学園黙示録~とんでもない世界に迷い込んだんですけど~   作:富士の生存者

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皆様、お待たせしました。
現在、就職活動と言う名の戦争をしている為、投稿が遅れました。
これを投稿している時点で既に総力戦になりつつあります。
次回の投稿は、就職活動戦争が終結しだい投稿します。



第21話 『とんでもない部下たち』

主人公SIDE

 

 

 制服を着た少女が銃を持っているのは絵的にいいと思う。

 あくまで絵的にである。

 

 現実的に考えれば制服を着た少女が銃剣付きの銃を持っていた時点で俺は(ひざまず)いてホールドアップする。

 

 抵抗するプライドがないのか?

 

 だって、あれだよ。

 

 銃を持っている相手に素手で挑んでいくとか、アニメや映画の中だけだよ。

 殺されることが確実な状況で、ただ殺されるのを待つよりも何かしたほうがましだと思えるような、失うものがない場合に限り抵抗はする。

 それ以外は撃たれて痛い思いするよりは、ゴミ屑みたいなちっぽけなプライドは捨てましょう。

 

 

「淳也さん、こうですか?」

 

 

 そうそう、そんな感じ。

 それで、脇は締めて重心は前よりね。

 反動強いから気をつけてね。

 

 

 静香先生の友人のアパートから拝借した『スプリングフィールドM14』の扱いを着替えが終わった麗さんにレクチャーしている。その最中に身体が密着するドキドキがあり徹夜明けの眠気が吹っ飛んだ。

 そのドキドキが俺に翼を授けてくれる。

 

『スプリングフィールドM14』はベトナム戦争で登場したが、国土の大半を占めているジャングルでの戦闘には不向きだった。

 

 既に登場しているアサルトライフルと比較すると大きすぎ、重すぎ、大火力過ぎた存在だった為『M16A1』にアメリカ軍正式ライフルの座を明け渡すことになってしまった。しかし、昨今の戦闘ではゲームでも映画でもお馴染み、俺の『M4カービン』にも使用されている小口径高速弾―――5.56NATO弾の防弾装備に対する威力不足が問題視されてきており7.62NATO弾を使用するM14シリーズがその大威力と構造的信頼性の高さから再評価されてきているのである。

 

 アパートから持って来た『M14』は魔改造が施されたものだ。

 木製の物から強化プラスチック製ストックへの交換、光学照準器(ドット・サイト)、ピカティニー・レールにフォアグリップなどのカスタムチューンが施されている。

 

 見た目は近代的でとてもいいけど機関部はほとんど昔と変わらない。設計者の努力の結晶なのだろう。とてもしっかりとした銃なのだ。

  

 7.62NATO弾を使うので女性には反動が強い銃だ。銃口の真下に銃剣を取り付けられるので槍術部に所属していた麗さんなら槍替わりでも使えるだろう。

 

 孝君には『イサカM37』を渡している。彼への銃のレクチャーはコータ君にお願いした。

 ……決して野郎に教えるのが嫌だったわけではない。

 

 これで銃を撃てる人数が増えたので、ゾンビが少し多くても少し楽に対処できるだろう。

 

 各々が準備を整えて、春の心地いい日差しのなか目的地に向けて出発する。景色が流れる窓の外には住宅街が広がり、時折花が咲き誇る桜も視界に入る。 

 

 出会いの季節。恋の季節なんてことも聞いたことはあるが、春という季節に特別な思い入れはない。好きか嫌いかと聞かれたとしても『どちらでもない』と答えるだけだろう。でも毎年、待ちわびてもいる。俺にとって、春はそんな季節だ。

 

 冬の寒さが和らいで暖かくなってくるとか、人間が生活する中で最も理想的環境である。気候により花粉による無差別テロが起こるが……。

 

 静香先生の荒っぽい運転の下、沙耶さんの実家を目指している道中、孝君が助けてきた中条さんと簡単な自己紹介をした。

 

