Fate/zeroニンジャもの   作:ふにゃ子

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その3

 

 

 時計塔の一室。

 講師用にしつらえられたその研究室で、二つの影が向かい合っていた。

 一方は椅子にインテリめいたアトモスフィアを漂わせつつ腰掛け、もう一方は直立不動であった。

 

 椅子に腰掛け、何やら論文めいた文章が書き連ねられたレポート用紙をめくっているのは時計塔屈指のヤバイ級魔術師。

 生粋のドクゼツ・ジツとコキオロシ・ジツの使い手として名高いケイネス・エルメロイ・アーチボルト講師、その人である。

 

 その前で死刑執行を待つ囚人めいたアトモスフィアを漂わせつつ立つ青年。

 ラピスラズリめいた顔色の彼はその弟子、ウェイバー・ベルベットであった。

 

 不整脈でも起こしそうなほどの緊張に囚われ、指先ひとつすら満足に動かせぬ有様のウェイバーの前で、ゆっくりとレポートをめくるケイネス。

 そこに記された内容とは、ウェイバー渾身の作品であるとある論文だ。

 

 自室で教材を整理していたケイネスの元に鼻息荒く訪れて論文を差し出したものの、読み進められるに連れてケイネスの表情は険しくなる一方。

 比例するようにウェイバーの顔色も悪くなる一方であった。

 

 ウェイバーの眼前でケイネスがレポート最後の一枚を読み終え、それをデスクの上に置いた。

 僅かに疲れたように目元を指先で揉みほぐし、フウと溜息をつくロード・エルメロイ。

 

 その動作の一つ一つに、怯えたように身を震わせるウェイバー。

 今現在のケイネス先生の機嫌が悪いことを見抜くのはベイビーサブミッションめいた事だ。もちろんウェイバーでも気付けぬわけがない。

 

 自分の理論に、もちろん実際自信はあったが、これはどんな陰険な責め言葉を受けることになるか。

 ウェイバーは戦々恐々としていた。

 

 

「ウェイバー=サン」

 

「アッハイ」

 

「……うむ。なかなか面白い着眼点だ。

 伝統にとらわれない形での、より効率のいい魔術師育成理論。本人の資質に合わせたカリキュラムを与えることでその才能を引き出す。

 歴史ある魔術師の家系に連なる者であればあるほど認め難くはあるだろうが、実際一応話の筋は通っている」

 

 

 冷酷無情な罵倒が飛んでくるかと思いきや、まさかの賛辞である。

 

 

「ほ、本当ですかセンセイ!? ヤッター!」

 

 

 想像だにしなかったセンセイからの褒め言葉にウェイバー・ベルベットはバンザイして狂喜乱舞!

 だがしかし!

 

 

「だが、これは使い物にならん」

 

「アイエッ!?」

 

「理論だけが先行しており実データが伴っておらん。実際ヒュージヘッドな。

 発想の着眼点はよいが結論部分など推測に推測を重ねたルーフ・オン・ルーフ・ビルディングめいたものではないか」

 

「ア、アイエエエ!?

 ソンナー! さっきは褒めてくれたじゃないですかぁ!」

 

 

 がたりと椅子から立ち上がり、後ろ手に腕を組んだまま鼻がつきそうなほどにウェイバーへと顔を寄せ、威圧的アトモスフィアを強めるケイネス!

 コワイ! その眼光は見詰められた者の魂までも射抜くヤリめいた鋭さ!

 ウェイバー=サンの胃袋はもうボロボロだ!

 

 

「タワケ者!

 私が褒めたのは理論の着眼点までであって、そこから結論に至るまでの道筋ではない。

 それに参考としたデータの出典も書かれておらん! なんだこの円形棒形折れ線形の混在したカオスめいたグラフ図は!

