(・∀・)むきゅー
咲夜曰くレミリアは寝ているそうだから、パチュリーの元へと向かう。
それにしても、咲夜は記憶が戻ってくれたってことで良いのか? お帰りなさいませとは言ってくれたが……う~ん、わからんな。戻ったのならそう言ってくれれば良いのに。
しかし美鈴と言い、咲夜と言いどうしてそんなに早く記憶が戻ったんだ? ルーミアは10年以上かかった。フランドールだってアレだけ話をしてあげたのに未だ記憶が戻らない。其処に何か法則でもあるのかねぇ?
そんなことをうだうだと考えていると、パチュリーのいる図書館の前までいつの間にか着いていた。そして両開きの扉を開け図書館の中へ。
遊びに来たよー。
相変わらずその莫迦みたいに広い図書館の中は、薄暗くジメジメとしていた。こんなところにいるからパチュリーだって喘息が治らないんじゃないか?
高い天井まで伸びている本棚がいくつも並んでいる。此処だけでどれだけの本があるのだろうか。残念ながら俺に此処にある本はほとんどが読むことはできない。英語ならまだなんとかなるが、ラテン語とかは無理です。
さてさて、とりあえずパチュリーを探さなければ。
何語で書いてあるのかすらわからない本の背表紙を横目に、パチュリーを探す。これだけ本どうやって集めたんだろうな。俺がいた時よりもさらに増えてそうだし。
そして椅子に座り、ものすごい速さで本を読み進めているパチュリーを見つけた。机にはいくつもの本が重ねられている。変わってないね、君も。
静かな図書館にパラパラと本を捲る音が響く。
「……何か用?」
視線を本に向けたままパチュリーがそんな声をかけてきた。
「此処ってエッチな本ある?」
「…………」
無視された。
でも俺は挫けない。
「此処ってエッチな本「いや、聞こえてるから。死ね」
久しぶりの再会だと言うのに、随分と辛辣だった。そんなパチュリーの態度に心が折れそうになる。
これだけ沢山の本があるのだし、春画の一つくらいあってもおかしくはなさそうだが。図書館に来たらそれ探すのが礼儀だろうに。
「……何をしに来たの?」
「久しぶりにパチュリーと会いたくなったんだよ」
きっと君は忘れてしまっただろうけれど、覚えてる? 最初に話しかけてきたのはパチュリーからなんだぜ?
まぁ、君は口数が少ない奴だったから、話しをする機会は少なかったけど。
「確かに私は貴方のことを覚えていないわ。でも、貴方のことは知っていたわよ」
うん? どう言うことですか? 覚えてはいないが、俺のことを知っていたって。
「不老不死で変態でアホでバカで妹様を救った奴。それが貴方でしょ?」
ものすごい勢いで罵倒された。興奮する。できれば冷たい視線を向けられながらもう一度言ってもらいたい。そして踏んでもらえればなお良い。
そう俺へ罵詈雑言を浴びせたパチュリーは、一冊の本を投げてきた。
その本を受け取り適当に開いてみたが、何が書いてあるのかはわからない。何語ですか? これ。
あと文字汚いね。とてもじゃないが読めたものじゃない。
「これは?」
「貴方のことが書いてある本よ。貴方がまだ此処にいた時、私が書いたもの」
えっ……そんなのアリなんですか?
