Fate/zeroニンジャもの   作:ふにゃ子

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その8

 

 ライダー主従を中心として引き起こされたフユキ・スラムでの事件の一部始終を、遥か遠方より観察する者がいた。

 ドクロめいた仮面で素顔を隠し、黒布を肌に巻き付けたかのような装束を身に纏った、亡霊めいて気配の薄い謎の影である。

 彼はスラムに存在する雑居ビルの一つ、炎に包まれたビルよりさらに遠くに位置するものの一室に存在した。

 

 この影は気配を絶ち、あの場の誰にも己の存在を悟られぬままアンブッシュしていたのだ!

 なんたるステルス能力!

 この影の正体はアサシン!

 サーヴァントとして召喚された、英霊の位にある恐るべき暗殺者である!

 

 高性能サイバネ義眼めいて実際恐ろしく高いサーヴァント視力により、夜闇の奥に広がるバイオスモトリの屠殺場めいた空間を入念に観察するアサシン。

 アサシンの鍛えぬかれた暗殺者としての視点は、常人のそれとは着眼点が実際異なる。

 その観察力によってアサシンは、スラムの住人達では恐らくそこに存在することにも気付けておらぬであろう、物陰に潜むコートの男を捕捉できていた。タツジン!

 

 

「……あれが、主殿より最優先捜索対象と指示されたニンジャか?

 事前に頂いた服装の情報とは合致するが……この角度からでは顔が見えんな」

 

 

 ううむ、と唸るアサシン。

 突然ビルの屋上で起きた爆発を調べるため、偶然すぐ近くに居たこのアサシンがスラムまで移動してきたところ、現場から飛び離れる影を見掛けたのだ。

 

 辛うじて捉えられたその服装は宵闇色のロングコート!

 彼の召喚者より、発見した場合マスターであろうとなかろうと速やかに報告せよと命ぜられていた存在である!

 この偶然の遭遇には、さしものアサシンも実際驚いた。

 

 その動きを追ってみたところ、何故か現場近くに舞い戻り、物陰に隠れて何かを観察しているような動きをとっている。

 これは一体どういうことか。

 

 主によれば、目標のニンジャは魔術師を殺す者だという。

 ならばライダーの召喚者を狙っているのかと思えば、どうもそうは見えない。

 この辺りはアサシンの暗殺者としてのフィーリングめいた感覚にすぎないが、纏っているアトモスフィアが違う。

 

 

「……考えていても埒が明かんか、一先ず主殿に────」

 

 

 思索を切り上げ、遠方に待機している主へとニンジャ発見の報告を行うべく念話を繋ごうと集中するアサシン。

 その時である!

 

 

「イヤーッ!」

 

 

 ビル内の暗闇より飛来する、ダークめいた投げナイフ型スリケン!

 空気を切り裂く鋭い飛来音に気付いたアサシンは咄嗟に三連続側転回避!

 空を切ったスリケンはコンクリートの地面へと虚しく突き刺さる!

 

 驚愕するアサシン!

 なんたることか!

 アンブッシュ中のアサシンに逆アンブッシュを仕掛けてくる者がいるとは!

 

 

「アンブッシュだと! 何者だ!?」

 

 

 誰何の声に応えるように、ビル内の暗闇から滲み出るように出現する黒衣の影。

 

 ドクロめいた白いメンポ!

 全身を包む黒布を巻き付けたかのような忍装束!

 そして同色のマフラー!

 

 己の服装に似た出で立ちに動揺するアサシン。

 この影は一体何者か!?

 

 影はアサシンよりタタミ三枚ぶんほどの距離で停止すると、悠然と頭を下げオジギを行った。

 

 

「ドーモ、ハサン・サッバーハ=サン、キャスターです」

 

「な……ッ!?」

 

 

 絶句するアサシン。

 

 聖杯戦争におけるアサシンの枠は、常にある名を持つ英霊だけが召喚される。

 それを知っていれば彼の真名を推測することは実際容易だ。

 だがこのキャスターは、推理めいたものとは異なる確信めいた意志を込めてアサシンの真名を呼んでいる!

 だが、アサシンを真に驚愕せしめたのはそこではない。

 

 このレイギサホーは! このアイサツは!

 

 

「……ドーモ、ハジメマシテ、アサシンです」

 

 

 いささかぎこちないオジギ! アイサツの口上!

 

 アサシンの霊体ニューロン内に蘇ったのは、遥か昔、生前に習い覚えたアサシン教団のインストラクション。

 幼き日の暗殺者に、実際厳しく過酷な、しかし実り多い修行をつけてくれたマスターアサシンの言葉。

 

 戦闘開始前のアンブッシュは一度まで。

 アンブッシュが外れたならばアイサツを欠かしてはならない。

 そして、アイサツされたならアイサツし返すべし!

