いつかまた平和な海へ   作:VI号鷲型

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皆様、お久しぶりです。ストライクイーグルです。
この度、投稿までに二ヶ月近く掛かった事を深くお詫び申し上げます。
今回もいつも通りとしか言いようがなく、ツッコミどころ満載ですが………
それでは、どうぞ。


第四十六話 出会い

トラック島 港

 

空襲により倉庫や一部の兵舎が破壊されてしまったトラック島に訪れた米艦娘は港に接舷させるや否や直ぐに地に足をつける。

やはり巨大な船体を持つバザードは注目の的だ。

 

「デカイなー百機は搭載してそうだなー」

 

ネイビーブルーのアレンジがかかったセーラー服を着る小柄な駆逐艦娘、カッシングは接舷作業を終えるやいなや直ぐに飛び降りてバザードを見に行った。

見上げるカッシングに同じ制服を着たポニーテールの少女が駆け寄る。

 

「カッシングちゃん!酷いよ一人で勝手に行くなんて。」

「あぁ、悪い悪い。しかし大きいよなー。なぁオバノン!」

(聞いてない………)

 

カッシングは同じように見上げているオバノンを置いて先に乗降用タラップまで行ってしまい、オバノンも急いでその後を追い掛けた。

未知の世界に足を踏み入れたカッシングとオバノンは忍び足でバザード格納庫に潜入する。

格納庫内は妖精や作業着が忙しく歩き回っていだが、多数の艦載機用の補修パーツや資材が雑多に置かれており、小柄な駆逐艦娘にとって隠れ場所には困らない。

 

「ねぇカッシングちゃん、本当に不味いよ……もし見つかったらまた怒られちゃうよ」

「大丈夫大丈夫、なんとかなるって」

 

根拠の無い自信に不安しか持たないオバノンの手を引いてカッシングは奥へ奥へと進んで行く。

そして気付けば知らない通路に出てしまった。

通路を不安そうにキョロキョロと辺りを見渡すカッシングにオバノンはある単語と疑問が思い浮かび、その疑問を引き込んだ張本人にぶつけた。

 

「ねぇカッシングちゃん、もしかしてだけどさ…………迷った?」

「…………………」

 

カッシングは何も言わないが、尋常じゃない量の冷や汗が代わりに答えていた。

焦りと不安が二人を飲み込み、パニック寸前になった瞬間に水密扉が開き、見慣れぬ制服を着た一人の少女が現れた。

二人は直感的にこの空母の艦娘だと理解したとき焦りと不安は無くなったが、代わりに絶望が支配した。

カッシングはがっくりとうなだれ、オバノンは酷く怯えていた。

 

「…………………」

 

空母艦娘は何も言わずに手を伸ばす。カッシングはオバノンを庇う様にして覆いかぶさり、来たるべき打撃に耐える。

しかしカッシングが殴られず、代わりに軽く頭に何かが乗せられ、それが前後に移動していた。

恐る恐る目を開けるとそこには優しげな笑みを浮かべた空母艦娘がいた。

 

「迷ったの?」

 

その一言で駆逐艦娘は堰を切ったように泣き出した。

 

「うわぁぁぁん!!ごめんなさいぃ!!」

 

泣き出した二人をそっと抱き締めて落ち着かせるバザード。

その効果はてきめんだ。

二人は泣き続けていたがしばらくすると落ち着いてきたのか、目を赤くしながらもバザードの目をしっかりと見ていた。

 

「ここじゃああれだから、部屋で詳しい理由を聞かせて?」

 

二人は黙って頷くとバザードの後を付いて行き、軽い事情聴取が始まった。

このトラック島に上陸したのはこの二人だけではなかった。

米艦隊旗艦のアイオワも全速力で港に向かった。それもそのはず、彼女は入港時に居るはずのない五番目の妹を見つけたのだから。

 

(まさかイリノイがこの世界に来ていたとは驚きネ。)

 

期待を膨らませてアイオワ級似の戦艦まで歩いていった。

島の反対側からは細い黒煙が未だに空に伸びていたがアイオワはそれを気にも止めなかった。

そして歩くこと五分、遂に目的の戦艦の前まで辿りついた。対空砲やレーダーアンテナ等の細部は別物と化しているが、 アイオワ級だと認識した。

あとはイリノイかケンタッキーのどちらなのかを確認するのみ。

艦内に入ろうとタラップに足をかけたその時、艤装を外した戦艦艦娘が降りてきた。

 

