デート・ア・ライブ  the blue fate   作:小坂井

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約一月ぶりの投稿となります。今回は早めに行動出来て良かったと思う今日この頃。

もう少し先の話になりますが、タグにもある番外編は琴里編が終わったら投稿したいなと考えています、ですが、原作を読んでいる方でもストライクまで見ている人は少ないと思うので未読でも楽しめるような様に努力しております。

とはいえ、一番早いのは、原作の漫画を読んでもらう事だと思うので、全然どうなってるのか分かんねえよスカタン!!…と感じた場合、素直に原作を買ってくださいまし。

個人的には絵が可愛いし、原作のデアラにも少なからず関わっていると感じるので読んで見て損は無いと感じましたよ。


21話

「DEM社に拾われたって…あんた何があったのよ…」

 

「さあな、俺の一番最初の記憶は白いベッドで寝ていたところだったから分からん」

 

自分の最初の記憶は白いベッドの上で寝ていたところからであった。起き上がり、周りを見てみると何処かの医務室のような場所で何故か自分は病衣らしきものを着ていて、こんな所にいるのか思い出そうとしても、まるで記憶がスッポリと抜けてしまったように全然思い出せなかった。

 

「あんたの記憶って…いきなりそんなところからなの…?」

 

頬を引きつらせながら琴里は言う。確かに急な話だと思うかもしれないが本当の事なのでそれは仕方のない反応だと思う。

 

「まあな。それで、しばらくベッドにいたら部屋のドアが開いて女性が入って来たんだよ。相手は俺を見て結構驚いてな。なんで自分はここにいるんだって聞いたら道端に倒れていたらしい」

 

帰る場所が無いので、蓮の身柄は一時的にDEM社預かりになった。倒れていた時、体温が四十度もあり丸二日間目覚めなかったらしく、その患者が起き上がったのが女性の驚いていた理由らしい。念のため、様子を見るためにしばらくはベッドの上での生活になった。

 

だが、ベッドの上であったが退屈はしなかった。言葉を通じていたため、何か欲しいものを頼めば持って来てくれたし、落ち着いた頃には同行者がついているが外に散歩することも許してくれた。外に出た時、ロンドンの町並みがとても綺麗だったのを今でも覚えている。

 

「それから二週間経過したんだけど、結局、俺の親は見つからなかった。DEMも努力してくれたらしいけど…」

 

当時の蓮はまだ十歳にも満たない子供、親も家も無い状況でどうやって生きていけばいいかすら分からず、普通だったら孤児院送りにされていただろう。だが、捨てる神いれば拾う神いるとはよく言ったものだ。

 

「そんな時、DEMから俺に提案があったんだ。それは…よかったらここを家にしないか、っていう提案だ」

 

「DEMがそんなことを…?」

 

琴里は顔を顰めた。DEMは身元が分からない子供を引き取り、育ててあげるなんて善意溢れる会社などではない。それに、入院してた時の話を聞くとかなり蓮を不自由させないようにしていたようだ。繰り返すが身元が分からない子供を、である。

 

「その提案を受けてDEMでの生活を始め、戸籍上での親も出来た時、俺はあるものに興味を持ったんだ。それは司令官殿、あんたも知っているものだ」

 

「まさか…それって…」

 

蓮がASTにいること、そして、DEMは表向きは電子部品の開発と製造をしているが裏では何をしているのかを知っていると答えは出てくる。

 

「そう…CRーユニット、顕現装置(リアライザ)と呼ばれているものだ」

 

それを見た時、心の中に孤独の寂しさを吹き飛ばすほどの興味が生まれた。何故、それほど興味を引いたのかは分からない。ただ、CRーユニットについて知りたい、その思いだけが心を満たしていた。

 

「知りたいって言ったら、優秀な先生が仕組みについて教えてくれてね。すべてって訳じゃないけど、自分で満足するものを設計出来るほどのレベルまでは」

 

「…………ッ!」

 

もはや言葉が出ない。もしかしたら目の前にいるこの男はもしかしたら、とんでもない存在なのではないかと琴里は考え始めた。

 

「その頃だったかな。自分の体の異変に気づいたのは…」

 

ある日、自分の背中と右腕に異変を感じた。なんだが背中と右腕が重く、違和感を覚えたのだ。これがなんなのか集中して考えているといきなり赤い剣…のちに〈レッドクイーン〉と青い右手…〈バスター〉と名付けるものが突然現れた(・・・・・)

 

「いきなり出てきた時は驚いたよ。まあ、幸いにも周りには人が居なかったんだが、一人で抱えきれる問題じゃなかったから、嫌われるリスクを背負って、この事を自分が最も信用出来る人達に言ってみた。すると相手は驚きながらも、『大丈夫。気にしなくていいんだよ』って笑顔で言ってきてね。その時は嬉しかったよ」

