呼ばるる異名は黄金騎士   作:桐生 乱桐(アジフライ)

13 / 29
たぶんタイトル詐欺になってしまった
あと今回はいつも以上にクソです(個人的に

それでも楽しんでいただければ幸いです

誤字脱字見かけましたらご連絡ください

※あとこんな終わりにしといてなんだけど牙狼そんな絡まないかもしれない(多分


フェアリィダンス
妖精 ALfheim


「まだ挑むのか?」

 

それはだいぶ前の記憶の一つ

あるダンジョンの最深部―――そこに強力なアイテムが眠っていることを知った

しかしそこにいる敵が恐ろしく強く、生半可な装備ではたちまち返り討ちにされてしまうことも多発している場所である

ここにひと組のパーティがある

ひとりは緑色の着物を着た、シルフの女性

もうひとりは黒っぽい装備に身を包んだ、スプリガンの青年である

 

「懲りないなレイ。かれこれ何度挑んで返り討ちにされている。もう少しで私の魔力も尽きてしまうぞ」

「オッケー! もう後には退けないって訳だな。…やってやろーじゃないか」

 

かれこれ返り討ちにされた、とは言ったが何度も戦っている内にスプリガンの青年の動きもどんどん良くなってきているような気がするのだ

しっかり相手の攻撃も躱せるようになってきたし、きちんと相手の太刀を受けきることもできている

しかし相手の鎧―――白く、青く輝いているこの鎧はなんなのだろうか

恐らくこれが門番なのだろうが、余りにも強すぎる上に、二刀流…攻撃に慣れるのにはだいぶ長い時間戦闘して癖を掴まなければ対応しきれない

 

おまけに戦闘ルールが原則として一対一のタイマン勝負

よほど己の腕に自信がない限り挑むなんて選択肢は出てこないだろう

目の前にいる男を除いて―――

 

「はぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

咆哮と共に繰り出された剣がついに鎧に一撃を食らわした

その光景を傍から見ていたシルフの女性も思わずおぉ、と短い声を漏らす

人型だった鎧はゆっくりと後ろへのけぞったのち、バキンとバラバラに飛び散って、その背後にあった台座のようなものに装着され、改めて人型としての形を作る

 

<―――おめでとう、貴方の健闘を称えるわ>

 

青年はぜいぜいと肩で息をしており、ふらふらとおぼつかないながらも立ち上がった

 

「…勝てた、のか」

<えぇ。正直勝てるやつなんかいないって思ってたけど…こっちの根負けみたいなものね。あくなき勝利への執着心…私は少なくとも嫌いじゃないわ>

「…そいつはどうも」

 

青年は苦笑いでその声色に返答する

声色は続けた

 

<さぁ、貴方を資格者として認めるわ。手に取りなさい、鎮座されてある二刀一対の剣を>

 

言われるがままに、青年は鎧と共にセットされてある剣を思い切り引き抜いた

瞬間鎮座されてあった鎧が弾け飛び、今度は青年の体へと装着されていく

その光景に、シルフの女性は僅かではあるが、心奪われていた

相手として立っていたあの鎧には絶望しかなかったが―――彼がまとったその鎧は、どこか優しさを帯びたものへと変化しているような気がしたのだ

ゆっくりと金色のような鋭い瞳が、シルフの女性を射抜く

瞬間鎧は解除され、どこかへと飛んでいった

 

<あとは貴方次第。腐らせないよう慎重に戦ってね。…名前聞いてもいいかしら>

「あぁ、俺はレイ。スプリガンのレイだ」

<素敵な名前。私はシルヴァ。まぁ、よろしくね>

 

いつのまにか手の甲にセットされたその喋るアクセサリを見ながら、もう一度青年―――レイはシルフの女性の方を見る

屈託のない笑みを浮かべて

 

「どうだサクヤ。やってやったぞ」

 

子供みたいに喜ぶ彼を見てシルフの女性―――サクヤはやれやれとため息をつきながら

 

「大したやつだよ。お前は」

 

