同調率99%の少女 - 鎮守府Aの物語   作:lumis

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 川内とは別行動を始めた那珂。神奈川第一鎮守府の艦娘達とともに体験入隊組よりも早く館山湾に足を浸け、観艦式の練習を始める。本番直前に加わるという世間的には非常識な形になる那珂を彼女らは比較的暖かく迎え入れる。


観艦式の練習1

 川内たちが体験入隊の本メニューを始めた頃、那珂は自衛隊堤防近くの施設の前に数人の艦娘とともに集まった。一同は同じジープに乗ってきたため、車内で簡単に自己紹介しあった。

 神奈川第一の艦娘は、次のメンツだった。

 

先導艦、戦艦霧島

供奉艦、重巡洋艦足柄、妙高、那智、羽黒

第一列、戦艦陸奥、榛名

第二列、空母赤城、加賀

第三列、軽巡洋艦夕張、駆逐艦太刀風、峯風

 

 先導艦を担当する戦艦霧島を名乗るのは、キリッとした目つきで戦艦金剛型の制服である巫女装束のような衣服を身につけている、32歳の女性だった。つまり今回の観艦式の全体の指揮を務めるリーダーである。

 厳しそうな見た目通りのキビキビした口調で気丈そうな、しかし相手に会話の主導権を適切に振る話運びが上手で明るい女性だ。

 他の艦娘とも那珂は一通り話して自己紹介している。

 いずれの人物も話してみると意外と協調性のありそうな雰囲気を讃える人物ばかりであった。

 会話をしていて那珂はある共通点らしきものに気がついた。全員お互いが互いに親しげに接しあっている。以前天龍が、艦娘同士はあまり仲良くしない、と話していたのを思い出した。おそらくそのような関係の中で、艦娘の観艦式をする人物は、性格の明暗や協調性の有無も(お隣の鎮守府では)重視されて選抜されるということなのだろうか?

 このような中に自分が加わったことは、悪い気はしないし隣の鎮守府たる神奈川第一の艦娘とも仲良くやれそう、那珂はそう見方を改めた。

 

 川内たちが自衛隊堤防を使う遥か前、那珂たちは自衛隊堤防に集まっていた。神奈川第一より12人、鎮守府Aより那珂一人の計13人がそれぞれの艤装を身につけ、先導艦霧島の前に雑な並びで立っていた。

 今この場に海自の隊員は、案内役以外にはいない。観艦式の練習と作業は完全に艦娘たち、鎮守府もとい深海棲艦対策局側の責任と担当のもと行われるからだ。

 

「それじゃあみんな、これまではうちの領海内でやってたけど、今日は初めて本番と同じ海域でやるわよ。準備はいい?」

「「はい!!」」

 すでに何回も練習しているメンツのためか、霧島の掛け声に那珂以外の艦娘たちは軽快な返事をする。この場では完全にアウェイな那珂はさすがに軽い調子を出せずにまごついていた。

 那珂の様子に気づいた霧島は手をパンパンと打ち鳴らして注目を集め、再び口を開いた。

 

「みんなちょっと聞いてくれる? 今回は千葉第二鎮守府より、特別に二名参加してもらうことになりました。那珂さん、ちょっとこっちに来てくれる?」

「あ、は~い。」

 

 那珂は霧島から手招きを受けて霧島の隣に行き、霧島から目配せを受けて自己紹介をした。

「え~っと改めて。千葉第二鎮守府から参加させていただくことになりました、軽巡洋艦那珂です。あともう一人、駆逐艦五月雨がいるんですけど、彼女は秘書艦の仕事が残っていまして、少々遅れる予定です。本番ギリギリの参加になってしまいでご迷惑をおかけしますが、あたしたち二人をどうかよろしくお願い致します!」

 那珂は大きな拍手で迎え入れられ、気分は普段の70~80%の調子を取り戻しつつあった。ニンマリした笑みで艦娘たちに視線を左右に送る那珂に、霧島は優しく言い聞かせるように言った。