 誤字も実際ヒドイ! レポート用紙三十七枚の論文で五十三箇所もだ! アプレンティス魔術師でなければセプクさせることも辞さぬ程にヒドイ!」

 

「アイエエ……、アイエエエエ!」

 

 

 と、眼前の弟子がバトー・ジツによる精神的ダメージにより打ちのめされた事に満足したのか、デーモン・オニめいて険しかった表情を緩め顔を離すケイネス。

 

 

「だがまあ、コウボウ・エラーズとも言うしケジメでセプクせよとまでは言わん。

 しかしパッション重点する前に積むべき基本を積んでからリトライせよ。私が今言うことはそれだけだ!」

 

 

 そう言い捨て、ケイネスはデスクから持ち上げたレポートの束をウェイバーの顔面に叩きつける!

 

 

「ア、アバーッ!」

 

 

 のたうち回るウェイバー! 飛び散るレポート吹雪!

 話すべきことは全て終わったとばかりに、そんな彼を無視してトライアングル・ジョーギなどの教材を小脇に抱え退室していくケイネス。

 彼のインストラクションを待っているアプレンティス魔術師が待っているのだ。

 

 

 たった一人となったウェイバーは、寒々しい部屋の空気の中でも一際鬱々としたアトモスフィアを纏いつつ、レポートを拾い集めていた。

 

 

「悔しいよぉ……悔しいよぉ……アイエエエ……」

 

 

 歯を食いしばり、堪えきれぬ嗚咽を漏らす。こぼれた涙が一粒、何の飾り気もない板張りのフロアーに滴った。

 確かに自分の論文はパッション重点すぎるファンタジーめいた部分もあっただろう。

 技術も知識も拙く未熟。彼の秘めたる資質はいまだディープシー・フィッシュめいていた。

 

 だが彼は、それを指摘されたから泣いているのではない。

 ケイネスに指摘されるまで己の子供とも言える作品の粗に気付けなかった、自分の未熟さに涙しているのだ。

 

 見返したい。

 自分を未熟者扱いするケイネス・エルメロイ・アーチボルトの顔をサプライズで染めてやりたい。

 一人前の魔術師であるというノボリを立て、ケイネス=センセイの鼻を明かしてやりたいと思った。

 

 だが、現実問題として差は歴然。

 十年修行しても埋まらぬであろうグレートキャニオンめいた開きがある以上、それを一足飛びにすることなど出来はしない。

 相手は時計塔屈指の魔術師、その名も高きロード・エルメロイなのだから。

 

 降霊術、召喚術、錬金術に通じるヤバイ級魔術師であり、研究者としても超一流。

 九代続いた名門アーチボルト家の出身であり血統的にも実際超エリート。

 今はヤモメだが、ソフィアリ学部長の令嬢との結婚も決まっている。実際リア充な。

 まさに八方隙無しのカチグミ魔術師であった。

 血筋で魔術師としての才能が決まるわけはないという想いをノボリとするウェイバーも、連綿と積み重ねられたアーチボルト家の歴史を否定することなどできはしない。

 決して婚約者のソラウ=サンが美人だったから羨ましいなどというわけではない。

 

 彼の弱点など、婚約者にまるで相手にされていないらしいワンサイド・ラバーだという事くらいのものだ。

 プレゼント攻勢で好感度アップに勤しんでいるらしいがヌカ・ペーストにフォークを刺すが如しだとか。

 とはいえそんな微笑ましいウィークポイントを突いてケイネス=センセイに対抗することは、実際虚無めいた虚しさを生むだけであろう。

 

 何かないか。

 ここはケイネス=センセイのマイルームなのだから、何か反撃のマテリアルとなるものがあるのではないか。

 さすがにデスクやナガモチの中を漁るのは憚られたウェイバーが冬眠前のグリズリーめいて室内を歩き回っていた、その時であった。

 

 コンコン、コココンとリズミカルなノック音が、ケイネス=センセイの部屋を外界と隔てる一枚オークの扉から鳴り響いた。

 思わぬ来客に取り乱すウェイバー。

 

 

「ア、アイエエ……どうしよう、センセイは出て行っちゃった後だし……」

 

「アーチボルト=センセイ、ロード・エルメロイ=センセイ。

 いらっしゃいませんか? ケイネス・エルメロイ・アーチボルト=センセイ」

 

 

