呼ばるる異名は黄金騎士   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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時間が空きました
明けましておめでとうございますです
こんな出来ではありますが、どうかよろしくお願いします

アインクラッド超えてフェアリィダンス入ったら自作品とコラボるかもしれない(予定

とりあえずお収めください

ではどうぞ


骸骨 ~リーパー~

偵察隊が全滅寸前にまで追い込まれた

キリトやアスナとともに久方ぶりに血盟騎士団へ顔を出しにいって団長であるヒースクリフからそんな言葉を聞いたときは度肝をぬかれた

元々七十五層のマッピング自体は時間はかけども犠牲を出すことなく終了できた

しかしボスはそうはいかない

過去の事例として苦戦した経験があるのは二十五層と五十層のボスである

二十五層では軍の精鋭が全滅させられ弱体化を招いたし、五十層にでは敵前逃亡する奴もいた始末だ

そんな状況を支えてきたのがヒースクリフなのであるが

 

話を戻す

 

五ギルド合同の二十人パーティで偵察隊を組み、慎重に慎重を重ねて偵察は行われた

その中の殿として、サチも同行していたのである

そしてボス部屋―――十人が後衛として入口前に待機し、サチを中心として最初の十人が部屋の中央に到達した瞬間その扉が閉じてしまったらしいのだ

鍵開けや打撃などに何をしても扉は開かず、時間が過ぎ去ることおおよそ五分―――

 

内側からバガンという音とともに扉がこじ開けられた

直後流れ込むように最初の十人が扉から全力で駆けてくる

最後の一人を確認したとき打無となっていたサチもその場から飛び出し、改めて扉を閉めたのだ

直後鎧は解除され、顔面蒼白となったサチがゆっくりと崩折れた―――

 

その報告を聞いていても経ってもいられなくなったギンガは自分の目でサチの生存を確かめるべく貯蓄が難しい転移結晶を惜しみなくつかい月夜の黒猫団のホームへと無意識のうちに飛んでいた

中に入りケイタらからサチはどこにいるか聞くと彼女は今自分の部屋で休んでいるという

ギンガはありがとうと礼を言うと彼女の部屋の前に行き―――そこで今更ハッとする

 

「…なんでここに来てんだ?」

 

既にケイタたちから彼女の生存は確認している

そもさんヒースクリフから一応、生存自体は聞いてはいたし…

それでもやっぱり自分の目で彼女の生存を確かめたかったというのが本音でもあるのだが…

…なんかわからなくなってきた

軽く頭を振って考えをリセットするとギンガはコンコンと目の前の扉を軽く叩いた

 

 

「…シンドかった」

 

正直扉が閉まるだなんて思っていなかった

そのことも考えてはいたのだが、やはり実際閉められるとまだ対応できないでいる

ああなったとき〝彼〟がいてくれたら少しは安心するんだけどな

とにかくがむしゃらだったことは覚えてる

混乱して統制もままならない彼らを守りながら、槍を構えあのボス相手に駆け回ったことを覚えている

ボスの形状や能力とかは調べる暇もなかった

とにかく、偵察隊のみんなと、自分のことだけで手一杯だった

 

ギンガにもう一度逢いたい

 

ずっとそのことばっかり考えて鎧を纏い、槍を振るっていた

しかしこのままでもジリ貧だと考えたサチは賭けとして鎧を纏ったまま試しに扉を思いっきりぶっ壊す勢いで殴りつけてみた

結果、何かが割れるような音とともに扉は開き、なんとか偵察隊のみんなを部屋の外へ脱出させられることができたのだ

 

ホームに戻るやいなや、サチはメンバーへの挨拶もそこそこに自分の部屋に直行、装備も外さずベッドへ体をダイブさせていた

ふかふかな感触が心地よかった

何はともあれ、生きて帰ってこられて本当によかった

このまま少し眠ってしまおうか、と思っていた矢先だ

コンコン、と部屋の扉がノックされた

 

「ふぁーい…」

 

気だるげにサチは返す

メンバーの誰かだと思って若干適当に返してしまったが、その考えは直後に聞こえてきた声で我に帰ることとなる

 

「サチ、俺だ」

「うえぇ!?」

 

他ならないギンガの声だった

っていうかなんでここにいるのだ

 

「ちょ、ちょっとまって!」

 

慌ててベッドから飛び起きる

かりそめの身体だが身だしなみを整え、自分の状態をチェックする

うん、問題はないはずだ

 

「い、いいよー!」

 

