とある魔術の黄金錬成   作:翔泳

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なぜそうなる

 

「ねぇ兄さん」

 そう呟いたのはアウレオルスの隣りを歩くパラミラだった。

「何だい?」

 妹によるドッキリ作戦が実行されて後、二人は外出することとなった。

 一応、パラミラは学園都市に潜入しスパイを行うと言う名目でこの場にいるらしいので、最低限この学園都市について知る必要があるとのことだった。

 大方、公表しても問題ないモノに関しては外部に発信されているので、データとして入手可能であるが、実際に目で確かめると言うことは重要なことだ。

 『百聞は一見に如かず』と言う言葉は、世界共通語であるのと同時に、科学も魔術も関係なく存在しているらしい。

「何故か、周りの目がこっちに集中しているのは、気のせいじゃない?」

 男女のカップル。と言う構図なら現にアウレオルスとパラミラ以外にも数組が視界に入る圏内でも見て取れる。

 問題はそこでない。

「フム、それはパラミラ、君の服装に問題があるのではないか?」

「ん?」

 そう指摘されて、パラミラは改めて自分の体へと目線を下げた。

 学者の白衣に浴衣用の色彩が盛り込まれたような塗装。

 前は太ももの真ん中までしかないのに、後ろは地面に擦れるほど長く、燕のように左右に分かれている。

 正面のボタンはちょうど臍部の辺りまでしかなく、そこからしたはスカートへと繋がっていた。

 白衣のようで、浴衣のようで、ドレスのようで。

 羽織っているのか、着ているのか。

 おまけに、裾は手元が一〇センチ以上も余ってしまっている。

「これのどこがいけないのかしら?」

「多分、どれもが中途半端すぎる、と見て取られているのだろう」

「あら、でもこれはあえてどっちつかずにすることで、魔術の構成を補助する役割があるのだけど」

 と言う理由があることなど、学園都市の住民に分かるハズもなく、要するに目立っているだけだ。

「フム、ならその時折変わる口調も、魔術と何かしら関係があると言うことか」

「口調なんてものは、一つにしないといけないと言う決まりは無いハズだけれど? まぁ実際は、兄さんの言うように魔術自体を完全にするために、自分自身を不完全な状態に置く、つまり中途半端ってことね」