 返事が無いことに業を煮やしたか、室外からの呼びかけが追加される。ノックもどんどん加速しヘビメタ・モクギョめいた早さだ。

 このまま無視するのは如何にも不義理である。素直に己の存在を告げ、ケイネス=センセイの不在を教えるべきであろう。

 

 内鍵はかかっていなかったため、ノブを回転させると扉はすぐに開いた。

 外に立っていたのは、ウェイバー自身とも面識のある時計塔に務める事務職員の一人だ。

 その両手には、グリーンの地にアイボリーのラインでアラベスク模様が描かれた布でラッピングされた、直方体の何かがあった。

 

 

「エート、すみません。今ケイネス=センセイは、そのう」

 

「ああ、あなたは確かお弟子さんの一人ですね! いるなら早く返事をしていただかないと!」

 

「ア、アッハイ」

 

 

 だが実際セッカチな性格らしい事務職員は、ウェイバーの言葉を途中で遮り話し始める。

 そのオバタリアンめいたゴリオシ・アトモスフィアに押され、ついつい受け身になってしまうウェイバー。実際ウエスト・ウィーキングな。

 

 

「ほら、お荷物です! ご実家からお荷物が届いておりますよ、ロード・エルメロイ=センセイ宛てのお荷物です!

 ロード・エルメロイ=センセイはどちらに?」

 

「実家から荷物……? アーチボルト家から?」

 

「そりゃあそうですとも! ロード・エルメロイ=センセイのご実家からです!」

 

 

 ケイネス・エルメロイ・アーチボルトの実家は確かに名家に相応しく、金銭的にも魔術的にも物持ちだ。

 だが田舎から上京してきたばかりのオノボリさんではあるまいし、今どき仕送りもないだろう。しかもセンセイはいい大人で、サラリーも高いカチグミなのだ。

 毎日ローストビーフ・スシを食べても使い切れないほどのサラリー! 実際うらやましい。

 学生のウェイバーなぞチリビーンズ・スシの代金にすら窮することもあるというのに。

 

 あり得るパターンとしては婚約者であるソラウ=サンが寒い季節だからと手編みのセーターを送ってきたとかだろうか?

 いやいや、好感度が実際アンダーグラウンドめいた低さらしいカノジョさんがそんな健気な事をするわけはあるまい。

 何より二人はまだ結婚前、アーチボルト家からの荷物という部分とムジュンするではないか。

 

 となると、送られてきた荷物とは一体何か?

 

 ここでウェイバーの脳裏にスパークめいた閃きが奔った!

 

 

「アッハイ、それじゃぼくが代理で受け取っておきますね!」

 

 

 荷物を受け取るウェイバー。ああ忙しい忙しいと呟きながら、荷物が山積みのカートを押して立ち去っていく事務職員。

 その後ろ姿を見送ったあと、ウェイバーは部屋から飛び出して自室へと駆け戻った。

 その胸にはケイネス宛ての荷物がサバオリめいた強さで抱き抱えられている。ヌスット!

 

 ウェイバー自身も驚くほどのイダテンめいた俊足で自室へと戻り、内側から鍵をかける。

 窓を閉じ、カーテンを降ろし、ついでにドアの前にデスクを移動させてバリケードまで拵える念の入れようであった。

 

 そこまで防備を固めた上で、ウェイバーはケイネス宛ての荷物へと向き直った。

 

 

「ひょっとすると、この荷物っていうのは……」

 

 

 胸の高なりを抑えつつフロシキを解く。中から現れたのは、厳重な魔術的封印の施されたカードボードボックスだ。

 世界中で荷物輸送に使われているそれは、ある意味では信仰めいた信用を集めていると言えなくもない。

 最上級パルプによって構成された堅牢な構造の外壁に、さらに魔術による強化までも加えられたその強度は、もはや鋼板に等しい。

 

 『ワレモノ・コワレモノ』『安全重点な』『天地いりません』べたべたと貼られた原色の注意書きシールが目に痛い。

 側面には謎めいたアルファベットが刻まれている。

 『EHIME』『MIKAN』どういう意味だろうか。ウェイバーの知識の中には存在しない、実際聞いたこともない単語だ。

 幸いな事に封印は外から簡単に解けるたぐいの物であったが、ひょっとすると封印の方向性を定めるルーンカタカナだったのかもしれぬとウェイバーは思った。

 

