いつかまた平和な海へ   作:VI号鷲型

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どうも、ストライクイーグルです。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
最近、文章が雑になってきた気がします。申し訳ありません…………
それではどうぞ!


第六話 交流

パルバラ島の南側には重爆撃機が運用可能な元英軍飛行場がある。深海棲艦はここから南方戦線向けの補給品を積んだ輸送機や、爆撃機を毎日飛ばしている。隣接している港には輸送船や艦隊が停泊している。そして北部に新たな飛行場を建設している。このパルバラ島要塞化は着々と進んでいた。そして、島の中央部にある山にへばりついている一際目立つ大きなコンクリートの塊があった。深海棲艦が新たに建設したパルバラ要塞だ。この要塞は80cm要塞砲が上陸に適した南海岸とその周辺を睨んでいる。要塞上部には矢ぶすまの如く対空砲や高射砲が配備されている。事実、ここを爆撃しようとした日本機や英米軍機を何機も落としている。そしてその周辺には多数の残骸があった。錆び付いたものからまだ落とされてから2日と経っていないものまである。

その輸送機の残骸の中に6人の英兵と1人の少女が雑談していた。

「酒が飲みたいな。そう言えば、ロンドンにカルニって店があってなそこのスコッチがうまいんだ。」

隊員の1人が酒場でのバカ話をして盛り上がる。残りはそれを聞いて笑っていた。センチュリオンは毛布を借りて眠っていた。小隊長はそれを見守っていた。センチュリオンは昨夜から朝までサブマシンガンを片手に警戒をしていたのだ。お陰で隊員達はぐっすりと眠る事が出来た。センチュリオンの寝顔だけ見れば自分の娘とそう変わらない。だが彼女は人ではない、戦う為だけに生まれた道具なのだ。その事に少し哀しみに似た感情を抱いた。

「そう言えば小隊長に娘さんが居るんでしたっけ?」

スナイパーライフルを片手に伍長が聞く。小隊長は小窓から外を眺めながら娘や家族について話し始めた。

「あぁ、生きていれば丁度高校に通っているころだ。妻はロンドンの病院で働いていたな。」

ここで地雷を踏んでしまったと伍長は気付くもそのまま耳を傾ける。

「妻の作るパイは格別に美味かった。何処の店に行っても、あのパイに勝るパイは無かった。今はもう食えないけどな。」

少し自嘲気味に小隊長は笑う。

「娘が卒業する頃には深海棲艦のクソ共が大西洋の約6割を抑えていた。俺が家でのんびりと過ごしていた。そしたら空襲警報が市内全域に鳴り響いた。それと同時に爆発音が聞こえた。あの時俺は娘を迎えに行かずに基地まで車を飛ばした。市民の避難誘導を命じられたんだ。

だが、奴らは市民を無差別に銃撃した。俺達が反撃して落としたが遅かった…………負傷者を捜索していたら見慣れたサイドテールのブロンドがあった。俺の娘だったんだ。俺は娘を抱きかかえて病院へと走った。病院のあるはずの場所には瓦礫しかなかった。妻の遺体は名前の入った赤十字の腕章を着けた腕1本だけ。そこから先は無くなっていた。娘も息をしていなかった腹に数発喰らっていたんだ。

その時は叫んだよ。それ以外は何も出来なかった。それから奴らへの復讐を誓ってこの地獄に来たんだ。」

「申し訳ありません。嫌な事を思い出させてしまって。」

伍長は詫びるが、気にするなと小隊長は笑った。そして懐から1枚の写真を取り出す。

「これが俺の家族だ。」

伍長はその写真をまじまじと見ていた。

「綺麗な娘さんですね。」

それを聞いた小隊長は満足げに頷く。 そして、伍長はある事に気が付く。

「どことなくセンチュリオンに似てますね。センチュリオンは髪はショートですが。」

小隊長も頷く。どうやら出会った頃から思っていたようだ。小隊長は時計を見て立ち上がる。

「そろそろ時間だ。行くぞ。

ほら、センチュリオン起きろ。エンジンスタートだ。」

毛布の中でうずくまっているセンチュリオンを起こす。この時、伍長はスカートの中が見えそうになり内心かなり慌てたのはここだけの話。そして彼女は自分の戦車へと走り出した。部隊も北上する為の行軍を再開する。そして、小隊は飛行機の墓場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

南国特有の南風が軍港内に吹いていた。新しくトラック泊地所属となったバザードは妖精達を集め戦術会議を開いていた。

シバリーは夕張が乗艦し、性能調査を行っていた。

レンツは駆逐艦達(主に第6駆逐隊等の面々)に連れられて間宮へと向かっていた。

「そう言えば、レンツちゃんの居たおーしあって国はどんな国なのです?」

電が興味津々といった幹事で尋ねる。

「えっ、えーと、オーシアって国は軍事力、経済力共に豊かな国なんだ。隣国のユークトバニアとも良好な関係だったんだけど…………戦争が始まったんだ。宣戦布告と同時に奇襲を受けて沈んだんだ。ごめんね。僕、これくらいしか説明できないや。」

