ちゃうねん、ペルソナ5が面白いのがいけないねん…
一週目は双葉、二週目は真
三週目は春ちゃんで行きたい(振ったとき心を抉られたので
どうでもいいですね
待たせてあれではありますが、いつもどおりの文章でございます
ではどうぞ
ひたすら北上し続けてどれほどの時間が経過しただろうか
その移動時間の間ほかの徘徊型の邪神モンスターと遭遇したのだがどれもがこっちに視線を向けてくるだけで特にそのあとは何もなく普通に素通りしていった
トンキーの付属品とでも判断されたのだろうか
となるとどうしてトンキーはあの三面巨人の邪神に襲われていたのだろうか
理由といえば移動している際にすれ違った邪神は全部人型とかけ離れていた姿形をしていたことだ
レイとそんな話になり、今度はキリトの意見を聞いてみようと思って彼に視線を向けてみるとあろう事かこの状況でこっくりこっくり首を泳がせていた
まぁ時間も時間だし、と苦笑いするレイに対し、リーファは徐にトンキーの背中に溜まってた雪をかき集めそれをキリトの襟首にそのままぶっこむ
「ふごぁ!?」
唐突な冷感を体に受けはね起きたキリトに対しリーファは涼しい顔でおはよう、と言ってさっきレイと話していた話題を問いかけた
その様子にキリトはリーファを恨めしそうな顔をしつつ、レイは小さい声で笑っていた
やがてキリトはおほん、と軽く咳払いをしつつ
「…えっと、邪神の中でも、人型と獣型で争ってる、とかかな?」
「かもしれないね。もしかしたら人型のはトンキーの仲間だけを襲うのかもだけど」
ヨツンヘイムは一ヶ月前に大型アプデで実装されたばかりであり、恐るべき難易度もあってほとんど探索が進んでいないフィールドだ
この状況が何らかのイベントなのだとしたら一行が初めて最初に遭遇したプレイヤーだということも十分ありえる
「まぁ全部知ってるのはこいつをデザインしたやつだけだよ。あとは成り行きに任せようぜ」
レイはそう言いながら大きく伸びをする
キリトもレイに同意するように「そうだなー」なんて言いながら彼もごろりと腕を枕にして寝っ転がった
ユイも肩からパタパタと飛び回って黒衣の上に似たポーズを取った
リラックスしすぎである
ふとレイは視界端の時刻表示に目を向けた
青白いデジタルの表記は午前三時を指している
レイは割とゲームはする方ではあるが、ここまで起きているのはなかなかない
学生であるリーファは大丈夫なのだろうか、学校に響かないといいのだが
と、考えにふけっていると不意にトンキーの動きが止まる
ひゅるる、と小さく鳴き声をあげるとやがて完全に動かなくなった
「…トンキー?」
レイはその場でぺちぺちとトンキーを叩くが反応はない
リーファとキリトと顔を見合わせて一行は恐る恐るトンキーから降りた
数歩離れて振り向いてみるとそこにトンキーの面影はなく、足やら鼻やらを収納し鎮座しているその様を見るともはやデカイまんじゅうだ
<…結局、この子は何がしたかったのかしら>
目的を果たして死んでしまった?
