主にグランドオーダーしてたのが原因
あと最近バサラ4皇してたのも原因
エリザベートがかわいいのが原因
つまるとこと全部自分が悪いんですごめんなさい
誤字脱字見かけましたら報告ください
あ、ちなみに出来はいつもどおりなのであしからず
「えぇ!? そんなこと起こってたの!?」
翌日
ギンガが泊まっている宿屋に入ってきたサチは昨日の起きた事件を耳にして驚いた
あのあとキリトとアスナはギルドへの不信感を感じ、一時退団を団長であるヒースクリフに要求した
彼は少し考えた後に退団を了承したが、その時意味深な言葉を口にしたらしい
「君たちはすぐにここに戻ってくるだろう」
血盟騎士団団長、ヒースクリフはそう付け足した
その言葉は何を意味してるのかは分からないが、ひとまずキリトとアスナは血盟騎士団から一時退団し現在は二十二層あたりにギルドホームを買い、一緒に暮らし始めたそうな
「…もしかしたら、私も狙われてたのかな」
「わかんないな。けど、お前に恨みはあったから、狙われたかもしれないな」
そうギンガが付け足すとサチは若干体を震わせ、自分の体を抱きしめた
一歩間違えば自分も殺されたかもしれない、という恐怖を一瞬考えてしまったのだろう
この世界に置いて好んで悪事を犯す輩は珍しくはない
盗みや追い剥ぎ、殺人ギルド<ラフィンコフィン>みたいに好んで人を殺すゴミクズ野郎など多種多様だ
この世界に囚われているのに、彼らの行動はここに留まりたい、というようなものだ
悪意だけが肥大化して、こんな凶行に及んだ輩もいるだろう、というか、ラフィンコフィンとかはその類だと個人的に感じている
「―――ギンガ」
「うん?」
不意にテーブルに肘を付いたサチが問うた
窓の外を見ながら遠い変わらない雲空を見ながら、視線だけサチに合わせてギンガもそれに返答する
「私たち、現実世界に帰れるかな」
唐突に聞いてきた、そんな疑問
はっきり言って断言することはできない
淡い希望を持たせてしまってはいけないと考えているからだ
だから、曖昧な言葉しかギンガは返せなかった
「…えっと―――」
「―――ふふ、ごめんね、意地悪なこと聞いて」
サチはにへ、と笑顔を浮かべながら
「答えにくいよね、みんな不安なのに、こんなこと聞くの卑怯だよね」
彼女はテーブルの上の手を弄りつつ、ギンガを見据えた
彼女の目には、かつて見えた戸惑いの色は見えない
様々な視線をくぐり抜け、彼女もまた成長したのだろうか
「ギンガ。帰ったら私たち、友達になれるかな?」
「―――もう友達じゃないのか? 俺たちは」
「―――はは、だね」
そう言って朗らかな笑みを浮かべた
その笑顔に釣られて、ギンガもフッと笑みを漏らした
◇
そんなキリトとアスナは現在二十二層に二人で住んでいるらしい
そこにどんな経緯があったかは分からないが息災なようで何よりだ
おまけに喜ばしいことにあの二人、結婚したらしいのだ(アルゴから知らされた)
ソードアートオンラインにおいてシステムで規定されているプレイヤー同士の関係はおおよそ四種類存在している
まず他人、次にフレンド、三番目がギルドメンバー、そして四つ目が結婚だ
フレンドになればどこでも簡素なメッセージを送受信できるし、相手の位置をマップでモニターできる
ギルドメンバーはフレンドの効果に加えて戦闘するときあパーティを組むと戦闘終了後僅かでありながらボーナスを得られるというメリットがあるが、デメリットとして手に入れたコルが一定割合でギルドへの上納金が差っ引かれる、というのがある
そして結婚は、した相手との全情報と全アイテムの共有である
互いにステを見ることが出来るし、アイテム画面は一つに統合される
ようは相手に生命線を差し出すようなものだ
最も結婚までに行くカップルなど希だし、そもそもこの世界に置いては男女比がありすぎるというのも理由の一つである
そして第二十二層は、アインクラッドにおいて最も人口の少ないフロアだ
低い層であるがゆえに面積は広くはないが、その大半は森林と無数に存在する湖に囲まれており、主街区も小さな村である
フィールドにモンスターは現れず、迷宮区も簡単であったために特に記憶になど残らなかった
そんな二十二層にキリトとアスナが小さなログハウスを購入し、のんびり二人は住んでいるらしい
