今回も戦闘ですが、上手くいかないですね…………
それではどうぞ!
雲ひとつない空。だが、高射砲弾が炸裂し空を汚す。
深海棲艦主力艦隊は赤城航空隊に対して防空戦闘を行っていた。この主力艦隊には空母はいない。この海域の航空戦力は哨戒艦隊のヌ級だけだが、既にバザード航空隊により撃沈されていた。
航空戦力の無い艦隊は空からの袋叩きに遭うしかない。2隻のリ級と旗艦であるル級により艦隊中心部は濃密な弾幕が展開されているが、必然的にそれを囲む駆逐艦に狙いがいく。
「雷撃隊はそのままの針路をとり、敵艦隊に魚雷を叩き込め。爆撃隊は高度4500まで上昇しろ。」
《雷撃隊、了解。アンタにお似合いの花道を贈るとするよ。》
上下関係では雷撃隊隊長は下なのたが、あの態度は未だに直らない。後でお灸を据えようと誓う爆撃隊隊長。
案の定、深海棲艦は雷撃隊に弾幕を張る。食らった艦攻が黒煙を吐きながら落ちていく。
《8番機被弾!》
《被弾、脱出する!》
《4番機が落とされた。》
次々と撃墜破される雷撃隊だが、果敢に投射点へと向かう。
「爆撃手、目標を捉えているか?」
後ろにいる爆撃手に確認をとる。
「見えてます!針路修整、ちょい右0.2!」
敵艦隊を見ると駆逐艦に水柱が立つ。どうやら雷撃隊は仕事を果たしたらしく、駆逐艦1隻を沈め、もう1隻を大破させた。だが雷撃隊もそれなりの代償を支払わさせた。10機中5機が落とされ数機が煙を吐いていた。
「爆撃隊全機に告ぐ。全機突撃せよ!」
九九艦爆が急降下爆撃を開始した。目標は駆逐艦と重巡だ。だがここで予想外の出来事が起こる。横を飛んでいた2番機が銃撃を受け、主翼を穴だらけされ海面に吸い込まれた。
「くそ!敵機だ!」
フロートをつけた艦戦が爆撃コースに入った艦爆を狙う。
《こちら4番機、ケツをとられた!たすけ…………》
言い切る前にコックピットをズタズタにされ肉片が飛び散る。主を失った機体は制御を失い、海にダイブした。
「赤城に打電!
敵戦闘機と交戦中!至急、援護を要請する。」
ル級からさらに2機目の下駄履き艦戦が発艦する。2隻のリ級からもカタパルトから射出される。
さらに妖精達を驚かせたのはその艦戦は二式水戦なのだ。迷彩は深海棲艦特有の白と黒の2色迷彩なのだ。
「あいつら、俺達の武器も使うのかよ。」
機銃で迎撃している妖精が悪態をつく。そんな事もお構いなしに元友軍機は艦爆を襲う。下駄履きの深海棲艦機とはいえ元は零戦。艦爆や艦攻を追い回すくらいの事は容易い。
「何機残ってる!?」
「恐らく5、6機だと思います。」
爆撃コースに乗った機はそのまま投弾点へ向かう。しかし、そうはさせじと艦戦が襲い掛かる。そして、今度は自機に艦戦が食らいつく。機体を滑らせ、射線から機体を逸らす。弾が機体を掠める。
《一番機!後方に敵機だ!》
言われなくても分かってると怒鳴りたいところだがその暇が無い。
その時、後ろにいた二式水戦が爆散した。それと同時に轟音と共に何かが通り過ぎる。
「なんだ!?」
すると横に大型の機体がいた。見たところ噴式戦闘機だ。細長い槍のような爆弾みたいな物をぶら下げていた。噴式機の搭乗員は発光信号を送る。
「えーと、”貴隊の救援に遅れた事を謝す。戦闘機は任せれらたし。”です。」
一通り打ち終えると噴式大型戦闘機はロールを打って次の獲物へと向かった。
艦爆の後ろにいた敵機を落とし無事を確認した。どうやら、弾は食らっていなかったようで、ホッとした。艦爆の搭乗員が敬礼したので返し新たな敵機を探した。
