ハリー・ポッターと病魔の逆さ磔   作:三代目盲打ちテイク

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第19話 絶命日パーティー

 クィディッチの練習を終えて、くたくたになりながらフィルチからの罰則をほとんど首なしニックのおかげで回避したハリーは談話室に戻って温かい暖炉の前でロンとハーマイオニー、サルビア、それから彼女が呼んだジニーと話をしていた。

 

「絶命日パーティーですって? 生きているうちに招かれた人って、そんなに多くないはずだわ――面白そう!」

 

 ハーマイオニーは笑顔でそう言った。彼女は魔法薬の宿題を終えていたので、そう言えるのである。隣のロンなどは、

 

「自分の死んだ日を祝うなんてどういうわけ?」

 

 と機嫌が悪い。なぜならば彼は宿題が半分しか終わっていないのだ。というのもハリーもまったく終わっていなかったが。

 

「死ぬほど落ち込みそうじゃないか」

 

 ジニーはそんなロンに何やらいいたそうにしていたが、ハリーの前なのか顔を赤くして何も言えなかった。ロンとハーマイオニーはそんな彼女を見て、顔を見合わせてからハリーを見て肩をすくめた。

 何が言いたいんだろうか? ハリーにはまったくわからなかった。

 

「サルビアはどう?」

「…………行かないわ。用事があるの、代わりにジニーでも連れて行きなさいな」

「そうなんだ」

 

 残念だった。でも、用事があるなら仕方ない。ハリーはそう思ってジニーの方を見る。

 

「どうだい、ジニー?」

「あ、い、行く!」

 

 何やら一世一代の決意を込めて言ったような気がするが、気のせいだろう。ハリーがそう思っていると、フレッドとジョージが連れてきたという火トカゲが空中に跳びあがり、派手に火花を散らして大きな音をたてながら部屋中を物凄い勢いでぐるぐるとまわり始めた。

 先ほどから騒いでいたのだが、フレッドとジョージは、火トカゲにフィリバスターの長々花火を食べさせたらどういうことになるかを試そうとしていたのだ。

 

 どうやら実行に移されたらしい。彼らの兄であり監督生であるパーシーは、声を枯らす勢いで双子を怒鳴りつけていた。

 火トカゲはというと、口から滝のように橙色の星を流れ出して素晴らしい眺めになっていた。爆発音とともに暖炉の中に逃げ込んだ。

 

 フィルチの事で考えることがあったのだが、そのことはすっぱりとハリーの頭の中から消えてしまった。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 ハロウィーンが近づくある日。

 

「…………」

「…………」

 

 空いた教室の中で、サルビアは面倒なことになった、と思っていた。目の前にいるのはグリフィンドールの監督生であるパーシー・ウィーズリー。

 別にサルビアは彼に睨まれるようなことをしたわけではない。いや、ある意味でしているというか、してしまったということかはあるのだが、それほど騒ぐことだろうか。

 

 そうパーシーが、レイブンクローの監督生であるペネロピー。クリアウォーターと逢っていたとか、こっそりとキスなんてことをしていることを目撃した、されたことがそんなに騒ぐことなのか。

 件のペネロピーはいない。パーシーが逃がした。それで、サルビアは空の教室でパーシーに引き留められていた。

 

「見た、よね」

「…………ええ」

「そうか。できれば、秘密にしておいてくれると助かる」

「そんなに秘密にしておくことかしら」

 

 別に良いだろう。そんなくだらないことを言うためだけに引き留めたのかこの塵屑は。やはり塵屑(ウィーズリー)の家系は邪魔しかしない。

 

「僕は監督生だ」

 

 だからなんだよ。監督生だからって一々秘密の交際をしなければならないのか? 面倒くさいことこの上ないぞこの塵が。

 

「……そう。誰にも言わないわ。もう行っていい?」

 

 いい加減解放しろ塵が。

 

「ああ、くれぐれも頼むよ」

「……わかったわよ」

 

 うんざりしながらサルビアは教室を出た。

 前向きに考えるとしよう。弱みを手に入れたのだ。もしものときは脅して従えればいい。あるいは、ペネロピーとかいう塵を人質にすれば勝手に動いてくれるだろう。

 

「さて、行きましょう」

 

 そういって彼女は秘密の部屋へと向かう。独自にそろえたヒキガエルと雄鶏の卵。孵化しているか確認したが孵化していないようだ。

 伝説の生物であるから、そう簡単に出来るものではないだろう。気長にやるしかないが気長にやる時間などないのがネックだ。

 

 爬虫類(バジリスク)は良く働いている。パイプの中を自在に動ける奴はホグワーツ中から情報を集めていた。

 役立つ情報は少ないと言える。奴が集めてくるのは痴情のもつれだとかくだらないものばかりだ。マクゴナガルが寮杯をうっとりと見ているとかそんな情報などいらない。

 

