同調率99%の少女 - 鎮守府Aの物語   作:lumis

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 勢いのある敵の裏をかいたつもりが、那珂たちは出だしから手痛いカウンターを食らう。しかしただでは転ばない。再編成して再び鳥海らに立ち向かう。


くじかれる出だし

 

--

 

ザパァ!

「神通ちゃん!みんなぁ!!」

 

 神通たちは那珂から数m離れていた。同じタイミングで海面に顔を出す者もいれば、被弾の拍子に天地逆転して吹っ飛び着水して沈んだため、いまだ藻掻いている者もいる。

 那珂は浮き上がるのと同時に移動を再開し、神通たちに近づく。

「被害状況確認して!」

 

「皆さんの状態を教えてください! わ、私は中破です!」

 神通がそう叫ぶと、那珂を始めとして皆ほうほうの体で報告し合った。

「あたしも中破。前半から変わってないよ!」

 

「ゴメンなさぁ~い。私耐久度0になっちゃいましたぁ。きっと轟沈ですぅ~。」と村雨。

「ふえぇ~~ん痛かったよぅ~。私は小破です~。」と五月雨。

 

「……大破。」一言で済ませる不知火。

「っつぅ……。すみません。僕は中破です。」

 ほぼ最後に時雨が言い終える形となった。

 

 全員の状態を聞いて飲み込んだ神通と那珂は顔を見合わせた。

「たった一発でメンバー全員がこれだけの被害なんて……。」

「ううん。一発じゃない。瞬間的に2~3発は飛んできた感じかな。一発だけじゃちょっと距離空いてる6人全員をさすがに狙えないはずだもん。」

 神通は那珂の判断と想定に頷くしかできない。

 神通たちは全員立ち上がり終わりひとまず集まった。すぐに狙われないとも限らないし、自分たちが狙った鳥海達の結末が不明なのだ。そうこうしているうちに明石から発表があった。

 

「千葉第二、駆逐艦村雨、轟沈!」

 

 

 言われた本人と友人たちそして那珂と神通は一斉に落胆のため息を吐いた。

「ハァ……私今回いいところなしですねぇ……。」

「まぁまぁ。よその鎮守府との初めての演習試合だもの。こういうこともあるさ。ね、さみ、那珂さん?」

「そ、そうだよますみちゃん!」

 

「私がもっと早く的確に回避指示出しておけばね~。ほんっとゴメンね村雨ちゃん。」

「わ、私も……旗艦として至らなくて。」

「わあぁ! 二人とも頭下げないでくださいよぉ! 熱い戦いの雰囲気味わえただけでも十分ですから。それに戦艦の攻撃受けてこんな姿になったのは、ある意味勲章ですしぃ。」

 那珂と神通二人から謝罪を受けて村雨は慌てて取り繕って苦笑気味にフォローし返した。

 

 アハハと誰からともなしに笑い出す那珂達。しかし視線はすぐに先程までの前方に向く。

「とりあえず村雨ちゃんは退場ってことで、残りの皆は引き続き鳥海さんたちの撃破、だよ。」

「砲撃に気を取られてわかりませんでしたけど、魚雷はどうなったのでしょうか?」

 神通がそう口にすると、那珂がサラリと答えた。

「放送がないっていうことは、相手は轟沈に至ってないってことなんだろーね。」

 

 事実、鳥海たちは魚雷の波をうまくいなし終えた様子だった。遠く離れた場所で立ち上がった水柱や波が収まったことで鳥海たちの姿をすぐに確認できた。実際の状態はどうだか那珂たちは把握できていないが、ピンピンしているように見えた。

 鳥海たちは丁寧にも、那珂たちが体勢を立て直すのを待っていた。

 