しかしHPカーソルを見てみると満タンを保っており、耳を押し付けてみると微かに鼓動音のようなものが耳に聴こえてくる
「…なんか、寝てるだけっぽいな」
「えー。私たちが徹夜で頑張ってるのにー?」
唇を尖らせて毛を引っ張ろうとしたその時、キリトが声を上げた
「おい二人共、見てみろよ、すごいぜ」
「え?」「お?」
言われるままに二人は顔をあげると、確かにすごい、としか言えない光景が目に入ってきた
遠くからは逆円錐にみえた世界樹の根が真上にある
黒く這い回っている根っこに抱かれた氷柱の直径は眼科の垂直孔とおんなじくらいだろうか
更に目を凝らしてみると氷柱の内部には更に何らかの構造が存在してるっぽい
<あれが全部ダンジョンだとしたら、骨が折れるわね>
「ホントですねぇ…」
シルヴァの呟きに返しつつ、リーファは無意識に手を伸ばす
しかしあそこまではここからではゆうに二百メートル以上ある
「しかし、どうやって行くんだろ…」
そうキリトが呟いた時だった
「パパ、東から別のプレイヤーが接近中です! 一人…その後ろから二十三人!」
「!?」
「マズイな、その規模だと確実に邪神狩りだ!」
本来ならば遭遇を望んでいた、のだが
やがて東方向からぱしゃんと弾けるような音とともに一人の男性プレイヤーが現れた
青い髪、白い肌、恐らくはウンディーネだろう
レザーアーマーに身を包み弓を携えている
「あんたら、その邪神狩るのかな」
リーファの付近で丸まったままのトンキーを指差して彼は険しい視線のままそういった
「狩るなら早く攻撃してくれ。我々の範囲攻撃に巻き込んでしまう」
その言葉が終わらないうちに男の背後から更にパーティーの本隊が現れてきた
全員、水色の髪…ウンディーネの精鋭部隊だ
もしかしたらレネゲイドの混成部隊なら見逃してくれたかもしれない
だがウンディーネの代表として動いている彼らにそんな甘さはないだろう
むしろたった三人ならば格好の獲物として写っているに違いない
声をかけただけ優しい部類に入るだろう
そんな中で一人、リーファがポツリと問いかけた
「…無礼を承知でお願いするわ。この邪神を譲って欲しいの」
くすり、と漏れる苦笑い
「…下級狩場ならともかく、こんなところでそんなセリフ聞くとはね。そんな言い分通らないことくらい、ここに来れるならわかってるだろう」
「いやー、実際ここにはこいつに運ばれたっていうの? ほら、こんな人数でヨツンヘイムなんかくるわけないじゃん? んで、コイツここで丸まっちまってさ、もしかしたらなんかイベントが進行中だと思うのよね」
リーファを庇うようにレイが前に歩いて行き、ここまでの経緯をおもしろ可笑しく説明していく
時折こっちに振ってくることもあったが、どうにかして口裏を合わせて話をしていった
「代わりといっちゃあなんだけど、向こうの方に狩りやすそうな相手がいたぜ。もう移動してるかもわからんけど、こいつの代わりにはなんねぇかな」
「…いいよ、そういうことにしといてあげるさ」
これ以上の話し合いは無駄か、と判断したのか、あるいは絶狼であるレイが相手では仮に戦闘になったとき不利と感じたのか潔く彼が指さした方へと皆を引き連れて渋々と戻っていった
彼らの背中が見えなくなるのを確認して、ふぅ、とレイは一つ息を吐く
それと同じくらい、あるいはそれ以上にため息を吐いたのは彼の後ろにいるキリトとリーファだ
「…よくあんな言葉ペラペラ出てきますね」
「まぁ事実だし。仮に戦闘になっちまったら手間掛かっちゃうからな」
「…あの人数でも勝てる自信あるのか? レイは」
「まさか。流石にあの人数でもやりきれるかは怪しいね」
そんな会話をしていると不意にヒュルルルル、というトンキーの鳴き声と共に楕円の胴体がひび割れていく
真っ白い光とともに亀裂で満たしたトンキーの体が四散していく
放射状に広げられたのは、白い輝きを帯びた四対八枚の翼
「…トンキー…」
<これはすごいわね…>
丸かった胴体は細長い流線状に変化しており、その腹からは二十本の植物のツタのようなものが垂れている
しばらく呆然と彼らを見守っていたトンキーが三人の頭上にまで降りてきて、そのツタを伸ばしてくる
そして前と同じように背中に放り出された
触れてみると以前より毛並みが柔らかくなっているような感覚がする
「…ともあれ、乗り切れてよかったと考えよう」
「ホントです! 生きていればきっといいことがあります!」
