いろはす色な愛心   作:ぶーちゃん☆

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スミマセン!思ってたよりもずっと更新が遅れてしまいました><;


このSSとは関係の無いところで、クリスマス辺りに勝手に燃え尽きてました……orz


それではどうぞm(__)m



愛川愛は思いがけない遭遇を果たす

 

 

 

「うぅ〜……今日もダメだったよぉ………………えへへぇ〜」

 

嘆いたりニマニマしたりと忙しい私は、現在自室のベッドにちょこんと腰掛けて、先ほど勉強机から大事に持ってきた写真立てとにらめっこしていた。

 

その写真立てに写っている私の初恋の人は、とっても面倒くさそうな顔をして、なぜか頭に包帯を巻いている。

頭に包帯なんていう物騒な写真を微笑ましげに見つめている私は、とてもじゃないけど人様にはお見せ出来ないですよね。

 

 

 

──あの文化祭から早二ヶ月。

季節は秋を通り越して、世間はすっかりクリスマスムード一色になっているこの12月。

私は相も変わらず自分の情けなさと闘う日々に明け暮れている。

 

 

あの日から一体何度目だろう……校内で偶然比企谷先輩を見掛けたのは。

何度目だろう?だなんて嘘ばっかり!

ちょっと日記を開けば、先輩とすれ違った日にちも回数も全部書いてあるし、それどころかわざわざ日記を開かなくたって、その内容は全部記憶してるっていうのにね。

 

そして今日もまた偶然校内で見掛ける事が出来た。

──ホントに偶然だよ!?

もう数度目にもなる廊下での偶然のすれ違いにも関わらず、私は今日も声を掛ける事が出来なかった。

まぁ比企谷先輩からしたら、覚えてもいないであろう私にいきなり声を掛けられたらビックリしちゃうだろうから、結果的にはいいのかも知れないけど。

そんな、今日も安定して情けなの無い私は、体育祭の棒倒しの時にこっそり撮影しちゃった比企谷先輩の写真を見ては、嘆いたりニヤけたりしているのだ。

 

「体育祭……かぁ」

 

思えば、文化祭が終わってからあの体育祭の日々までは、私にとって今までに無いほどの苦痛の日々だった。

 

 

× × ×

 

 

文化祭が終了した直後、校内ではあるひとつの噂が囁かれるようになっていた。

 

──二年生に、校内一の嫌われ者がいる──

 

その二年生は文化祭実行委員にて、空気も読まずに文実メンバー全員に悪態を吐いて文化祭を滅茶苦茶にしかけた挙げ句、本番では一方的に女子を罵倒して泣かせた最低な人間……とのことだ。

 

よくもまぁあの場に居た人間が、あの出来事をそんな風に曲解出来て、さらには第三者に広められるものだな……と、立場が違えばある意味感心出来たのかも知れない。もちろん悪い意味でだけれど。

 

でも当時の私にはそんな余裕は一切無かった……

その噂が広まってくると、今度はクラスの子たちが文実だった私にその事を聞いてきたから……

 

『ねぇねぇ愛ちゃん!噂の最低な二年てどんなヤツぅ!?』

 

……私はそう聞かれる度に、もう本当の事を言ってしまおうか……?って、何度も何度も喉まで出掛けてたんだけど、それは出来なかった。

それをしてしまったら、比企谷先輩が自らを傷付けてまで解決させたあの行為を無駄にしてしまうから……

 

たぶん事実が広まれば、次に矢面に立たされるのは相模先輩。

私としては相模先輩なんてどうでもいいし、むしろ比企谷先輩をあんな目に合わせた報いを受ければいいとさえ思ってた。

でも、それこそが比企谷先輩の行為を否定してしまうことなんだって分かってたから、私は真実を誰にも話せなかった。

 

だから私はその質問を受ける度に決まって、

 

『私はあの先輩が悪い人には思えなかった。だから私はこの噂が嫌い』

 

って答えてた。

たぶんその質問を受ける度に、知らず知らず不機嫌な表情が出てしまってたんだろう。

幸運な事に、私のクラスではその話題が取り上げられる事はすぐに無くなった。

 

もう一人の文実の男の子も初めのうちは面白可笑しく、バカにした感じで受け答えてたみたいだったけど、クラス内がそういう空気になった途端に自分も空気を読んだみたい。

もうあの頃はその人の事は無視しちゃってたから、詳しくは分からないし興味もないけど。

 

 

こうして文化祭の嫌な噂自体はクラス内ではあんまり耳に入らなくはなったんだけど、それでもクラス外ではちょくちょく耳に入ってきてた。

部活に行くと、戸部先輩が『それナニタニくん?』なんてけらけらと笑ってる度に、何度後ろからボールぶつけてやろうかと思ったことか!

