やはり俺のE組生活はまちがっている。   作:狂笑

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第四話

八時四十分の鐘がなる。

それを合図に、殺せんせーと名乗る謎の黄色いタコ似の生物が出席簿を携えて入ってくる。

 

「ホームルームを始めます。日直の人は号令を」

 

殺せんせーがそう告げると、俺より身長がありそうな長身の女子が立ち上がって号令をかける。

 

「起立!!」

 

この声と共に皆が一斉に立ち上がる。

皆保護眼鏡を掛けていて、それぞれの手には拳銃型、または自動小銃型のエアガンを構えている。

エアガンの威力などたかが知れているのだが、ここではそれが主流らしい。

 

「ああ皆さん、発砲はお待ちください。それより前に今日は停学明けの生徒を一名を紹介します。比企谷くん、前に出てきてください」

 

殺せんせーを殺すための細工の準備を既に終えていた俺は、面倒くさくはあるが素直に前に出る。

 

「え~、彼は比企谷八幡君です。とある事件で停学処分中でしたがそれも終えたので、今日から復帰しました。皆さん、彼を暗殺の輪にしっかりといれてあげて下さい。比企谷くん、何か一言お願いします」

 

何か言わなくちゃいけないのかよ……後俺を輪に入れなくてもいいから。

とりあえず、何か当たり障りのないことを言って、暗殺につなげよう。

 

「比企谷八幡です。今年度だけの関係ですが、皆さんと共に、暗殺していきたいと思っています。よろしくお願いします。……あと“虎”がどうのこうの言っている人を今朝ちらほら見かけましたが、特に気にしないで下さい。……殺せんせー」

 

そう言って俺は殺せんせーの方に向き直る。

 

「生徒と教師、アサシンとターゲットの関係として、まあお互い頑張っていきましょう」

 

そして俺は右手の手の平が相手に見えるようにして差し出す。

これは『右手には何も細工をしてませんよ』アピールだ。

そして殺せんせーも右手代わりの触手を差し出してくる。

 

「ええ、お互い頑張っていきましょう。朝の射撃が有るので、まずはそれで――」

 

殺せんせーの触手と、俺の右手が交わる。

――かかった。

 

両足の親指を思いっ切り、勢いよく伸ばす。

すると――

 

パパパパーン

 

殺せんせーの足代わりの触手が四本破壊された。

 

「えっ……」

 

「「「「「ええっ!!」」」」」

 

殺せんせーが呆然としているうちに右手代わりの触手を強く握り締めて引く。

それと同時に左手を制服の右の内ポケットに突っ込んで対殺せんせー用ナイフを取り出す。

バランスを崩した殺せんせーめがけてナイフで刺そうとするが、殺せんせーもさるもの、そう簡単には殺させてくれない。

直ぐにバランスを立て直し、加速して俺から逃げようとする。

殺せんせーの加速に耐えられなくなり、俺の右手から殺せんせーの右手代わりの触手がズルズルと抜けていく。

このままやられっぱなしも癪なので、左手で持っていたナイフで右手代わりの触手を切り落として教室の床に着地し、ナイフと右手代わりの触手の成れ果てを放り投げ、右手と左手それぞれを反対側の制服の内ポケットに突っ込んで、拳銃を取り出す。

この拳銃は対殺せんせー用BB弾を加工して作った銃弾発射に特化するように改造したモノホンの銃だ。

火薬を使用しているため、エアガンとはスピードも威力も異なる。

一旦集中し、この教室全体に意識を張り巡らせ、人ならざる者の気配を探す。

 

見つけた。

 

ちなみに集中し始めてからここまでコンマ三秒。

人ならざる者の気配がある所めがけ、またそれが動いたのならそれに合わせて乱射する。

 

ガキンッ ガキンッ

 

「チッ」

 

当たり前だが、乱射すればすぐに弾が切れる。

 

「終わったようですねえ。中々やりますね」

 

声がした方を向くと、既に触手の再生を終了させ、だが目と目の間に一つ風穴をあけた殺せんせーがいた。

 

……触手の前に顔修復しろよ。

 




さて、八幡はどうやって触手を一気に四本破壊したのか。
種明かしはまた次回。

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