 一般的な魔術師は近代技術の恩恵を受けることを好かない。

 荷物を詰めて送るにもカードボードボックスよりも木箱やツヅラ、あるいはフロシキなどの伝統的マテリアルのものが実際多いと聞く。

 ケイネス=センセイもその例には漏れないはずだというのに、わざわざそのノボリを曲げてまで安全重点な素材に包まれて配達されてきたこの荷物の正体とは!

 

 開封されたカードボードボックスの中に収められていたのは、なにやらボロボロの薄汚い赤い布切れ。フロシキだろうか?

 だが、そのフロシキらしきものから漂うのは紛れもなく超一級の神秘の気配!

 

 

「やっぱりそうだ! これはケイネス=センセイが取り寄せた、聖杯戦争のサーヴァントを召喚するための触媒に違いない!」

 

 

 聖杯戦争。

 ケイネス=センセイが参加を決めているらしい、極東のとある島国で行われる極めて大規模な魔術儀式だという。

 詳しいことはあまり知らないが、聖遺物を触媒にサーヴァントと呼称される英霊を召喚して使役するとかなんとか。

 

 ウェイバーにとって重要なのは、それにロード・エルメロイが参加するということだ。

 

 

「これさえあれば、これさえ使えば、ぼくだってセンセイに負けないサーヴァントが呼べるかもしれない!

 それでセンセイに勝てば、ぼくを馬鹿にしていた奴らだって見返せる! センセイの鼻だって明かせる!

 そうすればセンセイや他のみんなにぼくの力を認めさせてやれる……!!」

 

 

 締め切られ、暗闇に閉ざされた部屋の中でウェイバーの瞳がぎらぎらと輝く。

 それは純粋な勝利への渇望によるものか、はたまた栄達を求める虚栄心によるものか。

 何にせよ、少年は宴の参加者となるための鍵を手に入れたのだ。

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、授業に出るべくゆったりとした歩調で時計塔の通路を進むケイネス=センセイは。

 

 

(ウェイバー=サンのタワケ者め……。

 あんな挑発的な論文を世に出そうものならどれほど反発を受けるか解っておらんのか。実際ウカツに過ぎる)

 

 

 歴史と伝統、それは魔術師にとっては何より重んじられる要素。

 先ほどのウェイバーの論文はそれに真っ向からケンカを売るような内容であった。

 無論、ケイネスもそれは同じ。

 だがケイネスはとある事情から世のショッギョ・ムッジョやワビ・サビというものをある程度は解していた。

 

 この世の全ての物事はサンズ・リバーめいて流れ続け、決して一つの形で留まることはない。

 それは魔術師の世界であっても同じ事。

 積み重ねられてきた歴史と伝統の上に新しい才能の持ち主がノボリを立て、新たな流れを作り続けてゆくのだ。

 ウェイバーの思想は些か革新的に過ぎるものではあったが、だからこその可能性を感じさせるものでもあった。

 

 だが、あの論文を世に出したならば、ウェイバーは恐らくその才能を開花させる前に潰されてしまうだろう。

 自分たちの歴史と伝統を真っ向から否定する無礼者と判断され、ムラハチにされ、最期は地方の支部へでもシマナガシか。

 

 それは実際惜しい。

 まずはシタヅミ・キャリアとして足場を固め、マケグミめいた扱いを受ける事がなくなるだけの実績を重ねてからでよいではないか。

 若者特有のパッション重点は決して悪いこととは思わないが、時と場合による。

 魔術師たるもの、己の感情一つ制御できずしてなんとするのか。

 

 

(まあ、あれだけセッキョー重点しておいたのだ。片付けをしている内に熱くなった頭も少しは冷えるだろう。

 後でじっくりと諭してやればよい。ミヤモト・マサシのコトワザにも鞭で叩いたら手当てしろとある。

 私がいつまでも面倒を見てやれるとは限らぬのだから、それまでにショセイ・ジツを身につけさせてやるのも講師の務めか)