そんな不愛想な、それでいて想い込めた言葉を送った

 

◇◇◇

 

「―――お―――おい―――おいレイ!」

 

そんな懐かしい夢を見ていると、不意に誰かにたたき起こされた

ガバッと体を上げて周囲を見渡すと、そこには見慣れたマスター―――ガダルの顔が見える

 

「いつまで寝てやがんだ人の店で」

「あっれ…寝ちゃってた? わりぃわりぃマスター」

 

突っ伏してた机をタオルか何かで吹きながらガダルはレイに聞いてくる

 

「偉い気持ちよさそうに寝てたけどよ、なんか夢でも見てたのか?」

「あぁ。―――懐かしい夢を見てた」

 

そう言って手の甲にあるアクセサリを見る

視線を向けられたアクセサリ―――シルヴァはレイに声をかける

 

<あら。どうしたのレイ>

「なんでもないよ、シルヴァ。…さて、今日も頑張って行くか」

 

そう言って思い切り背伸びをして立ち上がる

出る間際カウンターに少量のユルドを置いて、一枚の小さい板チョコを手に取ってレイはそれを口に放る

包み紙をゴミ箱に捨て、改めてレイは店から飛び出した

ちなみに店の名前はルーポ 

イタリア語で―――〝幸運を〟

 

◇◇◇

 

建築関係で知り合った人の娘が例のゲームに巻き込まれて、未だに意識不明の状態

そんな話を聞かされて、自分は今某県某所にある病院に見舞いに来ていた

確か名前を結城明日奈と言ったか

言葉を交わした時間は全然ないが、それでも一応は友人なのだ

それに、両親の期待を一身に受けているのか、かつて見たときの彼女の表情は暗いものが多かった

 

受付にはあの人が言っているだろうから、自分は先に結城明日奈の病室へと向かってみる

少し探して、その病室はあった

既に部屋には先客がおり、黒い髪の少年だった

寝落ちしてしまったのか、彼は目を閉じたままで動いていない

 

彼を起こさないように自分は結城明日奈の付近に近づいた

ナーブなんちゃらをつけたままの状態で、今も彼女は眠り続けている

ゲームはするが、こういったギアをつけてやるのはなんかゲームじゃない気がしてならないのは個人の談である

それでも、向こうで経験したことはきっとなにものにも代えられない一生の思い出になるに違いない

だから彼女には、早いとこ起き上がってもらいたいのだが

 

控えめなアラームが鳴り響き、それに合わせて黒髪の少年がビクリと覚醒する

時間はもう正午になっていた

 

「…あ、す、すみません…」

「あぁいや。気にしないでいいよ」

 

こちらに言葉をかけてくる黒髪の少年の言葉に返し、彼は横たわっている結城明日奈に向かって言葉を発する

 

「そろそろ帰るよ、アスナ。…またすぐ来るから」

 

短い言葉の羅列の中に、深い親愛を感じた

きっとSAOとやらで深く結ばれた絆があるのだろう

そこにどんな過程があったのかはわからないが

そう言って立ち上がろうとしたとき扉が開く音が耳に入ってきた

そこにはガタイのいい初老の男性と〝ぱっと見〟は真面目そうなメガネをかけた男性のふたりがいた

初老の男性については知っている、あの人に建築の依頼をしてきた人で、名前は確か結城彰三と言ったか

なんかどっかのCEOという話を聞いたことがある

 

「おぉ、君たちも来てくれていたのか」

「こんにちわ、お邪魔してます」

「どうも」

「ありがとう、この娘も喜んでいるよ」

 

黒い少年に釣られてつい自分も挨拶してしまった

彰三は結城明日奈に近づき、その頭を撫でる

 

「そういえば、彼とは初めてだったな。彼は私の研究所で主任をしてる須郷くんだ」

「よろしく。須郷伸之です。そうか、君があの」

「桐ヶ谷和人です、よろしく」

 

