波の音が聞こえる。私はゆっくりと目を開けた。そこには青空が広がっていた。
「な………なんで?私はイーグリン海峡で沈んだ筈なのに。」
ふと起き上がろうとすると身体が重い。上半身だけ起こすと視界には自分の飛行甲板とアイランドそして2本の足が入る。触って見ると確かにそこにある触られている感触もある。
「うそ………人間になってる?」
それもこの体に対する違和感が全く無い事に驚いた。
「誰か居ないかな?」
ふと起き上がり艦橋に上がる事にした。難なく艦橋に辿り着いても誰も居なかった。無性に誰かに会いたい衝動に駆られると、
「バザードさんどうしました?」
背後から声を掛けられる。振り返るとパイロットスーツを着たサイドテールの少女がいた。
「貴女は?」
「私はF-14Dの妖精です!」
元気良く応えるが何がどうなっているのか皆目見当もつかない。
(妖精?)
ふと疑問が湧くがその疑問を聞いたかのように、
「あなたは艦娘さんになったのです!その艤装とこの艦を動かせることが証明しています!」
「艤装?」
確かに肩には飛行甲板のような盾があり腰周りにはミニチュアサイズのCIWSとスパローSAMやレーダーがあり、手にはカタパルトと模したボウガンを持っており、オーシア国防海軍の制服で色はグレーのものを着ていた。
「貴女はF-14Dの妖精って言っていたけど、艦載機は見当たらなかったよ?」
「今、皆は格納庫で待機しているんです!」
ここで妖精(編隊長)に疑問を投げ掛けてみたがその全てを解決する事が出来た。
この世界は深海棲艦と呼ばれる正体不明の艦艇群により制海権を失う。それと同時に世界各地で艦艇の付喪神が現れた。その名を艦娘と言う。人類側は艦娘や妖精と協力し海を解放する為に戦っているのだ。
「なるほど。つまり此処は別世界と言うことなのね?」
「そーですね。」
また少し疑問が湧く。
「聞くけど私の持ってる艦載機は何があるの?」
ピシッと直立になると妖精は
「F-14Dは20機、F/A-18Eが30機、F-35Cが20機、AV-8Bが5機、EA-6Bが5機、E-2Cが2機、MH-60が2機、SH-60が2機、AH-1Zが2機います!」
正直、驚きの一言に尽きた。これだけあれば艦隊の1つは殲滅出来るのだから。
「バザードさん!」
妖精に呼び止められ、ハッとする。
「今日はどうします?とりあえず自分達で決めた哨戒のローテーションで哨戒に当たりますけど良いですか?」
こくりと頷くと妖精は敬礼しそのまま艦橋から去った。ふと甲板を見ると、先程まで居なかった筈の発艦要員達が慌ただしく動いていた。カタパルトまでF/A-18Eを誘導していた。発艦要員がサインを送り、F/A-18Eが打ち出される。今回は哨戒兼偵察だ。いつどこで深海棲艦が現れるかはわからないからだ。早速、敵艦隊発見の方が入る。
《敵深海棲艦艦隊を発見。方位215、速度25ノット、駆逐艦3、軽巡洋艦2、重巡洋艦1、航空機の存在は認められず。》
通商破壊艦隊と思われる編成だ。私は妖精達を集め簡易ブリーフィングを開く。
「私達の初出撃です。目標は重巡洋艦を旗艦とした深海棲艦通商破壊艦隊です。目標付近には航空機は確認されていませんが充分注意してください。各編隊長は速やかに攻撃隊を編成、この艦隊を撃破してください。」
妖精達は隅に集まり編成を確認する。
飛行甲板では発艦要員(妖精)が慌ただしく動き、攻撃隊に参加するF/A-18Eに対艦ミサイルや爆弾を搭載する作業に追われている。
「敵旗艦は俺が頂くぜ!」
「抜かせ!今回のエースは私のもんよ!」
片隅では一部の血気盛んな妖精達が騒いでいる。
そうこうしているうちに護衛のF-14Dが打ち出される。今回はF/A-18Eが10機、F-14Dが10機、計20機程の編隊が蒼空の彼方へと消える。
今回の編隊長機であるF/A-18E妖精は針路と座標を再確認していた。
《こちらハルバードリードからハルバード隊各機に継ぐ、間もなく目標の敵艦隊を視認する。戦闘空域到着後は各機の判断に任せる。》
無線で部下に伝える。護衛部隊は上空で援護体制を整える。
《ハルバード2-3からハルバードリードへ
目標の艦隊を視認しました。》
《了解だ。各機、我々の初陣だ。我々ハルバード隊の実力をバザードさんに見せてやるぞ!攻撃開始!》
攻撃隊は二手に別れた一隊は急降下爆撃を行う為高高度へ、残りの一隊は対空砲火を潰す為に急降下爆撃隊より低い高度をとる。護衛のF-14は編隊を組み直し上空で援護位置につく。
深海棲艦からは対空砲火が放たれるがF/A-18Eの速度が速すぎ全ての弾が置いていかれる。そのうちロケットポッドを装備したスーパーホーネットが対空砲を潰していく。
《こちらハルバード2-2、爆撃コースに入った。これより突入する。》