 そんなことよりもハロウィーンの夜の準備をしなければならない。

 

「一々、夜の森を走り回るのもいい加減疲れた。良い場所があるんだ。飼育してやる」

 

 そう、ユニコーンを――。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 ハロウィーンの夜。ハリーは自らの言葉に後悔していた。どうして、ほとんど首なしニックの絶命日パーティーなどというものに行こうと思ってしまったのだろう。

 あの時は、助けてもらったからお礼とばかりに軽率に約束したのが間違いだったのだ。サルビアは何をしているだろう。

 

 きっと、パーティーを楽しんでいるのかもしれない。何か用事があると言っていたけれどなんだったのだろう。手伝おうかと言えばよかった。

 親友の為。それならニックも許してくれるに違いなかった。だが、もう遅い。パーティーが始まる時間だ。

 

「ハリー、あなた約束したんでしょ? 約束は守らなくちゃ」

 

 ハーマイオニーは命令口調でそう言う。

 

「でも……」

「でもじゃない! 絶命日パーティーに行くってあなた言ったんだから」

 

 そんなわけでハリー、ロン、ハーマイオニー、それからジニーは七時に金の皿やキャンドルの吸い寄せられる輝きで満たされた大広間の入り口をスルーして、地下牢の方へと足を向けた。

 大広間の中は皆が楽しそうに笑っている。思わずサルビアを探したが、見つからなかった。それでもきっとどこかにいるだろう。

 

 羨ましいと思う。そんな輝きから遠ざかって、彼らは地下牢へと向かう。

 

「…………」

 

 移動中誰も話さない。ほとんど首無しニックのパーティーに続く道にもキャンドルが立てられていたが、とても楽しい雰囲気とは程遠かった。

 黒くひょろ長い細蝋燭は真っ青な光をあげている。どこかの遊園地のお化け屋敷と言った方が適切だろう。いや、というか此れから向かう場所自体お化けのパーティー会場なのでお化け屋敷よりもお化け屋敷しているのだが。

 

 ロンなどは露骨ににがにがしい顔をしていた。ジニーもその隣で似たような顔だ。流石は兄妹と言ったところ。あのハーマイオニーですら苦笑いを浮かべている。

 そんな感じに、ハリーたちは階段を下りていく。一歩進むごとに温度が下がるようで、ハリーたちはローブを身体に巻き付ける。

 

 その時だ、

 

「何の音?」

 

 ジニーがそう言った。耳を澄ませれば奥の方から、音が聞こえてくる。それは嫌悪感を催すような音だった。黒板をひっかくような音。

 規則多だしくまるで演奏のように奏でられる音に四人は身をすくませる。

 

「うぅ。これ、もしかして音楽とかいうんじゃないよな」

「まさか……」

 

 ロンの言葉にハーマイオニーがまさかというが、もしかしてくてもこれはまさかのようであった。音楽であったのだ。

 以前聞いたサルビアの演奏とは程遠い。音楽と呼んでいいのかすら疑問の旋律。それが流れて来ていた。身をすくませて、角を曲がればそこにはニックが立っていた。

 

「親愛なる友よ。これは、これは、良くおいでくださいました……」

 

 どこか悲しげに彼は四人に挨拶する。彼は羽根飾りの帽子を脱いで、三人を招き入れるように彼はお辞儀をした。それにしたがって中に入る。

 そこにあったのは信じられないような光景だった。地下牢は何百と言う、真珠のように輝く白銀のゴーストでひしめき合っていた。

 

 ダンスフロアとでもいうのだろうか、開けた場所をふわふわと漂いながらワルツを踊っているようだ。黒幕で飾られた壇上ではのこぎりのオーケストラが恐ろしい音楽を奏でている。

 頭上のシャンデリアは、来た道と同じく群青の炎が照らしている。淡く、青く、おどろおどろしく。さながらここはあの世のごとく。

 

「み、見て回ろうか」

 

 ハリーが白い息を吐き出しながら提案した。ここに来た時からまるで冷蔵庫の中にでも詰め込まれたかのような寒さが四人を襲っていた。

 ここに来て、ハリーはサルビアを無理にでも誘わなくてよかったと思った。病弱なサルビアがここに来たらきっと体調を崩していたに違いない。

 

 今頃、彼女は何をしているのだろうか。現実逃避としてそんなことを考えながら、ハリーたちは会場を見て回ことにしたのであった――。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 ハリーたちが絶命日パーティーなる、絶望のパーティーに出席している頃。サルビアは、ドビーと共に禁じられた森にいた。