須郷と和人の握手を傍から見守る傍ら、その名前を聞いてピクリとした

桐ヶ谷和人、聞き覚えのある名前だと思ったらそうだ、彼はSAOをクリアに導いた英雄ではないか

 

「いやすまない。あまりにもドラマティックな話なのでつい喋ってしまった。彼は、私の腹心の息子でね。昔から家族同然の―――」

「あぁ、社長、そのことなんですが」

 

手を話した彼は結城父に向き直り

 

「来月にでも正式にそのお話を決めさせていただきたいと思っています」

「…しかし君はいいのかね。まだ新しい人生だって…」

「僕の心は決まっています。明日菜さんが今の美しい姿でいる間に―――ドレスを着せてあげたいんです」

「…そうだな。そろそろ覚悟を決める時かもしれないな…」

 

聞こえてきた不穏な会話

…いや、もしかしなくてもそういう会話なのだろう

 

「では、私は失礼するよ。また会おう二人共」

 

そんな彼に会釈だけをし結城父はこの部屋を後にした

今この場にいるのは須郷と桐ヶ谷と、自分だけだ

不意に須合が寝込んでいる明日奈の付近に立ち、唐突に髪をつまんだ

仕草が気持ち悪い

 

「…君はあのゲームの中で、明日奈と暮らしていた、と聞いたよ」

「―――えぇ」

「なら僕たちは少し複雑な関係、ということになるかな」

 

すると彼は大層愉快だと言わんばかりに表情を歪め

 

「さっきの話はねぇ、僕と明日奈が結婚する、という話だよぉ」

 

やっぱりか、と自分は悟る

っていうか自分の娘が意識不明なのに〝そんな話〟をOKするのだろうか

普通は否、だ

例えどれだけ信頼に足る相手がそんな話を持ち出しても、普通はない、と思うのだが

最も、結城家の家庭の事情など知りはしないのだが

 

その後も二人の会話は続いていたが、自分は静かにその病室を後にする

これ以上は聞いたところでできることなどないからだ

 

 

完全に自失状態となった彼が病院から出てきた

あれから病室でなにを言われたのかわからないが、とても心を抉る言葉を囁かれたのだろう

帰る後ろ姿がとても悲しみに溢れており、かける言葉が見つからない

 

「彼が、例の事件の生存者か?」

 

後ろから声がする

見るとそこには赤色のポニーテールにコートを着込んだ大人の女性が歩いてくる

彼女は彼の隣に並びたち、ふぅ、とタバコを吹かせた

 

「しかし、見た感じからはとてもじゃないがそうは見えないな」

「ゲームの中の出来事みたいだからさ。そりゃ容姿は違うでしょうよ」

「お前はそういうギアをつけてゲームはしないのか? 好きだろ、ゲーム」

「あんなもんつけてまでゲームなんかするか。コントローラー握って画面見てこそのゲームなんだよ。俺にとってはね」

 

無論、趣味嗜好は人それぞれなのだけど

 

「まぁ、今の俺たちにはできることなんてないし。…そだ、一人気になる奴が出来たな」

「誰だ?」

「…なんだっけ、須郷、のぶゆき、だったっけ。漢字はわかんないけど、そんな名前だ」

「…全く知らんな、誰だ本当に」

「俺も知らない。だから、ちょっと調べてみることにするさ」

 

そう言って後ろに駐車してある彼女の車の隣に駐輪してある自分のバイクに向かっていく

バイクに跨ってヘルメットを被り、エンジンを吹かす

同じようにポケットに手を入れながら車付近まで女性は歩いてきてる彼女に向かって、エンジンをふかしつつ彼は言う

 

「…やれやれ。じゃあいったん帰ろうぜ、ひとまず今日は、だけど」

「そうだな。ここで私たちがしてやれることなどないし、いても時間の無駄、だな」

 

◇◇◇

 

