前半のいろはすは、のんのん日和のこまちゃん(敢えて夏海ではなく)が、よく茫然自失してる時の顔
(゚□゚)←こんなん
をご想像してお楽しみくださいませw
「ひっ、比企谷しぇんぱいは、い、いつもココでお昼やしゅみをしゅごっ……す、過ごされてるんでしゅかっ……?」
「お、おう。雨降ってなきゃ大体そうだな」
「そ、そうなんでしかっ……きょ、教室とかれはしゅごされな……教室とかでは過ごされないんでしかっ……?」
「……ぼっちは昼休みなんかに教室には居場所がないからな」
……………………
「すすすすみませんっ……!デリカシーの無いしちゅもんしてしまいましてっ……」
「ああ気にすんな。そんなの慣れてるしな。てか俺に対してデリカシーなんてもんを感じて貰えたこと自体が初めてまである」
……………………
「…………ぷっ……………はっ!?しゅしゅみませんっ!わわわ私、笑っちゃうなんてななななんて失礼なことをっ」
「だから気にすんなっての。むしろ自虐ネタになんも反応してくれない方がかなりキツいから逆に助かる」
「そそそそうですかっ…………はぁぁ……よ、良かったよぉ……」
「ん?良かった?」
「にゃにゃにゃにゃんでもにゃいでしゅただの独り言でしゅっ!」
「そ、そうか」
……………………
「と、ところで比企谷先輩っ!!」
「お、おう」
「そ、その……比企谷先輩に……ずっと言いたかった事があるんですけど……」
……………………!
「にゃんでしょうか……?」
「あ……あの………ぶぶぶ文実のスローガン決めの時のあのセリフっっ……『人という字は人と人が支え合って、とか言ってますけど、片方寄りかかってんじゃないっすか。誰か犠牲になることを容認してるのが人って概念だと思うんですよね』って!………あれ、実は私すっごい可笑しくって、ホントはもう笑いを堪えるのが大変でしたっ!」
……………………
「は?」
「ひゃぁぁぁぁ!しゅみませんしゅみましぇんっ!きゅ急に変なこと言いだしちゃって!あわわわわっ……」
「あ、や、別にそれは構わないんだが、い、いきなり何の話だ……?」
「すっ、すみませんっ!……あの、私比企谷先輩とお話出来る事がもしあったら……その……じゅっと言いたかったんれしゅ……です。あ、あの時……実は比企谷しぇんぱいのあのセリフに……胸がスッとしたんです……ホントはたぶん私だけじゃなくって、すごく少なかったですけど、あの時あの現場で最初っから真面目に残ってた生徒は……みんなスッとしたんだと思ってます……」
……………………
「それなのに、多数派のサボってた人達の逆ギレの空気が恐いからって、そう感じてた私達までもがそんな空気に乗っちゃうなんて……ホント情けないですよね……」
「……だから気にすんなっつったろ?あれは俺がやりたいからやっただけだ。あ、も、もう別に卑下してるワケじゃないかんな!?……単純に効率良く回す為に取っただけの手段に過ぎないんだから、お前が気にすることじゃねぇよ。むしろ全体がその空気になってくんなかったら、あの行動はなんの意味も無かったんだからな」
……………………
「………はい………うぅ〜……すみませんっ……自分から言い出したことなのに話が逸れちゃいましゅた……と、とにかく私が言いたかったのはそういう事じゃなくって、あの時はホントにホントにスッとしたし、ホントにホントに可笑しかったんでしゅっ!……す」
「そうか……」
「えへへ……私もう、あの時笑い堪えるのホント大変だったんでしゅからっ!俯いてプルプルしてたら涙出てきちゃいましたよぉっ」
「お、おう。ウケてなによりだ」
「もーっ!大体なんなんでしゅかっ、しょの後も『俺とか超犠牲でしょ。アホみたいに仕事させられてるし』とか、『これが『ともに助け合う』ってことなんですかね。助け合ったことがないんで俺はよく知らないんですけど』とかって!も、もう私苦しくって死んじゃうかと思ったんでしゅからねっ!」
「ぷっ……そっか」
……………………………………………………………………………はっ!!
や、やばいやばい……あまりの空気っぷりに意識失いかけてたっ!
結局あの後、その場を立ち去ろうとする先輩を引き止めて、元の位置に座り直して残り20分弱の昼休みを過ごしましょうよって話になったんだよね。
そしたら愛ちゃんがすごい頑張って先輩に話し掛けだして、わたしが口を挟む隙が無くなっちゃって今に至るって感じなのです……
て、てかなにこの感じ!なに先輩デレデレしちゃってんの!?バカはちまんっ!
