龍は暁に啼く   作:高嶺 蒼

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第7章最終話の後の雷砂とセイラのSSです。


SS 戦いの後に~お風呂の秘め事~

 キアルの家から宿へ戻ってくると、二階の窓からセイラが外を見ているのが見えた。

 確か前もこんな事があったなと思いながら、彼女の顔を見上げる。

 セイラが見ているのとは違う方から帰ってきた為か、彼女はまだ雷砂の姿に気づかない。

 雷砂は、遠くを見つめる彼女の横顔を飽くことなく眺めた。

 

 綺麗だなと、素直に思う。

 ずっと見ていたいとも。その思いが、自分のどんな感情から溢れたものかも分からないまま。

 

 どれくらいそうしていただろう。不意に彼女の顔がこっちを向いた。

 まさか雷砂がそこにいるとは思っていなかったのだろう。少しだけ、驚いたような顔。だがすぐに、柔らかい微笑みが取って代わる。

 黙ってもう少し、彼女の顔を見ていたかったけど時間切れだ。彼女に見つかってしまった。

 雷砂は微笑み、宿へと向かう。ゆっくりとした、足取りで。

 

 

 

 部屋にはいると、セイラはさっきと変わらず窓際に置いたイスに座っていた。扉の開いた音に振り向いた彼女が嬉しそうに笑う。

 

 

 「おかえりなさい、雷砂」

 

 「うん。ただいま」

 

 

 ゆっくりと、彼女の方へ向かう。

 そして促されるまま、彼女の膝に座った。彼女と向かい合うように。

 

 最近のセイラは、とにかくこの座り方をさせたがる。

 最初は重いだろうからと何とか避けようとしたものだが、いつも口で負けて結局はセイラの思うとおりになってしまった。

 この頃はすっかり慣れっこで、いすに座っているセイラを見ると、自然とこうやって座ってしまうことすらある。

 

 そのことでジェドの度肝をぬいたのはつい先日の事だ。

 顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせるジェドは見ていて本当に面白かった。

 アジェスなどは何の遠慮もなく腹を抱えて笑っていた。

 セイラも大笑いしていて、あんまり可愛そうだから、雷砂は頑張って笑うのを自重した。

 

 ジェドはちょっぴり涙目になって、アジェスはすまんすまんと謝りながらそんなジェドの肩を抱いて、何だか少し妖しい目をしていた。

 あれが男の友情ってやつなのかな。たぶんそうなんだろう。きっと……

 

 セイラの膝に座って体勢を整えると、優しく抱きしめられて何だか嬉しくなる。

 雷砂はそのままセイラの柔らかな体に身を任せ、彼女の首筋に頭を預けた。

 今日は、とにかく色々な事があった。何だかとても、疲れていた。

 

 「疲れちゃった?」

 

 耳元で、セイラの声が響く。

 

 「うん。流石に疲れた」

 

 素直に、そう答える。

 目を閉じれば、すぐにでも眠ることができそうだった。

 

 

 「じゃあ、早くお風呂に入って寝ちゃおう」

 

 「お風呂かぁ」

 

 

 あんまりお風呂に入りたい気分じゃないが、今日は色々暴れたから体も汚れているだろう。

 汚れたままでセイラの寝台に潜り込むのは何だか気が引けた。

 

 

 「疲れてるみたいだから、私が体を洗ってあげる。雷砂は、じっとしてるだけでいいから」

 

 「ん~、大丈夫。自分でできる」

 

 「いいから。お姉さんに任せなさい」

 

 

 セイラの笑いを含んだ声。

 じゃあ、行こうと体を軽く揺すられて、雷砂は眠い目をこすりながら彼女の上から降りた。

 どうぞと伸ばされた彼女の手を握って、誘導されるままついていく。

 

 風呂場に着くと、彼女はまず自分の服を脱ぎ、それから雷砂の服も脱がせてくれた。

 眠い目をしょぼしょぼさせている雷砂はされるがままだ。

 そのまま、浴場の中まで連れて行かれ、まずは洗い場のイスに座るように促された。雷砂は素直に従う。

 

 「今日はいっぱい汗をかいたし、お風呂につかる前に体を洗っちゃおうね?」

 