一同はある国を思い浮かべていた。そう、かつて戦っていた国を。今度は秋月がレンツに質問した。

「レンツさんの装備ってなんか貧弱そうに見えるけどそちらの世界はそれが標準なのですか?」

窓からレンツの船体を見つめる。その隣を灰色の巡洋艦と駆逐艦が出港する。

「そうだね。僕の世界だとミサイルが主な攻撃方法だからあんまり主砲は使わないかな。」

全員、納得のいかない顔をしていた。電達の常識からならその疑問ももっともなのだが。

「そのみさいるってなんなの?」

雷がレンツの主要兵装について尋ねる。

「えーと、ジェット推進で敵まで向かって爆発するものかな?」

響はある兵器を思い浮かべていた。

「それって噴進弾みたいなものかい?」

噴進弾とはロケット弾の事だと響は付け加える。それからというものそれぞれの世界について教え合っていった。

一方その頃、トラック泊地沖合に1隻の巡洋艦と標的曳航に駆逐艦が演習海域に進入した。

「シバリー………でしたっけ?これより性能調査を兼ねて演習を行ってもらいます。」

ポニーテールに髪を纏めた少女がシバリーに指示をする。

「まず、駆逐艦の曳航している5つの標的を攻撃してください。ただし、単装砲のみでお願いします。」

「了解だ。砲雷長、目標は捕捉しているか?」

「既にロックしています。いつでもどうぞ!」

捕捉している事を確認し、攻撃を開始する。

「目標、距離5000、曳航標的。撃ち方始め!」

「了解、目標、距離5000、曳航標的。撃ち方始め。」

5インチ単装砲が旋回し標的に照準を合わせて火を噴いた。夕張からすれば物足りない貧弱な物に映った。だが、砲弾は吸い込まれるようにして標的に着弾する。続けて砲撃するがおよそ人力装填とは思えない速度で連射する。そして、命中率90%を叩き出した。

「えっ…………!?」

夕張にとっては信じられないものだ。普通、初弾夾叉ですらほぼ無いのにこの巡洋艦は初弾から命中弾を送り込んだのだ。

気を取り直し、次の模擬戦闘を行う。次は対空戦闘だ。

「これより10分間、標的機が来襲します。これを全て撃墜してください。それを聞いたシバリーの片眉が釣り上がる。するとCICから連絡が入る。

「防空圏内に航空機を捕捉。方位130、距離15万!機数15!」

この数字だけでも恐るべきものだった。

現在装備されている艦載電探は一号三型電探。その最大探知距離は凡そ15万、有効探知距離は編隊で10万だ。単機だとその半分まで落ちる。

「夕張、兵装に制限はあるか?」

突然、兵装制限について尋ねられる。今回は性能調査も兼ねているため制限はないと伝えた。

「よし、トラックナンバー06から15はSAMで対処する。

シースパロー発射始め!」

すると単装砲前の甲板のハッチが開き、轟音と煙と共に何かが発射される。

「なんですか今のは?」

シバリーは何も言わずただ水平線を見つめていた。数分後、

「こちらCIC、トラックナンバー06から15を撃墜。」

「ハァッ!?」

それを聞いた夕張は思わず声を上げる。だが、シバリーより沖合に展開している吹雪も何かが模擬敵機を撃墜したのを見たと無線で伝わる。それでも模擬敵機は編隊を崩さずに接近する。シバリーはCICの報告を受け、双眼鏡を覗く。

「距離2万で主砲及びCIWSで迎撃しろ。」

単装砲は来襲方向を向く。

「しーあいだぶりゅーえす?」

聞いたことのない単語を耳にする。とりあえず対空兵器というのわかった。

「距離2万、主砲砲撃始め!」

「距離2万、主砲砲撃始め!」

妖精が復唱しCICに伝達される。主砲が連射し始める。今度は模擬敵機の目の前で砲弾が炸裂し、叩き落としていく。最後の2機が砲撃をくぐり抜け、肉薄する。

「CIWS、AAWオート、撃ち方始め!」

上部のCIWSが唸り毎秒50発の速度で打ち出される20mm弾が模擬敵機を襲う。CIWSにロックされてから5秒と経たずにバラバラになった。

「敵機の全滅を確認。周囲に敵影は認められず。」

夕張はストップウォッチを止めた。捕捉してから5分で敵機を全滅させた。

「と、とりあえず演習終了です。帰投しましょう。 」

未だにあの戦闘が信じられなかったが、実際に見てしまったので認めざるを得ない。混乱している軽巡艦娘を乗せた巡洋艦はトラック泊地へ針路をとった。

 

「報告は以上です。」

何故かぐったりしている夕張を不思議に思いながら報告書に目を通す。

「信じられない報告だが、夕張と吹雪が見たというのだから事実で間違いないな。それととりあえず夕張。顔が酷い事になってるから宿舎で休め。あとはこっちの仕事だ。」

夕張は亡霊の様な足取りで執務室から去った。

提督は報告書を隅に置き、つい先程来た軍令部の命令書を開封した。

「えーと、10月5日に新人の提督と空母をそちらに派遣、貴官の指揮下に配置する。作戦命令は追って伝える……………」

しばらく執務室内が沈黙し、叫び声が響き渡る。

「な、なんだこれ。新人の教育ならわかるが指揮下に配置とか何考えているんだ軍令部は!?」

1人で混乱する提督は何かの悪い夢だと思い込み全ての思考を停止し、布団に潜り込んだ。




いかがでしょうか?
並行で物語を進めるのは大変ですね。正直に言うと厳しいです。(なんでやった……………)
そんな訳で、感想及びアドバイスをしていただけるのであれば嬉しいです。
それでは次話でお会いしましょう!

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