「それに文化祭始まった直後の雪ノ下先輩とのインカムでのやりとりとか、もうホント面白しゅぎですよっ。なんですか『俺の存在感のなさを揶揄しているのか』って!その後の『そんなこと言ってないわ。それよりさっきからどこにいるの?客席?』『めっちゃ揶揄してんじゃねぇか。ていうか見えてんだろお前』とかもうっ!漫才やってるみたいで、思わずすごい勢いでインカム外して1人でうずくまって笑っちゃってたんですよっ?」
涙を浮かべながら心底可笑しそうにクスクスと笑う愛ちゃんに、すっごいデレデレな先輩ががしがしと頭を掻きながら反論する。
「いやだってあれはどう考えても雪ノ下の責任でしょ。ってか良くそんな細かい事まで覚えてんな……恥ずかしいんで忘れてくんね?」
「えへへ〜っ♪無理ですっ」
「……さいですか」
どうしよう……つ、つらいよぉ……
× × ×
その後も時間一杯まで愛ちゃんと先輩のイチャイチャ(怒)トークは続いた。
愛ちゃんは相変わらず真っ赤になりっぱなしでチョコチョコ噛んではいたものの、少しずつ少しずつ普通に喋れるようになってきたみたい。
大好きな憧れの比企谷先輩との会話に浮き足だってたけど、次第に先輩のお兄ちゃんみたいな優しくて温かい視線と空気に落ち着いてきたんだろうね。
その間、わたしは一言も発せなかった。
なんだろう、この感覚……すごい既視感……でも、その既視感がなんなのか、気付きたくない気がする……
そして一人空気のなか予鈴が鳴り、ようやく今日の昼休みの終わりを告げてくれた。
いつもならホントのギリギリまで先輩と一緒に居たいのに、今はここから早く離れたくて仕方がない。
なにこれ……?わたしってこんなにメンタル弱いの?
「……ではでは先輩、五限に遅れちゃうんでわたしもう行きますねー」
なんか数年ぶりに声を出したかのような感覚がわたしを襲う。
「おう」
「わわっ……じゃ、じゃあ私もししし失礼しますっ」
愛ちゃんはペコリと頭を下げてぱたぱたとわたしを追い掛けてきた。
なんか……わたし愛ちゃんの邪魔してるみたいじゃん……
「あっ……あ、あのひひひ比企谷しぇんぱいっ!」
そしてわたしに追い付く前に愛ちゃんは振り返り、先輩に向かって爆弾発言をしたのだ!
「わわわ私っ!け、結構ここでお昼ごはん食べるの、しゅしゅしゅしゅきかもでしゅっ!…………や、へへへ変な意味とかじゃにゃくって、そのっ、外で食べりゅのが気持ちいいと言いますかにゃんと言いましゅか…………っ!………そのっ!……ま、またお昼にここに来ても良いれしょーかっっ……?」
なっ!なんですとぉっ!
ま、愛ちゃん!急にそんなに積極的になるのっ?
で、でもっ!でも先輩は基本食事は1人で食べる派だって言って……
「ま、まぁ別にここは俺専用の場所ってワケでもねぇしな……来たけりゃ自由にしたらいいんじゃねぇの……?」
ぐはっ!マ……マジですか……!?
「ひゃっ!ひゃいっ!……そ、それではまたっ!し、しちゅれいしまちゅっ!」
もう一度ペコリと素早くお辞儀すると、愛ちゃんは「ひゃあぁぁぁっ……」と小さく悲鳴をあげつつ、両手で頬っぺたを押さえて走ってきた。
わたしの隣に並んだ愛ちゃんは涙目なのにペロッと舌を出しつつ、「うひゃあっ……えへへ……や、やっちゃった……っ」と一言。
でもその声も肩もすごく震えていた。
わたしは素直に感心してしまう。よくこんな状態でこんなに頑張れるなぁ……って。
……わたしは、今こんな状態になっちゃったけど、これから頑張れるのかな……
× × ×
先輩のベストプレイスから一年生の教室へと向かう道すがら、わたしは思いを巡らす。
正直に言おう。わたしは…………高を括っていた。
わたしの方が先に先輩と知り合ったし、わたしの方が先に先輩と絆を築けてて、わたしの方が先に先輩を大好きになったんだもん。
だから、いくら愛ちゃんが先輩好みの女の子だからって、わたしは負けるはず無いって思ってた。
あくまでもわたしのライバルは雪ノ下先輩と結衣先輩であって、三番手ではあるけど、伏兵は伏兵なりの戦い方をして頑張って、いつか先輩を手に入れてやる!って思ってた。
だから平気で……平気では無かったけど……愛ちゃんを紹介出来たんだ。
純粋な愛ちゃんに純粋な気持ちで応えてるつもりでも、やっぱり心のどこかにはそんな慢りがあったんだと思う。
でも、現実は全然違ったんだ。
わたしの方が先に知り合った?先に絆を築けた?先に大好きになった?