 

 それが古き時代より伝えられるイクサにおけるレイギサホーであると、かつてアサシンは学んだ。

 ならば、この眼前の敵もまた、自分と同じインストラクションを受けた者なのだろうか?

 

 

「貴様、一体……何者だ? まさか、貴様も生前からアサシンだった者なのか?」

 

 

 やや猫背になり、即座に相手に飛びかかることも、逆に飛び退ることもできるよう身構えつつ誰何するアサシン。

 その声には困惑の色が強い。

 無理からぬことだ、アサシンを生業としていた者がアサシン以外のクラスで呼ばれるなど冗談めいている。

 

 

「身のこなしは良いな、オヌシはいつのハサンだね? ああ、答えなくてもいい……カラテで聞かせてもらおう」

 

 

 だが、キャスターはアサシンの疑問には応えようとしない。

 ダークめいた投げナイフ型スリケンが、キャスターの指の間に奇術めいて出現した!

 

 

「イヤーッ!」

 

「イヤーッ!」

 

 

 弾ける火花! 激しい金属音!

 キャスターのスリケンとアサシンの投擲したダークが空中衝突して破砕しあった!

 

 間髪を入れず次のスリケンを構えるキャスター! ハヤイ!

 しかしアサシンも遅れを取らぬ速度でダークを取り出す!

 

 

「イヤーッ!」

 

「イヤーッ!」

 

「イヤーッ!」

 

「イヤーッ!」

 

 

 暗闇の室内にセンコめいた光が立ち続けに奔る!

 火花を散らして砕き合うスリケンとダーク!

 その速度は互角!

 なんたることか!

 アサシンと同等の体術を持つキャスターが存在するというのか!

 

 数えきれぬ交錯の果てに、ついに均衡が崩れる!

 

 

「イヤーッ!」

 

 

 正面衝突し砕けるスリケンとダーク!

 その火花が収まらぬうちに、キャスターが次のスリケンを構えず突撃を敢行!

 スリケンが切れたか、とアサシンは仮面の下で勝利を確信してニヤリと笑みを浮かべた。

 アサシン側の残弾は未だ残っており、そしてキャスターがアサシンを格闘戦の間合いに捉えるよりもアサシンがダークを投擲するほうが実際早い!

 仮に防げたとしても、無理な回避で崩れた体勢では追撃までは防げぬ! 必勝の状況!

 

 

「イヤーッ!」

 

 

 狙いすましたダークの軌跡は、吸い込まれるようにキャスターの喉めがけて飛ぶ!

 キャスターは無反応のまま突撃! もはや回避も防御も間に合わぬ!

 

 だがしかし!

 

 

「イヤーッ!」

 

 

 轟くキャスターのカラテシャウト!

 硬質な金属音! 弾かれ地面に落ちるダーク!

 これは一体!?

 

 

「な、防御魔じゅ────グワーッ!」

 

 

 回避も防御動作も行わずに最短距離で間合いを詰めたキャスターのダッシュエルボーが、アサシンの鳩尾に突き刺さった!

 アサシンは体をくの字に折って悶絶!

 

 アサシンのダークを弾き返したのは防御魔術ではない!

 その正体はムテキ・アティチュード!

 ダークが着弾する刹那の瞬間、カラテによってキャスターの肉体は鋼鉄と化したのだ!

 

 

「カラテがミジュクだな、アサシン=サン。イヤーッ!」

 

「グワーッ!」

 

 

 情け容赦ないカラテ・ハイキック! アサシンの顎が蹴り上げられる!

 

 

「イヤーッ!」

 

「グワーッ!」

 

 

 蹴り上げられた衝撃で浮き上がったアサシンの胴体めがけ、キャスターのカラテパンチが突き込まれた!

 壁まで吹き飛び激突するアサシン!

 

 それを追うように疾風めいて駆けたキャスターが床を蹴り、飛び上がった!

 

 

「イィィヤァァァァ────ッ!」

 

 

 ダッシュによる加速の乗った決断的速度のジャンピングカラテキック!

 オメーン・ライダーめいた必殺の飛び蹴りがウケミも取れぬアサシンの胸部を貫いた!

 

 

「アバーッ!」 

 

 

 断末魔の悲鳴をあげ大地へと倒れ伏すアサシン。

 爆発四散などはせず、その肉体は霊核を粉砕されたことで光の粒めいたものへと還ってゆく。

 死の瞬間を見届けようとしてか、じっとその姿を見つめるキャスター。

 

 薄れゆく意識の中で、アサシンは────勝利を確信した。

 

 キャスターの背後より音もなく迫るドクロ仮面の影。

 爆発を調べるためにこの場へ向かっていた……そちらもまた、アサシンである!

 

 なんたることか!

 アサシンは、己の宝具の能力によってその肉体を一〇〇体にまで分割して行動することが可能なのだ!