キリトやアスナたちは元気にしているだろうか

後で知ったのだがギンガ―――今は大河だが―――とは別の病院に搬送されているらしい、と知ったのは目覚めて三日後あたりだ

二年間昏睡に入る前に剣道をしていたのが功を成したのかわからないが、リハビリ数日で歩くまでには回復できた

流石に派手に動くのは不可能なんだが、この分ならすぐにそこまで回復できるかもしれない

 

そして今現在、病室でホケーっとしている

やることがない、と言えば嘘になる

チラリとテーブルに置いてあるゲームとギアを見やる

自分を地獄に叩き落としたナーブギアと―――新作のゲームソフト<アルブヘイムオンライン>

まぁ新作といっても発売から一年は経過しているらしいのだが

 

ここに帰還して世間の情報を調べている内に気になって医者に無理言って実費で購入したものである

っていうか購入させてくれるとは流石に思ってはいなかったが、あのカエル顔の医者は苦笑いで

 

―――あの子も君も、懲りないね?

 

って言っているあたり、やっぱり呆れてはいるのだろう

しかしこれ以外自分に趣味がないのもまた真実なのだ

…別に悲しくなどなっていません

…ところであの子って誰なのだろうか、そのときは考えてもわからなかった

自分と同じように物好き人もいたものだ、としか思ってなかったのだ

とりあえず被って挑んでみるかーとか思っていたらそこからノックと共に扉が開かれて、来客が現れる

 

「白銀さーん、検診のお時間ですよー」

「おっじゃましまーす、ギンガ…じゃなかった、たーいがっ」

 

ナース浅上さんとサチこと早見幸衣である

今の自分の姿は頭に思いっきりナーブギアを嵌めており、今まさにあのセリフをつぶやこうとしていたところである

このあとめちゃくちゃ止められた

 

 

「妖精の国って、なんだかロマンチックですね」

 

事情を説明してなんとか納得してくれた

幸衣はゲームソフトを手に取って眺めており、浅上はパッケージの後ろを見てそんな感想を述べている

その後浅上は苦笑いを作って

 

「けどあんな目にあったのに。また昏睡したらどうするんです?」

「あはは…これしか趣味がないもので…はは」

「それはそれで…悲しくなりません?」

 

エグいくらいな浅上の一言

否定できないのが悲しい

 

「…でも、そっか。大河も買ったんだ、このゲーム」

「―――もって事は、もしかしてサチ…じゃない、幸衣も?」

「うん。自分でもバカみたいって思ったけど、ね…」

 

大河の言葉に短く答えながら、彼女は言葉を紡いでいく

 

「なんでかな。あんな目にあったけど、それでもあの世界には憧れがあって。いろんな人と友達になれたし…大河にも…逢えたし」

 

最後の一言だけ頬を朱に染め彼女はつぶやく

そんな言葉にどう反応していいか分からず、大河もまたいろいろと視線を見回してしまう

彼彼女らのウブな反応に浅上はふふふ、と微笑みをこぼし

 

「本当にゲームが大好きなんですね、二人共」

 

そんな浅上の言葉に、大河と幸衣の二人も思わず二人で見合わせて笑ってしまった

こほん、と彼女は咳払いしつつ立ち上がり

 

「没頭するのは構いませんが、程々にしてくださいね? ゲームと違って、現実は有限なんですから」

「それは、肝に銘じておきます…」

 

守れる自信ないけれど

 

◇◇◇

 

ゲーム内での再会を約束し、改めてナーブギアを被る

そして呟く、二年前自分を地獄へと叩き落としてくれた言葉

 

「―――リンクスタート」

 

流石に今度も地獄に叩き落としてくれる―――ことはなく、普通にゲーム画面が進行する

視神経とか聴覚神経とかの接続確認OKの表示が出てきて、初期設定へと進行

説明書を読む限り一番最初にプレイヤーができるのは種族選択しかできないみたいだ

何選ぼうか、正直こっちとしてはなんでもいいのだが、一番最初に目に入ってきたインプという種族を選んでみる

幸衣は―――ウンディーネを選びそうだ、白も似合うが、彼女はやはり青が似合う

 

設定し終えてさぁ行こう、そうなったとき不意に画面がフリーズした

いや、固まったというべき、なのだろうか

っていうか、なんだこれ

と思った次の瞬間落下する感覚が大河を襲う

 

「なんじゃそりゃぁぁっぁぁぁぁ!?」

 

思わずそんな叫びとともに彼の体は暗黒空間へと落ちていく

 

◇◇◇

 

突然ではあるが、少女は今仲間のウンディーネと共に逃げている

 

発端は自分の発言である

まず集まって、この世界を一通り見てまわろうよ!