「那珂さんたちには第四列を任せたいの。つまり最後尾よ。やることは普段艦娘の私達がすることの組み合わせだから簡単よ。内容としては艦隊運動から砲撃、雷撃、機銃掃射、こちらの空母艦娘の二人は艦載機の発艦・編隊飛行・着艦、そして艦娘同士の一騎打ちの模擬戦。私達自身、全員揃って実際に海上で練習したのはつい5日程前からなの。那珂さん達は練習初めての参加ですので申し訳ないのだけれど、まずは見ててもらえるかしら。私たちの動きを真似てくれればいいから。私たちとは練度が違いすぎると思うけれど、それくらいは出来るわよね?」

 

 最後の言い方に那珂は何か引っかかるものを感じた。しかし特段気にするものでもあるまいと当り障りのない程度に返事をすることにした。

「わかりました。えっとぉ、さすがにいきなり加わるのもつらいですし。」

「えぇ。あ、そうそう。もし私たちの動きとメニューについてこられなそうだったら、フリーパートで何か考えてあげるわ。後は皆あなたに合わせるから。ここにいるみんなはそれくらいの器量は持ち合わせているから、安心してくれていいわよ。」

 

 那珂はまた引っかかるものを感じた。基本優しく真面目な人なのだろうが、なんとなく言葉の意味合いの表面に近い部分に高飛車か横柄さを感じる。

 もしかしてかなり下に見られている?

 しかし仕方ない事情がある。本来何度も練習しておかなければならない行事に、直前で加わるのだ。相手のペースと和を崩しかねない大事だということは理解しているつもりだ。

 だが先導艦たる者として、きっと提督同士の連絡を多少なりとも聞いていて分かって事情を把握してくれているだろうと思いたい。だがしかし言い方が気に入らない。優しくて穏やかそうな口調なのに何か気に入らない。

 ともあれ初めて作業をともにする他鎮守府の人間である。その力量もわからないのはお互い様だから無意識の態度に表れてしまうのは仕方ないことなのかもしれない。

 そう那珂は考えて憤りを抑える。

 

 兎にも角にも主体は神奈川第一鎮守府のメンバーである。観艦式の動きとメニューは全体打ち合わせ後に受け取った資料で多少なりとも理解はしたが、実物を見てみないことには始まらない。

 那珂は霧島率いる11人の後に従うように海上を指定のポイントまで進み、そこから彼女らの動きを観察することにした。

 

 

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 目の前で繰り返される、艦隊運動。

 那珂は目の前で戦艦艦娘の極大の砲撃、空母艦娘たちの驚くべき艦載機の操作の様を目に焼き付けた。いずれも自分のところの鎮守府ではまだ見られないものなのでさすがの那珂としても驚き以外の感情は出なかった。

 しばらくすると、第一列から第三列までが間隔を整えて整列し始めた。そして供奉艦の三人が持っていた主砲パーツを上空に掲げた。

 何をするのかとゴクリと唾を飲み込みながら那珂が見ていると、三人の艦娘はその砲身が向かう先へ砲撃を始めた。

 

パーン!パパーン!パーン!

 

 それは普通の砲撃ではなく、空砲による祝砲だった。

 祝砲を撃ち終わると、供奉艦の三人は先導艦の方を向く。そして先導艦が手を挙げて合図をして前進し始める。それに供奉艦・第一列~第三列までが続いて一つの巨大な単縦陣になって進み、逐次回頭する。

 そのまま先導艦が進んで途中で停止した。それは那珂の数m目前だ。どうやら観艦式のプログラムメニューが全部終わった、そう那珂は気づいた。

 

 

--

 

「これが観艦式のプログラムです。どうかしら?」

「お見事でした!すごい!普通に軍事パレードみたいじゃないですかぁ。ここまで完成されてると、あたしたちが入るタイミングは……どうなんでしょ?」

「あなた方には、第三列と一緒にしてほしいの。動きとしては、第四列として常に第三列の後ろにいてもらうわ。」

 那珂は今まで見た彼女らの動きを頭の中で録画ビデオを再生するように反芻し、顔を挙げて先導艦の霧島に向かって言った。

 

