デート・ア・ライブ  the blue fate   作:小坂井

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ど、どうも皆さん、お久しぶりです。(目を逸らしながら)
えっと、これだけ空いた言い訳をさせて頂きますと、大学受験の勉強に加え、ISの方を優先していたのもありここまで遅れてしまいました(土下座)

ですが、今まで執筆する事は止めていなく現在、番外編含め、そこそこの話数のストックがあります。ただ、投稿するのを忘れていました。

こんな亀以下のペースでの投稿になりましたが、本編をどうぞ。


20話

時計の短針が右側に傾いた時間。

 

蓮と狂三は同じベッドに入っており共に服は来ていない。蓮は昼間の疲れからかぐっすり眠っていており、狂三はそんな蓮を微笑みながら見つめていた。

 

改めて見ると本当に綺麗な顔をしている。もし、呼吸による胸の上下が無かったら人形だと言われても誰も疑わないだろう。そんなに蓮の首元に腕を回して自分の胸元に抱き寄せて優しく包み込む。

ずっとこの時を待っていた。ただ思い出すだけではない、こうやって見て、触れて、触る事ができる。それだけの事が狂三はとても嬉しかった。

 

「〈刻々帝(ザフキエル)〉…」

 

蓮を抱きしめながら小さくそう呟くと部屋の中に巨大な時計が出現して空中に留まる。そこから短銃を取り出して宙に掲げた。

 

「〈刻々帝(ザフキエル)〉ーー【十の弾(ユッド)】」

 

すると時計の『X』の部分から影が滲み出して短銃の銃口に吸い込まれる。それを確認した狂三はその銃口を寝ている蓮のこみかみに当てて少し躊躇いがちに引き金を引く。

 

だが、銃に撃たれたというのに蓮から血は出なく、それどころか銃痕すら無かった。

狂三が撃った〈刻々帝(ザフキエル)〉の【十の弾(ユッド)】、その性質は撃った対象の過去の記憶を狂三に伝える力があり、それを蓮に撃ったということは今までどのような人生を送ってきたかが分かるのだ。

 

撃った瞬間、今までの記憶が狂三に流れ込んで来る。彼の今までの喜び、悩み、そして…悲しみもすべて。

 

そして、一番最古の記憶…蓮にとっては始まりとも言える時間が見えてくる。そこには三十代ほどのくすんだ銀髪の男性がベッドに座った幼い少年の頭を微笑みながら撫でており、その男性はこう言った。

 

『今日から君の名前は・・・・・・・だ。そして、私も君の家族の一人になろう』

 

まるで洗脳のようにも聞こえる言葉にそれこそ少年は"神"でも見るかのように目をして、こくりと頷く。それが始まりの記憶であった。

 

「これは…ッ!」

 

その記憶を読み取った狂三の目に涙が溢れ出す。ASTにいる時点でまさかと思っていたが、蓮はもう人間の持つ欲望にすでにとらわれていた。本人すらその事に気付かずに。

 

「遅かった…ようですわね。でも…必ずあなたを救います…必ず…」

 

改めて蓮をしっかり抱きしめる。始めは敵意を抱かれても、今は心と身体は一つになり通い合わせる事が出来た。その奇跡が再び起こることを強く願いながら狂三は目を閉じた。

 

「しかし…蓮さんはわたくしと会う前から、随分と女性に好かれていたようですわねぇ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「う…ん…」

 

いつも通りの朝。普通、蓮は自分でゆっくり起きるか、ミルクに顔を舐められながら起きるかだったが今日はどちらでも無かった。

なんだか暖かい熱が伝わってきて、誰かに包まれているような感覚がする。今までは感じた事はない感覚だが悪くないと思う。

 

この正体がなんだと思い、目を開ける。すると目の前には肌色が広がっており、視線を上に向けていくとそこには幸せそうな顔で眠っている狂三の顔があった。

 

(狂三…!? なんでこんな状況に…?)

 

冷静に考えてみると狂三は自分を抱きしめながら眠っていた。蓮は寝相が悪くないのでそのせいで狂三の腕の中に飛び込んだとは考えにくい。となると狂三が寝る前に自分を抱きしめたとしか考えられない。

 

前から思っていたのだが、狂三は自分に対して過度な愛情を抱いているように感じるのだ。まだ出会って半年も経過してないというのにこんな感情を一目惚れで抱くものなのだろうか。まあ、欲望を孕んだ考えで近づいてくる人間と比べれば狂三の方が何倍も嬉しいし気持ちに応えてあげたくなるものだ。

 

「うぅん…蓮さん…ダメですわよぉ…そこは…」

 