 

懐かしそうに語る蓮。だが、琴里はその話を聞きDEMが蓮を拾った理由を推測だが分かった気がする。

まるで気にするような感じもない言葉…DEMは最初から蓮の体のことを知っていた(・・・・・)のだろう。

 

やたら優遇した処遇をしたのも蓮が消えては困る理由(・・)が何かあるのだろう。

 

「でも、せっかく教わった顕現装置(リアライザ)は今は出来るだけ関わるのを控えているんだけどね」

 

その理由は簡単だ。十香達…精霊という存在を知ったからだ。自分は他人に優しい性格などではないと自覚しているが、自分の欲求を満たすためだけに何も知らない者を傷つける事は嫌だった。それを知った後は顕現装置(リアライザ)ではなく別の物を使い、DEMに奉仕し始めた。

 

「そして一年前、日本に休暇と世界を見るっていう理由で来たんだが…予想以上に様々な経験を俺に与えてくれたよ。例えば…」

 

蓮は食べ終わったオレンジの皮を摘み、自分の後ろに放り投げた。すると皮は空中で一瞬で凍りつき、バラバラに砕け散って空気中に消えた。これには琴里だけでなく、外で見ていた令音も目を見開いて驚く。

 

「こういう事とかな」

 

「い、今…一体何をしたの…?なんでそんなことが…」

 

「なんでかは分からない。士道が四糸乃の霊力を封印して、四糸乃に触れたら出来るようになってた」

 

琴里とは対照的に冷静な顔で言う蓮。今思えばとてもおかしな事になったと自傷気味に思う。最初は自分が精霊と接触するためだけに利用しようと思ったのだが、士道、琴里、十香、四糸乃と自分にとって大切と思える人と出会い、そして今、秘密の一つである過去について話している。それがとても可笑しく…そしてとても面白く感じた。

 

「それで、真実を知った上で俺をどうする?DEMは〈ラタトスク〉とは違い、精霊の殲滅に積極的な組織だ。もしここで死ねって言われても反論する事が出来ないんだが…」

 

「いいえ、あんたはもう〈ラタトスク〉の一員よ。それならもう家族も同然だから、殺したり、追放したりする気は無いわ。それにあんたはもう、二人の精霊を助ける手助けをしたじゃない」

 

琴里の真っ直ぐな言葉に甘いな、と思ったがそれが琴里の良さでもあるのだろう。そんな所が本当に羨ましく見えてくる。

 

「…最後に聞きたいことがあるんだけど、あなたはどうして学校の屋上に来たの?」

 

蓮にはある容疑がかかっていた為、狂三の攻略の事を教えてはいなかった。なのになぜ屋上で戦っている事が分かったのかが分からなかった。

 

「…四月十日、この日、俺は士道、〈ラタトスク〉、そして…精霊である十香と初めて出会った。そっちもその瞬間を見てたらしいな。だが、俺があの場所にいたのはただの偶然ではなかったんだ。空間震が起こる少し前、誰かに呼ばれる感覚がして、その方向に行ったら十香と出会った」

 

「…ッ! つまり、あなたはこう言いたいの?精霊の存在を感じることが出来ると(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「それが、あの屋上に来れた理由だよ」

 

嘘を言っているのかと考えたが、それが本当であれば十香の所に居た事も屋上に来た理由もすべて納得がいく。

 

「俺は最近、精霊と呼ばれる存在について、詳しく調べている。すべては自分を知るためだ。だから、精霊であるあんたに問う。精霊とは一体なんなんだ(・・・・・・・・・・・)?」

 

普段とは違う。真っ直ぐに琴里を見つめ、真面目な表情で聞く蓮。だが、琴里は顔を横に振った。

 

「残念だけど、私は最初から精霊じゃないわ。五年前、なった(・・・)という表現があっているわ」

 

「それは…どういう意味だ?」

 

「細かい事は覚えてないわ。ただ、その事だけは覚えているのよ」

 

「そうか…」

 

そう言うと、席を立ち、入ってきた扉へ向かう。これ以上聞いても何か聞き出せそうになく、自分の聞きたいことだけはしっかり聞くことが出来た。結局真相は不明のままだったがそれは仕方のない事だ。

 

「手荒かったけど、一応言っておくわ。私を止めてくれてありがとう。あの時の私は自分で自分を止められない状態だったから…。あとDEM社をあまり信用しない方がいいわ。これは警告よ」

 