 これを見破ることはブッダですら実際難しいであろう!

 なんと恐るべきブンシン・ジツか!

 

 キャスターの背後に近づいたもう一人のアサシンが、その手に持ったダークを振り上げ────

 

 

「イヤーッ!」

 

「グワーッ!?」

 

 

 吹き飛んだのは────アサシン! これは一体!?

 

 消えゆくアサシンは最期に見た!

 振り向きもせずに放たれた、キャスターの荒馬めいたバックキックが背後のアサシンの顔面を捉えた瞬間を!

 だが、どうして背後からの奇襲がわかったというのか!

 アサシンの気配遮断を見破ることなど実際不可能!

 その目で実体を見ずに如何にして捉えることができたのか!

 

 

「な……な、ぜ……私の、アンブッシュ、が」

 

 

 仮面もろとも顔面を粉砕されたもう一人のアサシンが、血泡の沸き立つごぼごぼとした音で濁った声で問い掛ける。

 その問いに言葉ではなく、何かを指さし応えるキャスター。

 

 その指の先にあったのは……壁に突き刺さった一本のスリケン!

 そのスリケンの表面は、艶消しの為されたアサシンのダークとは異なり金属質の輝きを帯びている!

 

 まさか、その針先めいた僅かな鏡面への反射で背後の奇襲に気付いたというのか!?

 

 

「そん、な……そんな事で……!」

 

 

 蹴り倒され、瀕死の状態となった背後のアサシンへと歩み寄り、その頭部へと足を乗せるキャスター。

 ためらいなく踏み潰しにかかりながら口を開いた。

 

 

「フーリンカザンだよ、アサシン=サン」

 

 

 己の頭蓋が砕けてゆく鈍い破砕音が、バックキックを受けたアサシンの耳へ届いた。

 その瞬間、アサシンに脳裏をよぎったのは生前の修行時代の記憶。

 幼き頃、未熟だったニュービーアサシンの己にインストラクションを授けてくれたマスターアサシンは、確かこう言ってはいなかったか。

 

 

『よいか■■■■=サン。アサシンたるもの己の力だけを頼りにしてはならぬ。

 その場にある全てを己の武器とせよ。自然物を、人工物を、人間を、天候を。

 味方だけではなく、敵でさえも例外ではない。

 森羅万象とコネクトした姿こそ真のアサシンであると心得よ。これ即ち────』

 

「フー……リン……カザン……! やはりお前は、ア、アバーッ!」

 

 

 鈍い破砕音が響き、アサシンの視界が暗闇に閉ざされる。

 そして一瞬の後、アサシンの意識は完全に途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────!!」

 

 

 アサシンからの立て続けのリンクの断絶に、綺礼は表情を険しくした。

 二体のアサシンが最期を迎える直前、送られてきた念話によるコネクションは大まかにまとめると二つ。

 

 

『ニンジャ発見』

 

『キャスターと交戦開始』

 

 

 この二つであった。

 

 一つ目の念話を受けた直後、綺礼は当然詳細を聞き出す為にこちらからの念話を送ろうとした。

 だが返答はなく、感じられるのは戦闘に一本のカタナめいて全神経を集中する気配のみ。

 

 そして一体目のアサシンが死ぬ前に、二体目のアサシンが現場入り。

 一体目のアサシンを仕留め油断したのか、背中を向けているニンジャめいた姿のキャスターへと不意打ちを仕掛ける旨の報告を受け、次の瞬間にそちらとのリンクも途切れた。

 

 

「どういう事だ……メイガススレイヤー……では、ないのか?」

 

 

 報告を受けた当初、綺礼はニンジャの正体がメイガススレイヤーであると疑っていなかった。

 だが、二体目のアサシンより続いて送られてきた情報と照らし合わせると"ニンジャ=キャスター"という公式が成り立ってしまう。

 では、メイガススレイヤーはどこだ。

 まさか、フユキに来ていないとでも言うのか。

 そもそもキャスターのマスターは、どこの誰なのだ。

 七騎すべてが出揃っている事だけは間違いないのだが。

 

 アーチャーは綺礼の師、遠坂時臣。

 アサシンはこの自分、言峰綺礼。

 

 アサシンによる監視によって、残りもある程度は判っている。

 ケイネス・エルメロイ・アーチボルトがランサーを、その弟子ウェイバー・ベルベットがライダーを召喚したことは実際間違いない。

 さすがに日常会話の中での呼称がフェイクであったりはするまい。

 生粋の魔術師が、そこまで悪辣な策士めいた振る舞いができるとも思いにくい。

 

 そして、未だ交戦報告が皆無であり、会話からクラス名を類推もできていないアインツベルンのサーヴァント。

 見目麗しい少女であるとアサシンの報告にはあったが、これだけではどうにも実際手掛かり不足。追跡調査重点しなければならぬ。

 