ギンガとサチもそんな二人を祝うべくこの二十二層へと足を踏み入れていた
キリトからメールで受け取った情報を元に二人は彼らのログハウスを見つけた
趣のあるいいハウスだ
サチがてててと扉の前に行き、こんこんとノックをする
「アースナー! サチだよー!」
「まっててー!」
サチがノックをすると扉の中からアスナの声が聞こえてくる
すっかり妻が板についてきているようだ
数秒待った後、がちゃりと入口である扉が開いた
「いらっしゃいサチ、それにギンガも」
「遅れたけど結婚おめでとうアスナー!」
そう言ってアスナに向かってサチは抱きついた
アスナは驚きながらもサチのハグを受け入れ、笑みを浮かべた
「俺からもおめでとう、結婚って聞いたときはびっくりしたけど、白と黒でとても似合いなカップルだと思うな」
「ふふ、ありがとうギンガ」
「ところでキリトはどこにいるんだ? 食料の買い足しとか?」
「そんな感じ。近くの湖で釣りしてると思うよ」
それを聞くとギンガはありがとう、と返しながら釣りに出たキリトを探しに歩き始めた
サチはあのままアスナと話し込むだろうし、ガールズトークに混ざるのは忍びないと感じたのだ
マップを開いてキリトの位置を確認し、のんびりと歩いていく
少し歩くと視線の先には釣りに興じているキリトの姿があった
「よう。釣果はどうだ」
「ん? ギンガか」
ぱさっとキリトが釣竿を動かした
ぱちゃりと水面が揺れてそこから釣り針が見えた
何も付いていない銀色が虚しく光っている
「見ての通りだよ。もうすぐスキル熟練度も六百を超えるんだけどさ」
「現実での釣りもそんな感じだよ。ようは粘りと根性、そして気概だ」
ギンガはキリトの隣に座りながらはははと笑う
キリトははぁとため息をつきながら持っている竿を自分の横に投げ出しごろりと寝転んだ
よく見れば彼は分厚いオーバーのようなものを着込んでいる
おそらくアスナが作ってくれたのだろう、暖かそうだ
「あ、そうだ、結婚したらしいな。おめでとう、と今更ながら言っておくよ」
「ありがとう。…改めて言われるとちょっと恥ずかしいな」
寝っころがりながら頬をポリポリとキリトはかいた
ひゅう、と風がギンガの頬を撫でる
今現在のアインクラッドは<イトスギの月>とかいうのに入っていた
わかりやすく言うと十一月、冬間近である
とはいえ釣りやすさとかはゲーム内では特に変わらないはずなのだが
そんなどうでもいい思考に埋没しそうになったときだ
「釣れてますか?」
不意に第三者の声が聞こえてきた
キリトが飛び起き、ギンガが顔を向ける
そこにいたのは重装備の厚着、耳覆いの付いている帽子、そしてキリトと同じく竿を携えた五十歳前後の年齢の男性だ
一瞬NPCかと思ったほど、その男性の存在に驚いた
「隣、よろしいですか?」
「え、えぇ。どうぞ」
そう言って微笑んだ男性はゆっくりと歩いて土手を降りてきた
彼はキリトの隣にどっかりと腰を下ろし、腰のポーチから餌を取り出して竿をターゲットし餌をつけた
「私はニシダといいます。ここでは釣り師、日本では東都高速線という会社の保安部長をしとりました。名刺がなくてすみませんな」
「い、いえ、そんな。自分はギンガって言います」
ギンガは自己紹介した
彼が言っていることの半分も理解できていないが、キリトのほうは理解できているのかあぁ、と短い声を漏らした
「えっと、俺はキリトって言います。最近上から越してきました。…ニシダさんは、SAO保守の…?」
「一応、責任者ということになっとりました」
そうニシダは頷いた
つまり彼は業務上で巻き込まれたということになるのか
「ログインせんでもいい、と言われたんですがね、やっぱり自分の仕事は目で見ないと収まらん性分でしてな。いやはや、こんなことになるとは思っても見ませんでしたが」
そう言ってひゅん、と竿をスイングする彼の手付きはとても手馴れており、熟練された動きだ
話し好きな人物なのか、言葉を待たずニシダはしゃべり続けていく
「私の他にもなんだかんだとここに来てしまったいい歳したおっさんが二、三十人ほどいるようでしてな。大半は一番最初の街でおとなしくしとるんだけど、私は三度の飯よりこれが好きでね。いい川やらを探してこんなところまできてしまいましたわ」