その言葉を贈り、扉が開けられるのを待つ

数秒後、ガチャリと扉が開けられて、ギンガが室内に入ってきた

彼は自分の顔を見ると心底安心したような顔を浮かべ、安堵の息を漏らす

 

「…よかったぁ、無事で…」

「―――心配、してくれたの?」

「当たり前だろうが。…一応、ヒースクリフからは無事だって聞いてたけど、やっぱり自分の目で君の存在を確かめたかった…っていうか、なんというか…」

<ははは。初心だなお前は>

「ザルバ!」

 

ギンガとザルバのやり取りを見ながら、舞い上がりたい気持ちを抑える

―――心配してくれたんだ―――

彼にとっては何気ない一言かもしれないが、それだけで本当に嬉しかった

安心したら、なんだか眠気が襲ってきた

やり取りしているギンガの腕を掴み、自分もろともベッドへと放る

おわ、という声を漏らしながらも

サチの顔の前には、彼の顔がある

 

「…ちょっとだけ、寝ても、いいかな」

「―――あぁ。ゆっくり休め、寝てる間は守ってやるよ」

 

前は言えなかったその言葉が自然と口から紡がれる

ギンガはよっこいせと上半身を起き上がらせて、彼女の頭を撫でながらサチが眠るのを待った

 

◇◇◇

 

ゆっくりとサチが目を覚ます

 

「うん? 起きたか?」

「あ、ギンガ…」

 

自身の体を起こし、ギンガへと視線を送る

彼はなにやらメール画面を開いていて、内容を確認しているところだった

 

「誰から?」

「キリトだよ。内容は七十五層のボスの攻略開始時間。明日の一時、コリニア市のゲートに集合だってさ」

「コリニアのゲートだね。わかった」

 

ギンガから報告を聞くと、改めてサチは背伸びをする

明日、また一歩前に進めるのだ

 

「サチ」

「うん?」

 

ギンガは一瞬何かを考えるような仕草をする

しかし意を決したように、迷いを振り切るように彼は言った

 

「背中、任せたぜ」

「―――!」

 

サチは驚いたように目を開く

そして目尻に若干の涙を浮かべながら、満面の笑顔を作って

 

「うん!」

 

そうしっかりと頷いた

ずっと隣で戦い、と、そう願っていた

その一言が、本当に嬉しかった

 

少し時間が進み

 

ふとサチは思い出したようにこんな言葉を口にした

 

「ねぇギンガ、私たちの体がどうなってるかって、考えたことある?」

「うん? …ねぇな」

「…」

 

ギンガの言葉にサチは苦笑いで押し黙る

改めてこほんとサチは短く咳をして

 

「覚えてるかな。このデスゲームが始まったとき。茅場晶彦のチュートリアル、ナーブギアは二時間の切断までなら許容するっていうの。その理由ってさ、つまり…」

「なるほど。みんなの体を介護できる病院に移すタメってわけか」

「うん。実際数日経ったある日、みんな一時間くらい立て続けに回線が切れるって事件あったじゃない?」

「…あったっけ」

「もう! とにかくあったの! おそらくだけど、その時に全プレイヤーが一斉に病院に移されたんだと思うの。家じゃ何年も植物状態の人間を介護するなんて出来っこないし」

「それもそうだ。なるほど、現実の俺たちは、今〝生かされてる〟状態ってわけだな」

 

サチはギンガの言葉に頷く

 

「けど、何年もそのままってわけには行かないと思う。クリアできるか否かに関わらず、結局は制限時間があるの」

「プラス個人差ってワケか。全く、味な真似するねぇ、茅場さんは」

 

そこからはなにも言葉にしなかった

これからの戦いに不安はあるが、そんな泣き言など言っていられない

前を向け続けなければならない、明日という未来を切り開かねばならないのだ

 

「ねぇ、ギンガ」

「うん?」

「もし、このゲームがクリアできたら、さ。ギンガに言いたいことあるの」

「言いたいこと?」

「うん。…だから、絶対に生き残ろう。ギンガは、私が守るから」

「―――あぁ。頼りに、してる」

 

若干頬を染めながらギンガも彼女に答える

そんな新鮮な反応が見られて、サチはまた笑顔になった

こんな彼を、自分だけが知ってるんだ―――

 

◇◇◇

 

