いつかまた平和な海へ   作:VI号鷲型

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どうも、色々と忙しいストライクイーグルです。
今回も人によっては不快な描写があります。それからいつもの文です。
「それよりも早く読ませろ!」
と申される方はお進みください。
それではどうぞ!


第二十三話 飛行場強襲

パルバラ島を月明かりが照らす。その様子を見る一人の棲姫がいた。

 

「チッ…………人間共メ……………」

 

要塞棲姫は上陸阻止失敗からずっと不機嫌だ。上陸を敢行してきた人間に、それを阻止できない末端の部下に…………

 

「マアイイ、欲シケレバクレテヤル……

タダデハナイガナ……………」

 

要塞棲姫は不敵に笑うと指揮所に消えた。

 

 

その時、海兵は前進を再開する。

目的の飛行場は目と鼻の先だ。あとは後続の部隊が到着し、作戦発動まで待機だ。

 

「来たな…………」

 

ベルツが登った丘からは丁度、滑走路が一望できた。既にエプロンには多種多様な航空機が並べられ、脇には建設中の滑走路が目に入る。作戦地図と飛行場を照らし合わせながら作戦内容を復習する。

 

「俺達はまた主力とは別行動か……………」

 

ベルツ率いる海兵隊は北側から飛行場に突入し、主力は東から突入するものだ。

 

「どうだい敵さんは?」

 

リッチモンドはステンガンを片手にベルツに話しかける。

「どうもこうもない。」

 

お手上げといった様子で肩をすくめるベルツにリッチモンドは苦笑する。

 

「仕方ないな。頼りないが主力は主力だ。」

「あの対空砲さえ無力化すればな………」

 

ベルツは銃身を空に向けている四連対空砲を指さす。リッチモンドは双眼鏡で対空砲周辺を見回す。

 

「近づくのも容易じゃないな…………滑走路を横断しなければならんが……………」

 

リッチモンドも渋い顔をする。手持ちの兵力での横断は不可能だ。

 

「とりあえず、今日は休むとしよう。明日、作戦決行だ。」

 

ベルツは早々にテントへと戻って行く。リッチモンドはじっと滑走路を見つめていた。

 

 

 

 

翌朝

 

この日もよく晴れた日だった。

飛行場東側では既に二個機甲部隊が展開、突撃の用意を整えていた。

 

「1025……………作戦開始だ。」

 

ベルツも合図を送り、海兵と共に飛行場に向かう。

予定では爆撃と艦砲射撃が行われ、その直後に突撃するものだ。

 

「小隊、前へ!」

 

遠くでは爆発音と航空機の通過音で騒がしくなる。北部飛行場攻略戦の幕開けだ。

主力にはチヌを先頭に滑走路に侵入する。既に滑走路には砲撃により大きな穴が出来ていた。

 

「行くぞ海兵!」

 

エイブラムスのエンジンが甲高い音を響かせて歩兵の前に出る。飛行場守備隊から激しい銃撃を跳ね返すエイブラムス。

 

「止まるな!進め!」

 

海兵隊員達は破壊された航空機の残骸に身を隠す。

 

「くそったれ!SMAWはあるか!?」

「あります!」

 

一人が弾幕を張っている機銃陣地に向けてSMAWを構える。銃手がそれに気づいたのか構えている海兵隊員の方に弾幕を張る。

 

「クソ!気づかれた!」

 

咄嗟に身をかがめて回避する。その直後に金属同士がぶつかる甲高い音が鳴る。

 

「主力は!?」

「主力も釘付けにされている様です。」

 

ベルツは舌打ちする。航空隊は対空砲弾幕と南部から発進した航空機に阻まれて効果的な爆撃が行えずにいた。

 

「せめて対空砲さえなんとなれば…………」

 

それを聞いたリッチモンドは突然、排水溝まで走る。

 

「おい、何してる!?」

「ちょっとした”お出掛け”だよ。ダン、アレン、ついて来い!」

 