いや、待て。そりゃあそうだ。考えてもみろ。確かに俺に関する記憶は消えても、俺に関わった全てが消えたわけじゃない。事実、博麗神社には神便鬼毒酒らしき物は残っているし、フランドールだって俺が渡した傘を持っていた。
なるほど、形にして残すなんて言う裏技があったのか。
しっかしねぇ、そもそもまた帰って来られることを知らなかったしなぁ。こればっかりはもうどうしようもない。
そして――
「……パチュリー文字書くの下手なんだね」
これなら俺の方がよっぽど上手い。
「ち、ちがっ……それは私のために書いただけで、別に他人に読ませるために残したわけじゃないから良いのよ!」
座っていたパチュリーが立ち上がり、慌てたように言った。そしていきなり立ち上がったせいか、けほけほと咳き込むパチュリー。
何やってんだろ、この人。
「ま、まぁ、とにかく私はちゃんと貴方のことをわかるから安心しなさいな」
思い出してくれたみたいではないが、これはこれで良いのかな。しかし、あの本にどんなことが書いてあるんだろうね? まぁ、良いことは書いてなさそうだが。
「それじゃ、私はやらなきゃいけないことがあるから邪魔はしないで。何か用事があるなら使い魔に言いなさい」
そう言ってパチュリーは椅子に座り、恐ろしい速度で本を読み始めた。そしてまた本を捲る音だけが響く静かな図書館へと変わった。
むぅ、構ってもらえない。これじゃあ暇になってしまうじゃないか。かと言って邪魔するのは不味いしなぁ。
仕方無い、本でも読んでいるか。これだけの量の本があるんだ日本語で書かれたものだってあるだろう。
とりあえずパチュリーの言っていた使い魔を探さねば。俺はまだ会ったことがないが、たぶん小悪魔のことだと思う。
それにしてもパチュリーって自分で何かを書くこともあるんだな。それなら日記とかも付けているのだろうか? まぁ、魔法を扱う者として記録に残すのは大切なことなのだろう。でも、どうせ俺じゃあ読めないんだろうなぁ……
そんなことを考えていると、いくつかの本を抱えた女の子がパタパタと飛んできた。
ああ、アレが小悪魔なのかな。
「ちょいと頼みたいことがあるんだけど良いか?」
「?」
パタパタと飛んでいた小悪魔を呼び止める。忙しいところ悪いね。
此方の言葉は通じるらしいが、言葉を喋ることはできるのだろうか?
「持ってきてもらいたい本があるんだけど頼めるかな?」
俺がそう聞くと、小悪魔はコクンと頷いた。
う~ん、どうやら喋ることはできなさそうだ。まぁ、ただ喋ってくれないだけかもしれないが。
さて、何の本を頼もうか。できれば春画のようにエッチな本が良いけれど、流石に怒られるよな。それならば日本語で書かれた何かを……
いや――ちょっと待て。
「こう、パチュリーの書いたポエム集みたいな奴ってあるか?」
俺がそう尋ねると、本を捲るあの音が止まった。
「…………そんなものあるはずがないでしょ?」
そんなパチュリーの声が静かに響く。
まぁ、流石にそんなものはないか。ちょっと期待したんだが。
しかし、小悪魔はコクンとまた頷き、パタパタと飛び立っていった。
……えっ、あるんですか? ポエム集。何それ読みたい。
「ちょっと待ちなさい、こあ。行かなくて良い……おいコラ待て。行くな! やめろぉぉおおおっ!!」
静かな図書館が急に騒がしくなりました。
――――――――
アグニシャイン飛んできました。
しかも上級の方でした。
病弱設定何処いったよ。
小悪魔が命懸けで持ってきてくれた本は見事に炭と化した。一瞬だけチラリとその中身を見ることができたが、やはり文字は汚かった。
「……あの本も自分のために書いたやつだったの?」
「ああ、もう! うるさい。帰れ!」
パチュリーさんおこだよ。おこ。
命をかけてまで仕事を遂行した小悪魔はうつ伏せに倒れている。仕方無いね。直撃だったもん。
さて小悪魔も寝てしまったしどうしようか。パチュリーをいじるとまたアグニシャイン飛んできそうだし、春画が探しても良いが……
まぁ、それはまたの機会で良いか。
どうやらパチュリーも俺のことを知っているみたいだし、今日のところはそれだけで充分だ。
そうだなぁ、次は美鈴の所へで行こうかな。
「そんじゃ、俺は違う場所へ行くとするよ。またな、パチュリー」
そう声をかけてはみたが、返事は返ってこなかった。パチュリーにも可愛いところがあるんだな。なんて思ってクスリと笑が落ちた。ま、パチュリーが可愛い女の子に違いはないけどさ。
きっとポエム集のことがやっぽどショックだったのだろう。どんな物だったか読んでみたかった。
ポエムのことはしゃーないか。過去を振り返ってばかりはいられないのだ。前向いて胸張って生きていこう。
「……邪魔をしないのならいつでも来なさい」
パチュリーに背を向け歩いていると、そんな小さな声が聞こえた。
振り返らず手を挙げることでその言葉へ返事をする。
うん、また来るよ。
いつの日か今書いているこの作品が私の黒歴史となる日が来るのでしょうか?
と、言うことで第8話でした
相変わらず行き当たりばったりに書いているので、物語はなかなか進みません
一応この作品は地霊殿までを目標としていますが、このペースだと100話を超えそうですね
失踪待ったなしです
次話はレミリアさんを書きたいですが、やはりどうなるかわかりません
では、次話でお会いしましょう