翌日

黒猫団のみんなとコリニア市ゲート広場に行ったとき、既に攻略チームであろうプレイヤーたちが集まっていた

なんだろう、歩みづらい

中にはこっちを見るとギルド式の敬礼までしてきたプレイヤーもいたくらいだ

ぎこちない仕草でそれを返すと、同じ頃ゲートからキリトとアスナの二人が歩いてきた

同じように敬礼され、戸惑うキリトを尻目にアスナは慣れた手つきで敬礼を返し、キリトの脇腹を小突いていた

そしてこちらに気が付くと片手をあげて挨拶をしてくる

サチと一緒に手を上げ、こちらもそれに返す

 

「よっす」

「よう。しかし、アレだよ。こんなに注目浴びたのを初めてだよ」

「そりゃあキリトくんはリーダー格なんだから。もっとシャンとしないと」

「は、はは。が、頑張るさ…」

「ギンガくんもなんだからね」

「マジでか」

 

敬礼なんてされる時点でなんとなく察しはついていたけども

 

「いよう!」

 

バシンといきなりキリトの肩が景気よく叩かれた

そちらを振り返るとカタナ使いのクラインが笑みとともに立っていた

そして驚いたことにその横には両手斧で武装しているエギルの姿も立っている

 

「エギルさんも参加するんですか?」

「おうよ。エラい苦戦しそうだっていうからな。今日は商売投げ出して加勢にきたぜ。わかってくれるか? 俺の無私無欲の精神を―――」

「じゃあお前は戦利品の分配から除外していいんだな?」

「…い、いや、それはだなぁ」

 

キリトのツッコミにエギルは頭に手をやって困ったような表情を漏らす

それにクラインやアスナが朗らかに笑い、サチ、ギンガらが続けてクスリと笑い声が続いた

その流れはこのフィールド全体に伝わり、一行からは多少の緊張が抜けたようにも思える

午後一時に差し掛かるとゲートから数人が歩いてきた

ヒースクリフとクラディール、そして精鋭数名だ

純粋なレベルの強さならアスナやキリトを上回るのは恐らくヒースクリフ一人だろう

しかしやはり彼らの結束感は迫力を感じている

どっかの軍とは大違いだ

彼らはプレイヤーの集団を二つに割りながらまっすぐキリトとギンガたちの方向へ歩いてきた

威圧されたようにクラインとエギルが一歩下がり、サチは少しだけギンガの後ろに下がる中、アスナは涼しい顔をして敬礼を交わす

彼は立ち止まりキリト、ギンガ、サチ、と頷き、集団に向かって言葉を発する

 

「欠員はいないようだな。状況は既に知っていると思う。かなり苦しい戦いになるだろうが、君たちなら乗り越えてくれると信じている。解放の日のために!」

 

ヒースクリフがそう力強い叫びを口にし、それに答えるようにプレイヤーたちが一斉に鬨の声を上げる

さすが圧倒的カリスマを誇る男だ

キリトも何かを考えているように、彼の横顔を見ている

そんな視線に気づいて、ヒースクリフがこちらに寄ってきた

 

「今日は頼りにしているよキリトくん。その二刀、存分に振るってくれたまえ」

 

その言葉にゆっくりとキリトは頷いた

今度はギンガの方にも向き直り

 

「君とサチくんの鎧にもね」

「できる限りはやりますよ。一緒にね」

 

ポンとサチの頭を軽く叩いてやる

一瞬サチはむー、としたような表情を送ってきたが、状況が状況なので、スルーした

 

「では行こう。ボス直前までの場所にコリドーを開く」

 

そう言って彼は腰のパックから濃紺色の結晶アイテムを取ると場のプレイヤーたちから「おぉ」なんて言葉が漏れてきた

本来転移結晶というものは指定した街の転移門まで使用者一人を転送することが可能なのだが、先程ヒースクリフが使ったのは回廊結晶(コリドークリスタル)というアイテムで任意の地点を記録して、その場に向かって転移ゲートを開けるという大変便利なアイテムだ

まぁ、その分貯蓄が大変難しいのだが

 

「では、付いてきてくれたまえ」

 

ヒースクリフは周囲を見渡すとそのまま青い光の中に足を踏み出し閃光に包まれて消滅した

間をおかずヒースクリフらの精鋭も彼に続く

入る直前、クラディールがこちらに向かって

 

「決して無茶はしないでくれ」

 

そんな言葉を小さい笑みを浮かべ、先に入っていった

というか今気づいたのが、いつの間にかこの広場にはかなりのプレイヤーが集まってきていた

今回の攻略会議の話を聞いて見送りにでも来てくれたのだろう

戦士たちは次々と光の中へ入っていく

最後にキリトとアスナを残し、サチとギンガもその光へ入っていった

ちらっと後ろを覗いてみたら、手をつないでこっちに飛んできていった

 

