いろはす色な愛心   作:ぶーちゃん☆

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すぐに終わるだろうと書き始めたこの作品も、なぜか二ヶ月近く掛かってしまいましたがようやく(一応の)最終回と相成りました!

それではどぞ!





いろはす色はあなた色

 

 

 

わたしの愛の告白とも呼べないような酷い告白に先輩は一瞬だけ唖然としたけど、次の瞬間には苦い顔をして視線を逸らした。

先輩はわたしの言葉からどう逃げ出そうか画策してるのかもしれない。

ホントしょーがない人ですねー、この先輩は。この期に及んでまだはぐらかす気満々なんでしょうね。

 

でもね?どんなに苦い顔したって、どんなに逃げようとしたって、その頬の赤みだけは隠せてないですよ?

少なくとも意識はしてくれてるってことですよね?

 

「先輩、ホントは分かってましたよね?わたしの気持ちなんて」

 

「お前の気持ちなんて分からん……さっき言ったろ。俺を好きになるヤツの気持ちなんか分かんねぇんだよ……分かってる事っつったら、一つだけだ」

 

「わたしの先輩への気持ちは勘違い……ですか?」

 

「ああそうだ。だってお前は葉山があれだけ好きだったはずだろ。あんなすげぇ男を好きだった奴が、俺を好きになる訳ねぇだろ…………ただ、振られたあとに近くに居たから、大変な時に手伝ってくれたから、だから好きとかって勘違いしているだけだ」

 

 

……ホントわたしはなんでこんなどうしようもない男を好きになっちゃったんでしょうね?

想定通りだけど、あまりの捻くれた思考回路に思わず苦笑してしまう。

 

「はぁ〜……先輩の言う通り、こんな気持ちがただの勘違いだったら気が楽なんですけどねー。ホントこんな人好きになっちゃったなんて、わたしのラブコメ間違い過ぎですもん。……でも先輩?…………気持ちってそんな簡単なものじゃないんですよ……?」

 

ふぅ〜……コレだけはやりたくなかったんだけどなぁ……

あまりの先輩のダメっぷりに告白自体はとっても自然にとっても落ち着いて出来たのにっ……きゅ、急にドキドキしてきたぁ〜……

ま、まぁこの心臓の鼓動こそ、今からする事には絶対に必要だからいいんですけどねっ……責任、取ってもらいますからね!

 

「……先輩があまりにもダメダメでヘタレで捻くれてて、どうせわたしが何を言っても真っ直ぐには受けとめてはくれないと思うので……今から証拠を見せて……聴かせてあげます」

 

「……は?なんだよ証拠ってって……え?ちょっと?」

 

 

そしてわたしは椅子に座る先輩の頭を震える手で抱え込むように、優しく……でも強く強く胸に抱き締めた。

 

 

× × ×

 

 

「〜〜〜〜〜っ!おまっ……な、なにしやがっ……」

 

動揺しまくる先輩の喚き声が、わたしの胸からくぐもって響いてくる。

そりゃそうだ。だって先輩はわたしの胸に顔をうずめてるんだから。

 

「ちょっ!先輩!あ、暴れないでください!わわわたしだってこう見えて実は結構いっぱいいっぱいなんですからっ!……はっ!まさか動揺するフリして暴れて顔を激しく揺することによって可愛い後輩の胸の感触を顔いっぱいで楽しんでるんですか想像以上の変態ですね正直かなりキモくて無理ですごめんなさい」

 

「……こんな状態でも振られちゃうのかよ……」

 

 

 

そう言いながら先輩はようやくおとなしくなってくれた。

そりゃあんなこと言われたら暴れるわけにはいかなくなりますよね♪

 

「ん!んん!……ま、まぁ先輩がわたしの胸の感触を楽しんでるかどうかはこの際不問にしておきましょう」

 

「楽しんでるの前提で話進めるのは止めてもらえませんかね……」

 

「わたしが言いたいのはですね……?」

 