「動きとタイミングは大体わかりました。もしよかったらあたしを加えて一連の流れをもう一度やりませんか?申し訳ないんですけど、ゆっくりやってもらえると助かります。」

「一度だけで大丈夫? もう2~3回は見せてあげるわよ?」

 霧島の心配げな問いかけに那珂はゆっくりと頭を振って返事をした。

「大丈夫です。記憶力はいいほうなので。あと身体動かしたいってのもありますけどね。」

 

 普段の茶目っ気半額で言葉を返して小さな仕草をした。抑えたのは初対面の関係であるからがゆえの遠慮と配慮だった。しかし自身の本来の面を垣間見せる事も忘れない。

 ただ那珂の仕草はアッサリと無視された。

「そう。それじゃあ一度加わってもらって、一通り試します。何か意見や問題があればその都度言ってもらって構わないわ。」

 

 応対に若干の不満を感じつつも表向きは笑顔を絶やさない。那珂はサクッと許可を霧島からもらい、早速加わることになった。

 

 

--

 

 那珂は霧島から全体の流れを口頭で再説明を受け、従属する第三列の艦娘三人と話をして意識合わせをした。

 話をしてみると、第三列を成す三人は艦娘になって6ヶ月程度の経験であり、2年も艦娘として神奈川第一鎮守府に在籍している霧島の指示で、最後尾の列を任されたという。艦娘としての練度や経験期間には隔たりがあるのが、そのまま第一列~第三列に表れていることを知った。

 那珂自身もまだ数ヶ月なので、神奈川第一の運用に従うなら、最後尾の第四列というのはなるほど妥当だと納得した。

 

 先導艦から第四列まで、再びプログラムメニューが行われた。今この時は那珂一人だったので、那珂は第三列が単横陣になると、その真ん中の艦娘の真後ろに立ってプログラムをこなした。

 いずれも那珂ができると自信を得て踏んだとおり、そつなくこなすことができた。

 ただ唯一の不満は、第三列の三人が、思いのほか砲撃や艦隊運動のタイミングが下手だということだった。霧島から指示されて付き従って真似しようにも、どうにも未熟さが気になって仕方がない。彼女らに合わせると、こちらまであらゆる感覚が狂ってしまいそうだ。

 那珂はそのため、全体練習の三度目からは、当の艦娘らを真似するのではなく、あくまでも大枠だけに意識を向け進行することにした。その際、第三列の不手際が目についた時は那珂がタイミングやわざとらしく合図を促して差分を調整した。

 その切替が功を奏したのか、何度目かの練習が終わった後、那珂は先導艦の霧島から賞賛の言葉をもらえた。

「うん。OKよ。那珂さん、あなた想像以上に動けるわね。たった一日、しかも1~2時間程度で私たちに完璧に合わせられるなんて、期待したいわ。それに引き換え、第三列の娘たちと来たら……。」

 霧島は相手の出来が自身の想定と異なっていたのか、あからさまに驚きを隠せないでいる。その様は大げさだ。そしてそれは同じ鎮守府のメンバーへの180度向きが異なる評価としても表された。

 

「ホラあなたたち! 聞けば経験月数は那珂さんはあなた方と大して変わらないそうよ。別の鎮守府の同じ程度の練度の娘に負けていいの?もっとキビキビ動きなさい!」

「そ、そんなこと言ったって~、私たちにこんな大役やっぱ無理ですって~。もっと経験日数や練度が上の先輩に声かけてくださればいいのに~。」

 そう愚痴り始めたのは軽巡艦娘の夕張だ。駆逐艦たちもウンウンと頷いている。

「あなた達には艦娘として外で活動する自覚が足りないの。ねぇ聞いてくださる、那珂さん。この人たちったら、鎮守府内での練習ではずーっとヘマしてたのよ。タイミングも中々合わなかったし。今日この場で初めて及第点をやっとあげられるってところね。」

