いつかまた平和な海へ   作:VI号鷲型

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どうも、ストライクイーグルです…………えっ?
失踪したんじゃなかったのかって?いやー色々ありましたこれが………
学業やら友人と小説を書こう等と言う無謀な計画を持ちかけられるやらで時間が少なくなってしまいました。
待って下さった方々には非常に申し訳ないと思います。
文章はいつも通りです。
それでも良いと言う方はお進みくださいませ!


第四十四話 来援

トラック島近海

 

トラック島から遠くもなければ近くもない海域に戦艦と空母を中心とした輪形陣を組む六隻の艦影が出現する。

 

「アドミラル!もうすぐ到着よ!」

 

旗艦であるアイオワが艦長席で居眠りしている提督を起こす。

提督は眠そうに欠伸をして立ち上がる。

 

「もう着いたのか……………」

 

ぼんやりとだが地平線上に黒い島影が映る。レーダーにも島は捉えられていた。

 

「日本側に敵意が無ければ良いですけどね………」

「予め電文は送ってあるし、向こうから返事もある。大丈夫だろ。」

 

提督は手を伸ばして何処か不安げなアイオワを優しく撫でる。

彼女達からすればかつての仇敵とも言える。その”敵地”に赴くのだ、不安になるのも仕方がない。

すると前衛の駆逐艦から艦隊に向かう四つの機影を捉えた。

 

「出迎えか……………」

「………………」

 

日の丸を着けた日本機が編隊を組んで通過する。編隊の先頭にいる機がバンクを振って旋回する。

 

「敵意は無さそうだな。」

「フゥ…………………心臓に悪いネ。」

 

アイオワはそっと手の甲で冷や汗を拭う。日本機編隊は様子を伺う様に艦隊の周りを周回する。

提督は向こうも自分達と同じように気にしているのだと思い安心する。

 

「もうすぐ着くが対潜警戒を厳にな。サメ共に追い回されるのはゴメンだ。」

《その心配ならいらない!!このカッシングがついていれば潜水艦隊なんてチョチョイのチョイよ!!》

 

先ほどの聞いていたのか、前衛のカッシングの元気な声がこれでもかと響く。

彼女の心意気は良いが襲われない事に越したことはない。

 

「ハハッ、その節は頼むよ。ただあまりはしゃぎ過ぎるなよ。後が持たないからな。」

《そんな事ないもん!!》

 

提督は苦笑混じりに駆逐艦をたしなめる。カッシングは頬を膨らませてアイオワに乗艦しているであろう提督を睨む。

 

「さてと向こうに連絡を取るか………」

 

無線の周波数を合わせてトラック島港湾管理施設を呼び出す。

相手が出るまで少し時間が掛かった。

 

《こちらトラック島港湾管理局。

貴艦の所属を明らかにせよ。》

「こちらはアメリカ太平洋艦隊所属、第7艦隊旗艦アイオワだ。

本艦隊は入港する許可は得ている。確認されたし。」

《了解、湾外にて待機されたし。》

 

無線が切れると波の音が艦橋内を支配した。

艦隊はトラック島から凡そ30kmの地点で待機していた。

 

「ちょっと遅くない?」

「そうだな…………………」

 

確認で無線に手を伸ばした時、管理局から通信が入った。

 

《確認しました。入港を許可します。

ようこそトラック島へ。長旅お疲れ様です。》

「出迎えに感謝する。」

 

受話器を戻すと今度は艦隊無線に切り替えて指示を出す。

艦隊は輪形陣から単縦陣に変わり湾口を目指す。

その時、

 

《レーダーに反応!敵編隊捕捉、距離7万8000、方位180!機数不明!!》

「総員対空戦闘用意!!これは演習ではない!繰り返す、これは演習ではない!!」

 

警報が鳴り響きアイオワ艦内が慌ただしくなる。非番で寝ていた妖精達も飛び起きて持ち場へ走る。

 

「空母群より入電!

エンタープライズ、レキシントンI共に邀撃機発艦中、CAPも向かわせているそうです!」

「トラック島は!?」

「既に邀撃機は発進済みとのこと!!」

 

トラック島から空へ向かって昇る黒い点を見つける。すると聞き慣れぬ轟音と共に大型の機体が高速で通過する。少なくともレシプロ機ではない。

 

「What that!?」

 

編隊を組んで高速で艦隊頭上を通過する。アイオワの脳裏には大戦後から数十年後に制式採用された艦上戦闘攻撃機を思い浮かべた。

そんな時、通信妖精が艦橋に現れる。

 