「まぁ、この層にモンスターはいないですし、ね」
ギンガの言葉にニシダはにやりとえんだだけで答えず、彼は上の方にいいポイントはありますか? と聞いてきた
ギンガはこのフロアのことはよく知らないので、キリトに視線を向けてみる
「どうだ、あるのか?」
「うーん…六十一層は全面的に海で、相当な大物が釣れるみたいですよ」
「ほうほう! それは是非一度行きたいですな!」
その時、ニシダの竿がぴくりと動き、浮いている浮きがぽちゃんと沈んだ
即座にニシダが動き、絶妙のタイミングでアワセる
腕もさる事ながら、釣りのスキルも相当なものだろう
「うぉ、で、でかいッ!」
慌てて身を乗り出すキリトの横で、ギンガもまたその釣りの行方に見入っていた
やがてニシダは魚を釣り上げ、魚はニシダの手の上でぴちぴち動きながらそのうちアイテムウィンドウに格納される
「すごいですね、職人芸みたいでした」
「いやいや、ここでの釣りは数値次第ですから」
ギンガの賞賛にニシダは苦笑いと共に頭をかいた
「ただ釣れるのはいいんですけど、あいにく料理がどうにもねぇ、煮付けや刺身で頂きたいが、醤油がないとどうにも」
「あ、っと…」
キリトは一瞬ちらりとこちらを見やる
もともと彼らは姿を隠すためにここに来たのだろうが、この人なら問題ないだろう、と思ったギンガはいいんじゃない? という意味を込めて首を縦に動かした
「その、醤油に似てるのに、心当たりありますが…」
「本当ですか!?」
彼は眼鏡の奥で目を輝かせ身を乗り出してきた
◇
ニシダを伴って無事帰宅
ギンガとキリトを出迎えたアスナとサチはお互いに顔を合わせ目を丸くしたがやがてアスナが笑みを浮かべ、それを追うようにサチも微笑んだ
「おかえりなさいキリトくん、そしていらっしゃいギンガくん。そちらの方は?」
「あぁ、こちら釣り師のニシダさんで…」
ニシダに向き直ったキリトはなんでか口ごもった
おそらくアスナをなんて紹介するか迷ってるのだろう
そうしてるとアスナはニコリとニシダの前に歩み出て
「キリトの妻、アスナです。ようこそいらっしゃいませ」
「私はサチです。アスナの友達です」
アスナに便乗するようにサチも短い挨拶をする
ニシダはニシダでぽかんと口を開けたままフリーズしていた
まぁ確かにアスナは美しいし、仕方がないだろう
ニシダは何回か瞬きした後に
「い、いや失礼。すっかり見とれてしまいました。ニシダといいます、今日はキリトさんにお招きいただいて…」
頭を掻きながらははは、と笑んだ
ニシダから受け取った魚をアスナはサチと一緒にその料理スキルを発揮して刺身と煮付けを作り出した
アスナ自作の醤油の匂いが広がり、ニシダは感激したような顔をする
その食事にギンガとサチの分も用意してくれたので、今回は自分たちも食べてみよう、ということで厚意に甘えておく
お魚はなんだろう、あまり魚を食べないから味はよくわからないがとても美味しい
「いや、堪能しました。…まさかこの世界に醤油があったとは…」
「自家製なんですよ。よかったらどうぞ」
アスナは台所より小さい瓶を持ってきてそれをニシダに手渡した
恐縮するニシダに向かって、アスナはお魚をわけてくれた礼です、と言って差し出した
そのまま続けて
「キリトくんってば、ろくに釣ってきた試しがないんですよ」
「マジか。今日だけかと思ってたぞ」
そんなアスナに向けて言葉を発するギンガ
それに釣られてサチもふふふ、と笑みをこぼす
「い、いや、この辺の湖は難易度高いんだよ…」
「いえいえ。難度が高いのはキリトさんの釣ってたあの大きい湖だけです」
「―――なっ」
つまり単純に彼は釣りが下手だということになる
「けど、なんでそんな設定になってるんでしょうね?」
「それなんですが、実はですね…」
サチの呟きにニシダが返した
「―――主がいるらしいんですよ、あの湖に」
「…主?」
異口同音に聞き返す四人に対して、ニシダはにぃっと笑んだ
彼はかけているメガネをくいと上げると
「村の道具屋に一つ、やけに高価な釣り餌がありましてな。なんとなく使ってみたことがあるんです。ところが、これが全然釣れない。そのあともいろいろと試したのだけど、ようやく先ほどの湖で使うのだろうと思いまして」
