同調率99%の少女 - 鎮守府Aの物語   作:lumis

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鎮守府Aにて軽巡洋艦艦娘、那珂となった光主那美恵。これから本格的な活動になるかもしれないことを考慮して、自身の高校と鎮守府Aとの提携を目指そうと考え始める。
 自身が生徒会長であることから、まずは生徒会メンバーに鎮守府Aの見学を勧める。無事に見学の申し込みを取り付けた那美恵たちは、見学日当日を迎える。


学校の日々2
見学当日


 土曜日、午前の授業が終わり生徒会室に集まった那美恵たち4人は、生徒会備品のタブレット端末やデジカメ等を持ち早速鎮守府へ向けて学校を後にした。

 

 学校のある町の駅から電車に乗り、ゆられること数分、となり町の駅で降りる4人。駅で降りて改札を抜けると、見覚えのある顔が向かいのコンビニの前にいた。それは駆逐艦時雨担当の御城時雨(ごじょうしぐれ)だ。

 

「あ、時雨ちゃーん!」

「那珂さん、こんにちは。あ、そちらは……」

 那美恵は駆けて行って時雨の手を掴みブンブンと振りの大きい握手をする。時雨はその握手に少し戸惑いの表情を見せたがすぐに笑顔になり挨拶を返す。そして駆けて行った那美恵のあとから来た3人に気づいた。

 

「うちの学校の生徒会のみんなだよ。今日は鎮守府を見学させたくてね。連れてきたの。」

「あ、さみに話してたのはそのことだったんですか。」

「うん。ところで時雨ちゃんはここでどうしたの?人待ち?」

「はい。ゆうが買い物してるので。」

 時雨は視線を背後にあるコンビニの入り口に向けながら言った。その直後自動ドアが開き、夕立こと夕音が外に出てきた。

「あ゛ー、一番くじ外したっぽい~。ぬいぐるみ欲しいのに~……あ!那珂さん……と誰?」

 コンビニから出てきた夕音はブチブチ文句を垂れている。前半の愚痴らしきセリフは無視し、那美恵は改めて生徒会メンバーを紹介することにした。

 

「せっかくだし二人には先に簡単に紹介しておくね。こっちはあたしの高校の生徒会のメンバー。」

「副会長の中村三千花(なかむらみちか)です。」

「書記を担当しています、毛内和子(もうないわこ)です。」

「同じく書記の三戸っす。よろしくっす。」

 三千花たちは目の前の中学生二人に挨拶と自己紹介をした。それを受けて時雨たちも、先輩にあたる人たちなので丁寧に自己紹介で返した。

「僕は御城時雨といいます。○○中学校の2年生です。鎮守府Aの駆逐艦時雨を担当しています。」

「あたしは立川夕音(たちかわゆうね)っていいます。同じく○○中学校の2年で、駆逐艦夕立を担当だよー!」

 

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 落ち着いた佇まいで会釈をして自己紹介すると時雨と、元気よく片手を前に出して無邪気に自己紹介する夕立。二人の中学生艦娘の紹介を受けて、三千花たちも改めて挨拶をする。

「うおおぉ!!生艦娘!中学生!ボクっ子!最高~!」

 なお唯一の男である三戸は二人の紹介を受けて(小声で) 興奮していた。そんな傍から見たら恥ずかしい態度を取る三戸を見て呆れるを通り越して逆に心配をし始めた和子が彼をなだめる。

「三戸君落ち着いて。傍から見るとただ単に中学生に興奮してる男子高校生でしかないから。結構危ない人に思われますよ?」

 

 那美恵の少し後ろでそんなやりとりが行われている様を見た時雨と夕音は気にはなったがどう反応していいかわからず、とりあえず那美恵のほうだけを見ることにした。那美恵も三戸の反応にすぐに気づいたので一応断っておいた。

「あ~、後ろは気にしないで。初めて見る艦娘に少し興奮してるだけなの。」

 

