その診療科に、ちょっと小さめなまっくろくろすけの男性が訪ねてきました。
病院の白にまっくろくろすけとは…目立つ組み合わせですね(笑)
白く、清潔感のある壁。
近代的になりつつも変わらない薬品棚。
少し開いた窓から入ってきた風ではためく白いレースカーテン。
ものすごい清潔感のあるその一室で…。
「なー、クロノ。俺は言ったよな?『学会の資料を作る時だけはお前の依頼は受けない』ってなぁ。」
「ふむ、確かに聞いた覚えはあるな。シグレ。」
「…お前次ここで偉そうな態度とったらその胸にある
「すみませんでした許してくださいお願いいたします。」
「ったく、最初から誠意を見せろダアホ。」
一人の男がご立腹だった。
その男は群青の髪を後ろで束ね、黒のワイシャツとスラックスの上に清潔感のある白の白衣を羽織り、メガネ越しに目の前に座っている男を睨んでいた。
ご立腹な男はシグレ・シュヴェーアト。この病院で「リンカーコア科」の医師として働いている傍ら、ただでさえ小さい身長でさらに縮こまっているとある次元航空艦の艦長、クロノ・ハラオウンから依頼を受け、傭兵として働くこともある。
何故怒ってるかと言えば、学会の資料に集中したいと思った時に傭兵としての仕事を突きつけて来たからだ。
おかげで、シグレの手元はマッハのごとく動いており、残像すら置いていくスピードだ。
「まぁ別に頭の中に考察してた内容は入ってるから、あとは形にするだけなんだがよ…。ったく、次はきちんと考慮してくれよ?」
「あ、あぁ。今回は流石に悪かった…。」
「ん、よろしい。…で?今日来たのはそれを謝る為って訳じゃあなさそうだなぁ?」
シグレが問うとクロノは咳払いを一つし、経緯を話始める。
その間もシグレの手は北○百烈拳の如く唸りをあげて動いている。
「実は、リンカーコア科の医師としての腕を見込んで治療して欲しい人がいるんだ。」
「ほう…?どういった状態かは詳しくはその本人に聞くとしよう。ざっくりとでいいから教えてくれねーか?」
「あぁ…。その子は昔から砲撃形の魔導師で、小さい頃から砲撃魔法を撃ち、更には収束魔法で巨大な砲撃を撃ったりしていたんだが、つい3年前にその代償でガタが来たらしくてそれが原因で撃墜されたんだ。その時の医師は『酷くリンカーコアが損傷している。下手をすれば魔法も使えず、歩けなくなる』と言われてな…。今は魔法も使えるし歩けもするんだが、僕の目から見ても彼女の魔法に少し違和感を覚えるようになってきて…。だからシグレに依頼したい。その子の治療、請け負ってくれないだろうか?」
一気にまくし立てたクロノが息を吐くのと同時に、忙しなく動いていたシグレの手が止まった。そしてメガネをくいっとあげながらクロノに向き直る。
「なるほど、なぁ…。ったく医者たるもの損傷酷いとか言って治療しねーとかよほどのヤブ医者だな。医者の風上にも置けねー。でもまぁわかったわ。とにかくその患者を近々連れてきてくれ。その治療、承ってやるよ!」
「ほ、本当か!?」
「ったりめーだろ?ダチであるお前の頼みだし、何より…リンカーコアの損傷、疲労が原因で死ぬこともあるんだ。そんな奴を、俺は放っておけねーよ。リンカーコア科の医師として、責任をもって面倒見てやる!」
胸に拳を当てるようにして「任せろっ!」と意気込む親友に、クロノも安堵の息を漏らす。クロノ自身、色々コネからその子を治そうと医療機関を回ってみたが…、正直反吐が出るくらいまともではなかった。あるときは法外な治療費を請求し、あるときはその子の体を弄ぼうとする…。(流石に耐えきれなかったので個人的に徹底的に調べ上げ、自身の良く知る知人の執務官に突き出しお縄についてもらった)
その点に於いてシグレは純白と表しても差し支えないくらいに白だ。だからその子を安心して任せられると思い、相談を持ちかけた。
「じゃ、まぁその子の名前だけでも教えてくれ。名前がわからないとコミュニケーションがとりづらいからな。」
「ああ、そうだな。
その子の名前は高町 なのはという。」
近い未来、「白い悪魔」と呼ばれる教導官の治療が…今、執り行われる…。
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