とある冥闘士の奮闘記   作:マルク

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更新が遅くて済みません。(汗)
自分の考えている事を文章にする事がこんなに難しいとは…。定期的に更新できる方々の文才が羨ましいです。

それでは9話目投下!


07/修行(後編)

Side:Yukito

俺は今日も師匠の授業の合間の休憩時間に、体を横たえ青空を泳ぐ雲を眺めながら、これから身に着ける戦闘スタイルをどうしようかと悩んでいた。

 

 

冥闘士の弱点とは何なのかと問われれば、個人的にはやはり『冥衣』だと思う。

 

本来、冥衣には魂が宿っている。冥衣が依代となる人間を得る事により冥闘士は誕生するのだ。冥衣にとって人間は部品(パーツ)でしかなく、冥衣こそが冥闘士にとって『本体』なのだ。その後、冥衣は装着者の肉体を作り替えてしまう為、どんな人物でも装着可能であり、修業や資格は不要である。ただ纏わせるだけで、最下級の冥闘士ですら速度が音速を超える力を持つ事ができる。そして例え装着者が死亡しても、また新たな人間に冥衣を纏わせば、冥闘士の補充ができるのだ。

 

これだけの利点がある冥衣は、聖闘士の聖衣と比べてかなり異質で、優れた防具と言えるかもしれない。

 

だが、俺は少~~し不安がある。

 

要は、『本体』である冥衣で相手の攻撃を受ける事になる訳だ。

 

無理だろッ!!何で弱点が『防具』なんだよ!!こんなモノで聖闘士の、特に『黄金』の攻撃を受けてたら命が幾つあっても足りんだろうがッ!!

 

そんな俺はなんとか対抗策を考えてみた。

 

志那虎伊織を代表する技の一つに『神業ディフェンス』というものがある。それは敵の攻撃が、伊織の体をまるですり抜ける様な錯覚を起こす程で、紙一重の『見切り』があって初めて成功する代物だ。しかも攻撃だけでは無く、『返り血』すら躱してしまう。

 

俺もこの技を再現できないか何度も試したが……ゴメン、小宇宙を使っても俺には無理です。

何度も同じ敵と戦う機会があれば、俺もその敵の独特のリズムを読み取る事ができるかもしれないが、伊織は初見の攻撃すら対応してみせたのだ。(まあ、物語の後半になると通用しない強敵がチラホラ出てきたが…)

だけど、冥闘士や聖闘士は守りをほとんど冥衣、聖衣を頼みにしている。今後の戦いに備えて、『防御(ディフェンス)』はどうしても必要だ。なにか代わりになるものは無いか考えていると、気になる事が出来た。

 

 

不思議に思った事は無いだろうか?何故、元々人間の中にある小宇宙、気、魔力と言う『生命エネルギー』と置き換えていいモノが他者とは言え、同じ人間という生命体を傷つけてしまうのかを…。

 

 

俺はその疑問に対し一つの仮説を立ててみた。生命エネルギーは同じ波長のモノは一つも無い。だからこそAのエネルギーがBの体に接触した時、免疫反応の様に『異物』とBの体が判断してしまい傷ついているのではないか。

それならば、Bの体にある生命エネルギーの波長をAに合わせてやれば、エネルギーは自分の肉体だと錯覚を起こしてダメージは0(ゼロ)になるんじゃないか?

 

 

目指す防御スタイルはソウルイーターのシュタイン博士が使う『波長合わせ』だ。この事を師匠に自慢げに話したら、有り難いお言葉を貰ったよ……拳骨と共にね。

 

 

 

「馬鹿かテメエは!!そんな欠陥防御術が実戦で使えると思ってんのか?俺が良いと言うまで封印だ!封印!」

頭を押さえてうずくまる俺はシクシクと泣きながら頷くのだった。

師匠は悪くない。『欠陥』と言っていたので、この防御術が持つ致命的な弱点を見抜いたのだろう。この防御術は相手の攻撃が届く前に敵の小宇宙の波長を見切り、自分の分を調節、対処しなくちゃならない。しかも失敗したら攻撃を無防備で受ける事になるというオマケ付き。こんな無謀な事をする位なら、小宇宙を高めて躱すスピードを上げた方が現実的だろう。

 

とどのつまり、俺の見切りを上回るスピードの攻撃やフェイントに弱いのだ。

 

悔しいが、光速で動ける黄金聖闘士には全く通用しない自信が俺にはある。

だが黄金聖闘士と戦う事になる可能性を考えれば尚更、普通の方法では彼等には勝てない筈だ。冥衣の防御力も小宇宙を増幅する機能も、黄金聖衣の方が上である限り…。

幸い『封印しろ』と言っていたので、修業そのものを禁止されている訳では無い。いつか実戦で使える日を夢見て、修業だけはしておこう。

 

~side out~

 

 

 

Side:Youma

(んはははは。やっぱ、コイツ拾って正解だったわ。)

 

面白ェ。青銅が黄金を倒すと言った下剋上は、数が少ないが過去に確かにあった。だがそれは、『攻撃する一瞬にどれだけ相手を上回る小宇宙を爆発させられるか』という『量』の話になる。だがコイツは『質』の方から相手を攻略しようとしていやがる。こういう発想は大事にしねェとなァ。