 残る枠はセイバー、バーサーカー、そして発見報告のあがっているニンジャめいた姿のキャスター。

 綺礼がアサシンに伝えたニンジャの風体は宵闇色のロングコートにガンメタルに輝くメンポを身につけた男というもの。体格も実際良い。

 アサシンがニンジャめいた姿であると報告してきた事からして、キャスターは暗色系のロングコートめいた服装の、男の英霊なのだろう。

 

 容姿の違いからして、アインツベルンの少女サーヴァントはキャスターではあるまい。

 女であったならアサシンがそうとコネクションしてくるはずだ。

 

 

 何にせよニンジャ捜索はまた振り出しに戻ってしまった。

 ノーレンを押すような話だ、まるで手応えがない。

 沢山撃てば実際当たりやすいと故人は言うが、一〇〇体ものアサシンの目ですら不足だというのか。

 

 ばきり、と握っていた羽ペンが断末魔めいた音を立ててへし折れ、その音が苛立つ綺礼の意識を僅かに冷静にさせた。

 知らず知らずのうちに力を込めてしまっていたようだ、と反省重点する綺礼。

 

 

「まだ全てのサーヴァントのマスターが判明したわけでは無い以上、望みはある……。

 それに何より、ニンジャであるメイガススレイヤーがマスターになるとも限らん」

 

 

 そう、メイガススレイヤーは魔術師を殺す者。

 聖杯など見栄えが良いだけのカーボンタライ程度にしか思っていない可能性はある。

 外道の魔術儀式の果てにそれが完成すると聞けば、恐らくあのスリケン・スティックで聖杯を躊躇いなく打ち砕こうとするのだろう。

 綺礼の脳内ニューロンには、その光景が現実めいたリアリティで思い浮かべられた。

 

 何はともあれ、キャスターについての報告を時臣師に行わなければならない。

 メイガススレイヤーとの再会の為に上がった舞台の一員として、果たすべき役割を果たすのが重点だ。

 

 綺礼は通信機に向けて口を開いた。

 

 念の為に明記するが、これは昨今マッポからモータルまで広く使われているIRC通信機ではない。

 魔術的な機構で動く通信機だ。

 綺礼自身は非効率だと思わないでもないが、スリケンとカラテだけで重火器でフル装備した部隊を相手取るニンジャもいるのだし、必要な役割を果たせるならそれで良いのだろう。

 

 

「夜分遅くに失礼致します。師よ、ご報告が」

 

『────綺礼か。どうした?』

 

 

 僅かな沈黙のあと、通信機の向こうより落ち着き払った時臣師の声が届いた。

 

 

「フユキ・スラムでライダーがバイオスモトリの大集団相手に乱闘を行ない、逃走。

 場所を同じくして、騒動の調査の為に送り込んだアサシンの分身二体がキャスターと交戦。アサシンは敗北し、二体とも消滅致しました」

 

『────待て、どういう状況だ? アサシンにキャスターを襲撃させたのか、綺礼』

 

「いえ。ライダー監視の為、気配遮断を行った上で潜伏していたアサシンを、逆にキャスターが奇襲してきた模様です」

 

『────此度のキャスターは潜伏中のアサシンを容易に捕捉しうるほどの神代の魔術師、というわけか。

 侮り難いものだ。

 それで、ライダーとキャスターの陣営が共闘しているという事かね』

 

「いえ、接触した痕跡は見つかりませんでした。

 キャスターは出現する時まで全く足取りを掴めておりませんでしたので、あるいは潜伏場所が偶然その場だった可能性も」

 

『────ふむ……』

 

 

 沈黙する通信機。綺礼も同時に沈黙。グレイブヤードめいた静寂に包まれる室内。

 ややあって、再び時臣師の声が届いた。

 

 

『────ライダー陣営とランサー陣営ならば、あるいはマスター同士の師弟関係によって共闘もありうるかもしれんが、キャスターのマスターは未だ何者か不明だ。

 接触もなかったとすれば共闘しているわけではないのかもしれん。

 実際ただの偶然かもしれん。だが、推測で判断するのは危険だ。

 詮索好きの犬は棒で殴られるとのコトワザもあるが、実際タイガー・クエスト・ダンジョンな。

 綺礼、危険は承知だがアサシンをキャスター陣営の捜索に振り向けてくれるか』

 

「畏まりました、師よ」

 

 

 通信機が完全に沈黙し、先ほど以上のジゴクめいた静寂に満たされる室内。

 

 薄暗い室内で、綺礼の目だけがぎらぎらと輝いていた。

 何事にも強い興味や熱意を抱けぬはずの男が、自ら望んで一人の男を追い求め、邂逅を願ってマグマめいた闘志を燃やしているのだ。

 

 

「メイガススレイヤー……。

 お前は必ずこのフユキに来ているはずだ。仮に今は居なくとも、必ず来るはずだ。

 この機会、決して逃さんぞ」

 

