学園黙示録~とんでもない世界に迷い込んだんですけど~   作:富士の生存者

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お待たせしました。
今回は短めで面白みが少ないです。
すみません。


第10話 『とんでもないオフィス街』

 高城沙耶SIDE

 

 

 篠崎と宮本と別れてからは、集合地点である『床主東警察署』を目指しているが……。

 

 

「それぞれが勝手に行動するより、どこか安全な拠点を得たのちに行動すべきです」

 

 

 後ろでは紫藤先生のありがた~い演説の真っ最中である。

 その中で隣で居眠りをしているデブオタ(平野)に目を向ける。

 

 よくこの状況で眠ることができると感心する。

 でも、そろそろ私たちも行動を起こさなければいけない。

 

 後ろの連中は紫藤の思想に染まりつつある。そんな連中に私たちから何か言っても時間の無駄にしかならない。

 

 それよりどうやって、アイツ(篠崎)と宮本と合流するか……。

 平野を肘で起こす。

 

 

「あれ、高城さん。おはようございます」

「よく寝てられるわね」

「だって、これじゃ…」

 

 

 合流地点は『床主東警察署』だがこの渋滞状況では、今日中には合流は無理だ。

 どの道も街から避難する人で溢れかえっている。

 

 

「車だけが脱出の手段じゃないわ」

 

 

 視線の先には空港を飛び立った旅客機。

 

 

「あ、洋上空港か」

「そうよ。適切な対処が取られていれば恐らく目的地は、北海道、九州、沖縄あたりでしょうね」 

「僕らもそこにいきますか」

「遅すぎるわ」

 

 

 そう、既に手遅れだわ。

 自衛隊やアメリカ軍が〈奴ら〉を抑制できていても受け入れに厳しい方針を取り始めているだろう。

 他者との接触は〈奴ら〉の侵入を意味しかねない。

 

 それに、多数の避難者を受け入れても物資に限りがある。

 世界中がこの有様では工場が動いているはずはない。

 

 物資が不足すれば、今度は生きている者同士の生き残りを賭けた物資の奪い合いが始まる。

 

 

「そうなったらアンタはどううする?」

「引きこもります」

 

 

 まったくこれだからデブオタは、自分の事しか考えてない。

 

 

「世界中でそうなったら、生き残るのに必要な最小限のコミュニティを維持するために考えるようになれば……どうなるかわかるでしょ?」

「高城さんは、本当に頭がいいんですね」

「何言ってるのよ」

 

 

 それが、今私たちのバスの後部座席で出来上がってきているのよ。

 まったく、なんであんな奴らと同じバスに乗らなければならないのか。

 

 

「自分で気付いているか分からないけどアイツ(紫藤)は、そういうノリになってる。たった、半日でそうなのよ」

「追い出しますか?」 

「それよりも、これからどう生き残るか考えた方がいいわ。信用できる相手と…もう篠崎がいればいろいろ相談できるのに」

「高城さん、篠崎さんの事気になってますもんね」

「馬鹿言わないでよッ!」

 

 

 一息にそうまくしたてた。耳まで紅潮しているのが自分でもわかる。

 誰があんな不愛想な奴の事なんて気にするもんですか!

 

 論理的に考えてアイツ(篠崎)の持つ戦闘力(銃火器)があればこの状況下でのリスクを減らすことができるから気にするだけであって、断じてアイツ(篠崎)自身のことを気にしているわけではない。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 主人公SIDE

 

 

 

 目まぐるしく動く光と影。

 心臓を震わす爆発音。

 

 鼻孔のおくまで、血なまぐさい匂いと何かが焼ける匂いがが突き抜けた。

 

 普通ならサラリーマンやOLなどが行きかうオフィス街。しかし、そこは確かに掛け値なしの戦場だった。

 

 ルールなんて物は存在しない。

 その場に立つすべての者の命が、死という名の暴君の前では裸で曝されている現実があった。

 

 

 もちろん自分の命ですら。

 

 宮本さんの話では、どうしても集合地点に行くにはここからの方が早いということだ。

 できればこんなところに飛び込みたくはないが、どうやら既に手遅れの様だ。

 

 スキンヘッドの男がこちらを指さし何かを言っている。

 マークされたよ。

 

 それに反応するように、エプロンをつけた太ったオッサンとネクタイをしたサラリーマンがこちらにかけてくる。

 それぞれの手には肉切り包丁や猟銃が握られている。

 

 すぐさまアクセルを捻り危険地帯からの脱出を図りにかかる。

 

 

「掴まれ!」

「ッ!?」

 

 

 肉切り包丁を持ったオッサンをその包丁が降り下ろされる前に蹴りをお見舞いする。

 バイクのスピードで威力アップした蹴りは、オッサンを吹き飛ばすには十分だった。

 

 猟銃を持ったサラリーマンは、猟銃で撃たれる前に拳銃で迎撃する。 

 猟銃の弾が散弾だったら回避するのは難しい。

 

 2発、発砲。

 1発目が猟銃を捉え、2発目はサラリーマンの白いシャツを真っ赤に汚す。

 

 

「どうして!? 私たちは〈奴ら〉じゃないのに!」 

「関係ないんだ。彼らにとっては・・・・・・」

 

 

 人々は多くの文明の終焉時に、大きなパーティーを開いた。狂っていると思われるかもしれないが、もはや最後と思い詰めた人間は何をしでかすかわからない。

 

 橋に近づいていき橋の状況が見えてくる。

 

 橋は警察によって封鎖され大混乱になっている。

 これなら小室君たちの橋も同じだろう。

 

 小室君たちの向かった橋へバイクを走らせる。

 少し走ると見覚えのあるピンクのツインテールが視界に入ってきた。

 

 高城さんだ。

 どうやら無事に合流できたようだ。

 

 これで少し心に余裕が持てる。

 

 

  

 




ご意見やご感想があればよろしくお願いします。
次の更新は、リアル生活が忙しくなってきているので1カ月後を予定しています。

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