……じ、実は一度だけ手が滑ったフリして、後頭部に思いっきりボール投げ付けちゃったりもしたんだけどっ……

『まなっちそれはないわー』って泣きそうな顔してたけど、あ、あれは戸部先輩が全面的に悪いんだもんっ!わ、私だって、あの時は涙目で膨れっ面だったんだからっ!

…………うぅ……あの時は本当にすみませんでしたっ……!

 

 

結局ずっとモヤモヤした気持ちのまま、総武高校は次の大イベント、体育祭の季節へと突入した。

モヤモヤしながらも、実は少しだけワクワクしてた気持ちもあったんだけどね。

文化祭以来、関わる事の出来なかった比企谷先輩と、もしかしたら関われるかもしれないっ!

関わる事が出来なくても、誰の目も気にせずに比企谷先輩の雄姿が見られるかもしれないし、こっそり写真だって撮れるかも!ってね。

 

 

でも、そんなワクワク感を一瞬で吹き飛ばしてくれるくらいに意外な事があった。比企谷先輩が体育祭運営委員でもお仕事をしてるって聞いたこと。

しかも運営委員長が相模先輩という事にも驚いた。

 

 

──まさか比企谷先輩が、また相模先輩とお仕事をしているなんて……

ホントにあの人は、あれだけいつも面倒くさそうな顔してるのに、なんで自分から大変な目に合いにいこうとするんだろう……

 

私は、比企谷先輩がまたあんな辛い目に合わなければいいけど……って心配する一方、ああっ……!私もサッカー部代表として体育祭運営委員になっとけば良かった!……って、毎日頭を抱えてたっけな。

 

 

× × ×

 

 

──体育祭の準備中に流れてきた運営委員の悪い噂は、比企谷先輩では無くて相模先輩のものだった。

初日から遅刻したり相変わらず適当に仕事をしたりとで、委員長と生徒会側からなる首脳部側と、運動部員からなる実行部側での衝突の引き金になったらしいと、サッカー部代表の先輩方が毎日のように文句を言ってた。

 

 

先輩方のそんな文句を聞きながら、だったら私が委員会行くのに!とか、またあの人はそんな状況をなんとかする為に、一人で悪者にならないといいけど……とか、ただ私一人が勝手に悩んでたって何の意味もないというのに、毎日のように一人で思い悩んでいるうちに、気が付けば体育祭の当日を迎えてた。

 

 

結果的に言えば、私の無駄な心配は杞憂に終わり、体育祭はとてもとても盛り上がり無事に終わっていった。

ここでいう“無事”とはあくまでも比企谷先輩オンリーでの話で、体育祭自体は何事も無い完全な無事では済まなかったんだけどねっ。ふふっ、しかもたぶん比企谷先輩によってね!

 

 

私はその日1日、自分が出る競技そっちのけで、あるひとつの事に集中していた。

それはもちろん比企谷先輩の雄姿を見ること!あわよくばその姿を写真に収めること!

……ホント私って、みんなに真面目とかって思ってもらえてるのが申し訳ないくらいにダメダメな女の子だなぁ……

 

でも、いくら探せど比企谷先輩はなんの競技にも出てなかった……

よくよく考えたら、運営委員なんだから当日は忙しいに決まってるよね。

あまりにもガッカリしてトボトボと歩いてる時に、救護班のテントでまさかの発見をしてしまい、どうやってケガをしようかと何度画策したことか……

 

残念ながら?ケガを負うことが出来ないままで肩を落としていた時に始まった棒倒しで、ついに比企谷先輩の出番がやってきた!

 

『わぁ!わぁ!……がんばれっ……!』

 

両手をぎゅっと握ってぽしょぽしょと呟きながら、とにかく比企谷先輩だけに集中して応援してたらソレは起きた。

なんと、赤組の比企谷先輩が、なぜかポケットから包帯を取り出したかと思ったら、赤色のハチマキの上から包帯を巻いて、白組のフリをして棒まで一直線に歩いて行ったのだ。

比企谷先輩……あれは明らかに反則ですっっっ!!

 

 

結局比企谷先輩は、お友達らしきおっきな人と共闘して棒を倒して赤組を勝利に導いたんだけど、当たり前のように反則負けになりましたっ!まったくもう!