 服装だけではなく、口調までも中途半端な状態に置く。

「それに、不完全なモノこそ完全なモノを作り出すために必要なパーツ、と言うのは錬金術の教えの一つではなくて?」

 と、パラミラは裾に隠れた手のひらを、肩の高さで上に向けて、

「現に、兄さんの黄金錬成(アルス=マグナ)もこうして弱点の一つを補えた訳だし」

 パラミラが言うのは、アウレオルスの記憶についてだろう。

 不完全な記憶が、黄金錬成(アルス=マグナ)を完全な状態へと一歩近づけたのは、誰が見ても明白である。

 いつ引き金が動いてしまうか分からない銃に、安全装置が備え付けられたようなモノだ。

 言葉一つで自由に魔術を発動させることが出来ると言う利点。

 が、言ってしまえばパラミラの指摘があったように、言葉を封じられてしまえば、発動が出来ないと言うことでもある。

「君の助言は十分理解している。諸刃の剣でなくなった分、封じる手段も増えたと言うことであろう」

「・・・・・・三回に一回ですね」

 ん? とアウレオルスが首を傾げる。

「兄さんはパラミラのことをパラミラと呼ぶことにまだ躊躇がお有りで?」

 と、パラミラは懸念するように、

「私はこんなに兄さんを思慕していると言うのに」

 思慕すると言うのは、今こうして隣りを歩いる状態を言うのか、はたまた今朝のパラミラの行動を指すのか。

 軽い内容で考えるのであれば、前者であると考えるのが無難であろう。

 兄妹が並んで歩く、と言うシュチュエーションなら、確かに思慕していると言えるのかもしてれないが、

「いや、そう言う訳ではないのだが、少々慣れるまでに時間がかかりそうなのでな、もうしばらく時間をくれるとありがたい。こうやって慕ってくれるのは正直嬉しい限りだ」

「こうやって?」

「ん?」

 と、アウレオルスは再度首を傾げて、

「私が言うのは、今朝のことですけれど?」

「・・・・・・あれのどこが慕っている、のだ?」

 前者ではなく、後者。

 あの一連の出来事をどう思慕していると受け止めればよいかアウレオルスが思考していると、

「分かりません? あの瞬間、パラミラがどんな決死な感情で演技を続けていたか」

 と、パラミラは一瞬間を置いて、アウレオルスの表情をのぞき見た後、

「もし、兄さんがその気になれば、黄金錬成(アルス=マグナ)で私をどうすることも出来たハズ」

 口を封じられていたとしても、例えば噛み付いてその手を剥がすことも出来ただろう。

「でも、兄さんはそれをしなかった。つまり、心のどこかで私を妹であると確信していたと言うこと。その事を疑わなかったからこそ、私はあの行動で兄さんの弱点を伝えたと言う訳である」

 それが、パラミラの言う『思慕』と言うことらしい。

「まぁ、正直顔が全くの別人と言うこともあって、多少の戸惑いもありましたけど、黄金錬成(アルス=マグナ)を使えるのは兄さんだけですからね。それが絶対的な証明ですの。だから兄さんも早くパラミラとお呼び下さい」

 変に注目が集まっている、などと言うことは忘れ街中を歩く二人。

 その隣りをドラム式の清掃ロボットが通り過ぎていく。

 それを見ながら、ドラムの形にした方がこの街では自然に溶け込めるか、などとパラミラが呟いている。

「そう言えば、スーパーで良いのであったな?」

「そうね。この街で調達するならそこが一番手っ取り早いわ」

 繁華街に入る手前に位置づけられたスーパーマーケットにパラミラとアウレオルスは入っていく。

 店に入るなり、パラミラはカゴも取らずに一直線に調味料のコーナーへと足を進めた。

 そこで一つ、瓶詰めされた白い粉を手に取りレジに並ぶ。

「ム、五〇〇円か。やはり業務用でない分値段は高くなるのね」

 レジ袋は断り、シールを貼られた瓶を手に取り店から出ると、直ぐにラッピングされたビニールを剥がす。

「要するに、何でもよい訳だな」

 アウレオルスが眺めながら呟く。

「まぁ代用品ってことですわ。一番良いのは死海などから直接手に入れることだけれど、毎回そう言う訳にはいかないから」

 裾の中に入った状態の手で器用にキャップを外したパラミラは、それを右手の裾に隠していたとある短剣の柄頭へと近づけ、予め柄頭を外しておいたその中へと白い粉を流し込んでいく。

「形状は何でもいいですの。粉末であろうと、液体であろうと、固体であろうと。それが短剣の中に入っていると言うことが重要なの。こんな街中では粉末を使うことが多いけど、海辺にならば直接水を使うことだってありますわ」

