同調率99%の少女 - 鎮守府Aの物語   作:lumis

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【挿絵表示】

軽巡洋艦艦娘、那珂となった光主那美恵は、初めての出撃任務に参加する。



リアルプレイにて那珂を一度轟沈させているため、この物語ではそんな初代那珂を書いています。
初代那珂はリアルプレイでは運良くクリティカルをバンバン発揮して本当に活躍してくれたので、そんな彼女を
具現化させるために話を考えてみました。

艦娘(になった少女)たちは実在したらこんな感じなんだ!身近にいそうだな!という感覚を味わっていただきたいため、
オリジナルの本名・学校生活・友人関係を作って日常生活をリアルに描いています。
可能な限り原作に近づけていますが、かなり性格の違う艦娘も出てきます。ご了承ください。
初代那珂は、"まだ" お団子ヘアをしていません。


鎮守府の日々1
出撃に向けて


 ある日、鎮守府Aに出撃任務が舞い込んできた。内容自体は護衛任務メインで難しくはないが期間的にボリュームがある。まだ人が少ない鎮守府Aにとっては十分ずっしりした出撃内容だ。提督と五月雨が執務室で作戦会議をしていると、そこにノックをして那珂が入ってきた。初めての出撃任務ということで、先にどういうものか知っておきたいと思ったためだ。

 会議中だったが特に人を制限していなかったので提督はせっかくなので那珂を作戦会議に混ぜることにした。

 

 出撃任務の内容は次の内容のものだった。

 となりの港町では北陸へのフェリーが出ているのだが、鎮守府A寄りの途中の航路で最近深海凄艦らしき影が増えているとのこと。鎮守府Aの担当海域中を通るフェリーの護衛、および敵集団を確認次第撃退。依頼された期間は1週間。つまり毎日出撃だ。

 

 提督と五月雨が考えていた案は、フェリーのダイヤが往路復路それぞれ一日2便のため、その時間の手前にフェリーの航路に出て行ってポイントを決めてそこで監視するものだけのだった。基本的には問題なさそうに思えたが、那珂はフェリーの航路と運行会社の資料を見せてもらって確認し始めた。

 

 

「ねぇ提督。深海凄艦が増えてるって言われたポイントってどのあたり?」

 那珂は提督に尋ねた。

「運行会社の方からの報告によると、このあたりだ。」

 

 

 提督が指さしたのは本土よりも近くにある無人島のほうが距離的に近い航路だった。フェリーの航路の側(と言っても数キロは離れているが)には無人島がある。

 

 無人島寄り、という点が気になった那珂は提督に、無人島周りの探索もしようと提案した。しかし提督はまだ人が少ないし、五月雨たちの体力的な面も考えると、1週間を決めたポイントで監視するのが一番無難にこなせるからいいのではと言う。無人島付近探索は乗り気ではないようだ。

 これだからやる気のない大人って……と若干苛ついたが、那珂は食い下がる。

 

「提督、この出撃任務って、護衛任務がメインじゃないとあたしは思うんだよね。これもしかすると、近くに敵集まってるんじゃないの?そこ発見して親玉つぶさないと、この手の依頼ずーっと続くかもよ?」

 那珂は的確な指摘をする。提督も無人島は気になっていたが、そこまで視野に入れて考えてる余裕がなかった。提督は那珂の提案を聞くことにした。

 那珂によると、毎日計4回のフェリーの護衛と監視はそれはそれでいい。鎮守府Aの担当海域を過ぎ去る数分間の仕事だ。ただそれだけでは足りない。それさえ終われば時間はあるから、残った時間で無人島付近の探索をする。

 

 学生艦娘に許された勤務時間があるのであまり夜遅くまではできないし、夜戦になるとまだ未経験の鎮守府Aの面々では危険すぎると判断する。できて最長で午後7時くらいまで。日は落ちるのが遅い季節なのでその時間は薄暗い程度だ。

 

 ただ五月雨たち中学生の体力的な面と家に帰す時間も考えると、午後6時くらいまで。なお、普通の艦娘として採用されている那珂自身と五十鈴はその制限はない。(立場上は学生だが)が、提督はおそらく同じように扱っているだろうから自身らも無理はできない。

 那珂が考える編成は二段式だった。フェリーの護衛は旗艦五月雨、時雨、夕立の三名で行う。村雨はいざというときの待機メンバーとする。無人島付近探索は旗艦軽巡洋艦、もう一人軽巡洋艦、そして駆逐艦2名で行う。

 

 フェリーは往路と復路合わせて午前2便、午後2便のダイヤなので、午前と午後の便の間に無人島付近探索メンバーは先行して無人島付近へ行く。もちろん各自学校があるため、都合がつくメンバーだけでもよい。

 途中お昼休憩や燃料の補給を挟むことも考えると、最初の調査は軽めで一旦本土に戻る。その後調査結果をまとめるなどしつつ、午後の護衛が終わったら無人島付近探索メンバーと合流し、メンバー4人で向かって残りの調査。

 

「悪いけど五月雨ちゃんはこの時点で鎮守府に帰ってきてね。あなた大事な秘書艦だし、提督と一緒に通信を受ける役目も果たして欲しいんだ~。」

「はい。わかりました。」

 テキパキと案を発表する那珂。明るく軽くちゃらけることのある彼女が的確な指示を考えて出している。さすが生徒会長を務めるほどの能力の持ち主だと、提督と五月雨は感心した。

 

 そこで五月雨が感心まじりにふとこんな提案をした。

「那珂さんすごいですね……私じゃこんなことまで考えられないですよ~。私なんかより那珂さんが秘書艦になったほうがいいんじゃないですか?」

 提督はちょっと考えこむ仕草をして、軽く頷いていたように那珂には見えた。しかし那珂は反論する。

 

「五月雨ちゃん。それは違うな~。あたしがまだ着任まもないってのもあるけど、あたしは秘書艦って柄じゃないんだ。なんていうんだろう、あたしはまわりを巻き込んで何かを進んでしたいタイプなんだ。

 それに秘書艦ってさ、提督のサポートをするんでしょ?じゃあ提督の代理、鎮守府の別の顔ってことだよね?それは鎮守府開設時からいる五月雨ちゃんだからこそやれることだと思う。

 ぶっちゃけ、出撃任務の作戦立案とかはやれる人がやればいいわけで、全部秘書艦である五月雨ちゃんがやる必要なんてないよ。」

 

 五月雨を諭したと思ったら次は提督にも視線を向けつつ那珂は続ける。

「提督あなたもそうだけど、一人では能力に限りがあるんだから一人で背負い込む必要はないと、生徒会長やっててあたしは思いまーす。あたしだって目の届かないところは副会長や書記に任せっきりだもん。」

 

 

 ぺろっと舌を出して最後におちゃらける那珂。そういう那珂こと那美恵はなんでもできると皆から思われているが、実際のところ、それはできることとできないこと、限界との線引をきっちりしているためた。少しでも可能性を感じたら本気で取り組むが、彼女は線引した先に興味を持てなかったらとことんやらない主義だ。

 


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