東方仮装戦場 〜Phantom of Battle Field〜   作:徒然ノ厭離

3 / 3
#3 新参者と古参兵 II

けたたましい排気音。

 

唸るはチェーンの刃。

 

高速回転するチェーンに触るものならば、一瞬で一生感覚は戻ってこないだろう。

 

 

「殺した殺した斬った絶った殺した殺したふひひふひははははは」

 

 

彼女はこのゲームに入ると、人格が大きく豹変する。特に、チェーンソーを握った時には。

 

彼女はトチ狂ったように人を斬り始めるのだ。彼女の邪魔になるものは勿論、直前まで一緒に談笑していた人間にも。

 

 

「楽しいわ楽しいわ楽しいわねぇねぇおじさん今どんな気分私に斬られて今どんな気分ねぇねぇねぇねぇ」

 

 

殺戮の瞬間を目の当たりにした人間は、いかに精神力が強くても吐き出してしまうだろう。

 

 

「おじさんおじさん腹わたが飛び出ているよ直したほうがいいんじゃないほらほら自分で治してよ治してよ治してよふひひひひひ」

 

 

彼女は『狂気の繰り人形』メディスン。繰られた人形は演技のように人を殺す。殺し続ける。ターゲットはいない。目に入るものを全て斬る。

 

逃れることなど不可能だ。

 

 

 

 

「ねぇねぇねぇねぇ次はあなたあなたあなたあなた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「穣子、静葉!下がれ!」

 

 

階段だ。大変なことになっている。

ワラワラと、どこから出てきたんだとツッコミたいくらいに、COMがいる。

個々の武器の種類も偏っておらず、万面に対応できるようだ。更に医療キットを持った奴もいる。

 

2人を前線に出すのは非常に危険だ。と、なると、俺が出るしかない。

 

 

「...2人とも、俺が撃てって言うまで撃つな。ここで隠れていろ。」

 

「えっ?」

 

「ブレインさん...?」

 

 

手にしたショットガンが震える。少しばかりビビっているのだ。まあ、こんな劣勢の局は初めてやるかも知れない。

俺のショットガン...モスバーグM500の準備は万端だ。今なら、やれる気がする。

 

 

「なあに、ブレインさんに任せておきなさいって。」

 

 

ポンプ(給弾)。引き金を引けばいつでも撃てる。ショットガンのスピードローダーの準備もいい。

さて、あとは後ろの2人に格好つけるだけだ。

 

 

『ショットガンを知り尽くした男』。その貫禄と実力を証明する。

 

 

「30秒もあれば。」

 

 

飛び出る。目の前に突撃銃を持ったヤツが1人。

 

 

「10人程度、すぐだ。」

 

 

胸に1発。絶対に死ぬ。吹っ飛んだそいつにダッシュで近づき、またその近くにいたヤツに蹴り飛ばす。

 

死体は当たった。間髪は入れない。怯んだCOMの頭に1発くれてやる。弾けた。崩れ落ちてくCOMのサブマシンガンを拝借して、左にいたヤツらに弾丸を薙ぐ。3人は殺した。

 

次は右方向。思いっきり机から飛んで、頭を蹴り、そして踏み潰す。全体重がかかった両足のストンプだ。ひとたまりもないだろう。

 

俺の靴にはナイフが仕込んである。爪先の部分に。仕込みナイフっていうのかな?商人さんに作ってもらった。

俺に向けて銃口を突きつけてるヤツの首にハイキック。死んだ。まだ余裕がある。

 

ショットガンの残弾はあと6発。まだリロードは不要だ。

果たしてCOMの動きというのはこんなにも遅かっただろうか?重機関銃を持ったヤツに散弾をプレゼントした。ついでにサイドアームで更に2人。弾丸のプレゼントに喜んでもらえて何より。

 

 

今が丁度30秒くらいかな?宣言通りに10キル。手際は良かったと思う。2人がいる部屋から見て左の机の裏に滑り込む。

そうしたところで、やっとCOMが俺を攻撃し始めた。俺ってそんなに影薄かったかな...

 

ともかく、これで隙ができた。後は2人に任せても構わないだろう。今の彼女たちの立ち位置は、丁度奴らの横。不意打ちにはもってこいの場所だ。

 

 

「穣子!静葉!机を盾にしながら奴らを攻撃してくれ!」

 

「「了解!!」」

 

「こちらも援護する!」

 

 

俺のショットガンが火を噴く。無論、狙っていないというわけではない。が、ここで彼女たちに殺させれば、さらなる成長を遂げるだろうし、まあ致し方ない。ワザと外す。

 

 

暫くは銃声は止まなかった。穣子のAKの連射音と静葉のベレッタの銃声が止む頃には、もう立っているCOMは誰もいない。

勝利の天秤はこちらに傾いたようだ。

 

 

「よくやったな2人とも!とてもじゃないけど、今日始めたとは思えないくらいに上出来だ!」

 

「い、いえ!ブレインさんの援護が素晴らしかったから...」

 

「えへへー、褒めてくれてありがとう!」

 

 

静葉は『片手での狙撃』については本当に才能がある。敵10人の内、7人は彼女の狙撃で命を刈り取られた。

穣子も『弾をばらまく』という点においては俺より上だ。簡単そうに聞こえるが、敵を机から出させない、つまるところ釘付けにする能力は素晴らしい。

 

 

かつてここまで才能のある初心者はいただろうか?いや、記憶にない。本当になんなのだろうか、この2人は。

 

 

「よし、もう君達の装備は決まったな。こいつらの武器を奪って、もう一度商人さんのところに戻ろう!

俺が判断した限りで、君たちに最適な武器を送るよ!」

 

 

さてさて、俺にはこのゲームでの楽しみが一つ増えてしまったな。

2人を立派な兵士に育てる。絶対にこの子たちは強くなるだろう。

 

 

さて、これからが楽しみだ!

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。