「提督!トラック島の日本軍から連絡で援護機を向かわせたので退避せよとのことです!」

「あれは友軍か……………また聞きたいことが増えてしまったな。

よし、全艦回頭!載せてる幕僚の方々には部屋で大人しくしてもらえ。」

「いえっさー!!」

 

するとエンタープライズ、レキシントンからもヘルキャットとコルセア、ドーントレスが発艦する。

邀撃機が蒼空の彼方に消えて程なくすると最初のタリホーコールが入る。

エンタープライズは海図上に接敵したポイントに赤いピンを刺す。

艦隊が回頭した時に湾口から日本機動部隊が出撃していくのが確認出来た。

提督は制帽を脱いでそれを見つめた。

 

「全く、長く波乱に満ちた会談になりそうだな。」

 

トラック島近海上空

 

最初に接敵したのはCAPをしていた数機のヘルキャットだった。

真っ直ぐトラック島へ向かう戦闘連合を一番機が見つけたのだ。

一番機が無線に手を伸ばして僚機にエンタープライズから頼まれた伝言を伝える。

 

「おいでなすったな…………

おい野郎共!!敵を一番落とした奴には褒美にビッグEから撫でてもらえるぞ!!」

「「なにぃ!?」」

「それは真か!?」

 

案の定、食い付いてくる妖精達にニヤリと笑う隊長妖精は強い口調で無線に吠えた。

 

「だからテメェら!生きて帰るぞ!!」

「「アイアイサァー!!」」

 

深海棲艦機の戦闘連合は急降下してくる艦戦に全く気付けなかった。

それが運の尽きだった。

艦爆の銃手が見上げた時にはヘルキャットの20mm機銃が火を吹いていた。

 

《よっしゃ!!一機撃墜だ!!》

 

先陣切って編隊に突撃したヘルキャットの妖精がガッツポーズを取ったのも束の間、深海棲艦特有の白黒迷彩をした異形のコルセアもどきがピッタリと背後に食らいついた。

それに気付いヘルキャットはジンキングやシザース機動を駆使して敵弾を躱す。

 

《チクショォオオオオオ!!》

 

無理やり上昇するヘルキャットに容赦なく機銃を浴びせるコルセアもどき。すると数発の12.7mm弾が燃料タンクに命中したのか、白く細い筋を引いていた。

 

《おい!燃料が漏れてるぞ!》

《わかってる!》

 

荒々しく操縦桿を捻ってバレルロールをする。なんとか敵機を躱して反撃に移った。

一方、スクランブル発艦した米邀撃隊も重爆撃機と接触、交戦を開始する。

 

《くそったれ、ヤツら爆撃機までコピーしたのかよ。ありゃ、どう見たってB-17じゃねぇか!》

《喋ってないで撃て!》

 

二機編隊に別れて片っ端から爆撃機を襲っていく。元がB-17なだけあってそれなりの防御力を備えていたが、ピラニアの如く群れて襲いかかる戦闘機の前にはなすすべがなく撃墜される。

そのうちの二機が正面から20mmを浴びせようと仕掛けたが、その前に火を吹いて錐揉みしながら落ちてった。

 

《くそっ、新手だ!》

 

太陽から降下してきたほっそりとした機体に米妖精達は驚きを隠せなかった。

なにしろ、降下してきた相手はP-51Dに酷似した機体だからだ。

高高度戦にもつれ込んではまず勝ち目がない。

 

《高高度戦は不利だ。挑発に乗らず、二機で一機を仕留めろ!》

 

P-51Dもどきは急降下した時のスピードを活かして一撃離脱で米邀撃機を撃墜する。ある程度の空戦もこなせるドーントレスも本職の戦闘機に襲われてはひとたまりもない。

全滅を避けるためにドーントレスは先に戦場から離脱した。

それでも激しい空中戦は繰り広げられる。

一機のP-51Dもどきに二機のヘルキャットとコルセアが背後につき、弾幕射撃を浴びせて撃墜する場面もあれば、二機で一機を攻撃している最中に三機のP-51Dもどきの急襲に遭い撃墜される場面あった。

その間に戦場からすり抜けられた爆撃機は真っ直ぐ島を目指した。

その行く手を今度は紫電改や52型の零戦、そして新たに配備され烈風が迎え撃った。

 

《まさかいきなり実戦だが。大丈夫か?》

 

提督の心配そうな声が編隊長機の無線機から伝わる。

何しろ烈風はつい先程配備されたばかりの代物だ。多少は訓練されてもやはり不安にはなる。

だが、編隊長はそれを微塵も感じさせない口調で話す。

 

「大丈夫です。なんせ私達は翔鶴、瑞鶴殿に仕える身ですからね。」

 

自信満々の妖精に安心したのか、無線越しに安堵の息が漏れる。

 

「貴様ら、翔鶴、瑞鶴殿のいる島に彼奴等を近付けてはなぬぞ!」

「「応!」」

 

烈風妖精は気合いを入れ直すと爆撃機に突撃する。

烈風はその名に恥じぬ速さで爆撃機を撃墜していく。

その様子を瑞鶴は艦橋の見張り台から見つめていた。

実は瑞鶴に着艦する前に空襲が始まってしまった為、まだ烈風妖精達の顔は見ていない。

 

(お願い…………無事に戻って………!!)

