呼ばるる異名は黄金騎士   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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中途半端ですが

※サブタイと予告スランプに陥ってるマン
セリフが思いつかない(白目

一先ずどうぞ
鎧の出番はまだ先かもしれない、しかしもしかしたら次回あるかも(願望


感情 like or love

今現在、リーファはレイとキリトの戦闘を眺めていた

リーファは半ば感嘆としながら、レイはおお、とキリトの動きに驚きながら、だ

北東に広がる古森の上空、あと少しで森をぬけ高原地帯に差し掛かる場所である

スイルベーンははるか後方にあり、どんなに目を凝らしてももうその姿を見ることはできない

そろそろ出現する敵のレベルもかなりのものになりつつあり、羽の生えたオオトカゲのイビルグランサーなどはシルフ級の初級ダンジョンボスに匹敵するクラスだ

怖いのは紫の一つ目から放つ〝邪眼〟というスキル

カース系の呪文でもらうと大幅な弱体化を強いられる難敵である

 

故にリーファは距離を置いて援護に徹し、どっちかに邪眼が当たったら解呪魔法をかけているのだ

しかし慣れているのかレイは全く当たる心配はなかったが、流石にキリトはそうはいかず、何度か解呪をかけてサポートしている

とはいえ、その必要があるかどうかも疑わしい

 

身の丈以上の剣を構えたキリトには防御、回避の言葉など知らんとばかりの脳筋戦法でトカゲどもをさんざん叩き落としていった

尾を切ってはすかさず体を刻み、回転切りをしては多数を巻き込む

こんな感じの戦いが続いて五回目だ

 

「おつかれー」

「おつかれさん、リーファも援護ありがとな」

 

リーファとキリト、レイはそれぞれ手を叩き合い、健闘を賞賛する

 

<しかし、無茶な戦い方ねぇアナタ>

「え、そ、そうかな」

「そうよ。普通はもっと回避を意識して戦闘するものよ。キミのはホントゴリ押しだよ」

「その分早く片付けれていいじゃないか」

「今みたいな構成ならな。近接と遠距離の混合とか、プレイヤーとの戦闘になったときとかは狙い打たれるぜ」

「魔法って、回避できないの?」

「遠距離魔法には種類があるんだ。威力高くて直線軌道のは避けれるが、ホーミングとか範囲魔法とかはきついぜ」

「それ系のメイジがいるときは、高速移動しながら交錯タイミングを図る必要があるしね」

「…むぅ。今までいたゲームには魔法なんてなかったからなぁ。覚えることがたくさんだ」

<まぁアナタなら大丈夫よ。反射神経良さそうだもの>

「そうだね。シルヴァの言うとおりだよ。キリトくんって現実でスポーツとかしてたの?」

「い、いや、全く」

「そうなんだ? まぁいいや、早く先に進みましょう」

 

リーファの言葉にそれぞれ頷きあって一行は移動を再開した

そのあとは特にモンスターと会うことはなく、三人は古森を抜けて山岳地帯に突入、そこでちょうど飛翔力が限界に達したので山の裾野を形成する草原の端っこを休憩ポイントとして降下する

着地したリーファは大きく伸びをする

生身ではないのに長時間飛行すると存在しないはずの器官なのに翅のある根元の部分が疲労するような感覚に襲われるのだ

少し遅れて着地したキリトやレイも同じように腰を当てて、背筋を伸ばしている

レイが聞いた

 

「はは、疲れたか?」

「なんの! まだまだ」

「あはは、頑張るわね。だけど、しばらく空の旅はお預けよ」

「え? なんで」

「見えるだろう? あの山」

 

そうしてレイは草原の先にそびえ立っている真っ白い山脈を指差した

 

「アイツが飛行限界高度より高くてね。山超えんのは洞窟抜けないといけないんだよ。シルフ領からアルンへ向かい一番の難所、みたいだぜ。まぁ俺行ったことないけど」

「私もないの。…みんな初めてね」

「なるほど。…長いのか? 洞窟」

「むちゃくちゃ長いらしいぜ。途中に中立の鉱山都市があって休めるみたいだが。…キリト、今日は時間、いけるか?」

 