 それにしてもこの世界は美人、美少女率が高いのかな。まぁ、ゾンビが溢れた世界なのだから精神を休めるためにも美人、美少女は必須だな。

 綺麗、可愛いは絶対の正義である。

 これでバイオな主人公のように筋肉ムキムキのハイスペックな男がはびこっていれば人類は、ゾンビには負けないだろう。だってあの人たち同じ人種とは思えないよ……。

  

 孝君と麗さんは仲良くハンヴィーの屋根に乗っているので車内が少し広い。本来ならごちゃごちゃ装備を付けた俺が屋根に上がればハンヴィーの中も広くなる。だがいつどこで、どんな形でゾンビが現れるかわからない車外には出たくないでござる。

 

 そんなことを考えているそばから前方にゾンビの団体様だ。助手席の沙耶さんがすぐさま静香先生にルートを変更する様にナビゲートする。

 

 

 「次を左ッ!」

 

 

 ハンヴィーがスピードを出したまま曲がりタイヤがアスファルトの上をすべる。

 だからッ、静香先生曲がるときは減速してって。そんな、道路わきの溝に溝落とししてまで曲がるとか、静香先生は走り屋ですか! ここは峠じゃないよ!

  

 車輌がゾンビの集団がいる道とは別な道に曲がるが、ゾンビが途切れることはない。

 

 

「このまま押しのけて!!」

 

 

 どうやらゾンビを撥ねるのは避けられないようだ。

 広い道路で次々とゾンビを撥ねていく。

 

 視界悪いんだからそんなアクセル踏み込まないで静香先生ッ!

 

 アクセルを緩めるように伝えようと静香先生の方に身を乗り出す。するとひと際大きな衝撃がハンヴィーを襲う。デブゾンビを撥ねたようだ。

 

 乗り出そうとした俺の身体は、慣性の法則で身体が前に流れる。

 前に流れていく際にとっさに手が出てしまいその先を確認する。このままでは静香先生に触れてしまう。

 

 マイクロバスでの静香先生の俺を見つめる笑顔が脳裏を過る。根性でなんとか体を捻り手を突く位置を静香先生から修正する。

 

 最終的に俺の手が触れた物はハンドルだった。

 

 あっ…ヤバい。

 そう思ったが既に手遅れ。

 俺の手がハンドルを切る。急ハンドルによりハンヴィーの車体がゾンビを巻き込みながら横になり何かに引っかかる。

 

 何かに引っかかってもハンヴィーは止まることはない。

 そのまま真っすぐ歩道のほうへ向かっていく。その先は……壁だ。

 

 壁にぶつかる前に静香先生がブレーキを踏み込む。

 突然の急停車によって、ハンヴィーの後輪が浮き上がり、ルーフに乗っていた麗さんが前方に飛ばされボンネットに背中を強打、歩道に投げ出される。

 麗さんは頭部は打ちつけなかったようだが、投げ出されたダメージで起き上がる事が出来ない。

 俺はすぐさまハンヴィーの扉を開けて外に飛び出る。

 

 勢いで外に出たけど…これどうしよう。

 通勤時間の電車が事故で動いてない駅のホームみたいになってるやん。違いはみんな人間じゃなくてゾンビだけど。物凄く逃げ出したいが、そんなことはできるわけもない。 

 

 自動小銃を構え、一挙動の内に安全装置の解除と連射を敢行(かんこう)。先制の打撃を与えていく。

 

 非常によろしくない状況だ。

 ゾンビの数が多すぎる。倒しても、倒しても終わりが見えない。

 

 冴子さんも木刀で近づいてくるゾンビの頭を文字通り叩き割っている。

 死角から近づくゾンビの頭を吹き飛ばしフォローする。

 

 昔仲間とゾンビモードやってた時を思い出す。

 最後まで近接戦闘で戦い、見事な友軍誤射(フレンドリーファイア)で命を散らした仲間を俺は忘れない。

 