「ふみゃ?あなたは誰?」

「アイオワ級のネームシップ、アイオワよ。ユーはイリノイかしら?それともケンタッキー?」

「?」

 

相手の戦艦艦娘は質問の内容を理解していないのか、首を傾げていた。

 

「私はタナガー級戦艦一番艦のタナガーですよ〜。」

「What?」

 

タナガーと名乗る戦艦艦娘は不思議そうにアイオワを見つめていた。今、彼女の脳内では様々な仮説が立っては消えた。

そしてしばらくするとある結論が出た。

 

(改良型ってことかな?)

 

でなければ説明はつかない。アイオワは遠い親戚なのだと判断した。

 

(But 可愛い妹なのは確か!ならばやることは一つネ!)

 

目元は隠れているが何か笑っているのは確かだった。それを見たタナガーは撤退準備に入る。次に何されるかは想像もつかない。

と思うと突然タナガーに飛び掛った。逃げようと足を反転させた頃にはアイオワの腕が頬に触れる直前だった。

そして予想通りと言えば予想通りに衝突して倒れた。

 

「な、なんですかいきなり〜」

 

声のトーンは変わらないが少し嫌そうな顔をする。アイオワはいそいそと降りる。よく見ればタナガーの着る制服は見たことないものだった。

 

「やっぱりアナタは改良型ナノネ…………」

「あ〜、それは違うんじゃない?」

 

タナガーはアイオワの誤解を解くべく、別世界で生まれた事とこの世界に来るまでの経緯を懇切丁寧に説明した。

アイオワも最初は半信半疑で聞いていたが、後半から真剣な面持ちで聞くようになっていた。

 

「じゃあユーは赤の他人って訳デスカ?」

「そうなるね〜」

 

いつも通りの口調でタナガーは乱れた髪を抑える。その仕草と雰囲気に覇気はないが、幾多の戦闘に参加していた雰囲気があった。

それは独特の雰囲気でもあった。

大概のアメリカ戦艦艦娘は常に殺気を纏った戦闘狂かまともでも近寄り難い歴戦の風格を持つ者ばかりだ。この手のホワホワした雰囲気を持つのは大体が駆逐艦娘や輸送船娘等だ。つまりアイオワの常識からは逸脱していた。

そんな事を考えていアイオワにそっとタナガーがもたれ掛かる。

 

「まぁこれからは同じ戦艦同士として付き合いたいよね~」

「Of course!!」

 

別世界の戦艦同士が盛り上がる一方、中央棟の会議室では日米の将官が互いに向かい合いながら座り、沈黙を保っていた。

その沈黙は永遠に続くかと思われたが、アメリカ側の将官がそれを破った。

 

「今回の訪問は今後我が軍と貴軍が共同戦線を張り、太平洋から深海棲艦を駆逐するという統一目標を達成させるためのものだ。」

 

アメリカ太平洋艦隊総司令官のスコット中将が訪問目的をその場一同に伝え、その後もべらべらと長ったらしい演説を行う。

日本側はそれをただ黙って聞いていた。

そして演説が最高潮になった時、土方中将がテーブルを拳で叩き、太平洋総司令官を黙らせた。そして低いトーンで言い放った。

 

「本題に映りましょう。何が目的かね?」

 

その言葉と雰囲気に圧され、スコットは口をつぐんで座る。代わりにアメリカ側の提督の脇に座っていた一人の空母艦娘が立ち上がり、世界地図の前に立つ。

 

「我々はご存知の通り、太平洋の一部しか解放しておりません。」

 

空母艦娘の世界地図を指さす。

示してしているのは人類側が解放した海域だ。

日本側将校の大半は未だに深海棲艦の支配域の広さに唸る。

 

「しかし、日本が一部の南方海域解放に成功した報を受け取り、我がアメリカ太平洋艦隊司令部と統合参謀本部は次の攻勢目標をここに決定しました」

 

空母艦娘が示した場所に日本側将校は驚きを隠せなかったがそれも無理はなかった。

空母艦娘が示した地図上に『ハワイ』と書かれていたのだから。




いかがでしょうか?
やっとこさって感じですね。
しばらくは不定期で長くなってしまうかもしれませんが……その時は気長に待って頂けると嬉しいです。
それではまた次回にお会いしましょう。

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