 フードを目深に。ローブにマント、マフラーに手袋と着込みに着込んで、サルビアは禁じられた森を走り回っていた。

 

 まだ十月だが、雨のおかげでだいぶ冷える。しかし、サルビアは、全力運動のおかげで、心臓は破裂しそうな上に、脚は熱で焼けそうなほどであった。もはや走ることができないほど息切れしている。

 先ほどまでは目標を追いたてるために全力で走っていたが、今はもうその必要もないのが救いだろうか。ここ数週間で作り上げた罠に獲物を無事飛びこませ、ドビーによって動きを止めさせた。

 

「はあ、はぁ、はあ、よ、よう、やく、――ステューピファイ! ステューピファイ!」

 

 赤い閃光は、馬のような生物に当たる。毛は白色、蹄は金色で、角がある。一角獣(ユニコーン)。それも(つがい)だった。

 

「こ、のわ、私を、手間取らせやがって」

 

 そう悪態をつきながら失神したユニコーンの下へと向かう。きちんと失神していることを確かめて、ドビーと共に姿くらましして秘密の部屋に姿現しする。

 そこは秘密の部屋の中に新たに作り上げられた部屋だ。さながら禁じられた森のようであり、天井に魔法がかけてあるのか、そこには夜空が浮かび月が動いていた。広さもかなり広く、じめじめはここにだけはない。

 

 飼育部屋である。ユニコーンを飼育し、繁殖させ効率よくその血を回収するのだ。角や毛も魔法素材としては優秀であり、金にもなる。

 延命で来て、金を稼ぐこともできる一石二鳥だ。ボージンなどという塵屑から買う必要もなくなった。

 

「飼育は爬虫類、お前がやりなさい」

 

 飼育はドビーではなくバジリスクに任せる。情報収集などよりずっと有意義だ。この程度の仕事くらいは出来るだろう。できないなら死ね。

 バジリスクは了解しました! とでも言わんばかりにこくこくと頷いてみせる。ちっとも可愛くないので、死ねと思った。

 

「塵蟲は、今まで通り私について来い」

「は、はい」

 

 そういってサルビアは、秘密の部屋から出て大広前へと向かう。少しくらいは出席していた方が良いだろうと言う考えだ。面倒くさいが、この積み重ねが馬鹿にならない。

 模範生は模範生らしく。そうしておけば、何かあっても疑われない。出来ることならば、役に立たない塵屑どもを処分してしまいたいものであるし、道具は道具らしくしていろと言いたい。

 

 だが、それをやれば父親(塵屑)の二の舞だ。良い魔法使いの皮を被っておくのは実に有用である。せいぜい利用されていろ。お前たちはそのために生かされているのだから。

 

「――サルビア?」

「あら……」

 

 ふと、ハリーたちと出会う。どうやらパーティーから逃げてきたようだ。

 

「パーティーはどうだった?」

「えっと」

「……そう」

 

 大方最悪だったのだろう。

 

「サルビアこそ、どうしてたの?」

「用事よ。もう終わったから、大広間に行くところ」

「それじゃあ、一緒に行こうよ」

「そうそう、デザートくらいはあると思うし」

 

 心底デザートが食べたいのだろう。ロンは、早くと言ってサルビアの手を了解もなく引っ張り出した。やめろ、肩が外れるだろうが。

 

「行こう」

 

 ハリーたちもそれに続く。良いから、この塵屑を止めろ。そう言いたいがそういうわけにもいかず、サルビアはされるがまま、大広間に向かうのであった。

 幸運にも残っていたデザートと食事にありつけて、ハリーたちはご満悦のようであった。死ねばいいのに。

 

 事件もなくハロウィーンは過ぎていく。何も起きることはない。何も――。

 




ユニコーン量産化計画開始。
面倒なので、世話は動物どうしてしろとバジリスクに丸投げするサルビア。
役に立つ蟲ことドビーは良いから後ろをついて来い。

パーシーに彼女がいることを知っちゃったよ。監督生の弱みゲットだね(白目)

しかし、これもう秘密の部屋自体はもう完全に原作どっかいってもう何も起きないだろ。
サルビアがバジリスク動かしてマグル襲うわけもない。地下の秘密基地と実験場を手離すわけもありませんし。

そうなるとハリーの経験値減少とグリフィンドールの剣がバジリスクの毒を吸収しないので分霊箱を破壊できなくなります(白目)。


あと書くとしたら、
ルシウスとクィディッチ観戦。ルシウス、初恋相手の子供とうきうき観戦。
ドラコ、ネビルとの絡み。
ドラコはとりあえず、終了のお知らせ。死ぬとは言ってない。
ネビルは、猫かぶりサルビアから逃げるだけ。

こんなところですかね。

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