 

「ひょぉッー最高!!」

 

 

 うわぁぁぁ……孝君はトリガーハッピーのスイッチが入っちゃってるよ。

 アドレナリンがバンバン出てるね。

 

 映画でよく見るやられるキャラのパターンだよ。

 それにしても、このままじゃジリ貧だ。弾倉もだいぶ消費した。ここのゾンビを相手取るには弾薬の数が足りないな。

 

 最後の弾倉を叩き込み、ボルトストップを解除し初弾を薬室に装填した。

  

 

「死ぬもんですか! 誰も死なせるもんですか!!」

 

 

 沙耶さんが孝君が落とした散弾銃を使い、俺のカバーが間に合わない方面のゾンビをボロ雑巾にしていく。

 

 

「……私の家はすぐそこなのよ!!」

 

 

 沙耶さんが散弾銃の銃口を下げる。恐らく弾が尽きたのだろう。

 俺も再びボルトストップが作動し、弾切れを報せてくる。

 

 素早く拳銃を抜き、沙耶さんの前に出る。

 

 

「……篠崎」

 

 

 

 そう言えば、初めて名前を呼んでもらったな。

 ずっとアンタ呼ばわりだったから、嫌われていると思ってたがこの土壇場に来て好感度アップですか。

 

 好感度メーターが見えるようにならないかなこのチートヴォディー。

 

 場違いな考えが頭をよぎるが、近づいてくるゾンビに思考を切り替える。 

 コータ君がハンヴィーの上から援護してくれるが気休めにしかならない、孝君は弾切れ、冴子さんは木刀を奪われたらしく素手でゾンビをいなしている。

 

 この状況、詰んでない?

 

 

『これより、支援に入ります』

 

 

 突然、俺の持っていた無線から声が聞こえた。 

 今までうんともすんとも言わなかったのに。

 

 突然、連続した銃声と共にゾンビ共が愉快なぐらいなぎ倒されていく。

 銃声の元は車道の両サイドの上からの銃撃だ。

 

 軽機関銃による連射射撃。

 光の矢―――曳光弾が光の線を引きながら飛来する光景は幻想的にすら見える。

 

 俺たちの周囲が掃討されると"ポンッ"とワインのコルクを抜いたような音が聞こえ、身構えた直後にゾンビ後方に霰のようにグレネード弾が降りそそいだ。

 まるで絨毯爆撃(じゅうたんばくげき)のようだ。

 

 ロープを使っての華麗に懸垂降下(ラぺリング)―――降りてきた兵士たちはゾンビの残りを頭を粉々に砕いて完全に無力化していく。

 ゾンビとの戦いに慣れてるな。ゾンビはとてもタフなのだ。弾丸をこれでもかと浴びせて倒したゾンビでも頭部が無事なら起き上がってくる。兵士たちはそれを理解し完全に無力化している。

 

 こちらに近づいてきた兵士は、体の線からして女性のようだ。そこで、女性兵士のコンバット・チェストハーネスに見覚えがあるエンブレムが留まっていることに気が付いた。

 黒い犬―――ドーベルマンに鎖が幾重にも巻き付いた紋章。

 

 俺がゲームをプレイしていた時のエンブレムだ。

 

 

「お迎えに上がりました。隊長」

 

 

 その女性兵士は、俺の前に来て目出し帽(バラクラバ)を取ると纏まっていた黄金の髪が舞う。

 そこには、見覚えのある顔が、懐かしい顔があった。プレイしていたFPSでNPCとして俺が作成した『シェリー』が見事な敬礼をしていたのだ。

 

 

 




ご意見やご感想があればよろしくお願いします。

あと違う作品も書いているのでよろしくお願いします。
タイトルは、『空から見る終わり』です。
文章がどことなくこの作品と同じところがあるかもしれません。自分の語学力の無さが恨めしいです。これからもよろしくお願いします。

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