今回は緊急出撃の為、2機のF-14しか上がっていないがそれで充分だった。
《こちら、ハウンド2-2から2-1へ。艦爆隊が爆撃を開始しました。》
僚機から報告が入る。
「了解。ぜんぶ落とすぞ。」
艦爆の背後を執拗に追い回す深海棲艦機がいた。アフターバーナーを吹かし、一気に距離を縮める。それに気づいた敵機はバレルロールを打ち回避を試みるが、20mmの鉄の嵐がキャノピーを縫った。血糊とも航空機オイルともつかない液体が風防を染める。
一方、2-2は深海棲艦機を射程内に捉える。
「レーダーロック。FOX2!」
放たれた金属の槍はエンジンの熱を探知し一直線に向かう。深海棲艦機は振り切ろうとジンキングをするも、主翼の付け根でミサイルの信管が入り高性能爆薬に点火した。艦戦だったものが海に飲み込まれるのを確認した。
レーダーを見ると1機が果敢に背後を取ろうとしていた。恐らく、この艦戦はエンジン出力を最大にしていた。普通ならアフターバーナーを使う所だが、2-2は減速した。深海棲艦機の搭乗員はニヤリと笑ったがその後、目を丸くした。主翼が開いたのである。さらに減速し、トムキャットを追い越した。そして間髪入れずに20mmを叩き込んだ。
「こちらハウンド2-2、敵戦闘機を全て撃墜。制空権を確保しました。」
《了解、後は艦爆の仕事だ1万まで上昇して待機しろ。》
ひと仕事終えた雄猫は雲の上を目指した。
《こちら赤城、航空隊より報告。
我、敵駆逐艦3隻ト重巡1隻ヲ沈メル。残存艦ハソノママ直進中。
です。》
提督は満足そうに頷いた。敵艦戦出現の報で冷や汗をかかされたがあの大型空母の艦載機が全て撃墜し、制空権を確固たるものにした。と同時にあの大型空母が敵でなかった事に感謝した。
「テートク、砲雷撃戦デスカ?」
金剛はいつにも増して目を輝かせていた。やはり戦艦としての性なのか、戦艦同士の殴り合いを楽しみにしているようだった。
「あぁ金剛、お前の力を見せてやれ。
それと通信参謀、全艦に通達。金剛両翼を最上と三隈に固めさせろ。秋月と吹雪は赤城の護衛しつつ西方に退避しろ。オーシア艦隊も赤城に同行させろ。」
士官の制服を着た妖精が敬礼し、無線室に駆けて行った。
金剛から発せられた命令は即座に伝わり、行動を開始した。赤城は秋月と吹雪を従え、西へと向かった。オーシア艦隊も赤城の後ろを単縦陣で進む。
一方、金剛と最上、三隈は合戦準備に入る。
「一番砲塔準備よし!」
「二番も準備よし!」
「三四番、射撃指示を求む!」
35.6cmの砲身が持ち上がる。最上も観測機の発艦準備を行っていた。最上はトラック泊地で唯一の航空巡洋艦だ。
《最上観測機、発艦します!》
観測機発艦と同時に噴式機の護衛を受けた赤城へと帰還する攻撃隊が艦隊上空を通過し、母艦へと向かった。
《こちら三隈、電探に敵艦を捕捉。2分後には射程内ですわ!》
重巡改造止まりの三隈だが代わりに高性能な電探を装備していた。
そして、その他報告を受けるやいなや、提督は
「主砲砲撃戦用意!弾種、徹甲榴弾! 」
観測妖精が双眼鏡を覗く。すると黒いシルエットが水平線から現れる。
「敵艦隊、発見!単縦陣で接近中!」
「一番砲塔、目標捕捉!」
「二番砲塔、いつでもいけます!」
提督は深呼吸し、敵艦隊を見据える。
「主砲砲撃!撃ち方始め!」
「撃ちマス!Fire!」
砲身から運動エネルギーを得た砲弾が敵艦に向けて弧を描きながら滑空し、ル級周辺に着弾する。
