いろはす色な愛心   作:ぶーちゃん☆

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なんだか最近愛ちゃんがヒロインみたいになっちゃってますが気のせいです。

それではどぞ!


一色いろはは久しぶりに夫婦漫才を楽しむっ

 

 

 

「せーんぱいっ」

 

今まさに惣菜パンにかじり付こうとした所に声を掛けた為、とてもめんどくさそうに視線を寄越してくる先輩。

あ、この先輩はいつ如何なる時であろうともめんどくさそうな視線を寄越してきますけどねー。

 

「……お、おう」

 

むむっ、めんどくさいと言うよりは若干キョドってたんですかね。可愛い可愛いわたしが声を掛けたから……と冗談はさておき、あの日以来、なんだかんだいってわたしを意識してくれてるような気もするんだよね。

それがわたしにとってプラスに働くのか、はたまたマイナスなのかはまだ分からないけど。

 

それはそうとちょっと頬を赤らめたキモ可愛い先輩と目が合った途端に、やっぱりわたしも頬が熱くなってしまう。

イカンイカン!なんか初々しいカップルみたい♪とか思っちゃって、ついニヤケちゃうじゃないですかっ。

 

しかしわたしと合った目は、すぐにわたしの後方へと流れていった。ん?

 

………わ、忘れてたぁっ!!てか今さっきまで気持ちはその一点に集中してたのに、先輩の顔を見た途端に脳内が先輩一色になるってどんだけなの!?

ん?先輩が一色になる?ちょっとそれいいかもっ……お嫁さんに行くんじゃなくてお婿さんに来て貰うってのも、それはそれでなかな……

 

「……え〜っと……なんかお前の後ろに誰かいんだけど……」

 

はっ!妄想を邪魔された!てかお嫁さんお婿さん言う前にまずはプロポーズからでお願いします一生添い遂げる覚悟は出来てますごめんなさい。

 

 

いやいやそんな場合じゃないから!愛ちゃんわたしの背中に隠れてずっとプルプルしてるから!

なんかもうアイロンじゃ間に合わないくらいに制服がシワになってそうだよ……

 

「……あ、えっと、この子はわたしの友達です」

 

「え?一色って同性の友達居たの?」

 

「いやいや先輩だけには言われたくないですから。そりゃ同性の友達は少ないですけどちゃんと居ますぅ!量より質ですよ質」

 

「友達を量とか質とか言っちゃう時点でアレだけどな……で、なんでその友達と昼休みにこんなとこに来るんだ?」

 

そ、そういえば愛ちゃんを紹介しなきゃ!って事で頭が一杯で、どう紹介しようか?とか考えて無かった〜!

 

「あー……えっと、あ、そうそう!前からアホでどうしようも無い先輩と知り合いなんだ〜って話してたら、ちょっと見てみたいって事になったんで見せにきましたっ」

 

小悪魔微笑でピシッと敬礼!

 

「見せにきたって……なに?俺は珍獣かなんかなの?」

 

「先輩なんて珍獣みたいなモノじゃないですかー?」

 

わたしがいつものように先輩を溢れ出る愛情でからかってると、制服が弱々しくクイックイッと引かれた。

はてな?と振り返って愛ちゃんを見ると、それはもう慌てたような表情でウルウルと涙目になって顔をぶんぶんしてた。

 

「ん?どうしたの?」

 

わたしが先輩に聞こえないように小声で訊ねると、愛ちゃんに蚊の鳴くような声で超怒られた。

 

「いいいいろはちゃぁんっ!そっ、それじゃまるで私が比企谷先輩を珍獣扱いで見物しにきた失礼な後輩みたいになっちゃうぅぅっ……!」

 

しまった!つい癖で!……ごめんね愛ちゃんっ……

小声でコソコソ話してるわたし達を訝しげに見てる先輩に視線を戻す。

 

「と!冗談はさておきましてー」

 

「は、はぁ……」

 

勢いで誤魔化してみましたよ?誤魔化せましたかね。

 

「友達の愛ちゃんですー。ホラホラ愛ちゃんっ」

 

わたしはいつまでも背中に隠れっぱなしの愛ちゃんを引っぱりだした。

へっぴり腰でわちゃわちゃと押し出された愛ちゃんがようやく覚悟を決めたようだ。

 

「あ、愛川と申ひまひゅっ……!ひゃ、ひゃひゃがいゃしぇんぴゃいきょんにちやっ…………」

 

……な、なんですと?

