ここ最近、話のタネが全く浮かびません。
今はストックでなんとかなっていますが、更新が遅くなる場合もあります。ご了承下さい。
それから相変わらずの文なので読む勇気のある方だけお進み下さい。
それではどうぞ!
帰ってきた天龍は浮かない顔で報告してきた。今回は突発的な作戦なので失敗するのは仕方ないと提督はなだめていた。
「俺の責任だ。詫びの印にこの金で艦隊全員を間宮に連れて行ってくれ。」
金渡された天龍は肩をすくめる。
「やれやれ、甘ちゃんなのは変わらないな。」
提督は返す言葉が無く苦笑した。
「わかった。駆逐艦のチビ達を連れて行ってくる!」
天龍は勢い良く扉を開けて駆逐艦宿舎へ向かった。提督は椅子に座り書類の山と戦い始めた。資材請求書が多いことにため息が自然と出る。それに明日までにやる事をしなければならない。それと便箋を取り出し、ある人物へ手紙を書いた。宛先には『西行寺 幽々子』と書かれていた。
射爆場では日本軍の戦車に混じり、エイブラムスが射撃訓練をしていると、
「貴女が新しい陸娘か?」
清楚な感じの陸娘が砲塔に立っていた。
「そうだが?何かご要件でも?」
双眼鏡を覗き、的までの距離を測定する。陸娘は軍刀を置き、エイブラムスの横に座る。
「チヌから聞いたわ。貴女は重戦車並の性能を持っているってね。」
その言葉を聞いて笑い出す。陸娘は少しムッとする。
「何が可笑しいの!」
エイブラムスは笑いながらこう言った。
「ハッハッハッ、面白いなお前さんは。あたしらが重戦車と肩を並べられるとはねぇ…………いやなんとも面白いジョークだよ。」
陸娘が反論する前にエイブラムスが口を開く。その顔に先ほどの笑いは無かった。
「確かにこの時代なら重戦車と同格………いや、それ以上かもしれない。でもな、アイツらがもしあたしと同格の兵器を生み出したら?そうなれば人類はお終いだよ。」
ヘルメットを脱ぎ、自分の髪を撫でる。陸娘はただ見ているしか無かった。
「元々いた時代の戦争はこんな生易しいもんじゃない。同じ国の人間通しで殺し合い。その度に多くの罪無き人間の血が流れた。金で主義主張が変わってしまう時代だったんだ…………」
陸娘は想像するだけでも寒気をがした。目の前にいる陸娘は人間の欲望で大量殺戮が始まる時代に生まれたのだ。そんな事を考えているとエイブラムスから質問された。
「なぁ、あんたは子供を殺した事はあるかい?」
陸娘ははっきりと答えた。
「私は中国戦線にいた事があるがそんな事はしなかった。」
すると羨ましそうにでも何処か悲しげ顔でエイブラムスは頷いた。
「あたしは殺した事がある。」
陸娘にとっては衝撃的だった。民間人を殺す事は営倉入りを意味する。陸娘は嫌悪感を抱いた。だが、気にせずエイブラムスは続ける。
「あれは中東だった。
あたしは掃討作戦に参加していて周りには歩兵二個小隊がいた。その時一人の男の子が歩いて来た。その手に対戦車手榴弾を握って。気付いたのは中の乗員だけ、周りは建物を警戒していた。砲手はその子に7.62mmを撃ち込んだ。」
エイブラムスは自分の手を見つめる。陸娘もその手を見る。
「あたしは敵を殺す為に生まれた。それでも小さい子を殺すなんてことはしたくなかった。もうこの手は血で汚れているのは承知だった。でも、小さい子の血で汚した。その日から今まで殺した、兵士の悲鳴が聞こえるようになった。耳を塞いでも聞こえる悲鳴が…………それと同時に人が死んでも何も思わなくなっていったよ。」
エイブラムスは空を見上げる。雲一つ無い青空だ。だが、エイブラムスの顔は濡れていた。陸娘に先ほどの嫌悪感は無かった。あるのは哀れみと自分もいつかなってしまうのかという恐怖だった。
「すまない………少し……一人にさせてくれ。」
陸娘は降りようとした時に背後から声がかかる。
「あんたの名は?」
陸娘は降りる前に自分の名を告げた。
「私は九七式中戦車チハだ。」
エイブラムスは無言で頷き、また空を見上げる。チハはそのまま自分の隊舎まで歩いた。
執務室ではかつてない緊張感で満たされていた。部屋には提督とバザード、大淀そしてもう一人将官がいた。
「いや矢坂君、そう固くならずに座ったらどうだ?」
提督はぎこちない様子で座る。その様子を見た将官は苦笑いする。
「君の父には何度も世話になったな。どうだ、ここの様子は?」
思わず立ち上がりそうになるが将官はそれを手で制した。
「はっ、ここの所、目立った攻撃は無く平穏そのものであります中将。」
すると中将はバザードを見ると
「ところで君の艦載機は全て噴式機だったな。」
「はっ、そうであります。」
軍人として完璧に答える。
「なら乗せてくれないか?」
「りょうk……………えっ?」
思わず耳を疑った。将官自ら乗ってみたいと言う前代未聞の出来事だ。しかも命令ではなく頼むという形で。
「乗せてくれないのか?」
少ししょげる中将。バザードは緊急事態と口パクで伝える。提督は乗せろと一言。
「わかりました。すぐに腕の良いのを集めます。」
そう言ってバザードは部屋から去った。中将は子供のように喜んだ。提督は冷や汗をそっと手の甲で拭った。
しばらくしてパイロットスーツを持ったバザードが現れた。
「中将、準備が整いました。どうぞこちらへ」
中将は満足そうに頷きバザードについて行った。
中将は既にパイロットスーツに着替えていた。