 

 

 教室へと入室しながらも、ロード・エルメロイの心は遠くフユキの地へと飛ぶ。

 始まりは、恩師であるソフィアリ学部長からの勧めに過ぎなかった。ロード・エルメロイのキャリアの一つとして聖杯戦争参加という武勲を得てはどうかと。

 

 それは偶然めいた出会いであったが、ケイネスにとってはワタリ・カヌーめいた好運でもあった。

 降霊術、召喚術、錬金術に通じるベテラン魔術師であるケイネスは、実のところもう一つ、周囲よりゲテモノめいて見られる学問を専攻していた。

 

 それは、"ニンジャ学"。

 

 歴史の影に埋もれ消え、その実体は霧めいた謎に包まれ見えぬ神秘の存在。

 東方、その中でも極東の島国にそのルーツはあると語られる彼らを調べ、その正体を識ることを目的とした学問だ。

 そのレイギサホーや奥ゆかしい精神性というものは魔術師とは相容れず、しかしそれ故に興味深い。

 時計塔でも実際学ぶ者は少ない、ゲテモノ・スメル漂うイカモノ・ジャンルではあったが、ケイネスにとっては学べど探れど限りのないトレジャーボックスめいた存在だった。

 

 とはいえ講師としての職を得、時計塔の禄を食む身としては研究に全ての時間を費やすわけにもいかぬ。

 聖杯戦争への参加は、ニンジャ発生の地へと訪れその実体に触れるいい機会であると、ケイネスには運命めいて感じられた。

 

 聖杯戦争はイクサだ。

 命を賭けた、聖杯を求める者同士のマッポーめいた殺し合いだ。

 その過程では、恐らくあらゆる手段でライバルを抹殺しようとする悪魔めいた手練手管が駆使されることだろう。

 平安時代の剣豪ミヤモト・マサシが遺したコトワザにも、イクサ場にいる時は実際いつも危ないとある。

 決して遊び気分で挑むつもりはないし、魔術師同士の決闘だけに拘ろうとも思わない。

 己がどれほど正々堂々と挑む事をノボリとしても、相手がそれに応じるとは限らぬ。

 

 ニンジャのイクサに於いて、アンブッシュで死んだ者は戦う資格すらないサンシタと解されるという。

 魔術師同士の闘争でも、それは実際当てはまるだろう。

 

 万全の準備を整えて挑み、それでも尚生還できぬかもしれぬ死闘が自分を待っている。

 あるいはその生死を賭けたタイトロープめいた戦いを乗り越えた先にこそ、ニンジャの精神を理解できる道が拓けるのではないか。

 ケイネス・エルメロイ・アーチボルトがこれまで積み重ねてきた魔術とニンジャ学の真価が問われる場であると、彼は直感していた。

 

 だからこそ、そのイクサに出陣する前に弟子たちにひと通りのインストラクションを授けておかねばならぬ。

 心残りなく挑んでこそ、ビハインド・ウォーターめいた窮地でも勝利を掴むこともできるだろうからと。

 そのように考えつつ出席者たちを見渡すも、教室にウェイバーは未だ姿を見せておらぬ。

 先ほど見た彼の泣き顔を想起し、仕方のない奴だとケイネスは内心で苦笑した。後でオリエンタルスシ・バーにでも誘ってやるかなどと思いつつ、授業を開始するのであった。

 

 

 

 

 

 

 おお、ブッダよ。師の心弟子知らずとはこの事か。

 弟子は己の師に才能を見せて納得させたいという想いを抱き、師は死地へと赴く前に弟子に多くのインストラクションを遺す事を重点するとは。

 

 いにしえの剣豪ミヤモト・マサシも言っている。直接話さないと実際わかりにくいと。

 そのコトワザの通り、師弟は道を違え、相争う宿命めいた地へと誘われるのか。

 二人の道は果たしてこの後、どのように交差することになるのか。

 

 

 




魔術師の論文にグラフ図使うのかって?
手前にはわかりませぬ、不明かと

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