そうレイが問いかけるとキリトはウィンドウを表示させ、リアルの時間を確認する

確認してみると、時間は夜の七時を回っていた

 

「うん、俺は当分平気だよ」

「おっけー、それじゃあもうちょっと頑張ろう。ここで一度ローテアウトしようか」

「ろ、ローテアウト?」

 

きょとんとした目でキリトが呟いた

それに対してレイが答える

 

「交代でログアウトして休憩することだよ。ほら、ここ中立地帯だからすぐに落ちれないからな。だから順番決めてログアウトして、その間残った人が空のアバター守んだよ」

「なるほど。…じゃあ、ここはレディファーストってことで、リーファからにするか」

「問題ないぜ。そんなわけで、お先にどうぞだリーファ」

「お言葉に甘えて。二十分くらいよろしく!」

 

そう言うとリーファはウィンドウを表示させログアウトのボタンを押す

警告にイエスのボタンを押して了承すると、周囲の風景が遠ざかるように消えていく―――

 

 

 

 

リーファ―――桐ヶ谷直葉はアミュスフィアを一度頭から取り外し部屋からでる

足音を殺しつつ階段を下り一階へ

母の翠はまだ帰ってきておらず、兄の和人も寝ているのか静かだ

直葉は冷蔵庫を開けて適当にパンをスライスし即興のベーグルサンドを二つ作り上げる

片方を皿に置いてカップに牛乳を注いでレンジに入れスイッチオン

そのあとで二階で寝ているだろう兄へと声をかける

 

「お兄ちゃーん、ご飯どうするー?」

 

しかし返事はない

寝ているのかな、と肩をすくめて戻る

温めたカップからは薄い湯気が出来た牛乳と一緒にテーブルに持っていく

小さい声でいただきますと呟いたあと、即興の夕食をものの一分半くらいで食べ終え、使った食器を洗浄機へ

 

次に向かうのはお風呂場だ

仮想世界の戦闘といえど、緊張によって汗はかく

だから長い時間インしていたら着替えないと気持ちが悪いのである

衣服を脱ぎ捨て、裸になり直葉は浴室へ飛び込んだ

本当はゲームにかまけて食事や入浴を適当に済ませると母親に怒られてしまうので、なるべく団体行動は宵の口にかからないように細心の注意を払っている

しかし今回ばかりはそうも言っていられない

キリト達との旅は下手すれば明日、もしくは明日以降まで掛かるかも知れない

どちらかと言うと直葉はパーティプレイが苦手な方だ

日をまたぐときはどうしても気詰まってしまうのだが、今回は不思議とそれはなかった

 

それどころか、ワクワクしているのだ

 

リアルの自分の体は剣道選手として大きいほうじゃない、がリーファと比べると明らかに骨太と言っていい

体の所々を動かせば筋肉が浮き上がり、胸だって育ってきている

体のリアルな存在感が心の奥の僅かな葛藤を生々しく移している気がして―――

 

そこで直葉は瞼を閉じて、視界を一度真っ暗にしてリセットする

そうだ、別に好意を抱いたわけではない、新天地に行くのが楽しみなだけなのだ

それは言い聞かせる意味合いもあるが、確かな真実でもある

 

…昔は毎日がそんな感じだった

自分が強くなるたびに行動範囲が少しづつではあるが広がっていき、知らない土地の上空を飛ぶだけでどれだけ心がドキドキしたか

しかしシルフ領の中で古参の有力プレイヤーとして持ち上げられてからは、知識が増えることに比例してしがらみも増えていき、いつの間にか毎日が惰性の中にうもれていってしまっていた

種族全体のために戦うという義務が羽に鎖を纏わせたのだ

 

アルブヘイムで領地を捨てたものを指す言葉〝レネゲイド〟

背教者という意味をもつ、わかりやすく言えば裏切り者

義務としてかせられた教えを捨てて、故郷を追われた人々

以前、どうしてスプリガンの領地を捨てたのか、それとなくレイに聞いたことがあった

すると彼はうーん、と悩みながらこう答えたのを覚えている

 

―――せっかく飛べるんだから、自由に飛んでみたいじゃん?