暴れて離れようとしなくなったから、強く抱き締める手を緩め、優しく包み込むように優しく抱き締める。

 

「先輩……わたしのドキドキを聴いてください……どうですか?すっごいバクバクしてるでしょ?……わたし、こんなに鼓動が激しいのなんて生まれて初めてなんですよ?……今まで色んな男の子に告白されたり、葉山先輩に告白したり、ドキドキした事は何度もありますよ?…………でも」

 

先輩は黙ってわたしの話とドキドキを聴いてくれている。

そんな先輩の顔を、もう一度力強くギュッと抱き締める。

 

「…………でも、こんなに激しくドキドキしたり、こんなにきゅぅって苦しくなったのなんて生まれて初めてなんですよ?先輩。……先輩はこのドキドキも苦しさも、全部わたしの勘違いだって言うんですか?単なる一時の気の迷いだって切り捨てるんですか?」

 

「……………」

 

「…………先輩、それはとっても酷いことなんですよ?残酷なことなんですよ?……………先輩とバカな話で盛り上がってる時はホントにメチャクチャ楽しいんです。先輩がめんどくさそうな顔しながらも、しょーがねぇなぁって、頭を掻きながらワガママ聞いてくれる時はメチャクチャ嬉しいんです。先輩が奉仕部でイチャイチャデレデレしたり、愛ちゃんとイチャイチャデレデレしたりしてるの見ると、心臓が鷲掴みされてるのかって思うくらいにメチャクチャ苦しいんです」

 

「ちょっと待て。イチャイチャデレデレしてばっかみてぇじゃね…」

 

「うるさいです黙ってください」

 

「はい」

 

「…………先輩は今の関係を壊したくないとか逃げ出したいとかそういう気持ちの為だけに、こんなわたしの、わたし達のこんなにもたくさんの嬉しくて楽しくて苦しい気持ち全部を踏み躙ってるんですよ?そんな気持ちは全部全部勘違いだなんて、どんだけヒドいこと言ってると思ってるんですか……」

 

「………………ヒデぇな、確かに……」

 

「そうですよっ!ホント酷いです。ホント最悪です。ホントどうしようもないです」

 

「そうだな……すまん」

 

「……でも」

 

抱き締める力をもう一度弱めて、片手で優しく頭を撫でてあげた。

 

「……でも悔しいけど、わたしはそんな先輩が大好きになっちゃったんです。ぼっちでキモくて捻くれてて目が腐ってヘタレでどうしようもなく格好悪い先輩が、イケメンで頭脳明晰で優しくて皆の人気者の、ステータスの塊のような葉山先輩なんかより、ずっと格好良く見えちゃうんです。どうしてくれるんですか責任取ってください」

 

この鼓動はあなたに届いてますか?

爆発しちゃいそうなくらいドキドキしてるのに、でも穏やかなわたしの心音。

これが勘違いだなんて言わせませんからね?

 

「だからわたし、もう決めたんです。想いを告げたら逃げちゃう先輩が恐くて、わたしもずっと先輩から逃げてたけど、愛ちゃんに教わったから」

 

「愛川に……?」

 

「先輩?逃げたいならどうぞ逃げてください。わたし、追い掛けますから!先輩がどこへ逃げたって絶対捕まえてみせます!先輩みたいなのを好きになっちゃった以上、こっちにだってそれなりの覚悟があるんですからっ」

 

「……ぷっ、お前どこのストーカーだよ……」

 

「ストーカー上等です!わたしだって意地がありますからね!好きな人が逃げるなら、それをどこまでも追っかける。だって……どうしようもなく好きなんですから…………それが一色いろはの答えです」

 

「……そっか」

 

「……そうです」

 

しばらくの沈黙。

こんな風に言っちゃったけど、「お前ウザイわ」とかって言われちゃったらわたしはどうするつもりなんだろう。

んーん?そんなの愚問だよね。だってそんなの決まってる。

 

 

 

「……げねぇよ……」

 

不意の先輩からの返答に、わたしは良く聞き取れなかった。

 

「え?なんです?」

 

「……お前はどこの難聴系主人公だよ」

 

「なに言ってんですかまたなんか気持ちの悪いこと言って…」

 

「逃げねぇよ」

 

「逃げないって……言ったんですか……?」

 

「……てか逃げらんねぇだろ……こんなにガッチリとホールドされちまったら、どこにも逃げようがないだろ」

 

……今はそんなにガッチリと締め付けてるわけじゃないですよ……?