 中身を全て入れ替えたパラミラを瓶を徘徊中のドラム式清掃ロボットの近くに置いた。

「さて、用事も済みましたし、これからどうされます、う?」

 パラミラの歯切れが悪かったのは、アウレオルスが自分とは全く別の方を向いていたからだ。

 何か珍しいモノでもあるのかと、パラミラがアウレオルスが向ける視線へと方角を合わせる。

 そこには女の子の姿があった。

 ム、とパラミラが眉をひそめていると、

「あッ」

 その女の子がこちらへと近づいて来た。

 もちろん、数日前に学園都市に入ったパラミラに知り合いなど居るはずもない。

 かと言って、魔術側の気配もない。根っからの科学側の雰囲気が漂っていた。

「あんたッ、この前はよくも邪魔してくれたわね」

 と、少女はいきなりアウレオルスに向かって突っかかって行く。

「・・・・・・あぁ、君か。邪魔と言うよりも、正当防衛と言ってもらってもよいと思うのだが。彼に取っては日常茶飯事のようだが、私には免疫がないのでな」

 学生服を身に纏った茶髪の少女は、アウレオルスの顔見知りだった。

 と言っても、会ったのは一度きりだったが、とある少年のおかげで出会ったと言うよりかは巻き込まれたと言う方が正しいのかもしれない。

「今日はあのツンツン頭と一緒じゃないみたいね」

「まぁ、常に一緒にいると言う訳ではないのでな。お目当ての彼がいなくて申し訳ないな」

「お、お目当てって、別にそんなつもりはないわよ!」

 少しふてくされつつあるパラミラを他所に、二人の会話は続く。

「で、どうしたのだ? 今日はこの前邪魔されたお返しをしにきたのかい?」

 頬を火照らせていた少女は、ピクっと反応すると、

「ふーん、それもいいわね。あんたもあのツンツン頭と同じでよくわからない能力を持ってるみたいだし、正直今度は正々堂々と勝負をお願いしたいくらいだけど」

 バチン、と少女の前髪から火花が散る。

「でも、残念だけど今はそんなことしてる場合じゃないのよね」

 少女は少し残念そうに肩の高さで右手の手のひらを上に向ける。

「で、質問なんだけど、銀色の髪の女の子見なかった?」

「銀色の髪?」

「そうそう。背は私の同じくらいかな。結構長めの髪だし、色も色だから見てたらすぐ分かると思うんだけど」

 長い銀色の髪。その時点でアウレオルスの脳裏に浮かんだのは言うまでもなく一人の少女の顔だった。

「それは、白い修道服を着ているのではないか?」

「修道服?」

「違うのかい?」

 アウレオルスの中では、銀色の長髪と言うキーワードからはインデックスと言う姿しか連想出来なかった。

 かつ、共通して二人は上条当麻の知り合いであり、面識があってもおかしくはない。

「いや、ウチの生徒だから、修道服はないと思うわ。私と同じ常盤台の制服を着てると思う。だから余計に目立つと思うんだけど、見てないってことはこの辺には来てないってことか」

 顎を手に乗せて考えるように呟く少女。

 その少女に聞こえるようにボソっと呟く一言。

「兄さん、この中途半端なモノは一体誰ですの?」

「も、モノ!?」

「女ならスカート、男なら短パンと区切りをつければいいものを、両方備えつけるなんて。実はその胸も付けモノではなくて?」

「ッ!! あんたに言われたくない! 中途半端って、そう言うあんたの方がそうじゃないの? 長すぎ! 短すぎ! ちょうどいい具合があったんじゃないの? って言うかあんた誰?」

