倉、元傭兵さ(キリッ」

 

僕は決め顔でそう言った。別に断じて小さい子が好みとかそんなんじゃない。断じてだ。

 

「そーなのかー。それじゃ私は行くね。またねーお兄さーん。」

 

「うん、またね。」

 

そう言うとルーミアは元気に飛んでいった。飛べるのって本当に便利そうだよな。

僕は気を取直して、人里へと進んでいった。

 

〜人里〜

今はお昼を少し過ぎた辺りの時間、そろそろお昼でも食べたいところだ。

とりあえず、前に来たお店に行ってみることにする。

しかし相変わらず僕の格好は目立つなぁ。

 

 

 

 

 

「おっ!また来てくれたのかい、いらっしゃい!」

 

相変わらずここの親父は元気そうだ。

メニュー見て気づいたがこのお店、定食とかもあるようだ。

とりあえずお腹が空いていたので、定食を食べようかな。おっこの煮魚定食とかいいな。

 

「すいません、この煮魚定食を下さい。」

 

「あいよ!毎度あり!」

 

そういえば、幽香さんに初めてあったのもこの店の中だったな。もしかしたら来るかも。

そう思った時、入口から誰かが入ってきた。

一瞬、幽香さんかと思ったが、全然違う人だった。

 

「はいよ、煮魚定食お待ち!」

 

テーブルの上に大きな煮魚やご飯が置かれる。おぉ美味しそうだ。

何と言ってもこの煮魚の絶妙な味付けがいいね。甘すぎず辛すぎず、しかも身がホロホロしていて美味しい。

ご飯もつやつやで硬さもちょうどいい。この店気に入っちゃったな。

煮魚定食を美味しく頂いた後はデザートを頼むことにした。

 

「すいません、あんみつ一つ。」

 

「おっ!毎度あり!」

 

あんみつとか久々食べるな〜。あっちの世界では甘いものとか、なかなか食べれなかったし。

 

「あいよ!あんみつお待ち!」

 

さてさて、ここのあんみつはどうかな。

おぉこれはまた素晴らしい。色のバランスがいい感じに整えてある。食欲がそそられるなぁ。

僕はぺろりとあんみつを食べ終わると、会計をして、店を出る。

店を出る時、さきほど店に入ってきた女の人から声をかけられた。

 

「あなた、この店は気に入ったかしら?」

 

「えぇそれはもちろん。」

 

「それは良かったわ。私はここの常連なのよねぇ。」

 

やっぱりこの店は人気なのかな。今度アリスにも教えてあげようかな。

 

「それじゃ失礼しますね。またお会いできたらいいですね。」

 

「えぇ、そうね。それと異変の解決、流石だったわよ。」

 

扉を閉める間際、女の人が最後にそう言った。

その時は何も思っていなかったが、歩きながらその言葉の不可解な部分に気づいた。

何故あの人は異変を解決したのが僕だと知っているのか。

不思議に思った。最初は紅魔館の人かと思っていたがあんな人はいなかった。

だが今更そんなことを気にしても遅いので気にしないことにした。

 

〜紫side〜

紅魔異変を解決したのがまさかあの男だったとは、思いもよらなかった。

幻想郷に何かをもたらすと思っていたが、早くもこんな事をするとは。

 

「紫様、またあの店に行っていらしたんですか。」

 

「えぇ、あの店の料理は美味しいわよ〜藍。あなたも一度行ってみなさい。」

 

「そうですね。」

 

だけど彼はまだまだ幻想郷に様々なことをもたらすことだろう。私は隙間を見ながらそう思った。

 

〜片倉side〜

幽香さんの家に着いたが中には幽香さんは居なかった。恐らく花の水やりにでも行っているのだろう。

 

「あら?帰ってきたのかしら。」

 

どうやら戻ってきたようだ。後ろを振り向くと案の定、じょうろを持った幽香さんが居た。

 

「どうやら生きて帰って来たようね。」

 

「そうですね、“何とか”生きて帰って来ました。」

 