帰ろうとする蓮の背にそう言い放つ琴里。振り返りどういう事だときいても「さっさと帰りなさい」といって疑問に答えることは無かった。

 

部屋を出るとそこには令音が待っていた。

 

「…君は普通の人間ではないと思っていたが、そんな過去を持っていたとはね…」

 

相変わらず隈だらけの目で見つめてくる。いつも思うのだが、令音はどうも表情というか何を考えているのかがよく分からない。今も驚いているのか、そうでないかすら不明だ。

 

「自分の過去をこうやって話したのは初めてだよ。まあ、信用されていると受け取ってもらいたいね」

 

「そうか…琴里とシンのデートはこれから二日後にしてもらう予定だ。場所はまだ未定だが…決まり次第、連絡させてもらうよ。君も気になるだろうからね」

 

令音の言葉に「了解」と答えるとこのまま部屋を出て行く。出て行く蓮の背中を令音はジッと見つめていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

蓮の家はそこそこの大きさである。大きいといってもあくまで"一般人から見たら"という意味であり、金持ちの持っている屋敷ほどの大きさはなく、高校生の子供一人と猫が一匹住むには十分過ぎる大きさがある。

 

そんな家の地下室、隠し部屋とも言える場所に蓮はいた。その部屋は部屋の大きさ自体はたいしたことないが、部屋中に機械や電子機器が散乱しており、その部屋の光景はお世辞にも普通とは言えない。

蓮はそんな部屋の机に座り、パソコンのキーボードをカタカタと叩いている。画面には何かの設計図らしき物が映っており、キーボードを叩くたびに設計図に新たな文字が加わっていく。

 

「ふう…こんなもんで十分か…」

 

小さく呟くと設計図のデータを保存したUSBメモリを引き抜き、近くにあったPDA(携帯情報端末)を手に持ち、画面を見ると、最初に現れたのは『着信あり』という通知だった。その数、なんと二十件。

 

蓮は小さく舌打ちすると、纏めてすべてのメールを削除、消去する。だが、今日来たのはメールだけではないようだ。

 

友好的ではない赤い通知、それは今まで通り自動で対処され、相手のサーバーに反撃を与えた証だった。それを見るたびにため息のしたくなる気分だ。

 

そんな気持ちでPDAにUSBメモリを挿入してデータをDEM本社に送る。これで、後はあっちの人間が勝手に開発を進めてくれるだろう。

仕事が終わり、身体を伸ばしてリラックスする。

 

そして、椅子にもたれかかり、意味もなく部屋の天井を見つめる。その顔は僅かに笑っていた。

 

「…いつか、なくなってしまうのなら、最初から何もいらない…。そう思ってたんだけど…そうでもなかったかな…カレン」

 

ふと漏らした独り言は、他の誰かの耳に入る事なく消えていった。

 

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「ああっもう…忙しい…」

 

次の日、駐屯地を訪れた蓮は大量の端末と格闘していた。

 

その理由はDEMから配備される試作機、〈ホワイト・リコリス〉についてやることが山ほどあるからだ。普段のCRーユニットの整備ですら決して楽とは言えない苦労をしているが、それよりも大きく、複雑な機体となるとどれほど苦労するのかは想像に難しくない。

 

「大変そうですねー。蓮はー」

 

笑顔でそう言ったのは、近くにいた整備主任のミリィだ。主任なのだが、ミリィは蓮と比べて明らかに負担が少なく、楽そうに見える。

 

「お前はここの主任だろうが!なんで俺より楽そうなんだよ!?」

 

「そりゃあ、ミリィがやるより蓮がやった方が効率良い作業があるからですよー。いやぁ、もうすぐ一家に一人、蓮の時代が来るかもしれませんよ」

 

「お前…後で覚えてろよ…」

 

蓮がそう言うと、ミリィはハッとした様子で俯き、何かブツブツと呟き始めた。なにを言っているのか気になり、耳を傾けて見ると…

 

「まさか…後で物陰に連れて行かれ…無理矢理組み伏せられ…『さあ、お仕置きの時間だ』…蓮はそう言うとミリィの首筋に舌を這わせて…服の上から優しく胸を揉んでくる…初めは恐怖によって出てた声は…いつの間にか色っぽい声に変わっていき…ミリィの身体をある程度堪能した後、指をズボンにかけて…誰にも見せたことのない乙女の秘所を………ああ…ダメですよ蓮!ミリィは初めては優しく!ベッドの上でぇ!あ、でも蓮になら激しくされてもぉ!!」

 

勝手に盛り上がるミリィ。一人でそこまでテンションを上げることが出来る彼女を、蓮は呆れを通り越して羨ましく思いながら、手に持った端末に視線を向けた。

 


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