 

 霧島から散々な評価を明かされて悄気げる夕張たち。那珂はよその鎮守府のことなので普段の調子で振る舞うこと出来ずに苦笑いを浮かべるだけに留めた。

 

 

--

 

「それじゃあ次にフリーパートをするんだけど、ここでは私たち一人ひとりの基本の動きを逐一紹介したり、艦種ごとに特徴ある運動を見せて締めるつもりよ。ただそれだけじゃ面白くないから……何か案があれば提案してくれないかしら?」

 そう言って霧島が説明しだしたフリーパートでは、当初予定していたと思われる内容が紹介された。堅実にこなそうとする意思が見え隠れしているその内容に那珂はウンウンと頷いて感心げに聞いていたが、正直な心裏では、真面目過ぎてつまらないと思っていた。

 なので提案とくれば色々やりたいこともある。よその鎮守府の艦娘がどの程度動けるのかわからない。もしかしたら自分が常識はずれと思っていることはよそにとって普通のことなのかもしれない。単に自意識過剰になっている、慢心してるだけなのかもしれない。

 試しに提案に交えて伝えて、その反応を見てみる。

「あの~、それじゃあやりたいことがあるんです。」

 那珂は意を決してやりたいことを伝えた。

 

「は? え……と、本当にできるの?」

 霧島を始めとして他の艦娘たちも開いた口が塞がらないを体現して驚きを隠せないでいる。那珂は気にせず説明を続け、手本を見せる意思表示した。

「ちょっと見ててもらえますか?」

 

 そう言って那珂はその場から方向転換して霧島らとは逆方向に助走し始めた。姿勢を低くし、数十m疾走した後、前に踏み出していた右足で思い切り海面を蹴りそれと同時に上半身を空に向かって伸ばし、足の艤装の主機から発せられた衝撃波を利用してジャンプした。

 それは普通のジャンプとは桁違いの、人間はもちろんのこと並の艦娘でも出せぬ大ジャンプだった。

 

 霧島たちは那珂が飛び上がった上空、そして降り立つ場所を頭と首を動かし視線で必死に追いかけた。彼女らが同時に見たのは、最高度で機銃を撃ちだし、海面がまるで雨に打たれたかのように激しく波打つ光景だった。

 

バッシャーン!!

 

 那珂は空中で一回転して着水点を前方へと調整しつつ降下し、海面に着水するギリギリで姿勢を本来あるべき向きに戻した。海面に足が着いた瞬間に衝撃で沈まないよう、瞬時に海面を蹴って前傾姿勢を取った。勢いは海面を水平に距離の長いスキップをする力に変換されて那珂をスムーズに水上航行させた。

 那珂はそのスピードを蛇行してゆっくりと落として霧島たちのいるポイントまで戻り、そして口を開いた。

「こういった動きを取り入れて、いくつか演技してみようかなって思ってるんです。もしみなさんが良ければ、あたしの演技をサポートしてもらえないかなって。」

 霧島たちは那珂が口にした空中からの攻撃を実際に目の当たりにして、開いた口が塞がらないでいる。那珂は平然としながらも、実際には相手のこれからの反応を伺っていた。

 やがて最初に沈黙を破ったのは、同じ軽巡と駆逐艦である第三列の艦娘たちだった。

 

「す、すっごーーーーい!!なにそれ!?何でそんなにジャンプできるんですか!!?」

 

 駆逐艦たちは軽巡の背に隠れながらひそひそとしているが、そのセリフは驚愕と感心がこもっている内容だった。しかし彼女らと違い、驚きながらも冷静に返してきたのは霧島だ。

「艦娘が大ジャンプするって初めて見たわ。あなたもともとバスケかバレーボールか高飛びでもやったの? 私たち……ではそんなことできる人はおそらくいないわ。悪いけど、あまり突飛な演技はNGよ。いい?」