―――爆ぜればいいのに

 

ボソリと思ったその一言にキリトは背筋を一瞬寒くしたそうな

 

◇◇◇

 

軽いめまいのような転移の感覚がしたあと、そこはもう迷宮の中だった

回廊は広く、壁際には太い柱が列で並び、その先には巨大な扉

七十五層の迷宮区は黒曜石な素材で汲み上げられており、荒削りだった下層とは違い高級感がある

 

「…なんか、やな感じだね」

「私も初めて来た時は悪寒が止まらなかったよ。…気をつけて」

 

アスナの言葉にサチが同意する

今までに至る数々の戦いに七十四もの激闘をここにいるプレイヤーたちはくぐり抜けてきた

それだけ経験を積めば住処を見ただけでなんとなく相手の力量を図れたりするのだが

周囲のプレイヤーたちはそれぞれ皆が固まってアイテムの確認をしたり、装備を確認したりしている

その表情は硬い

 

<決戦だからな。慎重にして損はない>

<その通り。サチもギンガも怠ってはならぬぞ>

 

ザルバとゴルバにそう言われ、二人も便乗するようにアイテムポーチを確認する

といっても大体ギンガの手持ちは回復アイテム系統で埋め尽くされているのだけれど

 

「サチ」

「ん?」

 

同じように目の前でウィンドウを開いて最終確認をしているサチにギンガは呼びかけた

作業している指を一旦止めて、若干な角度でこちらを見つめてきている

 

「背中、預けたぜ」

「―――うん。ギンガも、私の背中、守ってよね」

「当然」

 

確認をし終えてギンガはウィンドウを閉ざす

それに答えるようにサチも確認を完了し、ウィンドウを消して己の槍を地面に突き刺し身構える

あぁ、問題ない

 

「みんな、準備はいいかな。今回は情報があまりに少ない。基本的に前衛は血盟騎士団で攻撃を食い止め、君たちはその間相手のパターンを可能な限り見切り、柔軟に戦ってほしい」

 

その言葉にみんなが頷いた

 

「よし、では行こう」

 

あくまでも柔らかい声音だ

彼は扉を掴み、ゆっくりと開け始める

ふと、キリトが前で並んでいるエギルとクラインの肩を叩き、笑み混じりで言った

 

「死ぬなよ」

「お前こそ」

「今日の戦利品で一儲けするまで、くたばる気はないぜ」

 

二人はそんな言葉を返す

完全に扉が開き切り、プレイヤーらは皆一斉に己の獲物を抜いた

キリトも愛用している二本の剣を抜き、その横でアスナも細剣を取る

ギンガは赤い鞘から魔戒剣を抜き放ち、隣でサチが槍を構える

そして締めに十字盾から直剣を引き抜き、声たかだかに叫んだ

 

「戦闘開始―――!」

 

そのまま開ききった扉の中に、一行が走り出す

内部はかなり広いドーム状の部屋だ

しばらくの沈黙、やがて後方の扉が大きな音を立てて閉まった

以前は打無で殴ったら開いたらしいが、今回はどうかわからない

だが、今回はどっちにしろ逃げるという選択肢はない

しばらく沈黙が続く、広い空間にプレイヤー全員が注意を向けるが、出てくる気配は今のところない

そう思った時だ―――

 

「上よ!」

 

アスナの鋭い叫び

その言葉にハッとして顔を上げた

天井に何かが張り付いている―――ムカデか?

全長はおおよそ十メートル前後、その見た目は人間の骨にも見えるその先端には人間の頭蓋骨のような頭が見えた

名前は―――スカルリーパー

 

「固まるな、距離を取れ!」

 

ヒースクリフの鋭い声でハッとする

それに合わせてみんなが動き出したが落ちてくるムカデの尻尾部分にいた三人が僅かに遅れた

どっちに動くか迷うように視線を動かしている

 

「こっちだ!」

 

その声色はケイタだ

彼は彼はヒースクリフ側に移動しており、すかさず彼らを助けるべく口を開いた

彼の声に合わせて走り出そうとしたとき、ムカデが地面に地響きを立てて着地し、床全体が震えた

その衝撃に足を取られ、その隙をぬうようにムカデの右腕に該当する部分の骨の鎌が振り下ろされた

横薙ぎに振るわれたソレは彼らを捉え、三人は宙を飛び、そのまま体力を表すバーがグーンと減っていって

 

なくなった

 

そのまま空中に投げ出されたまま結晶となって消える三人のメンバー

一撃…!?