「はぁ~~~どうやら外したか回避したかなんだね~。元気いっぱいピンピンしてるよぉ。」

「皆で一斉に雷撃したのに……そうなるともう一回仕掛けないと三人とも倒せないのでは?」

「もう一回雷撃するんですか?」

 神通の提案に五月雨が反芻して確認する。しかし那珂はそれに対して頭を横に振った。

「ううん。多分もう一斉雷撃は通用しない気がする。あとはそれぞれのタイミングで攻撃の一つとして雷撃を挟むしかないかな。」

「砲撃と雷撃を五月雨式に、ですね。」と時雨。

「私がなぁに、時雨ちゃん?」

「……さみ、そういうボケはいいから。」

 五月雨の反応が素のものだとすぐに気づいた時雨はキョトンとしている彼女のことは無視し、神通と那珂に進言した。

「二手に分かれたほうがいいかと思います。ますみちゃんがやられてしまったのは痛いけど、残り5人でうまく立ち回るしかないかと。」

 時雨の言葉に頷く全員。そして那珂が口を開いた。視線は神通に向けたまま。

「そうだね。二手に分かれよっか。」

「人選はいかがします?どちらか二人っきりになってしまいますが。」

「はい。」

 シュビッと音が鳴るかのような静かだが素早く鋭い挙手で不知火が注目を集めた。何かを提案したいのだ。

「はい、不知火ちゃんどうぞ。」

 

「神通さん、私、五月雨で。那珂さん、時雨で。」

「おおぅ。そのこころは?」と那珂。

「足し引きすると、みんな中破になるので。」

 

「「へ?」」

 

 不知火以外揃って間の抜けた一言を発した。不知火は五月雨に耳打ちし、説明の代行を依頼した。

「え、ええと。不知火ちゃんが大破、私が小破なので、足して二で割ると二人とも中破だろうって。」

「あ~アハハ……そういうことね。な~るほど。」

 納得の意を苦笑に乗せて示す那珂。この微妙な空気を早く変えたかったので言葉を引き継いで話を進めることにした。

 

「え~っと、不知火ちゃんの提案採用。あんまりあちらさんを待たすのも悪いからサクッと行動しよう。神通ちゃん、指示お願い。」

「え、あ、はい。それでは、不知火さん、五月雨さん私についてきて下さい。時雨さんは那珂さんに従ってください。以後、そちらの指揮系統は那珂さんにお任せします。」

「りょ~かい。それじゃいっくよ、時雨ちゃん!」

「わかりました!」

 

 那珂と時雨から返事を受けた神通は不知火と五月雨に視線を向けた。移動を始めて離れていく那珂たちのことをもはや気に留めない。

「それでは行きましょう。」

「あの~私達、どうすればいいんでしょう? 正直言って、勝てる気がしません……だって。」

 言い淀む五月雨の視線は不知火に向かう。その行動の意味するところは、不知火の耐久度の判定にあった。

 五月雨の視線を追って不知火を見た神通は、ハッと気づいた。

 

「不知火さんをカバーしながら戦います。私……が旗艦なので、私が盾に、です。」

「そんな! それだったら小破の私がお二人の盾になりますよー!」

 なぜか神通に食らいつき始める五月雨。神通と五月雨の名乗り合い合戦が2~3巡した時、不知火がある方向に頭と視線を急に動かし、珍しく叫んだ。

「二人とも動いて! 対空!」

「「えっ!?」」

 

 神通が上空を見ると、後方から前半戦に何度か見た敵爆撃機・戦闘機の編隊が向かってきていた。それに気づいた神通は慌てて指示を出しながら自らも動く。

「ここから離脱します!二人とも機銃パーツを上空に向けておいてください!」

 

 敵航空機の編隊が迫る中、神通たちは一気に速力を上げてようやく移動を再開した。

 

 

--

 

 自らを囮にし、敵が一斉雷撃をしやすいタイミングを作る。目論見が合えばきっとするはず。そしてこちらはそのタイミングを逃さない。

 鳥海は速力をやや緩め、鎮守府Aの艦隊に背を向けたまま彼女らの行動を待つ。うまく翻弄しておいたから、彼女らの意識はほぼ確実に自分らに向いている。鳥海はそう踏んでいた。

「今です。霧島さん、お願いします。」

「……了解よ。」

 

 数発の一撃でうまく行けば全滅できる。鳥海の望むところは那珂だけが生き残り他は全滅が理想だが、演習試合ベースの距離設定であっても、長距離砲撃はなかなか細かい調整が難しい。那珂含め全滅してしまってもそれはそれでアリかと鳥海は判断した。

 

