良くわからないまま畜生に殺されたが、それ以外は特に問題ないため、異変解決に向けて出発。
いや、まぁ、異変を解決しようと思っているわけではないが……。ほら、気分的に異変解決って言った方が良いのかなって思ったんだ。
相変わらず妖精だの精霊だのの攻撃は続いている。コイツらは異変の空気にあてられただけだろうが、なかなかに鬱陶しい。でも、倒したところで次から次へと出てくるし、キリがないんだよなぁ。
そんな妖精たちの攻撃を避けつつ、遅れを取り戻すため、全力で迷いの竹林へ。
原作通りなら、ホタルや夜雀なんかと会うはずだけど……まぁ、どうせもう誰かが倒してしまっただろう。少なくとも冥界コンビは異変解決に動いているし。他のメンバーはどうなのだろうか。もし、全員が動いているとなると、かなり大変なこととなりそうだ。ただ、できることなら全員に動いていてもらいたいところ。
そんなことを考えていると、遠くの方で、ぶっとい光線のようなモノが天を昇っていくのが見えた。場所的には人里辺りなはず。んで、あの光線は多分、魔理沙だろう。何度も喰らったことがあるから見間違いではない。
……ふむ、と言うことは、詠唱組が慧音と戦っているのか? もしかしたら、リアルマリス砲とか見ることができるかもしれない。そんなものを喰らったら興ふ……じゃなくて大変だ。
ん~……どうするか。残念なことに詠唱組と出会ったら間違いなく俺に向けて攻撃してくるだろう。そんなことくらいわかっている。ただ、会っておきたいと言うのも事実なんだよなぁ……
「……どうしたの?」
急に止まったせいか、畜生が聞いてきた。
ちょっと考え事だよ。
ふむ、此処は魔理沙たちを無視して先へ進んでしまおうか。自機組たちと一緒に行動したいところだが、その自機組の中でも、紅魔組か結界組の方が色々と動きやすい。紫とレミリアなら俺に攻撃をしてくることはないだろうし。
「いんや、なんでもないよ。先を急ぐか」
「うん、わかった」
しかし、この熊畜生と一緒と言うのはどうにも動き難いな。別に気を遣う必要なんてないが、どうにも……
まぁ、文句を言ったところで仕様が無い。目的地には俺の婚約者が待っているんだ。
それは今からもう1000年以上も前のお話。
――今はまだその気には慣れないけれど、もし、貴方が1000年後も私を想い続けてくれるのなら、考えてあげても良いわよ。
そう言ってくれたことを彼女は覚えていないだろうが、それでも行かなければいけないところ。約束通り俺は1000年間彼女のことを想い続けた。そして、それは彼女から俺に出された課題だと思っている。彼女の課題をクリアできた奴はいなかったが、これはもうクリアしたと言っても良いはず。
つまり、俺は輝夜と結婚する権利があると言うこと。……ふむ、それはアレだな。思わず顔がにやける。式は何処で挙げようか。輝夜の見た目的に洋式よりも和式の方が似合っているはず。そうなると、博麗神社が無難だろう。
「……青。竹林ってアレのこと?」
しかし、俺と輝夜が結婚するとなると、やはり俺も永遠亭へ住むことになるのだろうか。永遠亭にも可愛い少女がたくさんいるし、俺的には大歓迎だが、ルーミアを置いてきてしまうことになるんだよなぁ。
ルーミアなら俺があの家を出ていくと言っても、止めたりするようなことはしないと思う。しかし、それはツンデレなルーミアが見せる外の部分。内心は悲しみで溢れているはず。長い付き合いなんだ。それくらいは俺だって分かる。
「……ねぇ、青」
それじゃあ、ルーミアが可哀想だ。だからルーミアも一緒に永遠亭へ来てもらいたいところだが……さて、そんなことは可能だろうか。永遠亭組からしたらルーミアは関わりが全くないただの他人だ。いくら俺のお嫁さんとは言え許されるのか分からない。
「……ねぇってば」
「うっるせーな。お前は山へでも行ってろよ」
ぶん殴られた。
「……話を聞かない青が悪い」
ぽっぽこと怒る熊畜生。
頬を膨らませ怒るその姿は可愛らしいが、普通に殴り殺されました。沸点が低いとか言うレベルじゃない。まぁ、今のところその力を向けるのは俺に対してだけだから問題ないが。
「いや、悪かったって」
とは言え、これからの生活のお話だったんだ。それならしっかりと考える必要があるだろう。う~ん、輝夜と結婚したあと、この畜生はどうすっかなぁ。下手に力があるせいで野放しにしたら幻想郷が危ない。暴れだしたコイツを止められる奴なんていないだろうし。
まぁ、輝夜と結婚した後に考えるとしようか。
「……あの竹林が言ってたやつ?」
そう言ってから畜生が指を差した先には、なんとも薄気味悪い竹林が広がっていた。どうやらいつの間にかこんな場所まで来ていたらしい。