 セイラの言葉に、コクンと頷く。

 本当に眠くてしょうがないのだろう。頭が時折グラリと揺れる。

 そんな雷砂の様子を微笑ましそうに見つめながら、セイラは石鹸を泡立てた。

 

 そうして両手を泡だらけにして、まずは雷砂の肩から腕にかけて丁寧に洗い始める。

 最初は右手、次に左手。腋の下までしっかりと、手を抜かずに洗われて、雷砂はくすぐったそうに笑い声をたてた。

 

 

 「セ、セイラ。腋、くすぐったいよ」

 

 「ん?そう?慣れれば気持ちいいのよ?でも、まあ、無理してもしょうがないから、次は足を洗うわね」

 

 

 雷砂の訴えを聞き入れて腋の辺りは早めに切り上げ、次に足を洗い始めるセイラ。

 ここでも、内腿を丹念に洗い始めた辺りで、雷砂から降参の声があがり、セイラは素直に切り上げて今度は背中へと場所を移した。

 手の平でまんべんなく背中を泡だらけにし、

 

 「じゃあ、最後は前を洗おうね」

 

 そう言いながら、セイラは雷砂の背中に体を押しつけるようにして腕を前に回した。

 柔らかな胸が雷砂の背中で悩ましくつぶれる。

 流石にあれ?っと思ったのか、雷砂は肩越しにセイラの顔を見上げた。

 

 

 「えっと、後ろから?」

 

 「ええ。そういうものよ」

 

 「そ、そういうものなんだ・・・・・・」

 

 

 きっぱりとしたセイラの言葉に押し切られ、まあいいかと体の力を抜く。

 彼女が自分を傷つける様なことはしないと、分かっていたから。

 

 そんな雷砂の様子を敏感に感じ取って小さく微笑み、ゆるゆると前に回した手を動かし始める。

 

 首の辺りからはじめて胸の方へ。

 雷砂のまだ膨らんでない胸を手の平全体で円を描くように洗い、小さな蕾が主張を始めると今度はそこを重点的にこすり始める。

 ゆっくり、優しく、丁寧に。

 

 「んっ・・・・・・セイラ、そこばっかり・・・・・・あ、んぅ・・・・・・も、もお、いいから」

 

 雷砂の声に、少しずつ甘いものが混じり始める。

 それに気づいたセイラは妖しく笑い、雷砂の耳元にそっと唇を寄せる。

 

 「そう?雷砂のココ、可愛いからもっと洗いたかったけど、じゃあ、今度は下の方を洗うわね」

 

 耳の中へ、息と共に言葉を吹き込みながら、仕上げとばかりにきゅっとピンク色の頂を摘んだ。

 それに反応する様に雷砂の体がビクンと跳ねる。

 

 「はぁっ、んんっ」

 

 そんな可愛い声を聞かせてくれたお礼に、雷砂の頬にキスをしながら泡だらけの手を移動する。

 引き締まったお腹を通って可愛いおへそを丁寧に洗い、更に下へと。

 まだ無毛の丘を乗り越え、可愛い割れ目に到達すると、とろりとした液体が溢れていた。

 それを塗り広げるようになで回しながら、

 

 「ほら、雷砂。もう濡れてるわ」

 

 そう声をかけると、雷砂はとろんとした目でこちらを見上げてくる。

 

 「濡れて・・・・・・?なに・・・・・・?」

 

 自分の体に起こってる事がまだ良く分かってないのだろう。少し戸惑ったような声。

 そんな雷砂を愛おしそうに見つめて微笑み、もう一度その頬にキスをした。

 

 「ん、何でもないわ。さ、洗い終わったからお湯をかけるわよ?」

 

 言いながら、熱いお湯で雷砂の体の泡を洗い流す。

 すると、雷砂は夢から覚めたような顔で瞬きをし、それから赤い頬のままセイラを軽く睨んだ。

 

 

 「ったく、セイラの洗い方はいちいちエッチなんだから」

 

 「いいじゃない。気持ちいいでしょ?私も楽しいし」

 

 