 

 緞帳めいた厚い雲に覆われた漆黒の空を窓から見上げて呟く綺礼。

 別段、空に何かがあるわけではない。絶えず姿を変える黒雲が、ふとメイガススレイヤーの忍装束めいて見えただけのことだ。

 ある意味では既に、綺礼は長年知りたがっていた人の心を知る為の手掛かりを自力で掴みかけているのかもしれない。

 ごく単純な、執着心めいたものではあるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 フユキ中心市街地、フユキ自然公園。

 カーボンプレートの屋根に覆われ人工太陽灯による光によって満たされた、フユキに住まうカチグミ憩いの空間である。

 そこでは汚染物質を除去された水が川めいて流され、外界では生きられぬオーガニック植物が生育する。

 バイオ生物の侵入や汚染物質による環境への悪影響などが起こらぬよう、厳しく管理された自然公園である。

 

 その一角に存在するオープンテラスめいたベンチとチャブテーブルの置かれた空間で、三つの人影がチャを傾けつつ談笑していた。

 

 一人は仕立てのいい赤系のスーツを着た紳士。

 一人は赤い紳士の隣で上品に笑う淑女。

 

 そして────

 

 

(これは夢だ)

 

 

 仲睦まじそうに微笑みあう二人を見ながら、どこか遠いところにある心の中で呟く、フード付きパーカー姿の男。

 これは夢だ。夢のはずだ。

 現実であるわけがない。

 自分はあのジゴクめいた蟲蔵でサーヴァントを召喚していたはずなのだ。

 

 なのに、どうしてこんな平和な公園で、葵=サンと、そして時臣=サンと談笑なんてしているのだ。

 どれほど現実めいていてもこれは夢だと確信しつつ、それでもどこかで否定しきれない自分がいる。

 

 幸せそうに笑う葵=サン。

 幸せそうに笑う時臣=サン。

 

 

「お父様ー! お母様ー!」

 

「ま、待ってよーお姉ちゃーん」

 

 

 聞こえてきたのは子供の声。二つの声。

 一方は活発めいた声音で、もう一つはやや内向的めいたおずおずとした声。 

 

 視界に入ったのは、こちらへ向かって────いや、両親の元へと駆けてくる二人の少女の姿。

 前を走るツインテールの少女は葵=サンの上の娘、遠坂凛。

 そして後ろをついてきている、姉より短い髪をした、よくにた面差しの娘は────

 

 

(間桐桜、いや……"遠坂"桜だ)

 

 

 雁夜の視界の中で、駆けてきた凛ちゃんを淑女らしくないとたしなめる時臣=サン。

 走り疲れてつんのめった桜ちゃんを優しく抱き止め、自分の隣のベンチに座らせる葵=サン。

 

 それを、少し離れてただ見ているだけの自分。

 あの中に割ってはいろうとは思わない。

 あれでいいのだ。

 家族が仲睦まじく笑い合って、幸せそうなのが一番だ。

 

 

(……いつの間にか、俺は聖杯戦争に勝っていたんだろうか?)

 

 

 これは夢だとわかっているはずなのに、そんな願望めいた考えが顔を覗かせる。

 何も覚えていないが、知らないうちに自分は聖杯戦争に勝っていて、桜ちゃんの体を治し、葵=サンと時臣=サンの元に送り返して────

 

 バカげている、と下唇を噛み締めた。

 そんな都合のいい事があるわけないだろう。

 これは夢だ。間桐雁夜のニューロンが見せている幻覚なのだ。

 

 

『0111000000010100011そうだ。これは夢だ10010010110101101000』

 

(……!?)

 

 

 突然背後から聞きなれぬ第三者の声が響いた。何やら異様に聞き取りにくい。ノイズめいた音が混ざった声だ。

 驚き振り向く雁夜。

 

 そこに立っていたのは、輪郭すら判然としない正体不明の影。

 布めいた質感の衣服をまとい覆面めいたものを被っているような気がするが、錯覚かもしれない。

 

 

『0100000111001011これは夢だ。オヌシのローカルコトダマ空間に投影された、オヌシの願望めいた世界の夢0110000100010011』

 

(……そりゃあそうだろうさ。わかってるよ、そんなことは)

 

 

 溜息めいて息を吐く雁夜。

 あの影は自分のサーヴァントだろうか? 何か姿が違うような気もするが。

 一年間の修行の過程で間桐臓硯から叩きこまれた基礎知識の中に、サーヴァントとマスターが夢で繋がることがあると聞いた記憶がうっすらある。

 だとすれば、都合のいい夢に浸っている自分を叩き起こしに、わざわざ夢の中までやってきたのだろうか。

 バーサーカーの癖におせっかいすぎるだろう。

 

 

(いいじゃないか。夢くらい自由に見させてくれ)

 

 

 そう吐き捨てるように呟いて、ふたたび遠坂家へと向き直る。

 

 楽しそうに団欒する一家。

 遠坂家に連なる者ならば常に余裕を持って優雅たれなどと凛ちゃんに講釈をたれている時臣=サン。

 父のお説教を聞き、真面目な表情で頷く凛ちゃん。

 そんな二人を隣で微笑ましそうに見ている葵=サン。

 

 そうだ、俺が望んでいたのは、こういう光景で────

 

 

(……ん?)