わたし17年生きてきて、こんなに噛んだ人はじめて見ましたよ……どうやら比企谷先輩こんにちはと言ったらしい事だけは分かりましたけどもっ。

 

ってヤバイヤバイ!愛ちゃんがあまりの壮絶な噛みっぷりに、恥ずかしさのあまりに沸騰しちゃいそうだよ!

ああ、もう泣いちゃいそう!

 

「せ、先輩!愛ちゃんちょっと人見知りなトコあるんですよっ!」

 

人見知りだとしたらちょっとってレベルじゃない。

 

「そ、そうか……その、まぁなんだ。よろしくな」

 

……なんとも予想外に、愛ちゃんのあまりのヒドさが逆に功を奏しちゃったみたい……

普通ならこんなに可愛い女の子が急にやってきたら、超警戒して超キョドるハズの先輩が、愛ちゃんのあまりのダメっぷりに逆に冷静になっちゃったみたい!

それどころか、なんとあの先輩が初対面の可愛い女の子に対して、なんかまるで優しいお兄ちゃんみたいな眼差しを向けてるなんて……わたしにだってたまにしか向けてくれない眼差しなのに……

 

 

正直かなり複雑……胸がギュッてなる。

やっぱり愛ちゃんって先輩のドストライクなんじゃないだろうか?

年下の城廻先輩みたいな、女の子になった戸塚先輩みたいな、そんな素敵な女の子。

純粋でドジッ子で恥ずかしがり屋さんの年下の女の子。

超シスコンの先輩が気に入らないワケがないんだよね。

 

ちょっと胸は苦しいけど、どうやら掴みはOKみたいだよ……?愛ちゃん。

良かったねっ……

 

「ひ、ひゃぁい!よよよよろしゅくおにがしましゅっ……」

 

 

……………良かったのか?

 

 

× × ×

 

 

顔合わせを済ませたわたし達は、並んでお昼をとっている。

先輩に横にズレてもらって、先輩、わたし、愛ちゃんの順番でいつもの場所に座ってるんだけど、愛ちゃんの溢れ出る天使オーラにいくら先輩がいつもよりもキョドって無いにしても、それでも初対面の美少女がすぐ近くで一緒にランチをしている以上、かなり緊張してるみたい。

 

そして愛ちゃんは言わずもがな。真っ赤になって目をぐるぐるさせてあわあわしっぱなし。

さっきなんてお弁当の仕切りに使われてるアルミのカップごときんぴらごぼうを口に入れてずっとむぐむぐしてたし、もう危なくって目が離せないっ!

 

 

うん……どうしよう?

一応愛ちゃんから目は離さないようにするけど、わたしはせっかくの先輩とのランチを楽しもうかな?

愛ちゃんには悪いけど応援は出来ないってちゃんと宣言したから、わたしが愛ちゃんの為にしてあげられるのはここまでなんだからね?

……ああっ……それは醤油の入れ物だからぁっ……!

 

 

「せんぱい?今日も焼きそばパンですか?炭水化物IN炭水化物とか意味が分かりませんよねー」

 

なんとか愛ちゃんの隙を付いていつものようにくだらなくも幸せ一杯のお喋りしちゃいましょう!

 

「あ?お前焼きそばパンさんをバカにすんなよ?炭水化物に炭水化物合わせるとか、腹ペコな男子高校生には一石二鳥の素晴らしい食い物だろうが。一個食えば二個分の炭水化物が取れるんだぞ?」

 

「だったらその分二個食べればいいじゃないですか……」

 

「ばっか、その分昼飯代が浮くだろうが」

 

「セコっ!そんなんだから女の子にモテないんですよー?」

 

と、絶賛モテモテ真っ最中の先輩に言ってみる。

 

「俺がモテないのは他に山ほど問題があるからなワケだから、今更セコいかセコくないか程度で揺らぐような信頼性じゃねぇんだよ」

 

「……どんな信頼性ですか……」

 

てか今現在、その山ほどある問題を乗り越えて先輩にぞっこんLOVE中の美少女が二人も隣に座ってんですけどねー……ホント分かってないなー。

はぁ……とため息をついて呆れながらも卵焼きをパクりと一口。

 

「お前、卵焼き好きだな。今日も入ってんのかそれ」

 

「だから前にも言ったじゃないですかー?自信作なんですよー?って」

 

「……ああ、まぁ確かになかなか旨かったもんな……」

 

……な!なんですとー!?先輩が照れながらわたしの料理を思い出して褒めてくれた……!