 はじけるように笑って雷砂を抱きしめ、小さな体が可愛く反応するのを楽しむ。

 恥ずかしそうに頬を染め、ちらりとセイラの顔を見上げる雷砂。

 少し困ったような顔をしているものの、でもイヤだともやめろとも言い出さずに、黙ってセイラの腕の中に収まっている。

 

 「ごめんね?いやだった?」

 

 雷砂の頬に自分の頬を寄せ、抱きついたまま問いかける。

 雷砂はふっと体の力を抜き、

 

 「・・・・・・いやじゃないよ。次に何をされるかと思うと少し緊張するけど、いやじゃない」

 

 柔らかな表情で、そう答えた。

 

 

 「じゃあ、もう少し慣れたら、もっと色々な事をしてもいい?」

 

 「・・・・・・いいよ」

 

 

 クスリと笑う。セイラがそんな事を尋ねてくるのが何とも可愛くて。

 性の知識は少なくとも、セイラのしたいことは何となく分かる。自分が幼いせいで、彼女がすごく気を使ってくれていることも。

 

 彼女の為を思えば、もっと大人の、できれば男性とそう言うことをした方がいいのだろうけど、それを言葉にするのは自重する。

 セイラが求めているのはそんな言葉じゃないと分かっているから。

 それに雷砂が今言わずとも、いつか自然にそんな時は来るだろう。

 その時が来たら、黙って送り出してやればいい。それまでは、セイラの好きなように。

 

 

 「あんまりエッチだと、雷砂はいやだって言うかも」

 

 「言わないよ」

 

 

 雷砂の気持ちを探るように継いでくる言葉に、雷砂は微笑んできっぱりと答える。

 

 「セイラのしてくれることで、いやな事なんて一つもない。いやじゃないから逃げないんだよ」

 

 彼女の腕の中でくるりと向きをかえ、セイラの背中に腕を回して抱き返す。

 そう、雷砂だっていやじゃない。

 思ってもいなかった自分の体の反応には戸惑うが、セイラが与えてくれたものならそれだって心地いいと思う。

 それくらい、彼女に心を許しているのだ。いつの間にか。もしかしたら、最初から。

 

 

 「いやだと思ったらちゃんと逃げる。我慢なんてしてないから、セイラはセイラの思うようにしていい。セイラに触ってもらうの、オレは好きだよ」

 

 「雷砂・・・・・・」

 

 

 浴室の床に膝をつき、セイラの方へ更に体を寄せる。

 ぎゅっと隙間なく体をくっつけ、雷砂は小さな吐息を漏らす。熱い、吐息を。

 

 

 「えっと、じゃあ、早速これから・・・・・・」

 

 「それはダメ。今日は疲れてるから、また今度」

 

 

 にっこりきっぱり雷砂はセイラの欲望を切る。

 

 「はぁい・・・・・・」

 

 セイラはしょんぼりと、だが素直にその言葉を受け入れる。

 今日はとにかく色々ありすぎた。

 雷砂だけではなく、セイラも疲れていたし、何もこんな日に無理にする事でもない。

 受け入れてくれると、雷砂は言ったのだ。作ろうと思えば、機会はいつだって作れる。

 

 「よし、じゃあ、仕上げに髪を洗ってから、一緒にお湯に入りましょ」

 

 気持ちを切り替えるように言った言葉に雷砂も頷き、今度は大人しく従った。

 

 

 

 浴槽の中で、雷砂はいつもの様にセイラの太股の上に座っている。

 近すぎるくらい近い距離。

 どちらからともなく顔が近づいてゆっくりと互いの唇を触れ合わせる。

 

 最初は触れるだけ。でも角度を変えて何度も。

 そうしているうちに、体が何だか熱くなってくる。

 お風呂に入ってるせい?ーそんな風にも思うが、その熱さとも少し違う、じれったいような熱さ。

 思わず触ってほしいと懇願しそうになり、そんな心の動きに自分でも驚いてしまう。

 だが、それを口に出したら歯止めがきかなくなる事は分かり切っていた。

 だから雷砂はあえて口をつぐんでただ唇を交わす。

 

