呼ばるる異名は黄金騎士   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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明けましておめでとうございます。
10日以上経ってますけども私は元気です。
多分次回で一期は最終回です
どうかユルくお付き合いくださいませ
ではどうぞー


突入 attack

その場に残ったのは立ち尽くしているキリトとそれを眺めていたレイの二人だった

刻々と時間は進み、声を先に発したのはレイだ

 

「…追っかけなくていいのか?」

「え…?」

「家族間の問題は、お前自身でなんとかしないといけないだろう。行ってこいよ、待ってるから」

「―――悪い、レイ。なるべくすぐに戻るから!」

 

そう言って先のリーファと同様にキリトもログアウトの準備に入り、彼のアバターがそのまま膝をつく

無事ログアウト出来たのだろう

あとはしばらくの間これを守るだけだ

 

「しっかし、結構複雑そうな家族だな、アイツら」

<楽しそうでもあると思うわよ? ああいうのも>

「あぁ、かもしれないな」

 

シルヴァの言葉に苦笑いを浮かべながらレイはキリトのアバターが消失するのを確認するとどこかで時間を潰すべくその場を後にした

再度ログインしたとき、ここにインしてくる可能性は低いと考えたからである

 

◇◇◇

 

「ありがとう、レコンさんのおかげで、なんとかお昼前にこのアルンってところにたどり着けました」

 

そう言って白外套の男性の隣を飛ぶ白づくめの鎧を着込んだウンディーネの女性はニコリと微笑んだ

 

「いえ、お礼を言うのは僕の方です! 僕だけだったら、もっとかかってたかも…」

 

そんな想像をしてブルリと震える

ここまでの道のり、道中の敵たちはみんな一緒に来てくれたこの三人が倒してくれたのだ

実際彼らと一緒になる前はどうやってアルンに行くかをただ考えていた

最悪アクティブなモンスターを引っ掛けてはそのへんのプレイヤーに擦り付けるモンスターPK地味た事を行おうか、と思って一匹めの奴を引っ掛けたとき、通りすがって助けてくれたのがギンガと名乗る一人の男性と二人の女の子のパーティだった

最初に見たときは両手に花な状態に見苦しくも嫉妬してしまったが、目的がその人たちもアルンだとわかり、利害が一致、同行関係となったのだ

おまけにどこで知り得たのかわからないが、世界樹―――アルンへ行く道筋の最短距離までも知っていたのだ

早く着くはずである

 

それで一緒にいる間何度か戦闘を挟んだのだが、この三人異様に強いのである

このゲームのキモである魔法を一切用いない上に、その全てが己の肉体から繰り出される体術と持っている武器での斬撃のみで戦っていた

こんなすごい戦い方をできる人たちなんてレコンはレイくらいしか知らないし、仮にこんなに強いのなら絶対に有名になっていてもおかしくないのに、今日までまったくもって知らなかったのだ

しかし彼女ら二人についてきていた感じがした紫色の長髪のインプの女の子は時折ギンガの戦い方をじっと見つめていた気がしていた(見取り稽古でもしてるのだろうか、たまに師匠って言っていたし)

もちろん、その女の子自身も強くはあるのだが、魔法を使用したりとこちらはどちらかというとALO寄り(?)の戦い方だった

 

と、まぁそんなこんなで倒せる敵はすべてハッ倒し、急いで駆け抜けては見たが、やはりアルンに行くには時間がかかり、結局たどり着いたのはつい先ほど

すぐ目の前にはアルンの入口が見える

四人はそこに着地し、翅を休ませる

ちょくちょく休憩も挟んではいたが、いつ飛ぶような状況になるかわからないので、こういうものは常に万全を維持しておきたい

 

「三人とも、すいません! 僕はちょっと人を探してきます!」

「あぁ、わかった。ここまでありがとう、レコンさん」

「さん付けなんていいですよギンガさん。呼び捨てで結構です」

「じゃあ、俺もギンガで構わないぜ、レコン」

「はい! それじゃあまた!」

 

元気よく挨拶を交わすとレコンは再び翅を展開して飛び去っていった

とりあえずその場にはギンガ、サチ、ユウキの三人が残されたわけなのだが

 

「…さて、目的地にたどり着いた訳だが、どうする?」

「無難なところだと、聞き込み、かなぁ」

「ボクたちと入れ違いになってる、って可能性もなくはないんじゃない?」

 