じゃあ、わたしは先輩の何をガッチリと掴んでいるの?気持ち……?

 

「ちょ、ちょっと待ってください先輩……え?それって、どういう意味ですか?…………えっと、その……に、逃げないってことは……わ、わたしの気持ちを、その……受け入れてくれるってことですか!?」

 

嘘?マジですかマジですか?だってそれって……え?

 

「…………っ!だ、だから言ってんだろ……!に、逃げても無駄なら……その、なんだ……逃げる労力が、も、勿体ねぇだろっ…………俺は効率最優先な男だからな……無駄と分かってて頑張って逃げるなんて真似はしたくないんだよ」

 

「……えっと……告白に対しての返答が想像以上に捻くれ過ぎててちょっと分かり辛いんですけど、その、か、彼氏になってくれるって事でいいんですかね……?」

 

「あ?……や、ま、まぁそういうのもなきにしもあらず……かも知れん」

 

「ホ、ホントにいいんですか……?だ、だって、そしたらわたし、今から思いっきり彼女面しちゃいますよ……?」

 

「は?……あー、まぁなんだ……そ、そういうのも、まぁやぶさかでは無い……かもな……」

 

「じ、じゃあ明日から廊下で先輩を発見したら抱きついちゃいますよ……?」

 

「いやそれは恥ずかしいからやめて」

 

「むー、それじゃこの前撮ったハグプリクラを携帯に貼って友達に見せびらかしちゃったりしますよ?」

 

「いやホント無理です勘弁してください」

 

「むー!だったらだったら!明日から毎日手を繋いで一緒に登下校とかしちゃいますよ!?」

 

「アホか。そんなの無理に決まってんだろ」

 

「…………」

 

「…………」

 

あ、あれ?なんかお互いの認識がちょっとおかしいんですかね……?

あれ?別に彼女にしてくれるわけでは無いの?

 

「……せ、せんぱい?」

 

「……お、おう」

 

「えっと、ですね……?わたし、先輩の彼女って事でいいんですよね?」

 

「や、だからさっきからそう言ってんだろ……」

 

な、なんだこれ?告白が成功したようには全く思えないんですけど。

あれ?わたしが変なの?

 

「つ、つまり……わ、わたしの告白はOKで、今から彼氏彼女になるのもなきにしもあらず……彼女面する事もやぶさかでは無いけど、イチャイチャしたりするのは恥ずかしいからやめてくれ……と?」

 

「だからそう言ってんだろ……」

 

「…………………」

 

 

ひ、ヒドすぎる……

わたしの告白も大概だったけど、先輩の応えがこれまたヒドすぎるっ……

 

 

「………………ぷっ」

 

「……へ?」

 

「くくくっ…………あははははははっ!あー、もうホント最悪っ!」

 

「な、なんだよ?なんか笑うとことかあったか!?」

 

「なんなんですかねこの人!笑うとこしか無いじゃないですかー。わたしが一生懸命想いを告げたのに、その応えは、なきにしもあらずとかやぶさかでは無いとかでハッキリと応えるの誤魔化すし、付き合ってからの希望とか全部却下じゃないですかっ!ホントどんだけヘタレなんですかっ」

 

このおバカな先輩をそう小馬鹿にしながらも、顔を抱き締める力をギュッと強める。

だって……なんかもうこの情けないヘタレっぷりが庇護欲そそりまくりで可愛いんですもん!

ホント先輩こういうトコあざとすぎて卑怯です!