「これがその艦載機か…………素晴らしいな…………」
滑走路に駐機してあるF-14を見て感嘆する中将に編隊長妖精が近付く。
「中将殿、今日は本機にご搭乗頂き大変光栄に思います。」
妖精が深々と礼をする。中将は困った顔をする。
「これから同じ空を飛ぶ者同士だ。気にするな。」
中将は早々と副操縦席に座る。妖精は中将に注意と脱出の手順を説明する。
「いいですか。計器には触れないでください。それと脱出する時は頭の上のハンドルを引いてください。そうするとキャノピーが吹き飛んで座席が射出されます。それから安全高度で自動的にパラシュートが開きます。」
「わかった。さぁ、行こうか。」
管制から気象情報が入る。
《管制塔よりハウンドへ。
北西の風 0.5ノット。周辺空域に機影は確認出来ず。ハウンド2-1、離陸を許可する。》
「了解、ハウンド2-1離陸する。」
エンジンを始動する。
「回転数良し。全動翼及び計器類異常無し。テイクオフ。」
徐々にF-14は加速する。この時でも既にレシプロ機の加速を超えていた。操縦桿を手前に倒す。そして大型の雄猫は空に舞い上がる。
「一気に高度1万5000まで上がります。」
スロットルを奥に押し加速する。主翼が畳まれる。
「主翼が動いたぞ!」
「えぇ、主翼がその時の速度によって角度が変わるんです。減速すれば主翼がまた開きますよ。」
興奮気味の中将に簡単に説明する。
ふと今、酸素マスクとヘルメットで覆われている自分の表情が気になった。こんなに平和な空を飛んだのは久しぶりだ。ウスティオの時からずっと戦いの中を飛んでいたのだから。
「なあ、君はいつから空を飛んでいるんだ?」
質問を受けた妖精は返答した。
「わかりません。気付いたらといった具合です。」
ミラー越しに中将を見やる。中将はこちらをじっと見つめていた。すると計器からアラートが鳴る。
「どうした?何か異常か?」
計器類は全て正常だった。レーダーには自機の他に四つの点が映っていた。
「中将、敵機です。」
中将は厳しく問いかける。まるで部下をどやしつける直前のようだった。
「逃げ切れるか?」
妖精は即答した。
「やってみせます。でもキツめに行きますよ!」
「構わん。俺も元は戦闘機乗りだ。」
中将は自信あり気に伝えた。F-14は主翼を開いて減速し、ロールを打って降下する。敵機はこちらの位置を知っているかのように展開する。
「早い………」
敵機が見えないがその内の一機がサイドワインダーの射程に入る。イヤホンから電子音が鳴り、トリガーを引いた。発射されたサイドワインダーは雲の中に消えた。数秒後に爆発音が遠くから響く。
「中将、大丈夫ですか?」
振り向くと中将は親指を立てていた。まだまだやれるようだ。
「管制へ。こちらハウンド2-1、敵機と遭遇。現在交戦中。」
《了解、そちらに援護機を送る。到着予定は5分後。》
妖精は舌打ちした。振り切れなくないが敵機を連れてくる羽目になる。それだけは避けたかった。すると
「援護機は無いものと心得よ。私の事は忘れて奴らを蹴散らせ。」
中将が低く厳しい声で妖精に伝える。妖精は呼吸を整え、敵機を追尾する。
「ターゲット捕捉。機種はヘルキャットか。」
すかさず赤外線シーカーを起動し、サイドワインダーに目標を教える。
「FOX2、FOX2」
サイドワインダーはヘルキャットの発する熱を探知、一直線に向かう。ヘルキャットは錐揉み降下で逃げるもサイドワインダーが追いつき爆発する。
「スプラッシュ1!」
するともう二機のヘルキャットが慌てて機首を向ける。
「バカめ………」
フェニックスAAMに切り替え、二機同時にロック、そして発射した。二機はそのまま真っ直ぐ進む。向かってきたヘルキャットを発射された不死鳥は地獄に送り返した。
「こちらハウンド2-1。全機撃墜を確認。これより帰投する。」
一狩り終えたトムキャットは機首をトラック泊地に向けた。
「申し訳ありません中将。」
妖精が頭を深々と下げる。中将はまたも困った顔を見せる。
「何を詫びる必要がある?敵機は全滅。私も無傷だ。これ以上の良いことはない。」
それでも妖精は頭を下げたままだ。これはテコを使っても上がらないだろう。迎えに来た提督は何処か落ち着かない様子でやりとりを見ていた。
「仕方ない……………
では貴様に命ずる。可及的速やかに頭を上げろ。」
命令となれば上げざるを得ない。中将はその勢いで続けた。
「それに貴官の操縦技術は天下一品。私は未来の機体に加え素晴らしい戦闘機乗りに出会えたのだ、感謝する。」
中将が頭を下げると妖精と提督は慌てた。
「ち、中将…………」
顔を上げると中将は笑っていた。
「君もなかなか優秀な部下を得たな。今後も頼むぞ!俺はこれから本土に報告する。
また会おう。」
そうすると中将は提督達の前から去った。提督は汗を拭いて妖精をじっと見る。妖精はずっと立ち尽くしたままだ。
「俺は執務室に戻る。あとで戦闘報告書を提出しろ。」
これだけ言い残すと提督は執務室まで歩いていった。滑走路には妖精とその愛機だけが残されていた。
いかがでしょうか?
今回はまた一段と酷いものですね………
感想やアドバイスを頂けると嬉しいです。
要望募集については活動報告に載せましたのでそちらも何かしらあれば気軽にどうぞ。
それではまた次話で!