それは良かったわ、そう言いながら唐突に僕に弾幕を放つ幽香さん。

驚きつつも僕は瞬時にその弾幕を刀で弾いた。

 

「ちょっ!何してんディスカ幽香さん。オンドゥルギッタンディスカ!」

 

あまりに焦りすぎて、最後の方は言葉がおかしくなってしまった。オンドゥル語?知らないね。

 

「少しは成長したようね。」

 

どうやら、成長したかの確認のようだ。それにしては暴力的な確認の仕方だな。

 

「それで?何しに来たのかしら。」

 

「あぁ、ここに来た理由はですねカクカクシカジカ」

 

「やっぱり負けたのね。」

 

やっぱりって何ですか幽香さん。もしかして負けるの知ってて解決させようとしたの?もしそうだったら全力で泣きますよ。

 

「それで、あの館に住むことになったのね。」

 

「そうです。幽香さんには一応お世話になったんで挨拶しに行こうかなと。」

 

「ウフフ、律儀な男よねあなたって。」

 

そうですか?レミリアさんにもおんなじ事言われたけど、そんなことは無いような気が……。

 

「しかし、すっかり暗くなりましたね。」

 

「あら、そうね。」

 

色々と話しているうちに、外はすっかり夕方になっていた。

これじゃあ人里に戻っても、夜になるし危険だな。でもスペルカードとかあるし何とかなるかな。

 

「今日は人里に行かないで泊まりなさい。」

 

どうやら泊めてくれるようだ。いやぁありがたいなぁ。

でも何か裏がありそうな気がするのは僕だけかな?

 

「それじゃ泊まっていきます。」

 

なんだかんだで幽香さんの家で寝るのは初めてだなぁ。あの時は気絶して、地面で寝てたわけだし。

 

「なら早速、外に行きましょうか。」

 

ん?泊めてくれる筈なのに、どうして外に出るんだろう。何か嫌な予感がしてきたぞ。

 

「泊める代わりに、私と軽く戦いなさい。暇で仕方ないのよ。」

 

はい、的中しました。この戦闘狂を信用した僕が馬鹿だった。

てか、暇だから戦うとかおかしくないですか?

 

「いやぁ、どうせこの前と同じですよ?だから止めときませんか?」

 

むしろこの前よりも恐ろしい目にあいそうな感じがするんだけど……。

 

「あら、私に隠そうとしても無駄よ?あなた、かなり成長してるわよ。あと義手の力が妖力から魔力に変わってるのわよね?」

 

うぐっ、バレていたか。何故分かったのだろう。

 

「さぁ、早くしないと本気でいくわよ。」

 

「分かりました、だから本気だけは勘弁してください。」

 

魔力で形成した刀を創り出し、僕は構える。

 

「なかなか質の高い魔力ね。」

 

「それじゃ、いきますよ!」

 

刀にありったけの魔力を注ぎ込み突撃する僕。

その後は、幽香さんにボコボコにされたのは言うまでもない。

てか、幽香さん強すぎ。

 

 

 

 

 

朝の眩しい日差しが窓から差し込む。

いやぁ天気がいいと気持ちがイイね。身体中痛いけど。

結局、風刃を使っても幽香さんには全く歯が立たなかった。もしかしたら幽香さんは、幻想郷最強かもしれないな。

 

「あら、おはよう。」

 

「おはようございます。」

 

幽香さんは優雅に朝食を食べていた。ちょっとは僕の体の心配とかしないんですか?今の僕は身体中打撲だらけですよ。

 

「朝食はいるかしら?」

 

「いえ、そろそろ紅魔館に戻らないと怒られそうなんで、大丈夫です。」

 

多分怒られないだろうけど。レミリアさん、意外に優しいし。

 

「そぅ、それは残念ね。」

 

「そんな残念がらないで下さいよ。たまにはここに来ますから。」

 

「また来る時はもっと強くなってから来なさいよ。じゃないと承知しないわ。」

 

「分かりました、それではお世話になりました。」

 

うん、来るのは遠慮しておこう。

僕はお礼を言いながら固く決意するのだった。

それじゃ、紅魔館に急いで戻ろうかな。


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