 

 

「っ!く、苦しいって……」

 

 

「ホントにもう!なんなんですかこのムードもへったくれも無いヒド過ぎる告白劇はっ…………ふふふっ、わたしの告白も先輩の返事も、ホンっトにヒドいもんですねっ」

 

「…………それは全面的に同意する」

 

「一世一代の覚悟を決めて臨んだ、絶対に素敵でロマンチックになるはずだったバレンタインを、こんなヒドい内容にさせられてわたしショックです!傷心してます!だから………………ちゃんと責任取ってくださいね?せーんぱいっ!」

 

 

「まぁ、可能な限り善処する……」

 

 

 

 

 

こうして晴れてわたしと先輩は恋人同士となった……の?

 

正直こうなれたのは死ぬほど嬉しいんだけど、こんな人とこの先ずっと永遠に生きていくだなんて不安しかない。

でも…………ぷっ!こんな人だからこそ、この先もずっと一緒に居たいって心の底から思えるんだろうねっ。

 

 

そんな不安しかない幸せな未来の為にもまず乗り越えなきゃならない危機は、本日の放課後の独身女性からの呼び出しと、そしてあの部室の恐ろしさに他ならないんだけど、そこはホラ、ね?

 

 

ちゃーんと責任とってもらいますので、どうぞよろしくでーす☆

 

 

× × ×

 

 

 

わたしの心はいろはす色。

その時々によっていろんな色に変化する。

 

偶然せんぱいを見付けた時には嬉しくてポカポカとお日さまみたいな黄色になったり、せんぱいと目が合った時はドキドキしてピンクになる。

せんぱいと静かにまったり過ごせてる時には心落ち着く清らかな白にもなるし、せんぱいが他の女の子と喋ってるのを見ちゃった時なんかは一日中真っ黒にだってなっちゃうの。

 

 

だからわたしの恋心は、いざ口にするまで何色なのか分からない無色透明ないろはす色。

わたしの色が何色なのかは、わたし自身にだって分からない。

だからせんぱいにはわたしの心が何色なのかは教えてあげられないよ?

 

 

 

 

でもね、それでもどうしても教えて欲しいって言うのなら………そーだなぁ、うん!その時わたしはあなたにこう答えてあげる。

 

 

わたしの色ですか?

そんなのもちろん決まってるじゃないですかー?

 

わたしの色…………んーん?一色いろはの恋心の色は……

 

 

 

 

 

 

 

 

八色ですっ♪

 

 

 

 

終わりっ☆

 






と、完全なる八色ENDという事で(実は最後の最後でいろはすに八色と言わせたかったが為にこの話を始めたまである!)締めさせて頂いた今作でしたが、最後までありがとうございました!

まぁ短編集でいろはす色を八幡視点で書いた時のエピローグの時点で、実は八幡はすでにいろはすに心を奪われているのは確定してたんですけどね。


前回の告白に引き続き、当然のことながら八幡からの返答もヒドいものでした(笑)
でも、八幡の口から「好き」だの「付き合ってくれ」だのって言葉が発っせられる姿が想像出来ないんですよねw
好きなんだけど恥ずかしくて口に出せないから、告白してきた相手の言葉にそのまま曖昧な言葉を乗っけて誤魔化すってイメージ。

告白からカップル成立まで、涙も感動もなんにもない無い酷い告白劇ではありましたが、甘い告白劇は他の作者さん達が書いてくださいますので、私は私なりの甘さ控えめな(むしろ無糖まである)まちがったラブコメで締めさせていただきました(笑)
でも、これだけ色々と書いてきて、なんと今回が初のカップル成立となりましたので大目に見て頂けたら幸いです♪


これにて『いろはす色の恋心』は一応の完結となりましたが、ちょっと時間が経った頃にでも、愛ちゃん視点での後日談+αなんかも書くかも知れませんので、もしよろしければもう少しだけお付き合いいただけたら嬉しいです☆



それでは皆様!本当にありがとうございましたっ(*> U <*)
またどこかでお会いしましょうっ☆



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