まぁそんな様子を笑い転げながら見てた私も私だけどねっ。

 

 

……でも、今回の体育祭で一番意外だったのはこのあとの閉会式での結果発表の時だった。

 

『棒倒しですが、赤組白組双方に反則行為、危険行為が確認されたため、ノーゲームとし両チーム無得点とします』

 

具体的に、“誰が”“どんな”反則行為をしたのかと反発の声が上がるなか、そんな声を無視するかのように、早々と反則問題を打ち切る発表をしたのは、他でもないあの相模先輩だったのだ。

 

 

当時、正直私は信じられなかった。

だって……あの相模先輩が、そんな事をするだなんて……

 

全校男子が入り乱れるなか行われた棒倒しという競技において、いつ、どこで、どのような反則行為があったのだとしても、そんなの正確に分かるはずないし、一体どれが反則だったのなんか判断なんて出来ないはずだ。

でも明確に『反則行為があった』と発表している以上、相模先輩の差す反則とは、比企谷先輩のあの反則だったのは間違いないと思う。

 

であるならば、だ。

相模先輩は……私と同じく比企谷先輩をずっと見ていたってことになる。

もちろんたまたまその瞬間だけを目撃したのかも知れないけど、あれだけ比企谷先輩を嫌ってたはずの相模先輩が、比企谷先輩を見てた……?

 

さらに信じられなかったのが、その反則行為を知ったはずの相模先輩が、大ブーイングの中の結果発表で、大嫌いなはずの比企谷先輩の行為に一切言及しなかったこと。

 

私はあの結果発表の時、心臓が破けるんじゃないかってくらいにバクバクしてたし、たぶん顔面蒼白になってたと思う。

……だって……相模先輩は、あの場で絶対に比企谷先輩の名前と行為を発表して、批判を比企谷先輩に向けさせると思ったから。

 

でも相模先輩はそうはしなかった。

あれだけ嫌っていた比企谷先輩をさらに陥れるチャンスだったのに、運営委員長でもあり結果発表担当でもある自分に批判が集まることさえ厭わずに、頑なに比企谷先輩の名前は出さなかったのだ。

 

 

 

相模先輩は相模先輩なりに、なにか思う所があったのかもね。

噂でしか聞いてないけど、この体育祭運営でもかなり揉めてたみたいだから、その時になにかあったのかな。

もしかしたら相模先輩は……また比企谷先輩と一緒にお仕事をしてるうちに、比企谷先輩の優しさや強さ、そして文化祭の真実にも気が付いたのかもしれない。

 

 

そんなのは単なる私の憶測にしか過ぎないことだけど、文化祭が閉会して以来ずっとモヤモヤしっぱなしだった私の心は、あの体育祭の閉会式の、大ブーイングを受けながらも満足そうに壇上から降りていく相模先輩の表情を見て、ようやくスッと軽くなった気がしたのだった。

 

 

「…………ん?……あ、あれ……?わぁぁ!?も、もうこんな時間!?」

 

 

写真立ての中の愛しい人を見つめながらあの当時の記憶に思いを馳せてたら、気が付けば日を軽く跨いでいた。

 

うぅ〜っ……明日もマネージャー業務が忙しくて大変だろうから早く寝なきゃって思ってたのにぃ……!

あぁっ……早くお風呂入ってもう寝なくちゃっ……

 

 

 

──そう。

ここの所、マネージャーのお仕事がすっごく忙しいのです!

いろはちゃんが、なんとあのいろはちゃんが……生徒会長になってしまったからっ……!

 

 

× × ×

 

 

翌日。

いつものように忙しなく朝練を終わらせて寝呆けまなこで授業を消化し、気が付けばもう午後練の時間。

 

はぁ……今日の午後練も忙しいんだろうな……早くいろはちゃんの居ない部活に慣れないとなぁ……

ていうか……もう!あの子達がお仕事したくないのは分かるけど、葉山先輩たちも、ちょっとくらいあの子達に注意してくれたらいいのに……!

まぁ、私もちょっと恐くて注意出来ないような情けない立場だから、人のことなんて言えないけどっ……

 

……って、あれ?

 

「いろはちゃん?」

 

「あ、愛ちゃん。ここんとこ全然出られなくてごめんね!」

 

「んーん?別にいろはちゃんが悪いわけじゃないんだから気にしないでっ。ところで今日は部活出られるの?……なんか海浜総合高校さんとのクリスマスイベントが大変なんじゃなかったっけ?」

 

いろはちゃんが生徒会長に就任したのはつい先日。

就任してからたったの数日で、他校との合同イベントなんてとっても大変そうなものを任されちゃってるみたい。

 

クラスメイトからのイタズラで生徒会長に立候補させられちゃったいろはちゃんは、当初はなんとか生徒会長にならなくて済むように、平塚先生や城廻前生徒会長に助けを求めてたんだけど、気が付いたらいろはちゃんは自ら生徒会長になることを選んだみたい。

詳しくは聞いてないけど、どういう心境の変化だったのかな。なんか、生徒会長になろうと決めた日あたりは『意外と面白いのかも♪』って、ちょっぴり悪そうな笑顔と声で言ってたけど。

 

うーん……決して男の子には見せないようなああいう笑顔と声だけど、普段からそういうのもちゃんと出せば、いろはちゃんはもっとずっと魅力的だと思うんだけどなぁ……

男の子にとってはそうでも無いのかな……?いつの日か、そういう素のいろはちゃんの良さを分かってくれる男の子に出会えるといいんだけど。

あ、でもいろはちゃんは葉山先輩が好きなんだっけ。

 

「……んー……大変だからこそ……現実逃避?」

 

「現実逃避でお仕事するの!?」

 

……一体、どれだけ大変なのかな……?