「だといいな」
キリトの呟きに胸ポケットからひょっこり顔を出したユイが嬉しそうに両手を叩きながらそんなことを呟いた
そんなユイの言葉にキリトは頷いた
またしばらく揺られるのは間違いないだろう、その先がどこになるのか…と一瞬考えたがトンキーは頭上に威容を見せる世界樹の根へと進みだした
螺旋を描いて高度を上げていくに連れて、ヨツンヘイムの広大なフィールドが視界に広がっていく
道中の景色を視界に収めていくレイはふと氷柱の一番下の鋭く尖った突端に強く輝いてる金色の輝きが見えた
そんなのをリーファも見たのか、彼女が右手を掲げて短いスペルを唱える
遠見氷晶の魔法だ
「リーファ、何か見えるか?」
「それを今から確認しますから…なばっ!?」
それらを確認したす瞬間リーファが変な声を出した
なんだなんだとキリトと一緒にレイもリーファが作り出したそのレンズを覗き込む
レンズの先―――氷柱の先端に封じられているのは黄金の刀身を持つ、絢爛な剣
そのウエポンの名称を、リーファとレイは知っている
「え、エクスキャリバーですよねあれ! そうですよねレイさん!?」
「あぁ、あれはユージーンのグラムをも超える唯一の武器…所在不明だった最強武器だ」
<そんなのが、まさかこんなところにあったなんてね…>
「さ、最強…」
リーファとレイ、そしてシルヴァの声にキリトも思わずゴクリと固唾を呑んだ
封印された剣の上に細い螺旋階段みたいなのが伸びているのがわかる
どうやら氷柱内部にダンジョンがあって、そこを踏破すれば晴れてALOに一本しかない伝説の武器を入手できるのだろう
道中、氷柱の中程から突き出したバルコニーみたいなのや、ヨツンヘイムの天涯から垂れ下がっている一本の根が見えた
前者がおそらくダンジョンの入口で、後者が単純に脱出経路だろう
もっとも、飛び降りることはなかったが
「…そのうち来ようぜ。三人じゃ流石に無理だ」
「あはは、そうですよね…」
「最高難度なのは間違いないからな…俺たちじゃ突破できないよなー」
<未練たらたらね、キリト>
のんびりとそんな会話を交わしている間にトンキーは更にぐんぐん上昇していく
見下ろすと氷のダンジョンの入口の奥に邪神の影が見えた
トンキーを襲っていたのと似ているが更におどろおどろしいタイプだ
恐らく最深部にいるであろうヨツンヘイム最強の邪神も似たような感じだろう
そしてトンキーら異形の邪神は人型の邪神と敵対しており、プレイヤーを届ける役目を担っているのだ
ゆえに人型はトンキーが羽化…でいいのだろうか…する前に仕留めようと攻撃していたのだろう
そんな思考をものともせず、ぐんぐんトンキーは浮かんでいく
やがてひゅるる、と声を上げトンキーは速度を落とし、長い鼻を伸ばすと木の根を先端に巻き取って止まった
目の前でぎしぎし揺れる木の階段を見ながらリーファはゆっくり立ち上がる
先に立ち上がったキリトの手を取って順に一番下へと乗り移る
全員降りたことを確認するとトンキーは鼻を解きすこし高度を上げてその巨体を回転させる
伸ばされた鼻の先端をリーファはすっと触れると
「また来るね、トンキー。それまで、他の邪神に襲われたりしたらダメだよ」
「またいっぱい話しましょうね、トンキーさんっ」
ユイも同じようにそう発すると、トンキーはふるるっ、と喉を鳴らして答えた気がした
トンキーは翼を折りたたむとそのまますごい速さで下降していく
きらりと最後に羽毛を輝かせて、その姿を薄暗い闇の中へと消えていった
きっとこれからは気ままに空を飛び回るっているだろう
そしていつの日か、リーファが呼べばまたその背に乗せてくれるに違いない
「さ、行きましょうレイさん、キリトくん! この上はもうアルンだよ!」
「あぁ、ようやく到着だな!」
「最後のひとっ走りと行くか。…なぁ、上に戻っても聖剣のことは内緒にしとこうぜ」
<…いろいろ台無しよ、その発言で>
そうだよーなんてリーファはシルヴァの言葉に同意しつつ、キリトを小突き、レイはわからんでもないけどな、とキリトを擁護する
そしてふふふ、とシルヴァが小さく微笑んだのを一区切りに、改めて一行は太い木の根を貫いているらせん状の階段を一気に駆け上がった
目的地まで、もうすぐだ
誰かを好きになるってことは、仕方ねぇことだと思うぜ
誰を好きになるってのは当人次第だと思うけどな
nextZERO 兄妹 brother