急降下爆撃隊が突撃する。イ級の1隻が気付き弾幕を展開するも既にGPB(誘導貫通爆弾)が投下されていた。レーザー誘導により制御フィンで微調整された弾頭はイ級の装甲板を貫通し艦内で爆発した。軽巡達は旗艦を守るべく対空砲弾幕を張るが、僅かな隙間を縫って数機が輪形陣の内側に侵入した。この侵入した数機は軽巡達にロケット弾の雨を降らせた。そして対空砲火が次第に弱まり沈黙した。
リ級は高角砲で急降下爆撃隊を迎撃するがシースキミングをしているスズメバチに気付くのが遅れた。獰猛なスズメバチは旗艦に照準を合わせ、対艦ミサイルを叩き込んだ。そしてリ級は海面から僅かのところを飛行していた対艦ミサイルの餌食となった。
《ヒャッホー!見たか深海棲艦共!ざまあみろ!》
《ハルバード2-4の野郎が敵旗艦を撃破したのかちくしょう!》
《私なんか瀕死のイ級1隻だけだもん!》
それぞれ戦いを振り返るというよりも悔しさしか言っていない。(約1名を除いて)
《こちらバザード、攻撃隊は直ちに帰還してください。》
無線越しから聞いていたが続きは艦内でしてもらわないと永遠に帰ってこなさそうな雰囲気だ。
《こちらハルバードリード了解、帰投する。》
編隊を組み直し母艦の元へと戻っていった。
飛行甲板では着艦作業に追われていた。戻った妖精達は待ってた仲間に自慢げに話をしていた。やはり2-4の話題がメインだ。
「そんでもって俺が対艦ミサイルを叩き込んでやったって訳よ。」
一同から歓声ややっかみが飛ぶ。
「確かにタイミングはバッチリだったな。」
編隊長である妖精も褒める。
「へへっ!」
褒められた妖精は自慢げに胸を張る。
「じゃあ次の獲物は戦艦か?」
と1人の妖精が冗談交じりに聞くと
「もちろんよ!」
と、威勢よく宣言する。聞いていたバザードとしては戦艦には出会いたくない。ある程度の装甲があるとは言え所詮は紙装甲だ。一撃で大破、最悪の場合撃沈なんてことも充分有り得る。
が、ここで水を差す訳にもいかないので黙っていることにした。慌ただしい飛行甲板を後にし艦橋へと向かう。
今後の行動予定と進路を決めるために長のつく妖精を集めた。
「これから私は南方に向かおうと思うけど、皆の意見を是非とも聞かせて。」
それぞれ分野から今後の行動を分析する。航海長妖精が沈黙をやぶる。
「航海長としての意見は賛成と言いたいところですが、問題があります。」
そう言うとそれぞれの戦況と、深海棲艦艦隊の大まかな位置が記されたを引っ張り出し、中部方面に引かれている線をなぞる。
「此処が今私達のいる中部海域ですがまず、私達が南方に向かうにはこの敵哨戒線を突破しなければなりません。」
飛行群司令妖精が前に出る。
「我々の航空戦力なら何とかなるのでは?」
何故かバザードにいる特殊部隊妖精と海兵隊妖精が異を唱える。この妖精達は妖精達の陸戦訓練を指導している。
「恐らく、敵哨戒艦隊は先程交戦した艦隊と似た編成が多いが、交戦よりまず後方の主力艦隊に連絡する事を重視している筈だ。」
その意見に賛同する面々。ここで海兵隊妖精が口を開く。
「そこで俺達が考えたのが、哨戒線の隙間を縫って進むってことだ。」
飛行群司令と航海長妖精が反対する。
「そればっかりは無理だな。SH-60を飛ばして対潜哨戒をさせたが1時間飛んで3隻程、敵潜水艦を見つけた。」
「それに見つからないようにするにもこの船体を隠せる島はありませんよ。」
早くも議論は暗礁に乗り上げてしまった。ここで今まで黙っていた。ここで今まで黙っていた砲雷長が喋る。
「ならば両方と言うのは?」
一同が砲雷長を見つめる。
「おいおい、今までの話を聞いていなかったのか?」
海兵隊妖精が噛み付く。
「バザードさん、今保有している艦載機は?」
バザードから保有機の確認を取ると、確信を得た笑みを浮かべる。
「少々難易度の高い戦術ですが、電子戦機を活用する戦術です。」
一同が首を傾げる。
「それはどういうことだ?」
飛行群司令が尋ねると、にやりと砲雷長は笑う。
「これはまず先制発見が重要なのですが、予想針路に毎日索敵機を発進させ、発見しだい空母に報告、そして電子戦機を含む攻撃隊を発進させるのです。電子戦機には無線封鎖の役割をになってもらいます。」
その瞬間、一同は納得する。
つまり、相手に発見されても報告させなければ良いのだ。
バザードも頷く。
「航海長は針路作成を。他の部署にも同様の通達を。以上。」
敵哨戒線突破作戦の立案が急ピッチで進んだのは言うまでもない。
そして、その中部海域には深海棲艦ではない艦隊も向かっていた。
やっとこさ艦これの世界に混ぜこみました。実を言うと作者は艦これ未プレイです。すいません。
それと戦闘描写が上手くなりたい…………
誰か上手くなる方法を教えて下さい。
それではまた次の話で!