 そして放たれた戦艦霧島の全砲門斉射。その直前の一斉雷撃。全ては期待通りのタイミング。

 しかし結果は、駆逐艦村雨以外は轟沈の報告なし。想定と異なるがそれは些細な問題でしかない。戦艦の砲撃を食らって(耐久度的に)無傷でいられるわけがない。

 そして自身らに迫る雷撃は、軌道がほぼ読めた段階で真横に針路を変え、全速力でギリギリでやり過ごした。数発のうち2発ほど海面から飛び出して対艦ミサイルのように迫ってきたが、そのうち一発は屈んだ姿勢のため容易にかわし、もう一発は秋月の機転のきいた機銃による弾幕により、届くギリギリで爆破処理した。ただ、狙いの妙な鋭さは誰のものか、なんとなく察するものがあった。

 

 それだけでも、一人だけが異様に強いあるいは将来期待しうる強さの可能性を秘めていることが読み取れる。

 あの少女の可能性をもっと引き出したい。そして戦いたい。

 

 鳥海の標的は、完全に那珂に絞られていた。そのためには僚艦が邪魔だという判断の思考に至った。

 

 

--

 

 神通達が移動し始めた後、那珂達は大きく反時計回りで進んで近づいた。相手はもちろん鳥海達だ。しかしそのまま接近するつもりはない。

「時雨ちゃん、あたしの右後ろに隠れて、魚雷を一発発射して。」

「あ、はい。でもすぐバレるんじゃ?」

「なるべく最初から深く潜るようにしてね。あたしは今からおおげさに砲撃して気を引いておくから。」

「わかりました! 狙いは?」

「駆逐艦のうちどちらかでいいよ。」

 

 那珂は時雨に指示すると、弧を描く移動を速力を緩めずドリフトするように激しい波しぶきを立てて中断し、方向を急転換させて左腕の主砲パーツから砲撃した。狙いは鳥海たちの移動を一旦緩めることだ。相手の力量や経験値を想像するに効果があるとは思えないがとにかくすることにした。

 

ドゥ!ドドゥ!ドゥ!

 

「今ですね!」

ボシュ……ザブン

 時雨は那珂がわざと立てた波しぶきに隠れるようにして移動を多めにとってから魚雷を発射した。魚雷へのインプットは、浮上と直進をエネルギーの燃焼を最小限に抑えて行い、互いの距離の中間まで来たら燃焼を強くしてスピードアップ。標的が進む方向へと一気に向かわせるのだ。

 

 直後那珂の砲撃が鳥海たちの間近に届いた。

バッシャーーン!!

 

ドドゥ!ドゥ!

 

ベチャ!ベチャ!

 

 

「うあっちゃ~~やっぱあっさり相殺しちゃうかぁ~。なんかそんな気がしてたんだよね~~。でももう一発!」

 那珂が放ったペイント弾のうち、2発ほど以外はすべて鳥海の砲撃で相殺されてしまった。その間、鳥海たちは速力を緩めなかった。那珂の思惑による行動は通用しそうにない。それでも時雨の魚雷が当たるかどうかを見届けないといけないため、左腕のすべての主砲パーツでもう一巡砲撃する。しかし今度はわざとらしくないよう、ややマジ狙いだ。

 つまり、全てのペイント弾は鳥海に集中して向かっていった。

 

「小賢しい!! それで私の動きを止められると思うのなら甘いです!」

 そう口にしたものの那珂の砲撃の数に対し自身の主砲の連射数で対応しきれず、数発相殺したが残り数発は姿勢を動かしてかわした。そうして視線を下に向けた時、鳥海は気づいた。

 

「はっ! き、緊急回避!!」

 最終的に鳥海は那珂の作戦にハマった。時雨に打たせた魚雷は狙い通りに敵に近づいていた。真ん中にいた駆逐艦秋月の足元を捉え、海上に飛び出した直後に爆発した。

 

ズガアアアァァン!!

 

「きゃあーー!!」

 間近で爆発に巻き込まれた秋月は訓練用の魚雷の爆発のシミュレーションどおりの衝撃で吹っ飛び、海面を何回も横転して海面に複数の波紋を作った。

「秋月!」「姉さん!」

 列から外れた秋月を復帰させるべく鳥海たちは針路を転換して秋月に駆け寄る。その時、鳥海たちは神通らの針路上に入ってしまった。

 そのことに気づいた神通たちも、この機を逃す手はない。

 

「二人とも、梯形陣に!一斉に撃ちます!」

「はい!」「(コクリ)」

 

 神通は針路を左に5度ほど緩やかに変え、続く二人が自分の真後ろでなくなったところで速力を自身が問題なく砲撃可能なギリギリまで落としてから砲撃開始した。

 

ズドォ!