「釣れたんです?」
「かかりはしました。しかし、私の力じゃ取れなかった。竿ごと持ってかれてしまいましたよ、最後にちらっと影だけ見たんですが、あれはもはや化物ですね、ある意味、モンスターですな」
そう言ってニシダは両腕を広げて見せる
なんだろう、それは個人的にであるがとても見てみたい気がする
っていうか見たい
「わぁ! 見てみたいなぁ、ね、サチ!」
「うん! おっきな魚って想像するだけでワクワクするよ!」
目を輝かせるアスナとサチ
「…そこで、キリトさん、ものは相談なんですが…」
「? なんでしょう」
「キリトさん、筋力パラメータの方に自信は…」
「は、はぁ、まぁそこそこには…」
「なら一緒にしませんか! 合わすまでは私がやります、そこから先をお願いしたい!」
「なるほど、釣り竿のスイッチって感じだな。やってみればいいんじゃないか?」
うーん、と考えるキリトに向かってギンガがそういった
そこにアスナも目をらんらんとさせて
「やろうよキリトくん! 面白そう!」
ワクワクしっぱなしな彼の妻が言う
行動力旺盛なのは結婚しても変わらないようだ
そんな彼女に触発されてか、はたまたキリトも好奇心を刺激されたのか、ふっと笑んで
「―――やりますか」
そう言うとニシダは満面の笑みを浮かべ、そうなくっちゃ、と言いながらわっはっはと豪快に笑った
◇
キリトから主釣り決行の知らせのメールをもらったのは三日後の朝だ
なんでも釣り仲間に声をかけて回ったようで、さらにギャラリーが三十人くらい来るらしい
ちなみにサチは七十五層の偵察が入っていたようで、今日は来れておらず涙目でぽかぽか叩かれた(とりあえず撫でて慰めておいた)
すでにキリトとアスナは現場に趣いてるころだろう
適当に準備を済ませると、ギンガも例の湖へと歩き出した
それにしても今日は結構暖かい気がする
歩み進めると湖畔にはもう何人のギャラリーが集まってきていた
視界の先にニシダと…誰だろ、あの二人
とりあえず挨拶を先にしておこう
「どうも、ニシダさん」
「おや、どうもギンガさん、今日は絶好の釣り日和ですなぁ!」
わははと笑うニシダ
そして改めて近くでニシダと話していた二人を確認すると
「…キリトにアスナ、だったのか」
「おはよう、ギンガくん。…ほら、おっかけとか情報屋に捕まるといろいろ面倒だから、さ」
一理ある
元からキリトとアスナはそういった奴らから身を隠すためにプレイヤーの少ないところに来たのだから、こういうギャラリーの多い場所は気が引けるのだろう
それにしてもニシダさんはわりとアクティブなおじさんだと思う、きっと会社ではいい上司なのだろう
なんでもキリトたちが来る前に釣りコンペでもしていたようで既にフィールドは温まっている
「えー、それでは本日のメインイベントを始めます!」
長くて大きい竿を片手に、ニシダがそう宣言するとギャラリーが沸く
なんとなくその餌が気になり、その竿の針についてる餌を見て驚いた
それは馬鹿でかいトカゲだ、成人男性の二の腕近い大きさのあるトカゲは新鮮で、ぬめぬめと光っている
サチがここにいたらびっくりするだろう
やや遅れてアスナも餌に気づき「ひっ」と短い声を漏らした
キリトも苦笑いである
しかしあれが餌なら釣れる魚はどんなのだろう。ガノ○トスとかだろうか
そんなわけでニシダは湖に向き直り改めて竿を構える
SAOでの釣りは待ち時間というものがほとんどない
仕掛けを放ればすぐに食いついて、釣れるかは餌だけ消えるかのどっちかになる
キリトを含めたギャラリー一行はみな水中に入った糸に集中した
眼鏡の奥の瞳は細かく振動する糸を見据えている
と、その時ひときわ大きく竿が水中に引き込まれた
「今だ…!」
ニシダが全身を使って竿を振る
ぴぃんと糸が張り詰めてた
「かかりました! あとはお願いしますよ!」
そう言ってキリトはニシダから竿を受け取った
そういえばニシダさんでは筋力パラメータが足りず引っ張るのはキリトに託すんだった
見ている感じでしかわからないが、やはり主ということもあり引っ張る力もかなり強い
とはいえキリトの能力値もかなり高いようで、じりじりと水中の魚をこちら側に引っ張っている