「ああ、そうだよ。あの竹林の中に永遠亭って言う建物があるはずなんだが……」
絶対にたどり着けないよなぁ。俺にはそんな能力なんてないし、この畜生だって無理だろう。コイツは殴る蹴る食べるくらいしかできないし。
だから、できれば自機組と合流したいところ。もうこの際誰でも良いから、合流できないだろうか。
「まぁ、とりあえず進んでみよう。止まっていたって仕様が無いんだ」
「わかった」
そして、迷いの竹林の中へ。
昼間だって決して明るくないような場所だが。夜となるともう真っ暗だ。月明かりですら届かない竹林の中はなかなかに不気味だった。まぁ、相変わらず妖精やらが妖弾を放ってくるせいで、その不気味さも多少は和らいでくれているが。
さて、此処まで来たのは良いが永遠亭は何処にあるのやら。こんな場所でもたもたしていては異変だって終わってしまうかもしれない。
いっそのこと、この畜生に竹を薙ぎ払ってもらい……
なんて滅茶苦茶なことを考え出した時だった。
「うっわ、また貴方ですか」
と、その不機嫌さを全く隠すことなく、随分と辛辣な言葉。
ふむ、どうやら今回も自機組は全員動いているっぽいな。
「こんばんは、咲夜とレミリア」
これで紅魔館組も確認。あの霊夢が動かないことはないだろうし、なかなかに愉快な夜となりそうだ。咲夜は相変わらず辛辣でそれには興奮するが、今回の自機組の中ではこの二人組が一番楽な気持ちでいられる。
「久しぶりね、青。貴方も異変を解決しに?」
そう言ったのは紅魔館の主であるレミリアだった。永夜抄の時は確かまだカリスマっぽさが残っていたはずだし、今回のレミリアは心強い。
まぁ、カリスマがあってもなくても、レミリアが可愛いのに違いはないが。
「いや、俺はただ君らが異変を解決するところを見に来ただけだよ」
そもそも俺は弾幕ごっこができない。いや、やろうと思えばできるし、多分それなりに上手くできると思うけれど、幻想郷の少女たちへ乱暴なことなんてできるわけがない。それに俺みたいな野郎にごっこ遊びは似合わないだろう。
「相変わらず何を考えているのかわからない奴ねぇ……。それより、フランが貴方と会いたがってるわよ? 毎日来いとは言わないけど、顔くらい出してあげなさいな」
ああ、そう言えばフランドールと本当に会っていなかったな。クリスマスプレゼントをあげるために行ったこともあるが、あの時フランドールは寝ていた。そうなると……あれ? もしかしてあの紅い霧の異変以来ずっと会ってないのか? いや、しまったなおい。紅魔館へ遊びに行くことはあったが、それも昼間のフランドールが寝ている時間で、夜はこの畜生に殺され続けている。
レミリアとは宴会でちょこちょこ会っていたこともあり、自分から会いにいくことをしていなかった。流石に申し訳なくなる。何時でも会えると言っても俺が動かなきゃまずいよなぁ……
また来るとか言っておいて、ずっと会いに言ってなかったのだ、これは怒られる。でも、フランドールに怒ってもらうってのも、それはそれで……
うむ、とりあえずこの異変が終わったら紅魔館へ行くとしよう。
「了解、今度はちゃんと行くよ」
「ええ、楽しみにしているわ」
そう言ってレミリアは笑ってくれた。
まだ俺のことを思い出してくれていないそうだが、レミリア曰く、俺も紅魔館の住人らしい。記憶はなくても繋がっているものもあるってことがわかって、それがなんとも心地良い。
さてさて、いつまでも考え込んでいる場合じゃない。今は異変のことを考えようか。
「それではそろそろ動きましょうか。いつまでも夜を止めているわけにもいきませんし」
そうだな。それに俺のお嫁さんが待っていてくれるんだ。それなら急いだ方が良いだろう。
てか、さっきから畜生が静かだけど、本当に俺とルーミア以外の奴らはどうでも良いんだな。いっそフランドールと会うときコイツも一緒に……いやまぁ、それはやめておこうか。色々と危ない気がする。フランドールもフランドールで人見知りなところがあるし。
レミリアたちとも、せめて知り合いくらいの関係にはなってもらいたいんだがなぁ……
チラリと畜生の顔を見てみても、いつもと同じ無表情。何を考えているのかなんてわかりやしない。今回の目的は第一に未来のお嫁さんたちと仲良くなると言うものだが、この畜生を成長させるってのも目的のひとつだ。
どっちも難易度高いなぁ……
なかなか物語が進みませんね
ネタ思いつかなかったんです
と、言うことで第36話でした
次話では永遠亭に着いていてもらいたいものですが……
では、次話でお会いしましょう