三人で頭をひねって考える

正直入れ違いもあるかもしれない、こちらが先について向こうがまだついてきていない、或いはもう向こうはここを出発してここにはいないかもしれない、とか

 

「…とりあえず、周辺を飛び回って地形とか把握して、それから聞き込みでもしてみよう」

 

そんなギンガの一声で三人は頷き、一度解散となった

―――キリトは今何をしているのだろうか

二人と一旦別れて一人となったギンガはそんなことを考えながら適当にその辺を飛び回る

ふわふわと適度に休憩を取りつつ飛び回ってアルンを見ていたとき、不意に耳にえらい大きな声が飛び込んできた

 

「リーファちゃん!」

 

というかめっちゃ聞き覚えのある声だった

声の方へ視線を向けるとそこにはレコンと知らない女性プレイヤーが向かい合っていた

レコンは続ける

 

「リーファちゃんは、いつも笑ってなきゃダメだよ! 笑顔じゃないと、キミじゃないっていうか…その! リアルでもゲームでも、僕が傍にいるから! 一人になんかしないから! ぼ、ぼぼ、僕…リーファちゃんのこと…直葉ちゃんのこと、好きだ!」

 

まさかの告白シーンを目撃してしまった

というか状況が分からない

そんなセリフを言えるくらいには目の前の金髪の女性プレイヤーは知り合いでもあるとは思うのだが

と、そんなことをしていると不意にレコンが金髪のプレイヤーの方へと身を乗り出し、唇を突き出し始めた

 

(ちょ!?)

 

意外に彼は思い切りがいいのか、戸惑っている彼女の硬直を肯定と受け取ったのか、彼女にキスをしようと試みたのだ

が、結果は

 

「待ってって、言ってるでしょおがぁ!!」

 

叫びと同時に繰り出されたボディブローが彼の腹に叩き込まれた

彼は一メートルほど浮き上がりどしゃあとベンチに落下する

そのままの状態で腹を抑えながら苦悶の声を挙げつつ

 

「うぐぐ…ヒドイよリーファちゃん…」

「いや、今のは君が悪いと思うよレコン」

「え?」

 

顔を赤くしているリーファと呼ばれた女の子と、ベンチに倒れた状態のままのレコンに向かって、ギンガは近づきつつ、声を掛ける

 

「ぎ、ギンガ…」

「…なに、レコン。この人と知り合いなの?」

 

落ち着いたのか、リーファは深呼吸を何度か繰り返しながらこちらに視線を向ける

 

「うん、ここまで僕と一緒に来てくれた人なんだ…」

「…そうなんだ」

 

じ、とリーファはギンガをちらりと見てみる

白いコートに赤鞘の妙な剣を携えた、一見変なプレイヤー、というのが第一印象だった

しかし、纏う空気に隙が全くなく、兄と同じような修羅場をくぐり抜けてきたことが察せられた

と、そんなことをしていると胡座をかいたレコンがふと呟く

 

「…あとは僕に勇気があればっていう問題だけだと思ったんだけどなぁ…」

「…もう、全くアンタは…」

 

そんな風に息を吐いた彼女の顔は、レコンのよく知る顔になっていた

 

「…けどまぁ、アンタのそういうとこ、嫌いじゃないよ」

「え!? ほ、ホント!?」

「調子に乗らない! 私もたまにはあんたを見習ってみるわ。ここでその人と一緒に待ってて。あと、ついてきたら怒るから!」

 

言葉を飛ばすと彼女はふわりと浮かび上がり、翅を動かし出す

 

「り、リーファ、ちゃん…?」

「焦りすぎだよ。ほら、彼女が戻ってくるまで待ってようや」

 

ポカンとしてるレコンの隣に座り、ギンガは自分の前にメニューを開きメール画面を開いた

そこからサチとユウキの名前を選択し、自分が今いる場所を書き記し、簡単な一言を添えてメールを発信する

フレンドだからこちらの位置を確認できるかもしれないが、こういうものは気分である

ポカンとしているレコンに向けて、ギンガはふと問いかけた

 

「彼女のこと、好きなのか?」

「うえ!? え、っと…その、う、うん…僕、リーファちゃんのこと好きだよ」

「そっか。でもさっきのは早計だったぜ、ムードもへったくれもない」

「…や、やっぱり、ムードとか大事、でしょうか…」

 