 

 

 時臣=サン。

 凛ちゃん。

 そして葵=サン。

 

 

(桜ちゃんは……?)

 

 

 周囲を見渡す雁夜。

 人工風にそよぐ草むら。

 時間経過とともに光源の種類が切り替えられ、夕暮れめいた光を再現する人工太陽灯。

 ガーデンキーパーによって念入りに手入れされた姿を誇らしげに天に向けて伸ばす雑木林。

 

 そして桜ちゃんの手を引いて、雑木林の奥の暗がりへ消えていく、草色のハンテン・コート姿の老人!

 

 

(────!! 時臣=サン! 桜ちゃんが!)

 

 

 慌てて時臣=サンに叫ぶ雁夜。

 個人的に思うところがないでもない男ではあるが、桜ちゃんの父親はこの男しかいない。

 魔術師として一流であるらしいあいつなら、桜ちゃんを助けることなんてチャメシ・インシデントのはずだ。

 

 しかし、時臣は動かない。

 

 

(どうしたんだ時臣=サン! 桜ちゃんが攫われそうになってるんだぞ!

 葵=サン! 凛ちゃんも!)

 

 

 必死で呼びかける雁夜に、遠坂家の三人は応えない。

 どうして動かないのだ。

 家族がいなくなってもいいというのか。

 外道の魔術師に娘を供物めいて渡して平気だと言うのか!

 そんな事は実際オカシイはずだ!

 

 

『01100100オヌシが行けばよかろう。戦って奪い返せばよかろう01100100』

 

 

 遠坂家の幻影に向けて叫ぶ雁夜の背中に、謎の影の声がかけられた。

 だが、それが出来れば困りはしない。

 

 

(無茶言うな! 俺はただのサラリマンで、戦うことなんて出来やしない!)

 

 

 そうだ、こいつは俺のサーヴァントではないか。

 お前が桜ちゃんを助けに行ってくれと叫びかけ、先に口を開いた謎の影に機先を制される。

 

 

『001101戦う力ならあるではないか001110』

 

(何を言って────)

 

『100101自分の手を見てみろ100110』

 

 

 謎の影に言われ、自分の手を見下ろす。

 何の変哲もない、キーボードダコのあるサラリマンの手……いや!?

 

 いつの間にか雁夜の腕はブレーサーに覆われているではないか!

 だが、このテッコめいたブレーサーが戦う力だとでも言うつもりなのか?

 スモトリがナックルダスターを身に着けても魔術師に勝つことなど出来はしないというのに、サラリマンにどうせよと言うのだ。

 

 抗議しようと謎の影に向き直る雁夜の視界に飛び込んできたのは……

 

 

(俺……だ!?)

 

 

 影の輪郭がはっきりとし、その中身があらわになった。

 雁夜も愛用する、くたびれきった対重金属酸性雨加工の施されたフード付きパーカー姿の男。

 ズンビーめいて顔の左半分は硬直し、かつて黒かった髪は老人めいて白く染まりきった、間桐雁夜そのものの顔!

 

 だがしかし、その顔面の鼻先から下は金属質のメンポに覆われて表情は判然としない!

 

 

『0110俺がオヌシの一部になる。オヌシは俺を使って戦え0010』

 

(お前は、お前は一体────)

 

 

 歩み寄ってきた雁夜もどきが、雁夜の前で爆発四散!

 いや! 爆砕したかと見えたその肉体は、無数の極彩色の蝶へと変じているではないか!

 なんたる怪異か!

 

 そのまま雁夜の全身に取り付き、その体に溶け込むように消えてゆく蝶の群れ。

 その光景は実際ホラーめいている!

 

 意識の混濁。

 雁夜のニューロン内をセンコめいた火花が満たし、猛烈な目眩に視界が揺れる。

 

 

『インストラクションだ。カラテを練れ、血液の流れを意識するんだ』

 

(カラテ……)

 

 

 腕に力が宿る。ニンジャ筋力が満ちる。

 脚に力が戻る。ニンジャ脚力が溢れる。

 

 

『武器はある。体に任せてやってみろ、ローカルコトダマ空間の中なら実際感覚が掴みやすかろう』

 

(武器……)

 

 

 武器とはなんだ。そうだ、スリケンだ。

 顔を上げた雁夜は、ニンジャ視力で雑木林の奥深くへと消えようとしている魔術師の背中を見据え────

 

 

(イヤーッ!)