ギャラリーが彼のところへ好奇心から近づいて、主を確かめようと覗き込み―――不意にそのギャラリーが二歩、三歩と後ずさった
ギンガはそのギャラリーには参加せず、一歩遠い位置で見物していたので、なんでだろうと思ったが、釣り上げた獲物を見て、それを察した
また、キリトは体を広報に反らせているせいで、その獲物を確認できていないでいる
「ど、どうしたん―――」
キリトの言葉が終わる前にギャラリーは一斉にダッシュで走り始めた
ギンガもそれに釣られて思わず連中と一緒に走り出してしまった
いつしかみんな土手を駆け上がって、結構距離が空いてしまっている
未だに状況が理解できていないキリトに向かってアスナが叫んだ
「キリトくーん! あぶないよ―――!」
やがて地上に這い出てきたその獲物をキリトは改めて振り向いて確認する
なんだろう、全長二メートル前後の、四足歩行のシーラカンス(爬虫類)みたいなのがキリトを見下ろしている
以前ニシダさんはモンスターとか言っていたが、これは完全なモンスターにほかならない
やがて脱兎のごとくキリトがこっちに走ってきた
その秒数、わずか二秒たるや
「ず、ずずるいぞ! 自分だけ逃げるなんて!」
<言ってる場合ではない、アイツ、こっちに来ているぞ>
ザルバのつぶやきにキリトとアスナがモンスターへと視線を向ける
早くはないが、確実にこちらに近づいてるのが見えた
「…肺魚かなあれ」
「ぎ、ギンガさん、のんきなこと言う前に逃げないと!」
今度はニシダが慌てながら叫んだ
またギャラリー連中の中には驚いた拍子に座り込んだまま呆然とする人もいる
「キリト、お前武器持ってるか?」
「す、すまん、持ってない…」
「わかった。じゃあ俺が行こう。アスナも下手に目立つわけにはいかないしね」
「え、けど、いいの?」
「問題ない。今更身バレしても俺は変わんないからな」
そう言いながらギンガは魔戒剣を手に持ち、今もこっちにゆっくり歩きつつあるモンスターに向かって歩き出した
キリトの横に立っていたニシダはようやく落ち着きを取り戻したのか、キリトの腕をうかみ
「き、キリトさん、お友達が!」
「あぁ、大丈夫ですよ、彼強いですから」
キリトは笑みを浮かべてそう言うと、改めてギンガの背中を見守った
今ものしのし歩いてくるそのモンスター、しかし今のレベルからするとはっきり言って遅すぎる
だが時間をかけるわけにもいかない、さっさとご退場願おう
赤い鞘から魔戒剣を抜き放ち、頭上に円を描いた
描いた円が砕け、そこから金色の鎧がギンガの体を纏う
牙狼となったギンガは一気に駆け抜け、牙狼剣を真横に振るう
その一撃でモンスターの体力バーは瞬時に空になり、即座に雲散霧消した
その様をニシダ含むギャラリー連中は呆けたように見つめていた
…改めてこういった集団に見られてるとものすごい恥ずかしい
顔を見せないように、ギンガはとりあえず鎧を解除し、キリトのところへと歩いてく
「お疲れ」
「ありがとう、ギンガくん…」
「いいってことよ。変に目立ちたくもないでしょ?」
<逆に俺たちが目立っちまったがな>
そんな緊張感のないやりとりのあと、ようやっとニシダが目をぱちくりさせながら口を開く
「い、いやぁこれは驚きました…! ギンガさん、随分お強いんですな…」
「いえいえ。それより、今の奴からアイテムがドロップしてますよ」
変に長引かせるとキリトたちに迷惑がかかると判断したキリトは話題をそらすべく、ウィンドウを操作して先ほど入手した白銀の釣竿を取り出し、ニシダにそれを手渡した
釣りなんてしないし、はっきり言って自分が持ってたら売りかねない
ニシダが手に取ると周囲のプレイヤーも一斉にどよめき始める
ともあれ、この湖に潜むヌシとやらは釣り上げることができた
SAOに来て、こんなにのんびりとした気持ちになったのは初めてだったかも知れない
そして今日の夜―――適当に宿屋で泊まって休んでいたら、キリトを通してメッセージが送られてきた
それは七十五層のボス攻略戦への参加を要請するものだった―――
つかの間の娯楽のあとにまた戦いあり
人生ってのは苦難の連続だな、刺激があって楽しいけどな
次回 髑髏 ~リーパー~
暗雲を引き裂き、光を掴み取れ―――
※予告通りになるかはわかりません