割と真剣に考え込むレコン

冷静に考えればどうやって彼が告白した経緯をギンガは知らなかった

何となく気になったので、聞く

 

「…リーファちゃん見つけたとき、すごく落ち込んでて…聞いてみるとなんだか一緒に組んでた黒いスプリガンの人を傷つけたって言ってて、涙流してて…なんとか元気づけたいって考えたら…つい…」

「発想は悪くないけど、なんでそれが告白になるのさ。…いや、元気づけようとしたその行動は問題はないんだけどさ」

 

なんというか極端だ

そして同時に、さっき言った黒いスプリガン、という単語

…もしかしてあの子は、噂のパーティの一人、なのだろうか

 

「だけど、咄嗟に好きな人を励まそうとしたその勇気はイエスだぜ。そういうのってなかなかできることじゃあないからな」

「そ、そうかな。…そう言ってくれるとちょっと嬉しいかも…」

 

てへへ、とはにかむレコン

そうこうしているとこちらに向かって飛んでくる人影が二つ―――あの二人はサチとユウキだ

仲良く手を繋いでこちらに向かって飛行している

それを確認するとギンガは手を振ってこちらの場所を教える

サチはそれを見つけると笑顔を浮かべてくる

近くに着地すると二人はとててとこちらに向かって小走りで駆け寄ってきた

ちなみにレコンは改めてうんうん考え始めている

 

「ギンガ、何かわかった?」

「いいや、詳しいことはなんにも。けど、噂のパーティメンバーの一人とは遭遇出来たかもしれない」

「ホント? ボクたちもあんまり情報は得られなくてさ。正直に言って手詰まりだったんだよね」

 

ユウキが腕を組んでうんうんと頷く

どうやら二人もこっちと似たような感じだったみたいだ

三人で短いやり取りをしてると、また別の誰かが歩いてくる気配がする

 

「…レコン、なんでお前こんなとこに来てんだ」

「れ、レイさん!」

 

視線を向けると黒い服装に身を包んだ、ネックレスをしている一人の男性だった

視界からでも見えるそのネックレスは、どこかザルバやゴルバと同じ印象を受ける

彼の目がこちらに向けられて、?と首をかしげた

 

「この人たちは誰だ? レコンの知り合いか?」

「は、はいっ。僕と一緒に、この世界樹まで来てくれた人たちです」

 

レコンからそう聞くと彼は「ふーん」と相槌を打ちながらギンガの方へと歩いてきた

彼は人懐っこい笑顔を浮かべると

 

「俺はレイ。まぁ色々あってこの世界樹に来て、今はメンバーが戻ってくるのを待ってる。レコンが世話になったみたいだな。友人として、礼を言うぜ」

「いや、彼と遭遇できたのは偶然さ。丁度俺たちもここに用事があったからね。あ、俺はギンガ、こっちの白い鎧の女の子は―――」

「サチです、よろしくお願いしますね、レイさん」

「そしてボクはユウキ! よろしくね! レイおにーさん!」

 

ユウキの元気良さに思わず面を食らったようにレイは体を硬直させる

…こんな元気なプレイヤーと出会うのは初めてだな

そして今度は白い外套を着込んで、隣の女性と会話をしている男性を視界に収めた

いろいろとこのアルブヘイムを飛んで回ったが、ここまで隙のない奴は初めて見るかも知れない

そして、指にはめているあの指輪…どことなくシルヴァを彷彿とさせる

 

(…一体何者だ、この男…。少なくとも敵じゃあなさそうだが…)

 

そう一人思考していると、今度は空からひと組の男女が飛んできて、ゲートの守護像付近に着地した

リーファとキリトである

レイは二人の姿を確認すると笑顔を浮かべて二人に駆け寄っていった

 

「…その様子だと、うまく纏まったみたいだな」

「あぁ。心配かけてごめん、だけど、もう大丈夫。な、リーファ」

「うん! レイさんもごめんなさい、けど、お兄―――キリトくんの言う通り、もう大丈夫です」

 

そう言って微笑む彼女の表情には、先ほどと変わらない美しい笑顔を覗かせている

そしてそこに、割り込む誰かの声色が一つ

 

 

 

「―――キリト? 今、キリトって言ったのか?」

 

 

 