 

 

 その手からスリケンを投擲!

 

 

「グワーッ!」

 

 

 音速を越えて飛翔したスリケンは魔術師の脳天を背後から貫いた! ムゴイ!

 

 魔術師の手が桜ちゃんから離れ、その小さな体が解放される。

 やった、と雁夜の心に充実感が満ちる。これで桜ちゃんは助かった。これで桜ちゃんは家族のところへ帰れるのだと。

 

 

『そら、次だ』

 

(……次?)

 

『そう、次だ。後ろに居るだろう』

 

 

 振り向いた雁夜の前に立っていたのは────遠坂時臣!

 隠し切れない邪悪さを滲ませる何者かの声が雁夜のニューロンに響く。

 

 

『桜ちゃんを外道の魔術師に売り渡した外道だ。さあ、殺せ』

 

(バカな! 時臣=サンは桜ちゃんの────)

 

『殺さなければ桜ちゃんは決して魔術師の世界から解放されないぞ? あの子の笑顔の為に戦うんだろう? ほら、殺せ』

 

(出来る訳がない! 葵=サンも凛ちゃんも桜ちゃんも、どれほど悲しむか!)

 

『オヌシはニンジャになったんだ。ニンジャがモータルをどうしようと自由だ』

 

(ふざけたことを言うな! 何がニンジャだ、ザッケンナコラー!)

 

『俺の力はオヌシ自身の力だ。無力なモータルに何を遠慮することがある!』

 

(な……何をわかったような口を! 遠慮なんてしちゃいない!)

 

『遠坂時臣を殺せ! 惚れた女を奪い取れ! 俺の力で、ニンジャの力で!』

 

 

 ニンジャの声とともに、雁夜のローカルコトダマ空間内に仲睦まじい家族の姿が映る。

 遠坂葵、遠坂凛、遠坂桜と……!?

 おお、見よ! その中央にいるのは遠坂時臣ではなく、間桐雁夜だ!

 三人の笑顔を向けられ微笑む雁夜の姿だ!

 

 ぐらりと雁夜の視界が揺らぐ。その光景に耐え難い魅力を感じてしまった為に!

 ナムサン! なんたる冒涜的な誘惑か!

 

 

(ヤメロー! ヤメロー!)

 

 

 ニューロン内で激しく言い争う雁夜とニンジャの声。

 そうこうしている内に、遠坂時臣の姿が消えた。

 それだけではない。

 周囲のすべてが0と1に分解され、見る見るうちにローカルコトダマ空間が消滅してゆく。世界の崩壊が始まった。

 

 雁夜の意識が揺らぎ、霞めいてぼやける。

 蝶めいた姿で雁夜と溶け合ったニンジャの意識と、雁夜の意識が混ざり合う。

 ネギトロめいて二つのソウルが融け合っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 間桐邸のキッチンでゆるりゆるりと蠢く老人。

 さすがにそろそろ起きるであろう雁夜の為にと、バリキドリンクや滋養強壮に効く蟲の入ったオーゾニを用意している臓硯である。

 刻印虫やその他の蟲でボロクズめいて痛めつけられた雁夜の消化器系は満身創痍だ。

 スシは喉を通らず、オーゾニですら微妙。確実に摂取できるのは液体めいた形質の食べ物だけであった。

 

 誰か他の者にやらせればよいと思うかもしれないが、実のところ今の間桐邸でまともに動けるのは臓硯だけなのだ。

 鶴野は自室に閉じこもり、サケやショーチューを呷りシアワセドリンクをオーバードーズしてトリップ中。ものの役にも立たない。

 桜は言わずもがな。

 そして一番まともに動ける雁夜は、フートン部屋で昏睡状態というわけで、見事に人手がない。

 

 というわけで、似合わぬオサン・ドン作業を臓硯がこなしていた、その時である!

 

 

 キャバァーン!

 

 

「何じゃ!?」

 

 

 突如響いたガラスめいた破砕音に驚き振り向く。

 音の発生源は雁夜がフートンに入っている部屋の方角だ! これは一体!?