 

そうして仲間内でひとまず集まり、探検でもしてまわろう、ということになったのだが、他のプレイヤーに襲撃されてしまったのだ

完全スキル製であり、自身の反射神経だけなら何とか反撃の糸口を掴めたかもしれない

しかし、飛翔というのは流石にログインしたばかりの彼女たちではそうそう慣れるものじゃなかった

空を飛び交う攻撃は対応がしづらく、あっという間に仲間はやれられてしまった

おまけにこのゲームは種族間での争いをメインにしてあるらしく一部での場所を除いてPKが推奨されているというなかなかハードなゲームなのだ

 

「…これ以上逃げても仕方ない、戦おう!」

「…それしかなさそうね、皆も心配しているだろうし…」

 

幸いにも始めたばかりゆえにこっちのスキルとかお金とかはあんまりないし、デスペナルティなんてあってないようなものだ

だったら正面から向かって玉砕してやろう、あわよくば同士討ちできればいいな、なんて思いから剣を構えたときだった

 

空から誰かが降ってきた

 

◇◇◇

 

上空からのダイブの経験なんて今後スカイダイビングでもしない限りもう永劫経験しないだろう

もれなく絶賛経験中であるからだ

あまりにも突然的な状況すぎて頭に理解が追いつかない

 

そういえばこの世界は飛べるのだった…が、しかし飛び方が分からない

このゲームに落下ダメージはあるのだろうか

まぁこの際どうでもいい、どうせ落下は免れないのなら思い切って着地を検討してみよう

何とか体制を整えて足を地面の方へと持っていく

なんとなしに視界を地面に向けるとそこには紺色?のロングの髪の女の子と同じように青い長髪の女性が四名ほどのプレイヤーから逃げていたところが見えた

追いかけている彼らが空を流暢に飛んでいるのに対し、追いかけられている彼女らが走っているのを見ていると彼女らは自分と同じ初心者、なのだろう

 

なんて考えているともうすぐ地面である

男は度胸、なんでもやってみるものだの精神で、勢いよく大河―――ギンガはその場に着地した

ゲームだからこそできる芸当である

傍から見れば何がなんだか分からないだろう、無論、自分もわからない

着地して少し落ち着いた状態でふと自分の服装を見てみる

そこにはインプの初期装備ではなく、かつてSAOで自分が着ていた白外套ではないか

 

「あ、あのー…おにーさん大丈夫?」

「援軍か? しかし空から落ちてくるやつなんかみたことないぞ…?」

「なんでもいい、狩ることには変わらんからな」

 

状況は一触即発のようで、徒党を組んでいるプレイヤーたちはギンガのこともターゲットと捉えるとこちらに向けて剣を構えてくる

 

「…おにーさん、いきなりで悪いけど、ボクたちと少し付き合ってくれない? お詫びは後でするからさ」

「最初からそのつもりだったさ。…俺も剣を取るのは、久しぶりだけど」

<―――変わらないキレを期待するぜ>

 

不意に聞こえた第三者の言葉

女の子は頭に疑問符を浮かべキョロキョロとしていたが、ギンガにはそれがなんなのかすぐにわかっていた

アイツはまた会えると言っていたが、こんなにも早いとは思わなかった

 

「任せろよ、ザルバ!」

 

そう応えギンガは大地を蹴った

赤い鞘から刀身を抜き、その鞘を外套へと仕舞い構え、一気に斬りかかる

飛んでいようが、知ったことか

 

 

