同調率99%の少女 - 鎮守府Aの物語   作:lumis

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 生徒会メンバーである三千花、和子、三戸に鎮守府を見学させた那珂こと光主那美恵。彼女たちは鎮守府と艦娘に触れて様々な思いを胸にした。そして、いざ高校と鎮守府の提携を目指すために、校長との打ち合わせに臨む。

※ここからしばらくは艦これ要素の薄いほぼオリジナルキャラと展開が続きますのでご了承ください。艦娘=武装装着した人間説を取っているため、彼女らの本当の日常生活を見てみたいという方々に楽しんでいただけたらと。



学校の日々3
交渉に向けて


 鎮守府に見学に行った翌週から、那美恵たち生徒会メンバーは通常の生徒会業務をする傍ら、鎮守府見学の報告書を作成し始めた。主に書記の和子と三戸が写真・動画を選んで文章を書き、レビューを副会長の三千花が、最終レビューを生徒会長の那美恵が担当して作業する。

 文章力などは三千花が得意ということもあり強いため、最初のレビューでは三千花が内容は別として全体的な構成をチェックし、肝心の内容のほうは那美恵が艦娘としての立場を踏まえてチェックするという流れである。内容的に足りなそうな点は、那美恵が提督や五月雨にメールで確認し、もらった回答をそのまま書記の二人に伝えて完成度を高めていった。

 

 生徒会の仕事である程度書類の作成能力は付いていると本人たちは思ってはいたが、それはあくまでも学生同士のレベルでの話である。そのため不安を感じた那美恵と三千花は、無理を承知で西脇提督にも第三者からの視点として内容を見てもらうように依頼することもあった。(なお提督はさらに明石や妙高など、歳の近いほかの人にも見せてチェックしてもらっているが、それは那美恵たちがあずかり知らぬところである)

 

 立場の違う大人がそれぞれ密かにチェックした甲斐あり、報告書は無事に完成した。完成した報告書は改めて提督に見てもらい、那美恵はその後迎える校長先生との打合せに向けて提督と話す内容のすり合わせをする予定を取り付ける。

 

 

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 完成した報告書を手にし、那美恵と三千花は教頭経由で校長先生に、再び鎮守府Aの西脇提督と話をしてもらえないかどうか交渉しに行くことにした。放課後に職員室に赴き、教頭に相談することにした。

 

 那美恵は自身が艦娘になってからすでに2ヶ月ほど経っており、ある程度活動していることを教頭に伝えた。そして和子たちが作成した報告書も教頭に見せて反応を伺う。

 教頭は報告書や那美恵が隣の鎮守府や東京都からもらっていた写真をしばらくじっと読んで見入っている様子を見せた後、顔を挙げて那美恵に微笑み、よく頑張りましたね、の一言を発した。

 

 もともと教頭は、鎮守府が国に関わる組織という前提のために乗り気で那美恵に協力的だった。だが学校の意思は校長の決定が全てなので、それ以上は言えなかったのだ。

 それから今回教頭は意外な事実を口にした。実は教頭の孫娘も、別の鎮守府で艦娘をしているというのだ。最初に那美恵が交渉しに行った時に教頭が自身の身の回りのことを話さなかったのは、那美恵自身がまだ着任してまもないということで、様子を伺うためでもあった。

 那美恵が艦娘として実績をあげたことで、教頭は那美恵が単なる興味本位や浮ついた気持ちで艦娘制度に関わり、学校との提携を望もうとしているわけではなく、本気で望んでいるのだということを確認した。最後に教頭は、君たちを値踏みしてるのは私だけではないはずですよ、と一言ポツリとつぶやいて那美恵たちとの打合せを締めきった。

 

 

 那美恵たちは学校内に頼れる協力者を教師陣の中に得たという心強さを感じることが出来た。

 あとは校長を落とすのみだと、意気込む那美恵と三千花。

 

 教頭へ話の取り付けに成功し、職員室を後にした二人。

「まさか教頭先生のお孫さんも艦娘だったとはね……。」と三千花。

「うん。世間は狭いっていうべきなのかな。意外な形で艦娘って世の中にいるんだね。あたしだけが特別なんて思わないでよかったよ。」

 那美恵も頷いて相槌を打ち自身の感じたことをも明かす。

「なんか私、気が楽になってきたわ。」

「およ?どうしたみっちゃん。かなりノリノリぃ~?」

 両腕を挙げてグッと背伸びをして今の気持ちを吐露する三千花を、屈んで下から見上げる那美恵。

「いやさ。私が変に現実的に考えすぎたのかなって思ってさ。うちの学校でも艦娘制度に関われる下地がすでにできていたのかと思うと、まじめに考えてた自分がちょっと馬鹿らしく思えてきてさ。」

「ん~。でもあたしはみっちゃんに相談して、みっちゃんから考え聞けてよかったと思ってるよ。みっちゃんの真面目な考えや見学の時の協力がなかったら、多分教頭ですら落とせなかったと思ってるもん。」

 

「あんた……その落とすって言い方やめときなさいよ。あと、ありがとね。私がなみえの歯車の一つのよーに役に立てたのなら光栄だわ。」

 わざとらしくなみえの両頬を軽くひっぱり、感謝を述べる。

「い、いひゃいいひゃい~」

 

「でもまだよ。まだ校長っていうラスボスがいるから、最後まで気が抜けないじゃない。……まぁなみえのことだから大丈夫だとは思うけどさ。」

 なんだかんだ言って自分を信じてくれる親友に対し、エヘヘと笑って那美恵はそれ以上の言葉を発しなかった。その後生徒会室に戻った那美恵たちは書記の二人に教頭とのことを話し、先行き好調の状況を伝えた。

 

 

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 那美恵らが教頭に話を取り付けた後、教頭は那美恵たちから話を聞いたこと、自分は協力する意思があることなど校長にその旨伝える。教頭自身の熱意ある説得の甲斐あり、校長は穏やかな雰囲気で頷き鎮守府Aの提督と再びの打合せに承諾した。

 打合せが決まったことは教頭から直接那美恵たち生徒会メンバーに話が伝えられた。そののち提督からも打合せについて同じ内容が伝えられる。大人たちの準備も整った。

 打合せは3日後の15時からに決まった。その日は平日だが校長の計らいにより那美恵と三千花はその時間の授業は免除され、校長・教頭・提督の打合せへの同席が許可された。

 


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