このゲームでは基本的にレベルが上がればそれだけ体力の上限値も上がっていく

だからここまで来れたプレイヤーは相対的にかなりの高レベルのはずだ

だというのに、一撃…!?

 

「めちゃくちゃだよ…こんなの…!」

 

サチが声を絞り出す

一瞬で三人を消した骸骨のムカデは咆吼したのち、また新たな獲物に向かって突進してくる

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!?」

 

恐怖の叫び声

当たり前だ、あんなのをもらったら、現実でも一撃で狩られてしまう

しかし振り下ろされた鎌が彼らを捉えることはなかった

既の所で現れたヒースクリフの聖盾がその鎌の一撃を抑える

しかし鎌はもう一本あったのだ

 

「こなくそ!」

 

叫びにギンガは飛び出していた

そしてついでに、こんな言葉も

 

「キリトとアスナは横にまわって! ケイタ、お前らはキリトの、ディアベル、お前らはアスナの所に行くんだ!」

「え? い、いいけど、何を―――」

「俺とヒースクリフで鎌を抑える、だからサチ、手伝ってくれないか!」

「―――うん、わかった!」

「そういうわけだディアベル、鎌は俺たちとヒースクリフで何とかする、なんとか奴の体力バーを残り一本にしたら教えてくれ、俺たちで止めを指す!」

 

あらん限りの声音でついでにギンガは叫びつつ、目の前の鎌を魔戒剣を引き抜き相手の一撃を受け止めた

かなり重い、だが、いなせないほどじゃない―――

サチのサポートを受け、ギンガはリーパーの繰り出してくる鎌の攻撃をさばき続け、こちらにヘイトを向けさせる

そこでちらりと横に居るヒースクリフを見やった

その表情に変化こそないものの、流石に余裕はなさそうだ

 

「ギンガ!」

 

サチの言葉で我に返る

目の前には今まさにこちらに向かって振り下ろされんとしてる刃

 

<来るぞギンガ!>

「わかってる!」

 

振り下ろされた刃に剣を滑らせ軽く距離を取る

その隙を埋めるようにサチがギンガの前に出て繰り出される追撃を防いでくれた

一瞬の油断が命取りだ、気を抜いたらあっけなく終わる…

魔戒剣を強く握りそれを構えサチとともに鎌を受け止めるべく走り出した

 

 

それからどれだけの時間がかかっただろう

 

 

幾ばくかの時間が過ぎて、ディアベルか誰かが叫んだ

 

「ギンガ、あと一本だ!」

 

その叫びは反撃のタイミング

煮え湯を飲まされ耐え忍んできた彼らを守るべく、ギンガとサチは目を合わせる

 

―――行こう、ギンガ

―――あぁ、行くぞ

 

お互いに軽く頷き合いリーパーを視線に入れる

彼らの双眸が目の前の敵を捉え、その決意を新たにさせる

同時に二人は己の獲物で自身の上空に円を描いた

二人の上空に現れた円が砕け、それぞれの鎧が二人の周りを飛び回る

やがて鎧はギンガ、サチ両名の体に装着され、牙狼、打無といった鎧の戦士へと変化させた

 

「これで決めるぞ、サチ!」

「うん! 絶対に倒しきろう!」

 

振り下ろされるリーパーの鎌

その一撃を牙狼は素手でつかみとり、あらん限りの力を込めて思いっきり握り潰す

結果、鎧のチカラなのか繰り出された鎌は意外にもあっけなく砕け、大きくリーパーがのけぞいた

大きく後ろに下がったその一瞬を逃さぬように打無が槍を振り回しそのまま接近し壊れていない方の鎌を打無の槍が切り裂いた

地上に着地した打無が槍を構え直し、同じタイミングで牙狼が跳躍し、牙狼剣を振り上げる

地面からの打無の槍の斬り上げと、牙狼の斬り下ろしが交差した

 

シンプルな攻撃方法ではあるが、残り一本のスカルリーパーを削りきるのには十分な威力だった

ぎゃあおぉ、などと声を上げしばらく苦しんだような動きのあと、スカルリーパーは結晶となって消え去った

多大なる犠牲を払ったものの―――今ここに、七十五層の攻略は完了したのだ




言葉の裏には針千本、千の偽り万の嘘
その男の行動の裏は、全くわからんものだ
最も、わかる奴もたぐいまれかもな

次回 黒幕 ~せいさくしゃ~

二刀の輝きは、明日~みらい~を開けるのか―――

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