ドドゥ!ドドドゥ!

 

「応戦!涼月も頼みます!」鳥海は撃ちながら素早く口にする。

「はい!」

ズドドォ!ドドゥドゥ!

 

 

ベチャベチャ!ベチャ!

 

ピチャ!

 

「っ……雑魚風情が、私に被弾させるなんていい度胸してますね……。」

 神通たちの放ったペイント弾はほとんどが鳥海によって相殺されたが、そのうちの一発が鳥海をかすめた。すると鳥海は眼鏡の奥の目を鋭く細めて神通たちを睨みつける。

 梯形陣と流れによってすでに鳥海たちから離れつつあった神通たちは背後を見せないように速力を高めて反時計回りに大きく転換し、再び針路に鳥海たちを納める移動をし始めた。

 そして鳥海らが神通に気を取られたスキに那珂たちもまた、移動を再開しゆっくりと近づいていく。

 

 

--

 

 神通に応戦している間に秋月が大勢を立て直した。

「すみません。もう大丈夫です。」と秋月。

「なら動きましょう。一旦那珂さんを目指します。私が思い切り目くらましするので、油断したスキにあの駆逐艦の少女の方を至近距離の雷撃で倒して下さい。あちらの小賢しい3人は無視です。」

「「はい!」」

 

 秋月・涼月の返事を確認するやいなや鳥海は速力を通常より3~4段階上げることを指示して動き出した。

「遅れないように!」

 

ズザバアアアアァァーーーー

 

「おぉ、近づいてくる……ってはやっ!! ヤバイ、曲がるよ時雨ちゃん!」

「はい!」

 

 鳥海たちが近づいてくることに那珂はすぐ把握したが、その速力に焦りを隠せない。那珂は敵を左舷に見つつも距離を取るべく10度だけ右に針路をずらす。そんな動きはまったく妨害にも回避にもなんにもならないとわかるほど、鳥海たちは猛スピードで迫る。

 

「てーー!」

 那珂が叫んだ。

 

ドドゥ!ドゥ!ドドゥ!

 

 那珂と時雨は左腕あるいは左手に持った主砲パーツで左舷の方角に向けて砲撃した。

 

ドゥ!ドドゥ!ドドゥ!

ドゥ!ドゥ!

 

 那珂が向かう方向に進路を変えた鳥海達は速力を緩めず、そして那珂たちの砲撃に臆さず、応戦しながら猛スピードで移動した。例によって那珂たちの砲撃の大半は相殺されてしまった。

 残り数発が鳥海に当たる。しかし鳥海はまったく慌てる様子を見せない。

 

「よしヒット。ってなんで当たってるのに平然と来るのーー!?普通びっくりするか何かで動き止めるでしょ~~~!」

「那珂さん追いつかれます!!」

 

 那珂が愚痴り、時雨が状況を冷静に口にする。時雨の指摘したとおり鳥海はまさに目と鼻の先に迫っていた。その時、那珂はとっさに時雨に指示した。

「雷撃用意。ただしギリギリまで動作をしないで。」

「カウンターですね?」

「そーそー。ただし狙うのは足元じゃないよ。あの人たちの体に直接向けちゃってね。あたしはエネルギー噴出のための水しぶき起こすからそれに向けてね。」

 那珂が早口で言うと時雨はもはや声に出さず頷くのみで承諾を示した。時雨は、那珂が自分に通常の雷撃をさせるつもりがないことを察した。

 

 

そして、両艦隊がぶつかる。

 

バッシャーーン!

バッシャアアアァーン!!