そう言うとリッチモンドは隊員を連れて排水溝の中に消えた。

そして、近くに一発砲弾が撃ち込まれ、着弾点にいた数人が吹き飛ばされる。

 

「畜生、迫撃砲だ!」

 

ベルツは反対側の格納庫に目をやる。そこには排水溝を抜けたリッチモンド達が忍び込むのが見えた。

 

「何するんです?」

「対空砲をパクるぞ。」

 

その言葉に首を傾げるダンとアレンをよそにリッチモンドは姿勢を低くしながら対空砲に近付く。

 

「調子はどうだい?」

<!?>

 

そのまま対空砲を操作している深海兵の喉元にナイフを突き立てる。

 

「やっぱりウチの小隊長はイカレてるな。」

「あぁ……………ってそれよりも援護しろ。」

 

リッチモンドは対空砲を乗っ取り、機銃陣地にいる銃手を薙ぎ払う。

 

「機銃陣地沈黙!前進!」

 

エイブラムスとセンチュリオンをが一気に滑走路を横断する。海兵達も一気に走り抜ける。

それを見た日本軍指揮官も部下を鼓舞する。

 

「おっ!?おい!他の部隊に遅れをとるな!」

 

日本兵達も突撃を開始する。突然の狂ったように突撃する日本兵を見て深海兵は寒気がした。

 

<なんだあいつら!?>

<ぼっーとするな!撃て!>

 

その時、後ろで爆破が起こる。何事かと振り返ると弾薬庫が爆破さていた。

 

「コリンズ、B隊を率いて司令部を制圧、C隊は援護。残りは私に続け。」

「ラジャー。」

「A隊、行くぞ。」

 

ベルツはコリンズと分かれて攻撃を開始する。飛行場全体で銃撃戦が繰り広げられる。男達が叫び、爆発音がこだまする。

 

「突入するぞ、C4とフラッシュバンを用意!」

 

コリンズとB隊は司令部前まで進み、扉にとりつく。

 

「ゴーゴーゴー!!」

 

起爆と同時にフラッシュバンを投げ込む。その場にいた深海兵の大半がその場で耳を塞ぎ、目を庇う。そして、何が起きたか判らずに片っ端から脳天を貫かれて死んだ。

 

「クリア!」

「そこら辺を調べろ。何か情報があるかもしれん。」

 

一人が散らばった書類を漁り、何か役立つ情報がないかを調べる。残りは周辺の警戒と奪還しに来た部隊と交戦していた。

 

「コリンズ軍曹、色々見つけました。」

「袋に詰め込んどけ。」

 

その時、隣の部屋から物音が聞こえ警戒する二人。

 

「な、なんでしょう?」

「さぁ?だが、何かいるというのは確かだ。」

 

二人は意を決して扉を開けた。

 

「動くな!武器を床に置け!」

 

その先には一人の白い少女がいた。その少女は拳銃をこちらに向けていた。

 

「ク、クルナ。」

 

よく見ると脇には滑走路のような板切れなどがあった。

 

「棲姫クラスの幼体?」

「確保しろ。」

 

コリンズは構えている右腕を撃ち抜く。

 

「……………!」

 

その瞬間にもう一人が押さえつける。少女は抵抗しようともがく。

 

「軍曹!手伝ってください!」

 

コリンズがポケットから注射を取り出し、少女の首筋に打つ。

麻酔が効いてきたのか少女は動かなくなった。

 

「ふぅ…………もうこんなのはこりごりだ。」

 

二人が司令部から出ると既に戦闘は日本軍の勝利で終結していた。

 

「ベルツ中尉、棲姫クラスの幼体を確保しました。」

「本当か?」

 

後ろから幼体を抱えた海兵隊員が来る。ベルツはただ唖然としていた。

 

「これは後送した方が良さそうだな。暴れられては対処できん。」

 

すると、一台のくろがねが停る。中から一人の軍刀を携えた士官が降りる。

 