 執拗なまでに追いかけてくるセイラの唇。

 その唇が深くあわさった瞬間に、彼女の舌が雷砂の唇をノックした。

 うっすらと唇のあわせ目をといて向かえると、待ってましたとばかりに熱い固まりが飛び込んでくる。

 それは丁寧に雷砂の中をなめ回し、刺激する。

 雷砂は小さく熱いうめきを漏らし、それからそっと自分の舌を差し出した。

 もっと、気持ちよくしてもらうために。

 

 絡み合う二つの熱い固まり。唇の継ぎ目から水音が漏れ響き、二人の興奮を更に高めていく。

 自分の熱気と風呂場の熱気があいまって、なんだか頭がくらくらしてきた。

 もう限界とばかりに、セイラの肩をぺちぺち叩くと、彼女は大人しく雷砂の唇を解放してくれた。

 

 透明な唾液がつぅっと二人の唇をつなぎ、そしてぷつんと途切れる。

 二人の唾液に濡れたセイラの唇が何とも艶っぽく、綺麗だった。

 もう一度と思う気持ちをねじ伏せてそっと微笑むと、彼女も柔らかな笑みを返してくれた。

 

 彼女の目が、雷砂の体をたどっていく。首から始まり、胸の辺りまで。まだくっきりと残る、赤い痕を追うように。

 

 

 「ね、雷砂。新しい痕を、つけてもいい?」

 

 「いいけど、どこに?」

 

 

 雷砂の問いにあえて答えず、風呂の縁に座らせる。

 そしてそのまま、右の内腿が見えるように、ぐっと足を押し開いた。

 なんだか色々丸見えな格好をさせられて、雷砂は頬を赤く染める。

 

 

 「えっと、セイラ?この格好はちょっと恥ずかしいよ」

 

 「ん~、でも上半身は消毒し直した痕でいっぱいだし、ここにつけたいなって。すぐ終わるから、ね?」

 

 

 その言葉とほぼ同時に、内腿の足の付け根の近くにセイラの唇が落ちてくる。

 そのまま、強く吸いつかれ、唇が離れたときにはそこに新しく赤い痕が刻まれていた。

 雷砂は目を丸くして、新たにつけられた痕をみる。

 

 

 「へぇ。思ったより簡単に痕がつくんだね」

 

 「でしょ?・・・・・・ねぇ、雷砂もやってみない?」

 

 「ん?」

 

 「私にも、痕をつけて?雷砂のものだって、印が欲しいの」

 

 熱っぽい目でねだられて、雷砂はセイラの体にそっと抱きつくとその首筋に唇を押し当てた。

 

 「あ、ん・・・・・・」

 

 彼女の艶っぽい吐息を聞きながら、ぢゅっと音を立てて吸い上げる。

 唇を離してみると、綺麗に赤く、痕がついていた。

 

 

 「ついたよ?」

 

 「もっと・・・・・・もっとして?」

 

 

 雷砂は黙って微笑み、今度はセイラの左胸に吸いついた。

 つんと立ち上がった頂の少し上。ちょうど心臓の辺りに赤い花弁を刻み込む。

 

 「ふふ。雷砂の印が2つも。これで私は雷砂のものね?」

 

 嬉しそうなセイラの声。

 

 「・・・・・・うん。セイラはオレのものだ」

 

 こんな事くらいでセイラが自分のものになるとは思わない。

 だけど、セイラがその言葉を望んでいるのは分かった。

 だから、雷砂は彼女の望む言葉をそっと紡いで彼女に届ける。

 

 幸せそうに彼女が笑う。

 その顔を、いつまででも見ていたいと思う。

 彼女の肩に、顔を乗せてささやいた。

 

 「大好きだよ、セイラ」

 

 小さな声で、だがはっきりと。

 しなやかな彼女の腕がその声に答えるように、雷砂の体をぎゅっと抱きしめた。

 

 「私も。今まで好きになった誰よりも、あなたが好きだわ、雷砂」

 

 そう言ってくれたセイラの言葉が心地よくて、抱き合った体も心地いい。

 雷砂は彼女の体に身を預けたままそっと目を閉じ、彼女の与えてくれるものをただ受け取った。

 幸せな気持ちのまま。

 しばらくして、このままではのぼせてしまうと、慌ててセイラがお風呂から連れ出してくれるその瞬間まで。

 

 




読んで頂いてありがとうございました。

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