 そして気を取り直すようにコホンと咳払いをして続ける。

「二人もこれから鎮守府行くんでしょ?その前にみんなでお昼食べていかない?」

「はい。僕達もちょうどどこかで食べていこうと思っていたところなんです。」

「わーい!いこ~いこ~!」

 時雨と夕音は都合が悪いわけでもないので賛成した。

 

「みっちゃんたちもいいでしょ?」

「うん。いいわよ。」

「生艦娘と合コ……」

「はい。……三戸君はいいかげん落ち着きましょうか(怒)。私達年上ですよ?」

 三千花たちも賛成した。まだ興奮しているクドイ三戸を見て和子が少し声を静かに荒げて叱った。

 

 4人+2人が入ったのは近くのファミリーレストラン。そこでは艦娘の証明カードを見せれば、艦娘本人と5名の同行者までが半額になる優待を受けられる。そのレストランは鎮守府個別ではなく、防衛省の艦娘統括部と提携しているためすべての鎮守府の艦娘が優待を受けられるようになっている。

 食事中はお互いの学校のことや、時雨たちからは艦娘の活動について彼女らから話せる範囲で語られた。そして6人は食事が終わり、改めて鎮守府へと歩みを進め始めた。

 

 

--

 

 歩きながら那美恵は時雨に他の娘のことを尋ねた。

「そういえば五月雨ちゃんや村雨ちゃんは?」

「あの二人は同じクラスなんですけど、何かクラスの用事が残っているとかで僕らだけ先に来たんです。それまでは秘書艦お願いって言われてるので、やれることがあれば僕が代わりにやります。」

「そ、りょーかい。」

 

「ねぇ御城さん?その秘書艦っていうの大変?」

 三千花が時雨のほうをチラリと見て尋ねた。

「えぇと……僕はさみ、五月雨からたまに引き継いで代わりに秘書艦するんですけど、意外とやることあって面倒な内容だったりと、覚えることやることいっぱいでホント大変です。どうもさみと提督の頭のなかでは大抵のことは固まっていてわかっているみたいであの二人はスラスラやってますけど……。まぁ、さみは成績良いし頭いいのは知ってるんですが、のんびり屋で時々おっちょこちょいなのによくやれるなぁと思いますよ。」

 

 その愚痴に那美恵はウンウンと頷く。

「わかる。わかるよ~。頭の中で自分なりの手順や流れがしっかり描けてるんだろうね。だから性格云々は関係なしにスラスラやれちゃう。そういう人ってたまにいるよね~。」

「まるっとあんたじゃないのなみえ。その五月雨って娘、あんたと似てるの?」

 三千花が聞くと、代わりに時雨がその質問に答えた。

「アハハ。那珂さんとは違いますね。那珂さんみたいにおどけたり底抜けに明るくはっちゃけるさみなんて想像つきませんよ~。」

 

 なんとなく皮肉とも自分を馬鹿にされてるようにも思えた那美恵は全く本気でない軽い怒り方で三千花と時雨に反論する。

「ちょっと~なんかまた私馬鹿にされてない~?みっちゃんは仕方ないけど、時雨ちゃんに言われるのはちょっとびっくり~」

 口をつぼませて拗ねる仕草をする那美恵。それを見て時雨はやや焦りを見せて弁解する。

「あ……すみません、悪い意味じゃなくて……」

「うぅん!時雨ちゃん可愛いから許しちゃう~。あとみっちゃん!五月雨ちゃんにしつれーだよ!本人に会ったらその可憐さに萌えて土下座するがいいわ~」

 もちろん本気で怒ったわけではないので那美恵は時雨をすぐに許しつつ、親友の三千花には辛辣な言葉を浴びせた。

「何よそれw でもあんたが言うくらいだから相当可愛い娘なんでしょうね。期待するわよ。」

 

 那美恵たちがそんなやりとりをする一方、ふと三戸や和子の方を見ると、二人は夕音と仲良さそうに話している。主に三戸と夕音がウマが合った様子でほぼ同じノリで会話している。和子は二人が(主に三戸が)暴走して変に騒いで町中で他人(や夕音)に迷惑をかけないかどうか、キモを冷やしながら二人の間に入ってツッコミ役を担当していた。そんな光景がそこにあった。


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