 言葉と態度の端々に感心がみられるが、冷静を取り繕い、現実的に対処しようとしている。那珂は霧島のその反応に引っかかるものがあったが、ここで引き下がるわけにはいかない。

 自分自身の可能性を大々的に知らしめる目的があるし、何より提督が自分にかけてくれた思いをフイにするわけはいかないのだ。何を言われようが、自分のやりたいことは貫きたいのだ。

 

「えーっとですね、そんなに変わったをしたいわけじゃないんです。艦娘って身体能力が高まるじゃないですか。それなのに海上をただ進むだけしかその能力を使わないのはもったいないって思うんです。だからあたしはいろいろ試すし、それをうちの鎮守府のみんなにはわかってもらおうとしてるつもりなんです。その可能性をこの場で発表して、当日見に来てくれる市民や観光客に知ってもらいたいっていうか。」

 那珂の言葉に霧島は片手のひらで口から顎を覆い、何かを思案するような仕草を取って沈黙した。そして眉間に寄せていたしわをゆっくりと解きほぐしてようやく口を開いた。

「き、気持ちはわかる。けれど、少なくともうちではあなたのような異常ともいえる突飛な行動は教えないしさせないわ。そんなこと、規律を乱しかねないもの……。」

「そこをなんとか。やらせていただけませんか!?」

 那珂は深く頭を下げる。視界が海面だけになる。聞こえてくる霧島たちのかすかな呼吸に、意識を集中させる。

 しばらく沈黙が続いた後、霧島が沈黙を破った。

 

「やはりダメ。あなたがすごいことをしたいのはわかったわ。だけど、あなたの水準に追いつくよううちの艦娘たちに配慮するのは私には無理。どうか、私達でもできる内容をお願い。」

 霧島の懇願は当然のものだった。那珂は気持ちはわかったが、自身の思いもあったので納得できない。そこに、ふと別のアイデアが浮かんだ。那珂は返す言葉にそれを混ぜた。

 

「うー。まぁ。確かにそうですけれど……。あ、だ、だったら、演習試合はどうですか!?」

「「演習試合?」」

 そう反芻したのは霧島だけでなく、神奈川第一の妙高ら供奉艦担当の艦娘らもだった。

「そうです。誰かを深海棲艦に見立てて、残りの人数で戦うんです。ま~普通の演習試合という感じで。」

 那珂の提案の突然の転換に霧島は怪訝な顔をして問いかける。

「いきなり考えを変えるなんてどういうつもり?あなた、さっき自分の可能性を発表したいっていう事を言ったように感じたのだけれど、演習試合とそれとどう繋がるの?」

 那珂は考えをまとめるため、深く呼吸をした後答えた。

「演習試合ではあたしが深海棲艦役になります。それで、皆さんであたしに襲い掛かってきてください。そうすれば、あたしは思う存分振る舞えるし、皆さんは艦娘としての本分を果たすことができます。あたしたち艦娘の事を知ってもらうのに、観艦式で演習試合って、適してると思うんです。」

 那珂の説明に納得するものがあった霧島たちは黙って相槌を打つ。しかし無謀とも取れるその考えに100%の納得を示せない。

「あなたのやりたいこととその意味はわかったわ。それなら私達も通常の演習と同じく行動することができます。けれど……さすがにあなた一人というのは無謀というか、自信ありすぎじゃないかしら?」

「ま~、全部が全部できるとはさすがにあたしも思えないです。けれど、どこまでできるか試してみたいんです。皆さんはそんなあたしを妨害して撃退していただければいいわけですし。これならいかがです?」

 

 那珂の再びの頼み事に霧島たちは顔を見合わせる。供奉艦の4人と話し合った霧島は一つの返事を那珂に告げた。

「わかったわ。とりあえずあなたの戦闘能力を見せてもらえるかしら。相手はそうね……羽黒。お願いね。」

 霧島に指示された羽黒は肩をあげて思い切りビクッと身体を引きつらせその驚き具合を示す。そして乗り気しなさそうな勢いの返事をしつつも那珂の前に移動した。


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