キリトはその懐かしき声色に、大きく目を見開いた

その声の方へ視線を向けると、そこにはSAOの時に何度も見た、白い外套を着込んだ一人の男性が歩いてきていた

彼だけじゃない、彼の隣には、いつ何時も彼を支えていた、白をベースにした鎧の女性

 

「ギンガ、なのか?」

「あぁ。ってことは、お前がキリトか?」

<随分変わっているなぁ、初見では気付けなかったぜ>

「イメージがだいぶ変わってたね、だけど、この世界でもやっぱり黒いんだ?」

<黒はもはやイメージカラーみたいなものじゃからのう。それを取ったら何も残らんて>

 

目の前で繰り広げられるそのやりとりに、キリトは心から安堵する

思わず涙が出そうな衝動をこらえつつ、必死に表情を作っていると、ギンガが問いかけてきた

 

「…とりあえず、話を聞かせてくれ。短くて構わないから」

「―――リーファ、俺は少しこの人と話したいことがあるから、二人で準備して、扉の前で待っててくれ」

「? うん、わかった。ほら、行くよレコン」

「えぇ!? ちょ、ちょっと待ってよリーファちゃんっ!」

 

二人が飛び去っていくのを見計らい、改めてキリトが真面目な表情を作る

 

「その話、俺も混ぜてもらっていいか?」

 

それまで黙っていたままだったレイが歩いて輪に入ってくる

キリトは一瞬考えたが、それにゆっくり頷いた

ちなみにユウキもギンガの隣にじーっといたが、何を話しているのか正直わからなかった

それでも、ギンガとサチを手伝うという意思は微塵も揺らがなかったが

 

 

 

「…アスナが!?」

 

キリトから事情を聞いたサチが口元を両手で抑えながら信じられない、といった表情で呟いた

ギンガもまた、キリトから伝えられた言葉に驚きを隠せなかった

まさか知らない間にそんなことになっていたなんて全く思わなかった

 

「…やっぱり、あの世界樹にはそんな秘密があったんだな」

 

レイが頷きつつ、自分の前にメニューを開き、そこから一枚の画像を表示させた

 

「それは…」

「キリト、お前は見ただろう、この写真」

「あ、あぁ。だが、なんでレイがこれを?」

「ガダルに見せてもらってな。お前が世界樹にいきたいって言ったとき、気になってよ。理由は今わかったが」

「…写真?」

 

どんなのか見せてもらおうか、と思ったギンガとサチ、そして単純に興味本位なユウキはその写真を覗き込む

そこには鳥かごのような所に監禁されているオレンジのような髪の色をした長髪の女子―――アスナの姿があった

服装は全く見慣れていないものだが、この顔を忘れるわけがない

 

「元から俺は最後まで行くつもりだったが、これでより決意は固まった。キリト、俺は最後までお前に協力する」

「レイ…いいのか―――いや、ありがとう」

「なぁに、気にすんな。ここまで一緒に来たんだ、助けようぜ、この女の子を」

 

レイはキリトの背を軽くたたき、屈託のない笑みを浮かべる

無論ギンガとサチもそのつもりではあるのだが…ちらりとギンガはユウキを見る

視線を向けられたことに気づいたユウキはその大きな瞳をぱちくりさせながらこっちを見返してくる

そして何を言ってくるのかを察したのか、ギンガが口を開くより先に口を開いた

 

「おっと。シショー、当然ボクも行くかんね」

「ユウキ…だが、この件に君は―――」

「関係ないって言うつもり? シショーとサチさんの友達なら、ボクの友達でもあるんだよ! …それに、さっきの話はあんまりわかんないけど、非道い事されてるってことだけは理解できた。それをほっとくなんて、ボクにはできないよ」

 

真っ直ぐな瞳に気圧される

正直これは、言っても聞いてはくれないだろう

ギンガははぁ、と苦笑いが混じったようなため息を吐き、サチはふふっ、と小さく笑い出す

なんとなくだが、わかってはいたのだろう

ギンガは改めてキリトに向き直って

 

「まぁ、想像通り俺たちも手伝うぜ、キリト」

「アスナがそんなことになってるなんて許せないからね」

 

サチがユウキの頭を軽く撫でつつ、宣言する

もっとも、キリトはそれが分かっていたのか、笑みを浮かべながら頷いた

 