ウンディーネの女性が客観的に彼の戦いを見て、先程から驚きの連続が起こりっぱなしである

まず、圧倒的な強さという第一印象

その隣で戦っている〝彼女〟も間違いなく強い部類に入るのだが、それに引けを取らないほどである

次に驚いたのは戦い方だ

彼も〝彼女〟と同じように恐らく初心者であろうという事は見て取れる

理由としては、彼もほとんど跳ばないからだ

このゲームの魅力の一つは飛行できることにあり、もちろんそれを戦闘に用いることもできる

だが彼は上空を飛び回る敵目掛けて持っている剣を投擲し地面に叩き落とすという芸当をやってのけているのだ

オマケに徒手空拳でも戦えるなどというぶっ飛びぶりである

…もしかして、あの人本当はもの凄く強いのではないのだろうか

 

 

「クソ、なんなんだコイツ!」

 

どういう理由かはわからないが、剣を振るってて感じたことが一つある

恐らく今使っているデータは、自分がSAOで使用していたものと同じであろう

ゲーマーとしてはリセットして初めからやり込むものなのだろうが、生憎とギンガはリセットする気はなかった

元からのんびりやれればそれでよかったのだし

 

「こうなったらイチかバチかだ! 幻影魔法をかけろ!」

 

そう言って相手のスプリガン?のプレイヤーが一人のプレイヤーになんか詠唱をし始めた

忘れていたがこのゲーム魔法が使えるのだった、今までソードスキルを一切使用していない戦い方に慣れすぎて、そういったものを完全に忘れていたのだ

詠唱し終えた瞬間、暗い闇がかけられたプレイヤーを包み込む

瞬間、その闇の中から一際大きい化物が現れ出てた

ギンガや女の子は知らないが、敵が用いた幻影魔法はかけられたプレイヤーにより、その姿が決まる

スキルが高ければ強いモンスターに変化できるし、逆に低ければそのへんの雑魚以下になってしまうこともある、というようにスキル依存で姿が決まるのだ

 

もし相対していた相手が並みのプレイヤーならば、ここで諦めていただろう

だが―――今回は相手が悪かった

 

「―――流石に、ここまで、かな」

 

相手の化物の大きさに流石の彼女も苦笑いで剣を構える

だがその横のギンガはさして焦った様子は見られない

不意に彼が呟く

 

「いや、まだ早いぜ」

「え?」

「敵さんが生身オンリーで来るなら、俺もそれで行こうと思ってたけど…そういうの使ってくるなら話は別、だな」

「…おにーさん?」

 

女の子の困惑を他所にギンガはゆっくり歩き出す

そしてそのまま持っている剣を一度赤い鞘に収め、ゆらりと縦に持ち直す

一瞬のあと、ギンガは再度鞘から剣を抜き放ち、その剣先で己の頭上に円を描いた

行動に意図が見いだせずポカンと眺めているとその描かれた円から光り輝く何かが彼の周りを飛び交った

 

「なっ!? ―――まさかお前、絶狼(ゼロ)か!?」

「ゼロ? なんだそりゃ。俺は、いや、我が名は―――」

 

敵のスプリガンがそんな事を言ってくるが彼は悠然と言い返す

やがて飛び交う何かが彼に装着されていく

足、腕、胴体、頭…

今まで女の子はいろいろなゲームを仲間と共に駆け抜けてきた

それでも、こんな輝きを放つモノには、出会ったことなどなかった

ゆっくりと歩き始め、彼は言い放つ

 

 

 

「我が名は牙狼(ガロ)。―――黄金騎士だ」

 

 

 

その日、少女は出会った

黄金の輝きを持つ、ある一人の青年と

 

その日、青年は出会った

いずれ絶剣と呼ばれることとなる、今を全力で駆け抜ける、女の子と




何かのために頑張れる、それって結構すごいことだと俺は思うぜ?
それが何のためかにもよるけどもよ
俺? 俺はいいんだ、あとはのんびりやっていくさ

nextZERO 遭遇 encounter

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。