「貴官が海兵隊の指揮官か?」

「そうでありますが?」

 

ベルツは何か嫌な予感がするが、すぐに振り払う。士官がゆっくりと口を開く。

 

「貴官はよく働いてくれた。私としても感謝している。

そこで、一つ頼みがある。」

 

コリンズは懐疑の目で士官を見つめる。

 

「あの幼体を護送して欲しい。

飛行場の後始末はこちらでする。」

「了解しました。」

 

コリンズはため息をついてハンヴィーを呼び寄せる。ベルツは敬礼してその場を去った。

 

「よろしいので?あいつ、明らかにこちらの手柄を横取りするつもりですよ。」

「良いんだ。元々、手柄なんぞ要らないと思っていたからな。

それにもしかしたら我々は護送を名目にトラック島に帰れるかもしれない。」

 

ベルツはニヤリと笑う。コリンズも笑う。ベルツは海兵隊員達に護送の準備をさせる。そこへリッチモンドがやってくる。

 

「ベルツ中尉、さっきは感謝する。」

「いえいえ、こちらこそ感謝します。」

 

すると、リッチモンドは何か言いたげな様子だった。

 

「どうしました?」

「なぁ、ウチのセンチュリオンを引き取ってくれないか?」

 

その提案に驚きを隠せないベルツ。だが、リッチモンドの表情は真剣そのものだった。

 

「何故ですか?その理由を聞かせてください。」

 

リッチモンドは自嘲気味に笑いながら理由を話し始めた。

 

「ウチの小隊にもう居させてやる事は出来ない。元々、歩兵を主軸とした部隊だ。アレはただの拾い物だよ。」

 

ベルツはその言葉で全て理解し、その提案を呑んだ。

 

「分かりました。こちらに転属させます。」

「助かる。」

 

リッチモンドは深々と頭を下げ、センチュリオンの元へと走っていく。

その時、警報が鳴り響く。

 

「敵機来襲!!!」

 

兵士達は一気に塹壕やトーチカに逃げ込む。ベルツも傍にあったコンテナに身を隠す。機銃掃射を行おうとする艦攻に機銃で対抗する。

 

「クソ!スティンガーは!?」

 

スティンガーを構えていた射手が艦攻に狙いを定める。発射機から細長いミサイルが艦攻のエンジン部分目掛けて飛翔する。ミサイルに追いつかれた艦攻はバラバラになった。

 

「敵機撃墜!」

 

各部隊の指揮官は損害を確認する。海兵隊に損害は無かった。

が、英軍残存部隊と日本軍の一部は甚大な被害を被った。

 

「隊長!隊長、しっかりして下さい!」

 

センチュリオンが一つの男性にすがり付き、泣いていた。ベルツはそれがリッチモンドだと判別するのにそう時間はかからなかった。

 

「軍曹……………衛生兵!衛生兵は何処だ!」

 

リッチモンドは首だけ起こし、ベルツを見据える。

 

「全く、肝心なとこで悪運が尽きたか……………」

「軍曹、すぐに衛生兵を呼んでくるの「その必要はない」なんでです?」

 

リッチモンドは空を見つめ、息絶えだえに話す。

 

「やっと…………死んだ家……………族の元……………に帰ることが……………でき………る…………か……………」

 

リッチモンドはその言葉を最後にこの世から去った。センチュリオンは必死にリッチモンドを起こそうとしている。ベルツはヘルメットを脱ぎ、敬礼する。

 

「海兵、移動用意……………センチュリオン、行くぞ。」

 

ベルツは自分の部隊戻って行くりその場には泣き声だけが虚しく響いていた。




何がしたいのやら……………ただその一言に尽きます。
それから、更新が不安定な状態についてお詫び申し上げます。なにせ学業の方が忙しく、時間が取りづらい状況なのです。
そんな作者ですが、今後よろしくお願いします。
それではまた次回お会いしましょう!!

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