寝言だろうか、狂三がやたら色っぽい声で呟いた言葉に、夢の中で何をされているんだと思ったがそれを確認する手段はない。改めて考えると朝、起きたら隣で一糸纏わない美女が自分を抱きしめながら寝てたというのは男の願望の一つとも思えてくる。

 

もし、クラスメイトの男子に向かって『朝、起きたら狂三が自分を抱きしめながら全裸で寝ていた』なんて言ったら相手は血の涙を流すレベルではないほど悔しがってくる事が予想できる。まあ、言うつもりなど微塵もないが。

 

狂三の腕から逃れ、周囲に散らかっていた自分服を着て、寝室を出る。リビングに到着するとミルクが出迎え、ニャーと小さく鳴く。

 

「よしよし、ちょいと待ってろよ」

 

ミルクのエサ皿の中に昨日ペットショップで買ってきたフードを入れて床に置く。すると一直線に向かってきてガツガツと勢いよく食べ始める。その光景に小さく笑い、水の入った皿も用意したあと、蓮はカップを二つ用意してコーヒーを作り始める。

 

コーヒーを二人分作り、カップを持ち、寝室へ向かう。寝室では狂三が上半身を起こして眠たそうに目を擦っている。ついさっき起きたようだ。

 

「おはよう、狂三」

 

「ん…おはようございます。蓮さん」

 

狂三は眠たそうな顔をしながら蓮の差し出したカップを受け取り一口飲む。

 

「あら、とても美味しいですわ」

 

「そうか…それは嬉しいな」

 

この世に自分の作ったものに対して良いと言われて嬉しくない人間などほとんどいないだろう。当然、蓮もその例に漏れない。嬉しそうにしながら自分もコーヒーを飲む。お互いのカップが空になった頃、狂三はある事を蓮に言ってきた。

 

「蓮さん…よかったら、わたくしとともに来てくれませんか?」

 

それは蓮と狂三の駆け落ちを意味していた。愛する人とともにこれからを生きる…。人間にとって幸せの一つと言えるだけの価値はあるだろう。

 

「来てくれないかって…狂三はどこに行くつもりなんだ?」

 

「あなたと二人で居られる場所ならどこでも構いませんわ。誰もいない自然の中で二人だけでずっと、ともに生きていくような事でも…」

 

自分を愛してくれる人二人きりで生きていく…。蓮もこの事はとても幸せな事だと思う。だが、すでに答えは決まっている。

 

「…残念だが、俺は自分の正体を知って、やるべきことを終えるまで逃げるわけにはいかない。それに…俺が消えたら十香達が悲しむ」

 

その答えを聞いて残念そうに顔を俯ける狂三。狂三にはこの答えがどうしても理解できなかった。

 

「あなたは…あなたは何故、そこまで人との関わりを続けるのかがわたくしには分かりませんわ。その身体や心は誰からも理解されず、ずっと孤独を味わい、本当の名前(・・・・・)さえ、自分から他人に話したことすらないというのに…」

 

「狂三…まさか、俺の本名を…ッ!」

 

「はい…失礼を承知であなたの記憶を見せてもらいましたわ」

 

「そうか…どうやったかは聞かないが、その通りだよ。でも、そんな俺にも"守りたいもの"ができた。それらを見捨てることは出来ない」

 

「そう…ですか…」

 

「でも、俺のやるべきことが終わったら、狂三とそうなってもいいかもな…」

 

今はダメだが、いつかそのようになるのも悪くない…そのような意味を込めて蓮は言う。狂三は俯いていた顔をゆっくり上げる。最初はポカンとした表情をしたがやがて嬉しそうな笑顔になる。

 

「約束ですわよ。もし、嘘だったら承知しませんから覚悟してくださいまし」

 

「約束さ、そんでこれが…」

 

そこまで言い、狂三のところまで行くと両手で頬を包み、キスをする。

 

「これが指切りの代わりだ。これで信じてくれるか?」

 

狂三は答えず、身体を蓮に預けるようにもたれかかってきた。お互い理解されない者同士の傷の舐め合いとは思いたくない。蓮にはこの感覚はただ心地良かった。

 

「蓮さん…最後にお聞きしたいことがありますわ、あなたはここに来て、妙な事はありませんでしたか?」

 

「妙なこと?」

 

狂三の奇妙な質問の意味がよく分からず、ついオウム返しで答えてしまう。

 

「妙な事ならたくさんあるが…そうだな、強いて言うならここに来てから毎日同じ夢を見ていた時があったんだよな」

 

「同じ夢…ですの?」

 

約一年ほど前、初めてこの天宮市に来て、この家を見た後、すぐに世界へ飛び立った日から毎日寝ると気味の悪い夢を毎日見たことを狂三に説明する。だが、この夢もいつの間にか見なくなっており、詳しい時までは覚えてないが確か十香の霊力を封印した四月頃から見なくなった気がする。