 

 

「グワーッ! グワーッ!」

 

「む、雁夜か?」

 

 

 続いて聞こえてきた悲鳴は雁夜のもの。

 すわ他マスターの襲撃か、と警戒心を漲らせる臓硯であったが、間桐邸の魔術的警報は一切反応していない。

 そもそも雁夜の傍にはバーサーカーが控えていたのだ。

 狂戦士が仮に戦闘に突入したのなら、あんな控えめな騒音で済むはずもない。

 

 億に一つ、自分の居所を探り当てたあのニンジャめいた謎の敵が臓硯の首を獲りに来た可能性も考えたが、どうやらそうではなさそうだ。

 防衛策は既に整えてあり保険もかけてあるが、だからといってニンジャを敵にするのは御免被りたい。

 

 雁夜にあてがわれたフートン部屋からは、絶え間なく悲鳴が聞こえてくる。実際耳障りな。

 

 

「この苦しみぶりは……察するに刻印虫が活動しすぎておるということか。バーサーカーめに魔力を無駄食いされておるようじゃな」

 

 

 やれやれ、と溜息をつく臓硯。

 急造の魔術師である雁夜は、己の肉体を刻印虫に内から喰われて魔力を生産している。

 それは実際ジゴクめいた苦しみだ。並のモータルなら実際発狂ものな。

 

 自分勝手に魔術師の道に戻ってきた愚か者が苦しむ姿は臓硯にとって楽しいアトラクションめいたものだが、さすがに聖杯戦争で一戦すらせずに悶死ではオヒガンにも行けまい。

 それくらいの哀れみを持つ人間性は臓硯にもあった。

 仕方ない、と雁夜の体内の刻印虫の活動を弱めようとするが。

 

 

「む……?」

 

 

 訝しげに眉をひそめる臓硯。

 活発に動いているはずの刻印虫を停止させようとしたところ、何の反応もなかったのだ。

 刻印虫が死滅しているのではなく、ただ活動していないだけ。

 動いていない刻印虫に"動くな"と指令を出しても、そのままジゾーめいて動かないのは当たり前という話であった。

 

 では、あの苦しみぶりは一体?

 刻印虫によるものではなく、他の蟲によるものでもない。

 ジゴクめいた悪夢にでもうなされているのだろうか。

 これほど悶絶しているとなると命の危険もあるやもしれぬ。

 

 手間をかけさせる馬鹿者め、などと呟きつつフートン部屋へと様子見に向かう臓硯。

 

 

「全く、訳のわからん阿呆めが。

 寝ておるなら寝ておるで大人しくしておればよいものを。

 雁夜よ、喚いておらんでさっさと起き、グワーッ!?」

 

 

 カーボンフスマを引き開けた臓硯をイナヅマめいた速度で突き飛ばす影!

 

 

 キャバァーン!

 

 

 再びガラスめいた破砕音が響く!

 

 

「ヌウーッ、一体何事じゃ」

 

 

 かぶりを振りつつ起き上がった臓硯が見たのは、フートン脇においてあったウォーターピッチャーの破片が散らばった光景。

 振り向いて見ると、こちらはぶち破られたガラス窓の姿。

 一度目の音はこれかと腑に落ちた臓硯であったが、今度は二度目の音が気にかかる。

 一体何が窓を突き破ったのであろうか。

 

 とりあえず室内に居るはずの雁夜の様子は、と見回してみたが、フートン部屋はもぬけの殻。

 

 

「もしや、今の影が雁夜か? しかし……あやつの身に何があった?」

 

 

 体の半分はズンビーめいて硬直し、歩くことすらやっとの半死人の動きではない。

 バーサーカーがやったにしては、それらしい魔力の残滓もない。

 つまりは純粋なカラテによる動きだ。

 だが、カラテは一朝一夕には成らず。

 貧弱サラリマンであった雁夜にあれほどのカラテがあろうはずもない。

 

 一体雁夜の身に何が起こったというのか。

 

 臓硯の大型ストレージUNIXめいた膨大な魔術的知識を以てしても、雁夜の身に起きた事態を見通すことはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深夜のミヤマタウンに建ち並ぶ住宅の屋根を、マジックモンキーめいて跳ね駆ける灰色の影。

 対重金属酸性雨加工がなされた、くたびれたフード付きパーカー。

 その顔の左半分はズンビーめいて硬直し、死人めいた顔色。

 

 その彼が、ジゴクめいた形相で駆ける。そして翔ける。

 

 内なるニンジャソウルと混ざり合い混濁する精神で、無意識に求めた者のもとへと疾風めいて駆ける。

 

 

「葵=サン、葵=サンに……一目でいい……」

 

 

 ローカルコトダマ空間での邪悪なるニンジャソウルの誘惑に屈したわけでは、決してない。

 だが、聖杯戦争への参加を決めた時と同じように、遠坂時臣のもとに桜を送り返せばすべてが解決するのだという気もしなくなっていた。

 あの夢のように、四人揃った家族は再び三人と一人になってしまうのではないか。

 そんな疑念がヘドロめいて雁夜の心に張り付き、どうしても消えてくれない。

 

 だから、会いたいのだ。葵=サンに。

 会ってどうするのか、どうしたいのかもわからぬまま、間桐雁夜はニンジャと化した五体で走る。

 背後に影めいて従う霊体化したバーサーカーを引き連れ、間桐雁夜は深夜のフユキを駆け続け、闇の中へと消えた。

 

 

 

 

 

 


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