だ、だめですよせんぱいっ!きゅ、急にそんな風に言われちゃったらわたしっ……

 

「も、もしかしてわたしのこと口説いてます!?はっ!まさかそうやってわたしの料理を褒めちぎって毎日お弁当作らせてやっぱりお前の料理は最高だな俺の為に毎朝味噌汁作ってくれよとかってありきたりなプロポーズへの流れを作ろうとしてますかいくらなんでも狙いすぎでちょっとというかかなり嬉しいですけどまずはそこへ行くまでの順番を守ってくださいごめんなさい!」

 

「……お、おう」

 

うう……またやってしまった……

もう!先輩ズルいです!反則です!急にそんなこと言われたら、照れ隠しに振っちゃうに決まってるじゃないですかっ!

まったく。人の事あざといあざとい言いながら、ホント自分が一番あざといんだから!

もうっ……先輩のこのあざとさ、誰かに見せてやりたいっ…………………………………って先輩とのやりとりが幸せ過ぎて、その誰かが居たの忘れてたぁ!

 

 

恐る恐る隣に視線を向けると、愛ちゃんがすっごいびっくりした顔をしてました。

こんなおバカなやりとりを、愛ちゃんはどう見てたんだろう……は、恥ずかしい……

 

 

× × ×

 

 

そんなこんなで無事に(愛ちゃんの)食事が終わり、食後のまったりタイムを楽しんでいる時だった。

 

……なんかさっきから先輩が超チラチラ愛ちゃんを見てんだけど……

そりゃ食事中もずっと一言も喋らずに奇行に走ってた美少女の存在が気になるのは分かりますけど、あなたの隣に鎮座する美少女に些か失礼じゃないですかねっ!?

 

でもやっぱりこのまま全く触れられずにいるのは愛ちゃんも可哀想だし、ちょっと愛ちゃんの為に話を振ってみようかな?

 

「ちょっと先輩わたしの友達をチラチラといやらしい目で見ないでもらえませんかねキモいです」

 

どうやらちょっぴりだけイラっとしてたみたいですわたし。

見られてると知った愛ちゃんが「ひゃうぅぅっ」と真っ赤に俯いてしまいました。やばい過呼吸気味!

 

「なんでちょっと見てただけで変態扱いされなきゃなんねぇんだよ……」

 

やっぱり見てんじゃん……バカはちまん!

 

「そういうんじゃ無くてだな……愛川、だっけ?なんかどっかで会ったことある気がすんだよな」

 

「ひぇっ!?………っ!!……あうう……」

 

先輩の急な問い掛けにびっくりして今日先輩に初めて視線を向けた愛ちゃんだが、目が合っちゃった途端にぶぅぅんっ!と音が出そうなくらい慌てて視線を逸らしてまた俯いちゃった。

もう頭から湯気が出っぱなし!

 

「ちょっと先輩わたしの友達にマニュアル通りのナンパをするのやめてください変態」

 

「……ナンパじゃねぇし。そしてそのセリフの最後に変態ってつける必要あったの?」

 

だってしょうがないじゃないですか。なんかムカッとしちゃったんですから。

でもまぁ先輩如きがナンパなんて出来るワケないもんね。だからホントに会った記憶があるんだろう。

 

「あ!アレじゃ無いですかー?愛ちゃんはわたしと同じサッカー部のマネージャーなんですよー。前にわたしを探しに来たって時にでも見たんじゃないんですかねー」

 

「サッカー部…………あ、そうかあんとき葉山にタオル渡してた女子マネの子か……」

 

ふむ。やっぱそうなんだ。

愛ちゃん可愛くて目立つもんなー。

そして愛ちゃんはなんかちょっと泣きそうな顔して嬉しそう……そりゃ片想いの人に覚えてもらえてればね〜。やはりあざといな比企谷八幡っ!

でも先輩はまだ納得がいかないみたいだ。「いや……でもな……」と顎に手を充てている。

 

そして先輩はようやく得心がいったようにハッと顔をあげた。

 

 

「なぁ、愛川って………文実やってたよな……?」

 

 

 

 

 

先輩が古い記憶から手繰り寄せたその解が、まだろくに会話らしい会話も出来てなかった先輩と愛ちゃんの関係性を一気に変える事になるだなんて…………わたしはこの瞬間までは全然気付いていなかった。

 

 

 

 

続く

 







ありがとうございました!

この作品は10話くらいで終わらせる予定だったんですけど、もう少しだけ延びそうですね><
てかこの状態からあと2話で終わらせたら逆にスゲー……最終話とかすごいやっつけ仕事になりそうw


ではではまた次回お会いしましょう!


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