学園黙示録~とんでもない世界に迷い込んだんですけど~   作:富士の生存者

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お待たせしました。
今回は短いです。


第26話 『とんでもない濃いメンツ』

 主人公SIDE

 

 

 畳が敷き詰められた、日本独特の雰囲気を感じさせる部屋―――和室。

 高級日本旅館のような広い部屋には、4人の人間がいる。

 

 

 初めて会った時は思わず目を疑った。だって背後に『ゴゴゴゴッ』て見えるよ。絶対ゾンビなんかにやられないだろ。絶対スタンド使いだよ。

 鈍色(ガンメタル)の瞳の奥には殺気すら感じられる。

 何をしに来た、ここはお前の居場所じゃない。言葉以上の雄弁さで、目の色はそう語っている。

 

 この眼光を前にして揺らがずいるには、それに拮抗するだけの強靭さが必要。有体に言って、相応の覚悟が。

 

 目の前にいるお方が沙耶さんのパパ――高城壮一郎氏がおり、その後ろに沙耶さんのママ――高城百合子さんが控えている。

 俺の後ろには、百合子さん同様見事な正座でシェリーが控えている。

 

こんな濃い人たちと俺、これから話し合い?

 

 無理ッ!

 

 窒息してしまいそうだ。ああいっそ、気絶できたら楽なのに。こんな中で話し合いとか相応の度量と冷静な視点なしには話し合いなんて不可能な事だろう。

 今の俺の心情は、言ってしまえば旧型モビルスーツに乗った新兵パイロットが実弾装備でいきなり新型モビルスーツに乗ったベテランパイロットのビーム兵器と会敵した気分。理不尽すぎるだろ……。

 つまり―――最悪。

 

 お互い初対面のため簡単な自己紹介を行い本題に進んでいく。

 よかった自己紹介で総一郎氏が所持している日本刀で、『貴様の力を見せてみろ!』ってな感じでチャンバラはじまったらどうしようかと思った。

 

 部下がゾンビ化して大衆の目の前で首ちょんぱして今の世界がどうなっているのかについて演説しているの見てどう見ても修羅の国の方にしか見えないのだ。

 

 拙者、人切抜刀斎でないでござる。ただの流浪の傭兵でござる。

 このスコップで人が切れるでござるか?

 

 切れるでござるな……。

 

 

 

「まずは、娘をここまで連れて来てくれたことに礼を言わせてもらう。娘が世話になった」

「ここまで来れたのは孝君たちの助けもあったからです。むしろ俺の方がお世話になりました」

 

 

 沙耶さんにいろいろと疑問に思ったことは質問したからな。そしたらすぐに答えが返ってくるからとても助かった。絶対、こんなことも知らないのかとか呆れられているよ。

 

 

「それでは本題に入ろう。貴殿らはいったい何者で、何が目的だ?」

 

 

 あらぬ誤解が尾を引くと、かなりの問題が出てくる可能性があるため、なんとしてでもこの初期段階で潰しておかなければならない。

 

 

「そうですね。我々は、国家を持たない軍隊です。簡単に言ってしまえば傭兵になります。民族、宗教、思想などに囚われない者達。それが我々です」

 

 

 なんてカッコいいこと言っちゃってるんですが、実際俺も把握していません。

 どこのメタルでギアな集団なのだろう。

 

 俺は何ポジションなんだ?

 もしかして、伝説の傭兵なのか……。

 

 俺的にはリボルバー押しなんだけど。カッコいいじゃんリボルバー。

 

 大抵の人に存在する黒歴史。俺のリロードは革命(レボリューション)とかの時はまだ中二病チックだったが、歳をとると落ち着いてきてよかったね。俺だったら寝る前にとか、ふと昔の事思い出してベットの上で悶える事になると思うが。

 

 目的とか聞かれても学校で立てたひとまずの計画は、『安全な場所の確保』、『可能な限りの情報収集』だったのだ。現在はそのどちらも達成しているようなもの。では、ここで安全なシェリーの言う本拠地にヘリを使い戻るかと言えば即答はできない。ここまで行動を共にしてきた孝君たちのことがある。

 

 

「我々の目的は、この騒動についての出来る限りの情報の収集です。それと私と一緒にいた彼らの手助けですかね」

 

 

 ここまで共に来た孝君たちをここで『はい、さよなら』と放り出していくのも気が引ける。それに孝君たちの目的と壮一郎氏の目的は違う。彼らがそれに気づき、そのうえで決断した答えを待ってみようと考えている。それほど時間は残されていないが、どうにかなるだろう。

 

 

 

「ほう、傭兵と呼ばれている輩は金を払えばどれほどの汚れ仕事をも請け負う者達だという認識があった。彼らに肩入れし貴殿らが得をするとは思えんが?」

 

 

 確かに民間軍事会社は戦争をビジネスとし、国の軍隊が行えない汚れ仕事を行っていることは詳しく調べればわかることだろう。

 

 戦争は変わった。国家や思想の為ではない。

 

 国家の少数の兵士と金で雇われた傭兵部隊のテロとの果てしない戦争を繰り返す。命を消費する戦争は、国家のかじ取りをする者にとっては痛みのないビジネスへと変貌しているような節がある。

 

 

「確かに組織の事で言えば得はしません。ただの私個人としての我が儘です。この状況で彼らがどういった道を自分たちで考え、どのような決断をするのか……その答えを知りたいんです」

 

 

 




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