まず私に飛び込んできたのは鉄の匂い。つまり血だ。思わず目を開けると血だまりが出来ていた。
赤ん坊のナルトは儀式の台座にいて、前にクシナとミナトがナルトを庇って九尾の爪が貫通していた。
私はと言うと儀式の台座の横にタオルに包まれていた。
目の前に大量の血…何故か気持ち悪いとは思わなかった。頭が痛くなったのできっと生前の記憶に関係があるのだろう。
というかこれはかなりのトラウマものだ。2人の腹にぐさっと九尾の爪刺さっている。私はナルトの双子の姉になったと女神は言っていた。つまりこれは今から両親が死ぬのを見るのだろう。
「あーう!!(考えただけでも切ないんだけど!!)」
『はぁ〜い、調子どう??赤ん坊からスタートだから話せないわよ??赤ん坊がペラペラ話せてたら怖いしぃ。上手くいけたようね、それではniceな転生dayを♪』
そんなHave a nice dayみたいなノリで言われても!!
感動的なシーンに遭遇したのは嬉しいけど血の量が半端ない。何回も言うけどこれトラウマもの。子供にこれ見せてトラウマにならないって言う子を見てみたい。と思っている間にもミナトとクシナは苦しそうに息をしている。どう見ても息絶えるのは時間の問題だ。
「…起こしちゃった、ごめんねセツナ…」
ごふっと血を吐きながら心配そうに私達を見るクシナ。私の名前はセツナというのか。うずまきセツナ。辛くて痛いのは2人の方なのに。それなのにずっとこちらを心配そうに見つめている。心が痛い、体は赤ん坊だ。今にも泣きそうな顔をしているだろう。2人が困ったような暖かい目で見てくる。
「クシナ、俺も少しナルトとセツナにチャクラを組み込みたい。それに、当分はナルト、セツナには会えない…言いたいことがあるなら言っておこう」
え、私も会えるの?どうするのか知らないけども会えるのなら嬉しい。会う時には親に顔向けできる人間になるように頑張るよ。貴方達が命をかけて守ってくれたんだから。そんなミナトの言葉に、クシナは少し頷きこちらを向いた。目は優しかった。
「セツナ、ナルト、好き嫌いしないで大きくなりなさい…
お風呂はしっかり入ること、夜更かしばかりしないで早く寝なさい………
後、母さんは苦手だったけど勉強…
うまくいかなくても落ち込まないでいいからね。得意不得意は誰にでもあるから。
そして何にでも話せる友達を…数人でいいの、作ってほしいの。
忍びの三禁でお酒は大人になってから、体に障るからほどほどにしなさい
任務金はちゃんと貯金すること、貯金して損はないからね
そして、忍びの三禁で問題なのが女…セツナは関係ないし、母さんは女だから良く分からないけど…
とにかくこの世は女と男しかいないの、そして母さんのような女を見つけなさい
セツナも父さんのような人を見つけるのよ!変なのに捕まったらダメだからね。
あと、自来也先生には気をつけなさいってばね…
ナルト、変なこと吹き込まれたらダメよ!セツナも変なことされたら殴っていいからね。
………もっと、もっともっと一緒にいたい。これからいろいろ大変だと思う。けれど諦めないで。諦めなかったら報われる日は絶対来るよ。
この先どんなことがあっても愛してるよ、セツナ、ナルト
…ミナト、あたしばっかりごめん…」
「いいんだ、クシナ…
セツナ、ナルト。父さんの言葉は…口うるさい母さんと一緒かな…」
そう言って泣いているミナトとクシナ。うああん!と無意識に叫んでいた。頬には涙が伝った。嫌だ、行かないで!!そう思っているのが伝わっているのか、困ったような顔で二人が私を見る。温かい目が余計に涙腺を緩める。
「八卦封印」
ミナト…いや父さん。
封印と言った瞬間、私の意識は途絶えた。