 

その後サクヤがくすりと笑いをこぼしその場が笑いに包まれたのをよく覚えている

自由に、か

自分も、今回の冒険が終わる頃には、そんな風にアルブヘイムを飛べるようになるのだろうか

 

そんなことを考えながら直葉はささっと髪と体を洗って泡を流す

壁のハッチからタオルを引き出して隣のパネルを操作すると天井のスリットから温風が強烈な勢いで吹き出した

大体髪が乾いたところで浴室を出てバスタオルを体に巻きつけリビングへ

ちらりと時計を見やると既に十七分は経過している

もうひと皿のベーグルサンドにラップをかけてメモを破りとりそこに〝お兄ちゃんへ。お腹がすいたら食べてね〟と書置きを残すと二階の部屋へと駆け上がる

そこでジャージへ着替えてアミュスフィアを装着し体を横にしリンクスタートをする

 

◇◇◇

 

「おまたせ。なにもなかった?」

 

待機態勢から立ち上がって傍らに寝っ転がっていたキリトは起き上がりつつ咥えていたストローみたいなのを一度離して頷いた

 

「おかえり。あぁ、静かだったよ」

「…なにそれ」

「雑貨屋で買い込んだんだけど。スイルベーンの特産だってNPCがいってたぜ」

「タバコみたいなもんかな。俺吸わないけど」

 

その横でレイも咥えながら弄んでいる

キリトはリーファにもその緑色のストローを放り投げてきた

試しに咥えてみると甘い薄荷の香りが口内を満たす

 

「じゃあ今度は俺が落ちる番だな。護衛よろしく」

「おぉ、いってこい」「いってらっしゃーい」

 

レイと一緒に口々に返事をする

キリトがウィンドウを出してログアウトするとキリトのアバターが自動的に待機体制を取る

隣に腰を下ろしぼんやりと薄荷のストローを吸ってるとふとレイが呟いた

 

「…敵が来ないと暇だなぁ」

「むしろ今は来てくれない方がいいんですけど」

 

苦い顔でリーファが突っ込む

確かに暇といえば暇ではあるが逆に敵が襲撃していいという理由にはならない

ていうか来てたまるか

 

そんなことを会話しているとキリトの胸ポケットがごそごそと動き出しユイがもぞもぞと這い出てきた

その光景はリーファを仰天させる

 

「わっ!? あ、アナタ、ご主人様がいなくても動けるの!?」

「そりゃそうですよ! 私は私ですから! それに、ご主人様でなく、パパです」

「…そういや、なんでキリトのことパパって呼ぶんだ? そういう設定?」

 

レイの問いかけにユイは一瞬顔を暗くする

僅かにうつむきながら

 

「私を助けてくれたんです。…俺の子供だって、そう言ってくれたんです。だから、パパです」

「…そう、なのか」

 

自分から聞いておいてなんだが全くわからん

リーファもポカンとしているようだが、きっとこことは違うどこかで色々あったのだろう

そう思う事にする

 

「…パパのこと、好きなの?」

 

リーファがふと、何気なく訊ねる

するとユイは真剣な表情でリーファを見据え

 

「―――リーファさん、好きって、どういうことなんでしょう」

「ど、どうって…」

 

思わず口ごもりながらレイの方へと視線を移す

移されたレイはうーん、と考えながら

 

「…わかんねぇなぁ。いつでも一緒にいたいとか、隣にいると安心するとか、そんなんだろうさ」

 

そうレイの言葉を聞き、リーファはなぜか脳裏に和人の笑顔がよぎっていた

そんな顔が、どういうわけだか瞼を閉じてるキリトのアバターと重なる

心の奥底に封印した彼への思慕と似たものを、キリトにも感じてしまっているような―――

 

「どうしたんですか? リーファさん」

「うぇ!? な、なななななんでもないっ!」

 

怪訝そうに首をかしげたユイの言葉にリーファはつい大声をあげてしまった

 