そう私が密かに心配をしていると……

 

「……まぁ便利な駒を投入したんだけどぉ……それでもなかなか厳しくってさぁ……」

 

な、なんだろう?便利な駒って……

 

「そ、そっかぁ……私にはよく分からないけどお疲れさまですっ!えへへ、なにはともあれいろはちゃんが来てくれるとホント助かる!」

 

「あー、でもごめんね!気分転換にちょっと寄っただけだから、ホントにちょっとだけしか居られないんだー」

 

「んーん?ふふっ、ちょっとだけでもホント大助かりっ!じゃあいろはちゃんが居てくれるうちに、色々やっちゃおう!」

 

「だね、やっちゃいますかー!……あの役立たずのバカ女どもが目障りだけど」

 

いろはちゃん黒いよっ……!

 

いろはちゃんが来てくれたのはほんの30分くらいだったけど、こうして何日ぶりかに久しぶりに楽しいマネージャー業務を進められたのでした。

 

 

× × ×

 

 

「はーい!ここまででーす!ドリンク用意してあるので、一旦休憩入りまーす」

 

ストップウォッチで計った時間になったので、ピィィっとホイッスルを鳴らして選手たちに休憩を促す。

 

「かー、ちかりたぁ!」「喉渇いたぁ……」「愛ちゃんタオルー」

 

各自思い思いに休憩に入る中、私は次なるお仕事タオル出し!

ちなみに今日はあと二人の女子マネは体調がすぐれずに欠席とのこと。はぁ……

「はい!どうぞ!」

 

「サンキュー」

 

「お疲れさまです!」

 

「あんがと愛ちゃん!」

 

目まぐるしくタオル出しをしながら、いつもなら一番騒がし……元気な戸部先輩が居ない事に気が付く。

 

「?」

 

おかしいな。いつもなら真っ先に『まなっちタオルちょうだーい』『俺のドリンクどこー』って騒ぐのにな。

 

ふとグランドを見渡してみると、戸部先輩が離れた所で制服姿の男子とお話してるのが確認出来た。

あ、お客さまが来てるのかー。

じゃあとりあえず戸部先輩はほっといてもいいかな?

じゃあ次はっと……

 

「葉山先輩、タオルどう…」

 

「隼人くーん、いろはす、知らね?」

 

ちょうど近くに居た葉山先輩にタオルを渡そうとした時だった。遠くから戸部先輩が葉山先輩に、いろはちゃんの居場所について大声で尋ねてきたのだ。

 

ん?戸部先輩とお話してる男子生徒が、いろはちゃんに用事があるのかな?

でも残念ながら、いろはちゃんはついさっき上がったばかりなんだよね。

そう思いながら、私の視線は自然と戸部先輩の方へと向く。

 

 

……どくんっ……!

 

 

「ああ、ありがとう、愛」

 

そう言って、葉山先輩が先ほど私が差し出したタオルを受け取ろうと手を伸ばしてきたんだけど…………もう、私はそれどころじゃ無かった……

いろはちゃんを探す戸部先輩と……そしてお客さまの姿をしっかりと見てしまったから……

 

 

 

 

……なっ!?なんで!?

 

なんで比企谷先輩がここに居るの!?

 

 

 

 

続く

 





お久しぶりの愛色(いろはす色)でしたがありがとうございました!

今回はほとんど説明回になっちゃったので面白くなかったかも知れないですね(汗)
久しぶりの更新なのにごめんなさいですっ><



さて!ようやく八幡といろはすの繋がりを知ってしまったところまでやってきました!
大したこと無いシーンのように見えますが、実はこのシーンこそ!この愛川愛ちゃんというオリキャラが生まれた、産みの親の私にとってはとても感慨深いシーンだったりするのです♪

しかし、マジでこれのどこら辺が4〜5話くらいで終わると思ってたんだよ作者ェ……



ではでは!次回はここまでは遅くならないはずなのでよろしくです☆



あぁっ!あっぶね!忘れてた!


本年は大変お世話になりました!それでは良いお年を☆


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