「人に聞く前に自分から名乗るのが筋ではなくて?」

「ふん、私は御坂美琴」

「私はパラミラ。貴方に教える名などこれで十分」

 ハァ、と一つため息をつくアウレオルス。気が付けば周りから人気がなくなっている。

 恐らくは、瞬時にパラミラが人払いをかけたのだろう。

 要するに、戦う気が十分にあると言うこと。

「人をモノ呼ばわりするなんて、失礼なんじゃないの?」

「あら、私は事実を言ったまででは?」

「ふーん。ちょっと不本意だけど、しばらく地面で大人しくしてもらう必要があるみたいね」

 と、前髪から火花が飛ぶ。

「貴方も、いきなり慣れ慣れしい。そんな中途半端で兄さんに近づくな。私が排除してあげる」

 なぜそうなる。

 と、一人で突っ込んでみたところで事態は解決する訳でもなく、アウレオルスは頭を抱えた。

 それこそ、とある少年のように一つ深いため息を吐く。

「いいのかしら? 謝るなら今のうちだけど?」

「さぁ、何の事かしら?」

「そう、残念」

「そうね、残念、ね!」

 パラミラが腕を振るうと、頭上に白い氷柱の様なものが生み出され、それが地面へと突き刺さる。

 それを察知した御坂美琴は後方へ手を伸ばすと、吸い付けられるように体が宙へと舞い、街灯の上に着地した。

「水流操作系の能力? それとも直接氷を作り出す氷結能力者か。それにしては冷気を感じないけど」

 御坂美琴は街灯の上で片膝を付きながら分析する。

「先程の火花といい、電気を操る能力者か」

 パラミラが手を振るう度に頭上から氷柱のような塊が降り注ぐ。

 数は一〇ほど。

 ゴツゴツとした柱は貫くためではなく、どちらかと言えば押しつぶすことを目的としているようだ。

「そんなモノ!」

 バチン、と火花が散ったと思うと無数の方角へ電撃が走る。

 それらは、落下を始めていた柱を飲み込み、一瞬にして塵へと変える。

 ハズだった。

「えッ?」

 それどころか、柱は電流を纏ったまま落下を始め、容赦な街灯へと突き刺さる。

 瞬時に飛び降りた御坂美琴は軽い受身を取るような形で地面に膝をついていた。

「電撃が、効いてない?」

「雷は何から生み出されるか」

 両足を左右に広げ、左の手首を折り返して腰に当てた状態で御坂美琴を見下ろしていた。

「簡単な話、自然の摂理では雷は雲から生み出される」

「何が言いたいの」

「あら、分からない? 順序の問題よ。雷は雲から、そしてその雲は母なる海から生み出される」

 そして、その海を作り出しているのは『塩』だ。

「要するに矢印は一つの方向にしか流れない。海を作り出している塩が、海から作り出されたモノに砕かれる訳がないのよ」

 ステイル=マグヌスが生み出した摂氏三〇〇〇度を超える炎ですら、パラミラの塩の柱を完全に消し去る事が出来なかったのだ。

「・・・・・・」

 片膝を付いたまま黙る御坂美琴。

「あら、静かになりましたね。態度を見るからに、余程自信があったようですけど、所詮はこのてい――」

「ねぇ、ジュールって知ってる?」

「ん?」

「簡単に言えば、電気抵抗物体に電流を流した時に発生する熱量を言うんだけど」

 そう言いながら、御坂美琴は街灯を壊して無残に地面に突き刺さっている塩の柱の一つに電流を流し始めた。

 案の定、柱は電流を纏うだけで破壊することもできない。

「さて、問題。私の最大出力は一〇億ボルト。その電流を貴方が電気では絶対に壊れないと言ったその(抵抗)に流し続けたら、一体どれだけの熱量が生まれると思う?」

 結果は目に見えて現れた。

 摂氏三〇〇〇度の熱にさえ耐えていた塩の柱が、モノの数秒で跡形もなく消え去ったのだ。

「な、ッ! 高がジュール熱如きで!?」

「別に驚くほどのもんじゃないでしょ。私は自然の摂理みたいな分野に関してはそんなに詳しくないけど、貴方の言う母なる海だって、太陽の熱で蒸発するのと一緒じゃない?」

 確かにその通りだと、一瞬パラミラは納得しそうになった。

 が、事はそう単純ではない。

 四大元素を生み出し三大神秘の一つが。あのソドムを焼き尽くした火の雨の中でさえ破壊されなかったとさせる塩の柱が、こんな電流を流しただけの熱でいとも簡単に壊されてよいのか。

「なるほど、腐っても学園都市の能力者。こちら側の摂理だけでは対応出来ない事柄が存在すると言う訳か」

「大気系の能力になるのかな、まだよく分からないけど、それだけならこっちが全部出すまでもなく終わっちゃうわよ?」

「いい気にならないで」

 少し前傾姿勢になった御坂美琴と、右手を斜め前に突き出し裾の中に隠れた短剣の感触を確かめるパラミラ。

 両者とも、小手調べは終わりと言わんばかりに次なる能力の使用を考えていた。

 御坂美琴の前髪から火花が散り、パラミラが短剣の柄部分を軽く振る。

 それと同時に、

 

「動くな」

 