バカじゃないの?……現実は全部、愛ちゃんの方が先だったんじゃん……
わたしが先輩に出会う前から、愛ちゃんは先輩に出会ってて、先輩に認められてて、先輩に惹かれてたんだ。
ああ……さっきの既視感、気付いちゃったよ……
あれは、わたしがどんなに頑張っても割り込めないと感じた奉仕部の空気じゃん……
先輩が熱い気持ちを吐き出して奉仕部が崩壊を回避した直後、職員室で平塚先生にディスティニーパスポートを貰った時のあの三人の空気と一緒。
新学期迎えた後に何度も出入りした奉仕部で、三人の輪にわたしには割り込めないなぁ……って感じた疎外感と一緒。
それでもわたしは頑張った。なんとかその輪に食い込んでやろうって!わたしという存在を刻みつける為に爪を立ててやろうって!
そして最近、ようやく一筋の光明が見えてきた気がしてた。
藻掻きまくって、ようやくわたしを先輩の心に刻み込め始められたと思ってた。
「いろはちゃん」
だから、だからこそ先輩に対する想いにもう立ち止まらないだなんて思えたのに。
そこに来ての……そこまで来てのこの疎外感。
それも、今日がほとんど初対面みたいな愛ちゃん相手に……
わたし、もう一度あの疎外感と戦わなくちゃなんないの?
一度目は必死に藻掻いて頑張ったけど、もう一回って言われたら、さすがに心が折れそうだよ……先輩。
「いろはちゃん?」
ああ……気付きたくなかったな、あの既視感に……
× × ×
「いろはちゃん?」
「はへっ?」
うっわ!思考が泥沼にハマってる間に、いつの間にか愛ちゃんの教室前まで到着してたみたい!
わたしどんだけ考え事してんのよっ!
「わっ、愛ちゃんごめんごめん!んじゃあねっ」
D組に到着したわけだから愛ちゃんとバイバイしようとしたところ、愛ちゃんに呼び止められた。
「どうしたの?」
そのまま自分のクラスに帰ろうとしてたわたしが振り返ると、愛ちゃんはすっと居住まいを正し、とてもとても真っ直ぐな瞳でわたしを見つめる。
「……いろはちゃん!……今日は本当にありがとうございました。私、ちゃんと比企谷先輩とお話出来てホント良かったっ!……ま、まぁ噛み噛みすぎてちゃんとお話出来たかどうかは疑問なんだけどねっ……あ〜恥ずかしかったぁ……えへへっ……」
あまりにもヒドすぎた壮絶な噛みっぷりを思い出しちゃったのか、愛ちゃんは真っ赤になって頬っぺたをポリポリする。
「恥ずかしかったし情けなかったけどっ、でもホントに良かった……!やっぱり……比企谷先輩はとってもとっても素敵な人だったっ……」
言いながら俯いてもじもじとスカートをギュッと握ったりリボンを弄ったりする愛ちゃんだけど、「んっ!」と自分に気合いを入れて、もう一度わたしをしっかり見つめる。
「だからホントにありがとう!私、頑張るっ!……雪ノ下先輩とか由比ヶ浜先輩とか、あ、あとは……」
言い淀んで、一瞬複雑な表情をした愛ちゃん。どうしたのかな?
でも顔をぶんぶんしてから言葉を紡ぐ。
「とにかくっ……私頑張るからっ……勝ち目なんて無いの分かってるけど、でも頑張るからっ……だから、だから私……負けないよっ……!」
そこまで言い切ると、とてとてと教室へと入っていった。
……負けない、かぁ。
雪ノ下先輩も由比ヶ浜先輩も超超強敵だよ?
あはははは……その上わたしにはさらに超強敵が出来ちゃったから、なんかもう負けちゃいそうだよ……
頬も耳も真っ赤に染めて教室へと掛けていく愛ちゃんの背中を見てた時、わたしはふとあることを思い出した。
「……あっ」
そういえばわたし、先輩に紹介し終わったら、本当の気持ちを愛ちゃんに伝えなきゃ!とかって思ってたんだった。
こんなの、もう伝えられるわけ無いじゃん……
「あ〜あ……こんなこと香織に話したら、フラグ回収職人乙!とかってワケ分かんないキモいこと言われちゃいそうだなぁ……」
そんな自嘲気味な独り言をボソリと呟きながら、わたしはたぶんふて寝確実な五限へと向けて、重い重い足をゆっくりと運ぶのだった。
続く
いろはすの戦いはこれからだっ!
ってなわけで今回もありがとうございましたm(__)m
あ、別に打ち切りENDなワケでは無いですw
こんな所で打ち切ったら、一体私はどうなっちゃうんでしょうか(ガクブル
前半、地の文がまさかの三点リーダーだけという手の抜きっぷり(笑)
いやいや決して手を抜いてたワケではないですっ!
演出ですよ演出!
そして名前だけですけど、つい香織を出してしまいました><
香織を知らない読者さんゴメンナサイ!他の作品のただのオリキャラなので気にしないでくださいっっっ(汗)
それでは今回も“いろはすがヒロインの”こちらのSSを最後まで御覧くださりありがとうございました☆
また次回お会いしましょうっ