 

まだ見ぬ妖精達の無事を祈る瑞鶴。すると臨時艦隊旗艦の榛名からの通信で意識が空から自分へと戻る。

 

「瑞鶴さん、聞いていましたか?」

「へっ?あっ、あぁ、どうしたの?」

 

慌てて内容を確認しようとする瑞鶴にため息をついた。やってしまったと思ったが後の祭り。瑞鶴は改めて榛名から提督から下された命令内容を聞いた。

内容は退避する米艦隊の護衛と敵機動部隊の捜索だ。

なぜ機動部隊が居るのか分かったのか聞こうとした時にそれを知っていたかのように翔鶴が割って入った。

 

「瑞鶴、今回の空襲は陸上機だけじゃなくて艦上機もいたわ。片道攻撃で無ければ彼らの帰るべき場所はただ一つ…………」

「あっ!そっか、もしかしたら近くに展開しているかもしれないってことか!」

 

見張り台からでは翔鶴は見えないが、優しげな笑みを浮かべているのは容易に想像がついた。

そして、臨時艦隊は敵の攻撃を受けることなく湾外に待機している米艦隊と合流する事が出来た。

と言っても、米艦隊とはすれ違っただけでこれと言ったアクションは双方共に無かった。

米艦隊は日本側に『No thank you』と電文を発信していたからだ。

 

「米艦隊の脇を通過中………ん?」

 

榛名の見張り妖精が米艦隊の方に目を向けると何かを見つけた。

アイオワの砲塔やデッキに日本艦隊に向かって敬礼する妖精達がいた。艦橋の方に目を向けると発光信号が送られていた。

 

「榛名さん!アメリカ艦からです!

えーっとなになに?

”貴艦隊の武運長久と航海の安全を祈る”

だそうです。

ふぅ……………」

 

その信号に榛名は複雑な気持ちになる。前世では敵であったアメリカからの信号は嬉しい反面、憎しみと悔しみが心の何処かにあった。

榛名はそれを全て振り払うと艦隊に増速を命じて逃げるように立ち去った。

 

(仕方ない……………過去は変えられないから……………)

 

遠ざかっていく日本艦隊をアイオワはそれを悲しげな微笑みながら見送った。

 

トラック島上空

 

島の上空は高射砲弾が炸裂して蒼いキャンバスを染め、白い飛行雲と弾道を示す曳光弾がラインを引いて殺戮の絵画を作り出す。

深海棲艦機と日本機が激しいドッグファイトを繰り広げる。

追いつ追われつ、落としおとされの一進一退の攻防が続く。

提督も地下壕から出てその様子を見つめていた。

その時、

 

「しれぇえええ!!!緊急事態ですぅぅうう!!」

 

通信妖精が額に汗を垂れ流しながら一枚の紙を提督に渡した。

 

「なんだ?そんなに慌て……………何ぃ!?これは本当か!?」

 

提督は顔色を変えて地下壕へと戻り、管制塔に有線を繋ぐ。

 

「管制塔聞こえるか!?提督だ!至急、西側に動かせる戦闘機を送れ!!上がれるヤツもだ!!

長官機が緊急着陸する!!」

 

その場にいた妖精や各守備隊指揮官が固まった。

実際は一瞬だが、それが数分位に感じられた。

その沈黙を破ったのはベルツ中尉だった。

 

「確かツングースカが居たはずだ、直ぐに滑走路に向かわせろ。

今すぐだッ!!」

 

ベルツは愛用のM4A1カービンを持つと地下壕を出ていった。ほかの妖精や兵士も急いで地下壕から外へ出ていく。

提督は腕を組んで目を閉じた。

トラック島防空線はまだその幕を開けたばかりなのだから。




いかがでしょうか?
ようやく本格的にアメリカ艦を出すことが出来ました。アメリカ艦娘と日本艦娘が直接出会うのはもう少し先になりそうです。
久しぶりに書いたのでちょっと出来が心配です………
次の投稿も遅くなりそうですが、気長に待って頂ければ嬉しい限りです。
それではまた次回、お会いしましょう!!


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