 

 

結論から言っちまったら、一応コイツの仮説は正しい。特定の人間を探す時は小宇宙の波長を探索するッてのが常套手段だからなァ。もし実践できりャ、冥衣無しで鉄壁の防御力を誇る戦士が出来上がるわけだが……ハッキリ言って、問題は山積みだ。

 

黄金の動きを見切れる程の『光速の見切りの速さ』、波長を自由自在に変化させる事ができる『器用さ』、この技が通用しない攻撃に対しての『対策』と言った問題をクリアさせねェと、とても使いモノにならねェ。おおっと、相手にこの技の原理を知られねェようにもしとかねェとなァ。攻撃が当たる直前で、波長を変えられたりしたらどうする心算(つもり)だったんだか…。

 

~side out~

 

 

杳馬は行人にああは言ったが、実のところ内心狂喜していた。今までにない攻略法は、杳馬自身も大いに興味がある。こういう新しい発想は小宇宙に慣れ親しんだ者にはできない事だった。こうして杳馬は行人に対する鍛え方について、着々と計画を立てていくのであった。

 

そして幾日が経ち、思いも寄らない事態が発生した。

それは行人が聖闘士候補生の半分程度には小宇宙を高められると判断したので、杳馬と軽~い組手をした時である。

 

 

「だ・か・ら、何度言わせやがる!何で小宇宙を燃やせねェんだよ!」

 

「無茶言わないでくださいよ!小宇宙を燃やす為に『内側』に意識を集中しながら、敵の動きに対処する為に『外側』に意識を傾けるなんて芸当は、左を向きながら右を向けって言っている様なもんですよ!」

 

2人は絶賛スランプ街道まっしぐらであった。

まあ、教える事が初めての杳馬にしては、今までが不自然なほど上手くいき過ぎていたのだが…。

 

(やべェ、どーしよう。コイツ正拳突きの様な単調な動きなら問題無ェのに、本格的な戦闘になると急に集中力が落ちやがる。)

 

この事態はよく考えれば当然の結果だった。

元とはいえ小宇宙を扱える事が前提で生まれてくる神族は、修業せずに呼吸をするかの如く小宇宙を扱えるのだ。杳馬は小宇宙を扱えないという苦労をした事が無かったのである。

しかし、人間でしかない行人は0(ゼロ)から学ばなければいけない。小宇宙をただ燃やすのと、実戦で自在に使こなす事は似ているようで別物なのだ。座学で『覚える事』と『解ける事』は異なる様に……。

 

天才と呼ばれる者達の中で、教える事に向いている者は極僅かとされている。

何故できないかが天才には分からないからである。

弟子が何に対して躓いているのかを、苦労せずにクリアしてしまった天才には理論的に説明する事が出来ない。

 

よって現在、天才と言って良い出自の杳馬は行人の課題をクリアさせる説明が思いつかなかった。

 

 

だがこのままで終わらないのが、杳馬クオリティである。

普通の環境では小宇宙の必要性はあまりないから、燃やさない時間帯がある。

ならば……、

 

 

『普通じゃない』環境に行けばイインジャネ?

 

 

どこぞの年齢詐称疑惑のあるテニス部部長の様な、極論過ぎる逆転の発想で解決策を思いついたのであった。

 

 

(そうだよ!小宇宙を常に燃やさないといけねェ環境で生活すりャ、嫌でも身に着く技術じゃねェか!う~~ん、流石は俺♪)

 

 

そんな物騒な事を考えている事はおくびにも出さずに、行人に旅仕度をさせる。

 

「よし、馬鹿弟子よ。修業地を変えるぞ。お引越しするから仕度しなァ。」

 

「はぁ、分かりました。ですけど何処に行くんですか?どんなところか気になるんですが。」

 

杳馬の突然の提案に頷きながらも、行人は鍛えられた直感で嫌な予感がしていた。目の前の悪魔は『何か』を隠していると…。

 

「言っちまったらツマンねェだろ?着いてからのお楽しみって奴さ♪でもテメエがどうしてもって言うんなら、簡潔に言ってやろうかなァ?」

 

「是非お願いします。」

 

「教えるのがメンドイ。ハイ終わり。」

 

「ちょっと!答えにすらなってないんですけど!」

 

「自分で良~く考えてみるこった。自分に足りないモンが何なのか分かりャ、すぐ分かる話なんだからなァ。ほら油売ってる暇があるんなら、さっさと仕度しに行って来い。」

 

これ以上の問答は無駄だと言わんばかりに、寝泊まりしている建物に行くよう促す。

 

その後、師匠の様子からしてとんでもない修業地を予想した行人は、遺書を書く為の紙と筆を荷物の中にしっかりと入れて置くのであった。

 




書き足りない描写が少しあるので、ひょっとしたら修正するかもしれません。

次回から主人公の強化プランが始まります。


更新速度がなんとか早くなるよう頑張りますので、どうかこれからも応援をよろしくお願いします。

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