 

「そう…ですの…そんな事が…」

 

狂三は話を聞いた後、そう小さく呟いた。その時の狂三はまるで何かの確信を得たような様子に見える。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それから数時間後、蓮の携帯にメールが来た。その相手は令音からで、その内容は『琴里が目覚めたから会いに来てくれ』とあり、お見舞いに果物を入れた袋を持ち、狂三と別れて〈フラクシナス〉へ向かった。

 

「ん…来たか…」

 

〈フラクシナス〉に入って最初に出迎えたのはメールを送ってきた張本人である令音だった。

 

「司令官殿が目覚めたって書いてあったから、会いにきた」

 

「私について来てくれ。案内するよ…」

 

そう言って令音は歩き出す。琴里を痛めつけたので、何か言われるのではないかと少し気にしていたが令音の様子を見る限りそんな怒っている様子ではなさそうなので少し安心した。まあ、令音が怒っているところなどまったく想像出来ないのだが。

 

しばらく歩き、あるドアの前で止まり、横にあった電子パネルに番号を打ち込み、手のひらをかざし、最後に声紋認証を終えると左右にドアが分かれて開く。

その部屋は手前と奥がガラスで仕切られており、奥は普通の部屋のように内装が整っていて琴里は家具の椅子に座っていた。こちらが入ってきてもなにも反応しない所から推測するとこちらからはガラスに見えるが琴里側から見るとだだの壁にしか見えてないのだろう。

 

「…琴里が君と話したがっていてね。呼んできてくれって頼まれたのさ」

 

令音は琴里のいる部屋への入り口のようなところに立ち、さっきと同じ手順をして扉を開ける。

 

「…やっと来たわね。まったく、女性(レディー)を待たせるなんてマナーがなってないわ」

 

「そいつは悪かったな。お詫びに果物を持ってきたから許してくれよ」

 

蓮は琴里の向かいに置かれた椅子に座り、袋からオレンジと果物ナイフを取り出して皮を切り始める。

 

「………………」

 

「………………」

 

蓮が作業を開始するとお互い沈黙してしまう。琴里は聞きたいことがあるはずなのに喉に小石が詰まったように言葉が出てこないのだ。しかし、意外にもこの沈黙を最初に破ったのは蓮だった。

 

「どうしたんだ、俺に言いたい事があるから呼び出したんじゃないのか?」

 

「あら、女性に言われるなんてそういう趣味でもあるの?」

 

「俺も言いたい事があるけどレディーファーストだよ」

 

そう言って皮に包んだオレンジを差し出してくる。皮は上から半分ほどしか切ってないが実はしっかり切り分けてあり、食べろと言いたいのだろう。琴里は実を一つ摘み取る。

 

「じゃあストレートに聞くわね。あなた、何者なの?」

 

「あんたの兄貴の同級生」

 

「誤魔化さないで。真那から話は聞いているの」

 

真那の名前を聞いた途端、蓮の視線が鋭くなる。琴里はこの反応を見て蓮と真那はなにかしらの関係があると予想した。

 

「へえ…真那と会ったのか、それで何を聞いたんだ?」

 

「昨日、真那と話してた時、相手がうっかり口を滑らせたのよ。DEM社は蓮の家だ…ってね」

 

そこまで聞いたのならもう誤魔化すのは無理のようだ。そんな諦めな気持ちが心に浮かぶが同時に自分の本当の事を琴里に話すことが出来るということに喜びを感じている自分がいた。何故そんな気持ちが出てくるのかは分からない、だがきっともう自分を偽らなくていいという嬉しさなのだろう。

 

「…分かった。これからその言葉の意味を話すよ、ただ、これだけは頭に入れといて欲しい。これから話す相手は〈ラタトスク〉じゃない、五河琴里と村雨令音の二人だけだ(・・・・・)。それだけ理解して欲しい」

 

組織に向かって話すのではない。これから二人の人間…琴里と令音に話すと蓮は言う。この理由はまだ〈ラタトスク〉には知っていることよりも知らないことの方が多いので、まだ完全に信用できるとは言えないのだ。

 

「…分かったわ。令音もそこにいて聞いているでしょうし、話を始めて構わないわよ」

 

「OK、まずどこから話そうか…そうだな…」

 

少し悩んだが、自分自身について知ってもらう必要があると思い、まずは生い立ちから話す必要があると考えた。

 

 

「…俺は、幼い頃、DEM社に拾われたんだ…」

 




こんな内容の話ですが、次を待っていてくださると嬉しいです。ていうか、見捨てないでくだs

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