 ガリガリガリ、と全身を走り抜けていく奇妙な感触。

 一歩踏み出そうとしていた足が、地面にへばりついたまま離れない。

「これは・・・・・・ッ?」

 御坂美琴には覚えがあった。

 数日前、とあるツンツン頭の少年を追いかけていた日に、同じような状態に陥った。

 それがまさに、この状態。

 自分の意思とは関係なく体の自由を奪う。

「精神系の能力? それも、意識のレベルを変えないまま他人の行動を支配できるわけ?」

「パラミラ」

 低い声が響いた。

「もうその辺にしたらどうだい」

 一つため息をつきながら、アウレオルスは額に手を当てて二人の間にゆっくり近づいて行く。

「私を慕ってくれるのは嬉しいが、方向を間違えないでくれるとありがたい。このままでは彼のようになりそうだ」

 ちょうど真ん中に立ったところで、

「御坂美琴だったか、君ももうその辺でいいだろう。妹が無礼を働いたことは私が謝ろう」

 アウレオルスは御坂美琴に正対し頭を下げる。

「に、兄さん!?」

 動けないまま、パラミラは口だけをパクパクさせている。

「ま、まぁ、私も大人気なかったと思うし、今日はこれくらいにしてあげてもいいわ。で、これどうにかならないの?」

 少し前かがみの状態で固まってしまった自分を、視線を動かして訴える。

「ウム、そうだな。もう『動いていいだろう』」

 パシィン、と目に見えないガラスが弾けるような音がした。

 その瞬間、不自然な格好で固まっていたパラミラと御坂美琴の体は呪縛から開放されたように自由になった。

 透明なセメントの中に閉じ込められていたような感覚を思い出し、御坂美琴は少し身震いしながら自分の手足の感覚を確認する。

「全く、一体どんな能力なのよ。あの第五位能力でさえあたしに干渉出来ないってのに」

 御坂美琴の言う第五位とは、常盤台もう一人の超能力者(レベル5)心理掌握(メンタルアウト)の能力を持つ少女のことだ。

 記憶の読心、人格の洗脳、念話、想いの消去、意志の増幅、思考の再現、感情の移植などなど精神に関する事ならなんでもできる十徳ナイフのような能力を持っているのだが、御坂美琴に対してだけは、電磁バリアにより能力が妨げられるため干渉できないでいた。

 つまり洗脳で言えば、彼女とは全く異なる方法で人間の行動を掌握しているのか、或いはその一点に関しては彼女を上回る力を持つことになる。

 しかし、後者の可能性は極めて低いと御坂美琴は考える。

 学園都市における最高の精神系能力者である彼女を上回る能力者が存在するのであれば、名前が知れ渡る以前に、彼女が黙っていないだろう。

 つまり、考えられることは全く異なる能力者と言うこと。

 例えば、大気系能力者。

「(空気の流れを制御できれば、ある領域の空気を固定することで相手の動きを制御できる?)」

 一定範囲の空気をコンクリートのように固まらせることが出来れば、動きを拘束させることは可能だ。

「御坂美琴」

 御坂美琴が考え事をしていると、何やら恐る恐る話しかけるような声が聞こえてきた。

「その、なんだ。急に突っかかるような事をして悪かったわ。それと、モノなんて言ってごめんなさい、むしろ貴方はかわいいわ、女性の私から見てもね」

「な、べ、別に今更お世辞まで付け加えなくてもいいわよ。それに、あたしも少しやりすぎたと思うし」

 頭を下げて謝るパラミラに一瞬戸惑いながらも、御坂美琴は自分自身にも落ち度があったと反省する。

 一方のパラミラは下げていた頭を上げると、御坂美琴へと一歩歩み寄り、

「仲直りよ」

 と、右手を伸ばす。

 御坂美琴もその右手を取りに行って、

 グワっとパラミラはその右手を引き寄せて、御坂美琴の頬へ自分の頬を近づける。

「ちょッ」

 一瞬驚いた御坂美琴であったが、そう言えば外国では挨拶や何かことがあるごとに『ハグ』をする習慣があったような、などと思い出していると、

「次は、兄さんのいない所で」

 そう言い放つと、御坂美琴の右頬へ軽くキスをし、クルリを回りながら御坂美琴から距離を取る。

「なッ、ちょっとあんた!」

「そう言えば、何か用事があったのではなくて?」

 再度突っかかりそうになった御坂美琴はパラミラの一言で、自分がなぜここに居るのかを思い出す。

「クッ、そうね、こんなことしてる場合じゃなかったわ」

「フム、先ほど話していた銀髪の少女のことか」

「そうよ。あんた達も、そんな子を見かけたらあたしが探してたって伝えてもらえると助かるわ」


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