「近、近、遠!初弾夾叉!射撃諸元そのまま!」
初弾で夾叉した。金剛と砲術妖精の技量の高さを伺わせる。最上と三隈も敵重巡に向けて砲撃を開始する。ル級から一瞬、閃光が走る。
「敵艦発砲!」
妖精が叫ぶ。それからワンテンポ遅れ、水柱が金剛を覆う。
相手は至近弾を撃ち込んできた。金剛も撃ち返す。すると2発程ル級に着弾する。1発は中央構造物、もう1発は3番砲塔に着弾した。それでも怯まず応戦するル級。
一方、最上達はリ級に魚雷攻撃を行う。それに気づいたリは回避行動を取るが1発がスクリューと舵に命中した。航行不能になった重巡は徐々に速度を落とし停止した。最上達はさらに砲撃を加える。そして弾薬庫に数発が命中し、砲弾が次々と誘爆し轟沈した。
砲弾を構造物に喰らい、艦に衝撃が走る。ル級も揺さぶられ倒れてしまう。そして、しばらく気を失った。
また、沈む前の記憶が蘇る。今度はかなり鮮明なものが出てくる。
「Heyハルナ、テートクのところに行くデース!」
私の姉だ。今戦っている相手だ。
「はい、お姉さま。」
そして、執務室へと歩みを進める。これが提督に会うのが最後とは自分は思っていなかった。
場面は変わり、荒れた海上に移る。
「金剛お姉さま、敵艦を捕捉。敵の戦艦………恐らくル級クラスと思われます。」
「Shit,このままはまずいネ。」
この時、悪天候で自軍の艦載機は飛ばすことが出来ないが深海棲艦は艦載機を飛ばし、制空権を確保していたのだ。既に金剛は艦載機の攻撃を受け中破していた。
この時、自分は戦艦に気を取られ敵潜水艦の接近を許してしまった。
「雷跡複数!金剛に向かっています!」
回避行動を開始するも間に合わない。
「お姉さま!」
無意識に速度を上げ金剛と魚雷のあいだに船体を入れる。
「ハルナ!!」
そして、右舷に衝撃が走る。3本程命中したようだ。金剛には1本も当たることはなかった。
「被害対策班、作業始め!」
妖精達が慌ただしく作業を始めるが、いかんせん規模があまりにも大きい為もう手がつけられない。
「第3隔壁閉めろ!火が回るぞ!」
「機関室浸水!排水急げ!」
「第2艦橋からの応答がないぞ!」
「3,4番弾薬庫に注水!急げ!」
「こっちにも火が……まずい爆発するぞ!退避しろ!」
そして艦首と2番砲塔が吹き飛ぶ。警報が鳴り響き内火艇や短艇が降ろされ、妖精達が乗り込む。艦首から海に引きずり込まれる。薄れつつある意識の中、別れの言葉を告げる。
「こ…………金剛……お姉さま……………どうか…………ご無事で………」
そして視界がブラックアウトした。
「ル級サン、被害ガ拡大シツツアリ砲撃不能デス。ドウシマスカ?」
痛む体を引きずり、最後の指示を出す。
「総員離艦!船ヲ離レテ!」
元妖精は敬礼し、部下を引き連れて退艦した。だが、まだ1人艦橋から出ていない者がいた。
「マダ居タノカ早ク退艦シロ。」
その妖精は笑いながら言った。
「私ハ、最後ノ命令違反デ処分サレテシマウノデ気ニセズ。」
思わずル級の頬がほころぶ。すると階段からも元妖精達が次々と現れる。
「我々モ最後マデオ供シマス。」
その言葉に目頭が熱くなる。
「アリガトウ…………」
たった一言だが感謝を示し敬礼した。元妖精達も答礼する。
そして、艦橋に1発の砲弾が飛び込み炸裂した。
いかがでしょうか?
戦闘させたものの終わらせ方が粗雑でしたね。
すいません……………
そんな訳で次回はドロップ?するかも知れません。まぁ、察しはつくと思いますが………
それではまた次話でお会いしましょう!