「何がなんでもないんだ?」

「おうあ!?」

 

いきなりキリトが顔を上げており、文字通り飛び跳ねた

 

「おう、戻ってきたか。早かったな」

「家族が作り置きしてくれてたから。で、何かあったの?」

「パパ。いまリーファさんとお話してました。人を―――」

「うわぁぁぁ!? 本当に何でもないんだってば!」

 

手をぶんぶん振り回すリーファに笑みをこぼしながら今度はレイがウィンドウを展開させる

 

「最後に俺だな。なるべく早く戻ってくるよ」

「う、うん! 見張りは任せてね!」

 

照れ隠しなのか妙にリーファの声が変に大きかった

 

◇◇◇

 

そんなわけでレイも戻ってさぁ先に進もう、とした矢先である

不意にキリトが今まで飛んできた森の方へと視線を向けた

 

「…? どうかしたの?」

「いや、なんか誰かに見られた気がして。…ユイ、近くに反応はあるか?」

「いえ、反応はありません」

 

ユイは頭を振って否定する

しかしキリトはまだ納得していないようであり、未だに顔をしかめている

そんな彼に向かってシルヴァが口を開いた

 

<もしかすると、トレーサーがついているのかもしれないわね>

「トレーサー?」

<追跡魔法の一種よ。大抵は小さい使い魔の姿で、術者に対象の位置を教える魔法なんだけど>

 

シルヴァの説明にキリトがへぇ、と頷きながら

 

「解除はできるのか?」

「トレーサーを見つけることができれば可能だけど…術者の魔法スキルが高いと対象との間に取れる距離も増えていくからこんなフィールドだと不可能に近いわね」

「そうか…。まぁ気のせいかもだし…とにかく、先急ごうぜ」

「だな。悩んでても仕方ない」

 

三人は頷き合いそれぞれ地面を蹴って浮かび上がる

そこから進んでたどり着いたのはかなり大きい洞窟だ

入口の周囲は変な怪物の彫刻があり、上部中央には大きな悪魔の首が突き出している

 

「ルグルー回廊。たしかルグルーってのが、鉱山都市の名前だな」

 

レイの言葉にへぇ、と頷きながら彼を先頭に一行は回廊へ入っていく

中は結構薄暗くリーファは魔法を使って明かりを灯そうとしたとき、ふとキリトに聞いた

 

「そういえばキリトくんって魔法スキル上げてるの?」

「え? あー、まぁ初期のやつだけなら。使ったことあんまないけど」

「そういえばこういう洞窟とかはスプリガンだから、俺らの方が明るい魔法あんだっけ」

 

完全にこの二人は脳筋タイプである

レイはウィンドウを開き簡易なマニュアルで確認してる中、キリトは胸ポケットから顔を覗かしているユイに聞いてみる

 

「えっと、わかる?」

「もう。パパはマニュアルくらい目を通してた方がいいですよ。レイさんを見習ってください。それで、明かりの魔法ですけど…」

 

ユイが区切って呟いたワードをキリトは右手を掲げながら覚束無い様子で繰り返す

そうすると彼の手の先から仄白い光の波動が広がっていく

その光がリーファとレイを包んだ瞬間視界が明るくなった

光源で照らすのではなく、対象に暗示をかけて暗視能力を付与する魔法だ

 

「おぉ、こんな魔法だったのか。初めて知ったぜ」

「スプリガンの暗視魔法も侮れないわねぇ…」

「…案外スペルワード言うのってしんどいんだな…」

「でも、使える魔法くらいは暗記しといた方がいいわよ。どんなに地味な魔法でも、それが生死を分ける可能性があるんだから」

「うへぇ…」

 

そんな言葉を言い合いながら一行は洞窟を進んでいく

入口の白い光は、いつの間にかすっかり見えなくなっていた




諦めない。雑な言葉だが、俺はこの言葉、割と好きだぜ
例え全滅しそうな時でも、誰ひとり死なせやしないってのもまた、諦めないって覚悟だな

nextZERO 集団戦 Against the population

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