「ありがとう…正直、心強いよ、サチ、ギンガ」

「…しかし、キリト、お前この二人のこと買ってるな?」

「あぁ、実力は折り紙つきだぜ」

「マジか、そいつは心強い。…頼りにしてるぜ、お二人さん」

「おうとも。期待して構わないぜ、えっと、レイさん、でいいかな」

「よせよ、レイでいいって。その代わり、俺もギンガって呼ばせてもらうぜ」

「…オッケー、よろしくレイ」

「じゃあ私のこともサチって呼んでくださいね、レイ」

「お、いいのか? じゃあ遠慮なく呼ばせてもらおうかな?」

 

この時一瞬むすっとしたシルヴァの視線をレイは感じ取ったのだが、苦笑いと一緒にスルーすることにした

そうこうしているうちに、一通り準備を終えたリーファとレコンが帰ってきた

到着一番、レコンが口を開く

 

「…ところで、これから何するの?」

「私たちで攻略するのよ。世界樹を」

「―――えぇ!?」

 

顔面蒼白で後ずさるレコンの肩をリーファはぽんと叩きながら微笑んだ

その光景に小さく笑みを浮かべつつ、キリトは言葉を発する

 

「ユイ、いるか?」

 

言葉が終わらない内に光が凝縮し、そこから妖精サイズの女の子が現れる

見慣れた女の子の、見慣れない状態にサチは驚きと懐かしさを交えたような声で

 

「わぁ! ユイちゃん! 可愛い!」

「わぷ、さ、サチさん…くすぐったいですー」

 

思わず手にとって頬ずりするサチ

また、ユイを目撃したレコンもテンションが上がって鼻息多めな状態で接近しようとしたところでリーファに腹パンを貰いダウンしていた

頬ずりされているユイにキリトは一度こほんと咳払いをして意識を切り替える

 

「それで、さっきの戦闘では何かわかったか?」

「なんだ。お前一回戦ってたのか」

「あぁ。さっきは負けたけど…ギンガやみんながいる今なら、行ける気がするんだ」

 

ギンガと短い会話を交わしつつ、キリトはそうユイに問うた

可愛らしい妖精の姿をした彼女は可愛らしいながらも真剣な表情を浮かべて

 

「ガーディアンモンスターはステータスはさほど高くないので一体一体は弱い部類に入ると思います。ですが湧出パターンが以上です。ゲートへの距離に比例してポップ数が増えて、最接近時に秒間で十二体にも達していました。あれでは攻略不可の難易度に設定されているとしか…」

「―――ふんっ」

 

キリトは顔をしかめつつもそれに肯定し

 

「個々は一撃で落とせるから問題はないけど、総体では無敵の巨大ボスと同じだと同じってことか…」

「だけど、異常なのはパパのスキルも同じです。瞬間的な突破力に加えて、ギンガさんがいれば可能性はあります」

「…まだそこに行ったことないから、何とも言えないけど、いいよ、ぶっつけ本番でいこう」

 

ユイの提案にギンガが肯定する

キリトはしばらく黙考するようだったが、やがて顔をあげて

 

「…ごめん、もう一度だけ、俺のワガママに付き合ってくれないか。ギンガたちには無茶を言ってることもわかってる。ここで無理するよりは、別ルート探した方がいいってことも、人を集めた方が確実だってこともわかってる…」

「水臭いよキリト。ここで私たちが断ると思う?」

 

ギンガの隣にいるサチが微笑んだ

ここにいるプレイヤーでは無関係といっても過言ではないユウキも笑顔でサチに続いている

 

「ほら、いっちょ行こうぜ。ここで止まってても仕方ないからな」

 

レイに促され、キリトは頷く

 

「うん。アタシに出来ることなら、なんでもする。それと、こいつもね」

「え、えぇ…」

 

コツンとリーファに小突かれたレコンはそんな情けない声を出したが、リーファちゃんと僕は一心同体うんぬんなどとつぶやき始めて、次第にかっくんと頷いてくれた

 

「さて、じゃあキリト、行くか」

「あぁ。行こう!」

 

ギンガに促され、一行は動き出す

もしかすると、これが最後になるかもしれない―――だから、もう絶対にあきらめない

その強い意思を宿しながら、キリトはその翅に決意を込めた




久しぶりだな、お前たち
次回で俺たちの物語も一つの区切りを迎えることになるだろう
まぁなんだ、短い間だったが、楽しかったぜ

次回 種子 ~ザ・シード~

黒の剣士の道筋、切り開け、牙狼!

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