 

 那珂は時雨の雷撃を支援するためにわざと海面に機銃掃射して複数の水柱を立たせ。

 鳥海は秋月・涼月の雷撃を支援するためにわざと副砲で連続砲撃して複数の水柱を立たせ。

 それぞれの旗艦は駆逐艦に指示した。

 

「今だよ!」「はい!」

「今ですよ!」「「はい!」」

 

 

「「えっ!?」」

 那珂と鳥海が互いに顔を見合わせつつも本当にぶつからぬようその身を捩り飛び退いて強引に針路を変えたその時、その後ろに続くそれぞれの艦隊の駆逐艦は指示通り雷撃の操作をした。

 

 鎮守府Aの時雨が発射した魚雷は、那珂が起こした海水の水柱に直撃し、その直後青白い光を噴出して勢い良く宙を直進していった。対して神奈川第一の秋月と涼月が通常用途通り海中に放った魚雷は鳥海の起こした海水の壁により敵に気づかれずに海面ギリギリの深さを高速で泳いで直進した。

 そして……

 

 

シュー……ズガアアアアァン!!

「うあっ!!」

 

ヒュンッ……ズガッ!ズガアアアァン!!

「え!? きゃあ!!」「きゃーー!!」

 

【挿絵表示】

 

 

 海中を進む2本の魚雷が時雨の足元で爆発し、宙を進む2本の魚雷否対艦ミサイルが秋月と涼月の腰回りの艤装に直撃して爆発を起こした。3人の駆逐艦はその衝撃でそれぞれ後ろに吹き飛ばされる。そしてその衝撃の余波の爆風で那珂と鳥海も煽られバランスを崩しかけるが、僅かに蛇行しながらもなんとか体勢を立て直した。

 

 その驚き様を比較すると、度合いは鳥海のほうが大きかった。

「な……飛んできたのって魚雷!? そんな使い方するなんて……!」

「時雨ちゃぁーん!だいじょーぶー!?」

 那珂は敵への驚きというよりも、時雨の被弾に対して驚きそして心配していた。

 後方に数mふっ飛ばされた時雨は何度もでんぐり返しする最中那珂の声に意識を取り戻した。しゃがんだ姿勢で両足で踏ん張り片手で海面を触り長い航跡を作ってスピードを殺してようやく立ち上がって返事をした。

「は、はい! 多分轟沈はしていないかと!」

「一旦離れよう! そっち行くよ!」

 那珂は機銃パーツを取り付けた腕を背中に回し、暗に警戒しながら敵たる鳥海達に振り向かず速力を上げてその場から離脱した。

 

 

--

 

 一方の鳥海は、被弾して同じく後方にふっ飛ばされていた秋月・涼月両名に駆け寄るべく後退していた。

「二人とも、大丈夫ですか!?」

「つぅ……なんなんですかぁ今の!?」と秋月。

「いったぁーい……何が飛んできたのかよくわかりませんでしたよ……。」

 涼月も耐えきれぬ痛みを表情と口に表しつつ疑念の言葉を発する。二人の駆逐艦をなだめつつ鳥海は想像した分析結果を口にした。

「あれは……魚雷でしょう。どうやったのかわかりませんが、艦娘の魚雷をあのように使うなんて普通は考えらません。しかもそれをやったのが那珂さんではなく、駆逐艦の娘ということは……あちらの教育体制を甘く見積もっていました。彼女らを追い詰めるとどうやら手強くなりそうですね。非常に面白いです。」

 鳥海の様子をじっと見つめる秋月と涼月。

 

「いいでしょう。こちらももはやなりふりかまっていられません。……霧島さん、応答願います。」

 後方の霧島に鳥海は通信した。すると霧島はすぐに返事をした。

「はい。早く次の指示を頂戴。」

「お待たせして申し訳ございません。次は神通、不知火、五月雨を狙ってください。飛鷹も同様にその三人を。集中して徹底的に早期に潰してください。隼鷹は支援艦隊を攻撃して邪魔してください。途中の行動に関しては問いません。」

「了解よ。それじゃあ那珂さんたちは?」

「彼女は私の獲物ですから。」

「はいはい。あなたの最後の戦いを綺麗に飾れるように支援してみせるから、安心して立ち回りなさいな。」

「感謝します。」

 

 通信を終えると鳥海は二人の駆逐艦に向かって指示した。

「二人ともまだ動ける耐久度ですよね?」

「「はい。」」

「いいでしょう。標的は引き続き那珂、時雨の両名です。」

 

 鳥海は遠く離れた場所から飛鷹・隼鷹の航空機が放たれたのを確認すると、隊列を立て直して発進した。

 

 


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