学園黙示録~とんでもない世界に迷い込んだんですけど~   作:富士の生存者

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連日投稿。
お楽しみください。


第3話 『とんでもないメンタルダメージ』

 

 

 

 小室孝SIDE

 

 

 

「人殺し! なんでッ、なんで、永を撃ったの!!」

「よせッ麗!」

 

 

 あらん限りの罵声を彼に浴びせる。

 だが彼は罵声を浴びせられてもその瞳には怒りという感情が見つからない。

 

 まるでなんの感情も持たない人形の様だ。

 

 彼は永の遺体に天文台にあったタオルケットをかけ手を合わせ祈る。

 

 

「彼の覚悟を無駄にはしたくなかった。ただ、それだけだ。恨んでくれて構わない。だが、彼が君の事を最後まで思っていたことは忘れないであげてくれ」 

 

 

 そうだ、永は自分が奴らになることがわかっていても僕たちの事を心配してくれた。なら、生き残らなくては永の覚悟が無駄になる。それだけは駄目だ。

 麗はようやく泣き止んだ。泣いたことで少し冷静になった彼女も彼の言葉を聞いて思うことがあるのだろう。話しかけようとするがなかなか言葉が出てこない。

 

 

「これからどうするんですか?」

 

 

 僕は意を決して話しかけた。

 

 

「ひとまず職員室に向かう。マイクロバスが駐車場に止まっているのは確認した。鍵があるとすれば職員室だろう」

 

 

 確かにここにいつまでもいるわけにはいかない。

 僕は金属バットを握りしめる。

 

 地獄はまだ始まったばかりなのだ。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 主人公SIDE

 

 

 

 

 

 

 覚悟はしてたけど面と向かって罵声を浴びせられるのは辛い。

 それも美少女なら5倍増しだ。世の中にはそれをご褒美と感じる危ない人もいるが俺にはそんな性癖がないと信じたい。俺はいたってノーマルだ。

 

 さて自分の世界に入っていた。俺に金属バットをもった少年が話しかけてくる。

 

 

「これからどうするんですか?」

 

 

 ごもっともです。取りあえず駐車場に駐車してあるマイクロバスのカギを取りに職員室あたりに繰り出さなくてはならない。しかし、それには階段でたむろっている団体をお相手しなければ。

 

 自動小銃でも片づけられるが数が多いそんな時はこれ。

 

 タクティカルベストから円形の物を取り出す。

 

 

『M67 破砕型手榴弾』―――スチール製の弾体は球体で形状から『アップルグレネード』とも呼ばれている。爆発時に破片効果をもたらすのは内側に細かい溝がある弾体自体である。弾体の溝は破片が広範囲に飛散するように設計されており、爆発地点より半径約5メートルは致死範囲、半径約15メートルは有効加害範囲になっている。

 

 

「2人は天文台の中に入っているんだ」

 

 安全レバーに付けられたクリップを外し、T字に折れた安全ピンを先を真っ直ぐに戻す。親指及び人差し指でスプリングを固定している安全レバーを押さえ、安全ピンを抜く。手榴弾自体は安全レバーが外れない限り爆発はしない。安全ピンを戻すこともできる。

 よく映画ではピンを口にくわえて引き抜くシーンがあるがそんな簡単には手榴弾のピンは抜けなくなっている。

 

 最後の安全装置でもあるレバーが外れる。

 

 心の中でカウントをする。

 手榴弾はレバーが外れて5秒後に起爆信管が作動する。

 

 1…2…3。

 

 

「爆破する!」

 

 

 手榴弾を投げるとすぐさま天文台の中に駆け込む。

 駆け込んだと同時に手榴弾の信管が作動し階段のところにたむろするゾンビの中央で炸裂する。駆け込んだ時に足が段差に引っ掛かり女の子に抱き付いてしまったのは事故だ。

 

 

「すまない」

「え、いえ……大丈夫です」

 

 

 しっかり謝ろうぜ俺。

 

 

「ついてくるんだ。離れるな」

 

 

 いざ、職員室へ突撃。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 宮本麗SIDE

 

 

 

 

 どうしてこんなことになってしまったのだろう。

 数時間前まではいつも通りだったのに。

 

 

「水だ」

「え、あ、ありがとう…ございます」

「気にするな」

 

 

 水を差しだしてくれたのは迷彩服を身に着けた男性だ。彼は私が危ないところを救ってくれた。それに私の恋人永を人として殺した人。永が撃たれた時、私は彼にひどいことを口走ってしまった。

 

 

『人殺しッ!』

 

 

 最低だ、私……。

 彼は永を人として終わらせてくれたのに。

 

 そんな彼は、私に罵声を浴びせられても怒るでもなく無視するのでもなく真っ直ぐ聞いていた。そんな態度も永が死んだ直後の私には許せなかった。

 あれだけ罵り、罵声を浴びせかけたのにもかかわらず私のことを気遣ってくれる。涙が出なくなるくらい泣いた私はひとまず自分のしたことに気づいた。

 

 

 天文台から職員室にいくために階段にいる〈奴ら〉を手榴弾で吹き飛ばすという。

 私と孝は天文台に入り耳を塞いでいた。

 

 

「爆破する!」

 

 

 彼が天文台に飛び込んできたときと爆発は同時だった。

 振動が天文台だけでなく校舎を揺らす。

 思った以上の衝撃で驚きバランスを崩した私を彼が抱き留めてくれた。

 

 

 普段ならあまり知らない男性に抱き付かれたり、触られたりすれば嫌悪感があるが不思議とそれが感じられなかった。鼓動が早くなるのがわかる。

 

 

「ついてくるんだ。離れるな」

 

 

 彼は私のことをどう思っているのだろう。

 ふと、そんな思いがよぎる。

 

 

 

 

 

 

 




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